あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~-01

プロローグ

 その日、警視庁はちょっとした騒動になっていた。
 警視庁の窓際部署で雑用係、職員からは「陸の孤島」「人材の墓場」などと呼ばれている特命係の長である刑事・杉下右京が行方不明になったのである。
 誰も行き先に心当たりはなく、携帯電話も電波が届かない場所にいるのか電源を切っているのか、全く通じなかった。
 だが、それだけならば警視庁全体を巻き込んだ騒ぎになることはない。
 右京はしばしば独自で事件を捜査し、その過程で拉致監禁されるなど危険な目に遭うことも少なくなかったからである。
 そんな右京の消失が警視庁の話題に上ったのは、右京の唯一の部下として特命係に所属する神戸尊と、特命係に隣接する組織犯罪対策部5課長の角田六郎の証言のせいだった。
 一部始終を目撃したという彼らの証言によると、外出しようとした右京が扉を開けると、待ち構えていたようにすぐ目の前に、大きな鏡のようなものが現れたという。

その鏡は、どういう仕掛けになっていたのか、少し宙に浮いていたそうだ。
 慎重な右京もこの不意打ちに近い事態には対処しきれず、その鏡にとびこんでしまった。
そして、右京を取り込んだことで役目を果たしたらしい鏡は、尊や角田が驚きのあまり動けないでいるうちに消えてしまったというのである。
 もちろん、そのような常識的に考えられない事態が起こったなどということが信じてもらえるわけもなく、
尊は刑事部長の内村完爾に事情を詳しく説明するために、部長室に呼び出されることになった(角田はうまく尊にこの面倒事を押しつけて逃げてしまった)。
 怒り心頭で、自分の説明を頭ごなしに否定してくるであろう内村の態度を予測した尊は、深く嘆息した。
「まったく…振り回してくれるな、あの人は……」
 尊は、そんな独り言をつぶやきながら髪をかき上げると、廊下を部長室へと歩を進めた。

