あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-50

 ガリアとの戦争は・・・・・・そう遠くない。
そういうことに関して鋭敏なアーカードだけでなく、ルイズも所謂匂いというものを感じていた。
アーカードと共に過ごし、手解きなどを受けている所為もあるのかも知れない。
危機に関しての独特な嗅覚というものが、自分にも備わり始めたのだろう。

 さらに予感を補強する材料があった。
アーハンブラ城で、ジョゼフを近くで観察していたことが起因する。
地獄を見たいと言っていたあの男。ガリアの狂王には躊躇いというものがない。
あの男は・・・・・・確実に、何かをしでかす。
その最もわかりやすい形こそが戦争であった。

「う~ん・・・・・・」
ルイズは悩む。
ガリアとの戦が意味するところ、客観的に見ればトリステインの敗北以外に他ならない。
彼我の戦力差は、今更論じるまでもないほど圧倒的。
誰もがトリステインの勝ちの目はゼロだと答えるだろう。
しかし、自分は知っている。トリステインが唯一勝つことが可能な方法――――――。

「我々だろうな」
ルイズの心を読んだかのように、絶妙なタイミングでアーカードが口を開き言った。
「・・・・・・私、口に出してた?」
無意識に独り言になっていたとしたらかなり恥ずかしい。
しかしルイズの問いにアーカードはかぶりを振る。
「前々からたまに気になってたんだけど・・・・・・もしかして、心とか読めるの?」
「うんにゃ、ただの経験と勘」

 ルイズは訝しむような目つきでアーカードを見つめる。
本当は心を読んでるんじゃなかろうか、それくらい出来ても不思議はない。
「500年も生きていれば・・・・・・人の思考を読む程度などなんのことはないスキルだ。
 特に今、うんうんと悩み考えることは一つしかなかろう。ガリアとの戦しかな」


 いやいやいやいや、確かに考えていることを推察するのは、そんなに難しいことじゃないかも知れない。
けれどタイミングぴったりに言葉を被せてくる芸当は、また別だろう・・・・・・。
ルイズはそう心の中で思うが、敢えて突っ込みはしなかった。

「私の中には300万を越える命が、思考や記憶が混在している。それこそあらゆる人間が内在している。
 多種多様に渡る人間が己が中に在る。故にその心理や本質、思考パターンを読むことなど造作もない」

 アーカードが率いるアーカードの領民。アーカードが今までに喰ってきたあらゆる生物が。
その一人一人が有している記憶・知識・経験が。あらゆるものを喰らい尽くして内包している。
それがアーカードという城。アーカードという領地。アーカードという吸血鬼の恐るべきところ。
膨大過ぎる密度を内在しながらも、それらを拘束し、それらを制御し、それらを統率している。
並の吸血鬼では到底無理な話。アニエスにも・・・・・・他の吸血鬼の誰であっても。

 アーカードの世界の本物の吸血鬼なら、誰しもが持つ能力の一端ではある。
が、しかしだ。その者のキャパシティを超えた数の命を取り込んだところで・・・・・・耐えられないのである。
アーカードの精神構造がどうなっているのかはわからない。だがアーカードにはそれが可能なのだ。
300万以上の命を拘束制御できる、アーカードの強靭過ぎる精神力あってのもの。
                                  レギオン
 故にこそ、アーカードにのみ許されたアーカードだけの軍団。

(・・・・・・う~ん、説得力は・・・・・・ある・・のかな・・・?)
300万人以上に及ぶ人生経験と、アーカード自身500年の人生経験。
人智を越え過ぎていて、微塵にも想像がつかない。
だがそういうものなのだと・・・・・・理解は出来ずとも、納得は出来た。
だって他ならぬアーカードなのだから。


 ルイズは心の中で嘆息をつくと、もう一度目下の状況について考え始める。
元々ガリアとトリステインでは、艦隊の絶対数が違い過ぎる。
その上トリステインの艦隊は、度重なる戦で大幅に数を減らしている。
大きく兵の数を減らした原因は、アーカードの死の河とそれを命令した自分にもある。
いたたまれない気持ちになり、少しだけ滅入る。
全てを覚悟した上での決断だったが、それでも完全には割り切れない。
それに・・・・・・戦死者達の弔いと、残された親族への処置。数が数だけに、想像がつかない。
姫さまは上に立つ者の責任と、自分達に心労をかけまいと吐露していないのだろうけど。

 ルイズはもう一度心の中で嘆息をつく。それでも前に進むしかない。
一度戦が始まってしまえば、打ち倒すか、滅びるか。その二つの選択肢しかない。
それがガリアとの、あのジョゼフという狂王との戦だ。
――――――トリステインは、手持ちのカードの役では到底勝ち得ない。
    ジョーカー
なれば鬼札を切るしかない。
(つまりは私達・・・・・・)

