あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのゴースト P

「あんた誰?」
「……?」

 彼女は突然の状況変化に、ぽかんとしていた。
ついさっきまで、いつものようにお散歩→草原でお昼寝→お兄ちゃんを影に日向にストーカーの三連コンボを決めようとしていた矢先に、変な穴から落ち、気がつけば桃色の髪をした少女から冒頭の言葉をかけられる。
 知らない人に突然そんな事を言われてもどうしようもなく、ビクンと小さく震えてから、彼女は水色の髪と分不相応に大きなリボンを勢いよく振って、辺りを見回し始めた。
桃色髪の少女、ルイズがもう一度名を問おうとした時、

「ルイズが平民を呼び出したぜ!」

と誰かが言ったのを初めとして、周りの生徒がはやし立てる。その騒ぎの中心にいる彼女は更に震えるが、誰も気付かない。

「ちょっと失敗しただけじゃない!」
「流石ゼロのルイズ!失敗は御家芸だな!」

「ミスタ・コルベール!もう一度召喚させて下さい!」
「それは駄目だ。一度呼び出したものは何であれ、契約する事が伝統だ」

 飛び交う罵声、嘲笑、絶叫。それがとてもやかましくて、なんだかどうしようもなくて、大好きなお兄ちゃんの気配を感じられなくて。

「ふぇ…えぅ…ええええええん!!」

 彼女は、ただ泣くしかなかった。



 ルイズは困惑していた。何回もサモン・サーヴァントに失敗し、やっと成功したと思えば平民の、しかも年下っぽい少女。おまけに突然泣き出したが、幸いコントラクト・サーヴァントで使い魔として契約成功し、泣きやんでくれたが。

(そう、ノーカンよ。相手はただの平民で、しかも年下の女の子)

 部屋のベッドの上で煩悶するルイズ。これが年頃の男なら傘で殴って蹴って錬成して刀で斬るぐらい調教し、勘違いしないように上下関係を叩き込む所だが、相手が相手だけにそうも行かない。
 何も知らず無邪気に部屋の物を珍しげに眺め回す使い魔の様子を見ながら、ふと契約直後の光景を思い出した。


 解散と相成り、他の生徒が空を飛んで帰って行く。後に残されたルイズと彼女は、やがて歩き出した。涙の跡が生々しいが、落ち着きはしたらしい。

(よくみると…可愛いわね)

 何というか、庇護欲を沸き上がらせるタイプだった。振り向いて見ると「?」と首を傾げる様子は、小動物を思い浮かべる。
 背はルイズより少し小さいぐらい、体型も同じぐらい。
 否、訂正。胸のサイズが僅かに負けていた。

「くっ……」
「どうか、したの?」
「何でもないわよ。そういえば、名前を聞いて無かったわね」
「憐は、憐っていうの」
「レン?解ったわ。わたしはルイズよ。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。今日から貴方のご主人様!」
「ご主人様?ルイズお姉ちゃん?」
「―――ぐはっ!?」

 それは反則だとルイズは思った。そんな脳がとろけそうな声で、仕草で、お姉ちゃんは犯罪ではないかと思わざるを得ない。

「お姉ちゃん、どうしたの?」
「な、何でもないわよ…それより、召喚した時に突然泣いたけど、どうしたのよ」

 質問した直後に失敗だと悟った。憐は、再び泣きそうな顔に変わった。正直泣き顔も可愛らしいな畜生と考え、続いてわたしは正常よ、正常なのよと心中で連呼しつつ、手のかかる妹を世話している気分に駆られた。
 つまりは、この時に力関係が決まったのだろう。貴族や平民というのを超越した何かで。

「お兄ちゃんが…お兄ちゃんがどこにもいないの…ひっく」
「ああもう、泣かないでよ!ええと…どうして解るの?」
「よく分かんない…けど、お兄ちゃんがいる時は分かるの。それがなくなって…」
「わ、分かったわ。レン、あんたの兄さん、探してあげるわ」

 言ってからまた失敗と思った。大体居場所も特徴も何も解らないのにどうやって探せと言うのだ。
 だが、憐が返して来た太陽の様に暖かい笑顔を見て、ああやっぱいいかも、とハァハァしていた。ダメな人に一歩近付いていた。


 が、そこからが問題だった。使い魔のルーンがあったから使い魔だとは解ったのだが、やり取りの一部抜粋を見れば分かるだろう。
「つかいまってなあに?」から始まり、

「何をすればいいの?」
「主人の目となり耳となる力、つまりレンが見たものをわたしも見る事が出来るんだけど…」
「?」
「無理みたいね。次はわたしの望むもの、例えば秘薬とかを見つけてくるとか―――」
「ひやく?」
「―――も無理かしら。最後に、わたしの身の回りの世話と護衛……なんてさせられるかぁ!」
「ひゃうっ?!」
「こんな可愛い子に……ハァハァ」
(ガクガクブルブル)

 つまりは、使い魔として悪い意味で規格外だった。何もできない。けどマスコットとして置いておけばいいかしら、可愛いしと行き着く辺り、更に毒されていた。
 むしろ末期じゃねーか、という意見は貴族の誇りにかけて黙殺する。


 意識を現実に戻す。
 憐という名の使い魔はいかにも眠そうに、ふわあと脳をダメにしそうな声であくびをし、目をこすっていた。
 案の定ダメになった人間がここにいた。

「眠いの?」
「うん……」
「じゃあ、一緒に寝ましょう」
(抱き枕として)
「う、うん……ありがとう、お姉ちゃん」

 ざんねん! るいずのぼうけんは ここでおわってしまった!
 寝床で聞きたい事、話したいことは山ほどあったのだが、舌ったらずの声に意識を刈り取られ、あえなく死亡確認となってしまった。

(使い魔とか全然知らないって事は、何なのかしら……ガクリ)
「あれ?お姉ちゃん、もう眠ったの?」

「それじゃあ、失礼します……お兄ちゃん、お姉ちゃん、おやすみなさい」


 空にはただ、二つの光り輝く月と、黒い月が星々とともに浮かんでいた。

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