第一章

「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! わが導きに応えなさい!」
 ハルケギニア大陸の国家・トリステイン王国の広々とした草原にそびえるトリステイン魔法学院の中庭に、ルイズの呼びかけが響いた。
 ルイズ――本名をルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという、トリステイン屈指の名門貴族の三女である――は、万感の期待をこめて杖を振るった。
 直後、耳をつんざく轟音と土煙が中庭を覆った。ルイズの前方の空間が爆発したのだ。
 ルイズの召喚を見守っていた、年齢の割に頭髪が寂しい教師・コルベールとクラスメイト達は、それぞれ体を伏せて目を覆ったり、耳や口を塞いだ。
 やがて土煙が引いたころ、クラスメイトの一人が、爆発の中心に何かを発見した。他の生徒たちもコルベールもそこに注目する。
 そして爆発を起こした張本人であるルイズは、そこに現れたものに対する驚きに、爆発で乱れてしまった自慢の桜色の髪を直すのも忘れて呆然としていた。
そこにいたのは、コルベールよりも年上であろうと思われる40~50代の男性であった(ただし、男のきっちりセットされた頭髪は黒々として白髪一本見当たらず、質・量ともにコルベールを完全に上回っており、それが男に若々しい印象を与えていた)。
爆発の中心にいたにも関わらず、男にはなぜか火傷どころか怪我ひとつなく、見ただけで高価だとわかるコートやスーツにも皺や乱れすらなかった。やはり高価なメガネフレームに納まっているレンズにも埃ひとつついていなかった。
気絶しているというのに、男の姿からは正真正銘の貴族である生徒や教師以上に高貴な、紳士然とした気品が感じられた。もし着ている服が典型的なトリステイン貴族のものであったならば、間違いなく貴族だと信じてしまうであろう。
「何だ? ルイズのやつ、まさか平民を召喚したのか?」
「あははは! さっすがは“ゼロのルイズ”ね!」
「いやいや、“ゼロのルイズ”が『サモン・サーヴァント』に成功したことをまずは褒めてやらないとっ…! ふふふふ…」
 クラスメイト達の笑いと“ゼロのルイズ”という言葉を聞いて我を取り戻したルイズは、屈辱に耳まで真っ赤にして叫んだ。
「う、うるさい! これはちょっとした間違いよ! そうに決まってるわ!」
 ルイズのその叫びに意識を取り戻したのだろう、男は目を開いてゆっくりと体を起こした。現状を把握しようとしているのか、注意深く辺りを見回している。
しばらくすると懐から掌に収まるくらいの小さな機械を取り出して何やらいじっていたが、小さくため息をつくと、機械を懐に入れた。
 やがて男は、近くにいたルイズに声をかけた。
「Excuse me.Could you tell me where here is?(すみません。ここがどこなのか、私にお教えいただけますでしょうか?)」
「え? なに!? 今何て言ったの!?」
 ルイズは男の言葉が全くわからず、バカにされたこともあって苛立ちが募り、とげとげしい調子で返した。
 しかし男は、そんなルイズの失礼な返事など意に介さなかったらしく、
「おや! 日本語をお使いになるのですか? ここは、イギリスではないのでしょうか?」と、少し驚いた様子で質問を重ねた。
「ああもう、ちょっと黙ってて! ミスタ・コルベール! もう一回、召喚させて下さい!」
 ルイズは男をとりあえず黙らせると、コルベールの方を向き、懇願した。
 男は、言われたとおり黙ってルイズたちの様子を見つめていた。
「それはなりません。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
 コルベールの否定の言葉に、ルイズは納得いかない様子で抗議の声をあげた。
「決まりだからです。今行っている春の使い魔召喚は、生涯使役する使い魔を召喚するだけでなく、使い魔によって君たち一人ひとりのメイジとしての属性を特定し、
専門課程に進むための神聖な儀式です。一度召喚した使い魔候補は、やむを得ぬ場合を除いては、変えることは許されません」
「で、でも! 平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
 ルイズの言葉に、再び周囲から笑いが起こった。
「これは伝統なのです。確かに人間を使い魔にするというのは前例がありませんが、春の召喚儀式は全てに優先します。
平民であろうと何であろうと、彼には君の使い魔になってもらわなければなりません。
ミス・ヴァリエール、君は直ちに『コントラクト・サーヴァント』を行い、彼と契約を結びなさい。よろしいですな?」
「そ、そんなぁ…」ルイズは肩を落とした。
「さっさと契約しちゃいなさいよ。失敗続きの中でようやく呼び出せた大切な使い魔なんだから。“ゼロのルイズ”に平民の使い魔…お似合いじゃない。ねぇ、タバサ」
「うるさい! キュルケ!」
 ルイズは、燃えるような赤い髪を持つ、どこか妖艶な雰囲気をまとった少女・キュルケを睨みつけた。
 一方、タバサと呼ばれた、背が低い青い短髪の無表情な少女はキュルケの言葉には答えず、男の様子を静観していた。
 男は、顔こそルイズとコルベールの方に向けてはいるが、中庭にいる全員の発言や動きを見逃さないように注意を払い、感覚を研ぎ澄ませているようにタバサには感じられた。
「はぁ…ちょっと、あんた」
ルイズはため息をつくと、男に声をかけた。
「はい?」男は語尾を上げた、少し変わった返事をした。
「勘違いしないでよね。これはあくまで使い魔としての契約だから。本来なら貴族にこんなことされるなんて、一生ないんだから」
「契約、とおっしゃいますと?」
「いいからじっとしてて! …我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 ルイズは、呪文を唱えると、杖を男の額に置いた。そして、男に顔を下げるように促す。