 虚無魔法と死の河。
(私が空を制し、アーカードが地上を制す・・・・・・)
アーカードの零号開放では、空中艦隊には完璧に対応出来ない。
故に空の戦力に対しては、自ずと虚無で戦うことになる。
指輪と祈祷書は奪われっ放しで既に無い。
だから『エクスプロージョン』と『イリュージョン』を駆使して戦っていくしかない。

 アーカードが地上を死の河で埋め尽くすならば、まず負けることは有り得ない。
最初からトリステインの地上軍に引っ込んでいてもらえば、ガリアの犠牲のみで済む。
懸念材料はウォルターとヨルムンガント等、強力な魔道具である。
が、その時は隠れるなり空へと退避するなりすれば、問題ないだろう。
尤もアーカードの性分がそれを許すかは、また別問題であるが・・・・・・。


 よって割合で言えば圧倒的に、地上戦力よりも空軍戦力の方が肝要。
ガリアの強力な両用艦隊をどうにか出来るかどうかこそが、戦局を左右する。
つまるところ、この戦の命運はルイズ・フランソワーズ。己に委ねられていると言って過言ではない。

 魔力がどれだけ溜まっているかが、根本にして最大の問題かも知れない。
タルブでの一発のような真似は出来ない。
そもそも戦力差からして、タルブでの規模の一発だけでは終わらない。
だがアルビオン軍七万と違って、今度は普通の人間である。特に『幻影』は戦略的に強い。
燃費の悪い『爆発』の使用を極力抑え、トリステイン艦隊と連係をとって戦うしかない。

(最大の不確定要素は・・・・・・)
ジョゼフの虚無だ。タバサがやられる様をルイズはしっかりと見ていた。
ジョゼフも『爆発』を使える。『爆発』と『加速』の他にも使えるとなると、戦局はわからなくなる。
もし『幻影』か・・・・・・それに類する虚無までも使えるとなれば、混戦は必至。
先のアーハンブラでの一戦とウォルターの存在の所為で、こっちの手札は相手に殆ど筒抜けたも同然。
自分とアーカードが最大限効率良く立ち回ったとて、敗色濃厚なのは否めない。



 ルイズが考えているとその時、コンコンと控えめなノックの音が聞こえた。
「どうぞ」と声を掛け、部屋へ招くと・・・・・・それはタバサであった。

「ようやく目覚めたか」
アーカードが変わらないトーンで言った。
怪我はテファと指輪のおかげで完全に治癒していたが、なかなか目覚めなかった。
学院に帰るまでシルフィードの上で寝続け、帰ってからも丸一日寝込んでいたタバサ。
それほどまでにギリギリの状態にまで陥り、生死の境を彷徨っていた。

 ルイズはタバサの元気そうな姿に、ほっと胸を撫でおろす。
「あぁ、良かった。それとタバサ、助けに来てくれてありがとう、それで体の方はもう大丈夫なの?」
タバサは頷く。しかしルイズの純粋な心配の言葉が、胸に突き刺さった。

「母のこと、ありがとう」
タバサはまずお礼を言った。目覚めてすぐにキュルケから諸々の話を聞いていた。
自分が意識を失っている間、キュルケ、コルベール、ルイズ、アーカードがオスマンに掛け合ったこと。
母をこの学院に置いてくれるよう頼んでくれたことを。

 そしてタバサはケジメをつけるべく、ルイズの前に片膝をつき跪いた。
「ごめんなさい。私はあなたに・・・・・・どれだけ謝っても足りない」
裏切りは裏切り。アーカードは許してくれたようだが、ルイズは違う。
そも裏切らずに最初から己の任務を伝えていれば、危険な目に遭わせることは無かった。
己のエゴで行動した結果に対して、その赦しを請う。
許さないと言われればそれまで、どんな報いも受ける覚悟もあった。

 ルイズはタバサの手を掴んで立たせると、その目を見つめて無垢に笑った。
「いいわよ、こうして無事なんだし」
「・・・・・・ありがとう」
タバサの心に暖かいものが灯る。
タバサは少しだけ考え、心の中でそれを決意すると自分の過去について話すことにした。

 父が殺され、自分の身代わりに母の心が狂わされたこと。
騎士となって任務をこなしていたこと。
ジョゼフとの関係、友を裏切ってまで先の任務をこなそうとした理由。
そして今の決意を含め、全てを伝えた。