 男が立て膝になると、ルイズは男の顔に両手を添え、ゆっくりと唇を近づける。
先ほどとは違った感情で、顔が紅潮していく。心臓が高鳴っているのが嫌でもわかる。
 と、男は突然「すみません」とルイズに声をかけた。
「じっとしててって言ったでしょ!」
「一つだけ。急いでおられることは承知していますが、どうしても契約前に確認しておきたいことがあります」
 男は人差し指を立て、静かだが力強い声で、ルイズに質問させてくれるよう求めた。
「…何よ」
「この『使い魔の契約』は、今までの話から推察するに、僕にもあなたにも契約に対して拒否権はないようですが、成立した契約を解除することは可能なのでしょうか?」
「無理よ。使い魔の契約が解除されるのは、呼び出した使い魔が死んだときだけ。人間が使い魔として呼び出されるなんて今までなかったもの」
 この恥ずかしい時間を早く終わらせたいルイズは、少し早口気味で答えた。
「なるほど、それが『やむを得ぬ場合』というわけですね…仕方がありません。とりあえず、今後のことはこの場を終えてから考えましょう」
 そういうと、男は静かに目を閉じた。
 ルイズの唇が、男の唇に重ねられた。男は、身じろぎひとつしなかった。
 ルイズは唇を離すと、「終わりました」とコルベールに報告した。見知らぬ男とキスをしたことで照れているのか、彼女の顔は再び耳まで真っ赤になっていた。
 男女のキスシーンを目の前で見た生徒たちは、興奮をおさえきれずに黄色い声をあげたり口笛を吹いたりしてはやし立てた。コルベールが静かにするよう注意する。
「『使い魔の契約』…その方法がまさかキスとは…驚きました。大丈夫ですか……!?」
 男が立ち上がりルイズに声をかけようとしたとき、左手に違和感を覚えた。
 熱い。まるで熱した鉄の棒を手に押しつけられているようだった。
 だが、その熱さは一瞬のことであり、すぐに治まった。
 男が左手を見ると、手の甲に文字らしきものが焼印のように刻まれているのが見えた。
「これは…!」
「! 知ってるの?」
「ヨーロッパで、ラテン文字が普及する以前にゲルマン語の表記として用いられたルーン文字に極めてよく似ています」
「『使い魔のルーン』よ。私の使い魔ですっていう、印みたいなものよ」
 ルイズは、細かいところは自分が持っている知識と違うとはいえ、魔法どころか文字を習う機会すらないはずの平民の男がルーンを知っていることに内心驚いた。
しかし、由緒正しき旧い家柄を誇る貴族である自分が平民に動揺させられたなどと知られれば、また意地の悪い同級生たちの物笑いの種になってしまう。
 なるべく平静を装って男に説明した。
「ほう…これは珍しいルーンだな。失礼」
 男の左手を覗き見たコルベールが、刻まれたルーンを書き込んだ。
「すみません。『珍しい』とは、一体どういうことなのでしょうか?」
 男が、今度はコルベールに尋ねた。
「ん? …ああ、それは、見慣れないルーンだったというだけのことです。なぜそんなことを?」
「細かいことが気になってしまうのが、僕の悪い癖でして」
 男はまた人差し指を立てて、さわやかな微笑を浮かべた。
「そうですか……さて、これで春の使い魔召喚の儀式は全員終了しました。皆、教室へ帰りますぞ」
 コルベールはそう言ってきびすを返すと、宙に浮き上がった。
 生徒たちも、コルベールの呼びかけを受けて、同じように浮遊すると、石造りの校舎へと向かった。
 飛んでいないのは、ルイズと男の二人だけだった。自然、取り残される形になる。
 同級生たちは、口々に「お前は歩いて帰れよー」だの、「ルイズは『フライ』どころか、『レビテーション』もまともにできないからな」だのと、
からかいと嘲笑をルイズにかけて飛び去っていく。
 男は、人間が浮き上がったことに驚きを隠せない様子で、彼らの周囲や校舎の外を見回していた。
「ワイヤーやクレーン車等の類の仕掛けは見当たらない…タネも仕掛けもなく、人体をあれほどまでに安定させた状態で飛ばせるとは…
ここはさながら、中近世のヨーロッパを舞台にしたファンタジーを具現化したような世界ですねえ。いや、素晴らしい!」
 男は、手品を初めて見た子どものごとく、興奮していた。
「…あんた、一体何者なの?」
「はい?」
 ルイズの問いかけに、興奮から我を取り戻した男が振り向いた。
「コモン・マジックの初歩の『フライ』なんて、トリステインじゃ平民だって知ってるようなものにそんなに興奮するなんて…」
「いやはや、これはお恥ずかしい。なにぶん、幻想文学や映画でしか見たことがないような『魔法』を目の当たりにしたものですからねえ」
「それなのに、ルーンは知ってるなんて…おかしいじゃない! あんたは何者なの? どこから来たの? 
なんであんたみたいなのが、私の使い魔になったのよ!?」
「落ち着いて下さい、ミス・ヴァリエール。事態を把握できていないのは、僕も同じです」
 男は、ルイズを落ち着かせようと、優しく名前で呼びかけた。
「…え? 私、まだ名乗ってなんかないわよ? 何でわかったの!?」
「先ほど、僕との『使い魔の契約』の際に唱えていらっしゃった呪文の中で名乗っておられたではありませんか。
ミス・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール…ですよね?」
 何が「事態を把握できていない」よ。正式に自己紹介していない私の名前をあの状況で、しかも正確に憶えているなんてじゅうぶん冷静じゃない…
そんなルイズの気持ちをよそに、男は言葉を続けた。
「ああ、こちらから名乗るべきところを、大変失礼いたしました。申し遅れましたが……私、日本で公務員をしております、杉下右京と申します」
 男――杉下右京は、高い教養と知性をあわせ持った紳士というにふさわしい慇懃な言葉遣いと、上品な笑顔でルイズに自己紹介をした。


新着情報

取得中です。