 話を終えたタバサに対してルイズが問う。
「本当に・・・・・・復讐をするの?」
タバサは答えない、その代わりにアーカードが口を開いた。

「何を言ってるんだか」
アーカードは小馬鹿にするように笑い、ルイズは唇を尖らせる。
「なによ、復讐は何も生まないわ。タバサのお母さまも助けたんだし、それ以上は・・・・・・。
 これからはお母さまを助ける為に生きるんじゃ駄目なの?私も出来る限りの協力はするわ」

 復讐は・・・・・・殺意と憎悪の円環。換言するなら法と正義。
やられた分はやり返す、やった分はやり返される。人類普遍の一大律法。
しかし同時に己の命を秤にかける行為。
タバサ自身の未来を賭け金にすることを、ルイズは良しとは思わなかった。
タバサには幸せになってもらいたいと素直に思うし、今は守るべき母もいるのだから。


 タバサは憂いを帯びた表情になる。ルイズの想いも理解できるがゆえの苦しみ。
ウォルターに任務を言い渡された時に、浮かび上がったその選択。
復讐を捨てて、母と共に慎ましく生きるその選択。
葛藤し悩み抜き、そして最終的に捨てたその選択。

「安っぽい言葉だなルイズ。肉親を殺されたこともない・・・・・・お前の言葉には中身がない」
「むっ・・・・・・」
ルイズは咄嗟に言い返そうとするも、言葉に詰まる。確かに・・・・・・その通りだ。
慮ることは出来ても、本質的に理解することは実際に家族を殺されないとわからないだろう。
厳しくも愛すべき父。母は・・・・・・殺されそうもない。そして親愛なる二人の姉。
そんな家族を、大切な人を・・・・・惨たらしく殺されたとしたら。
タバサと同じような状況になったとして、全く同じ台詞を言えるかは自分でもわからない。
少し浅慮だった己の発言に、ルイズは自分を恥じた。


「まっ決めるのはお前自身だタバサ。殺して前へと進むのも、憎しみの連鎖とやらを断ち切るのも・・・・・・お前の選択。
 そこに善悪・正邪・是非もなし。――――ちなみに私は・・・・・・これ以上ないくらいに復讐してやったがの。
 国を守るという大義名分と、信じた神の為に戦うという目的こそあった。が、復讐に変わりはなかった。
 こうして化物となってからは、無辜の民を殺し、何の咎も罪もない者達をも喰ってきた。それでも何一つ後悔はない」

「滅茶苦茶よ・・・・・・」
本当に狂おしいほどに今更だったが、ルイズはそう言ってやった。
アーカードは「ハハッ」と笑う。
「化物だからな」

 タバサは二人の言をゆっくり心に染み込ませた上で、想いを込めて言い切る。
「私は・・・・・・復讐をやめるつもりはない」
既に決めたこと。自分は全てを手に入れると。今も迷いは無い。

 そしてその決意の込められた眼差しで、アーカードを見つめる。
「・・・・・・うん?」
「私を吸血鬼に・・・・・・して欲しい」 
タバサはアーカードにそう頼んだ。
無論、そんなことを口にした理由は聞かずとも察する。

 吸血鬼となったアニエスの強さを目の当たりにし、またジョゼフとの力の差を感じた故の決断。
アーカードほどではないにせよ、アニエスを見る限り、血族というだけで十分過ぎる強さを得られる。
そしてジョゼフは強い。虚無の凶悪さを、その身を以て実感した。
だから欲する。ジョゼフを殺す力を、吸血鬼の力を。


「それは・・・・・・やめた方がいい」
アーカードは目線をはずしながらさらっと言った。
そして「どうして」と訴えるタバサの瞳を改めて覗く。

「タバサ、お前は強い人間だ」
それだけが理由だとばかりに、アーカードは言い切る。
「わたしは・・・・・・弱い」
タバサは切実に声を絞り出す。事実、ジョゼフの虚無の前に為す術無く死に掛けたのだ。
否、死んだも同然であった。

「単純戦力で見るならば、すっごく強い私が認めているのだぞ?・・・・・・お前は強い人間だと」
「・・・・・・もっと強くなれる」
褒めてもらったのは素直に嬉しい面もあるが、それでは足りないからこその嘆願。

「確かに、基本的な性能は桁違いに上がる。ちょっとやそっとの傷ではものともせんし、再生もする。
 他者の命を取り込み支配すれば、その数だけ命も増える。使役して戦力にすることも可能だ。
 だがな・・・・・・化物になったところで、ジョゼフを倒せるとは限らない。
 むしろ逆なのだ。化物は・・・・・・いつだって人間に打ち倒される」

 それは絶対の真理。それは不変の摂理。
化物を打ち倒すのはいつだって人間でなくてはならない。

「でも・・・・・・」
納得がいかない。もっと論理的に話して欲しい。

「客観的に比較すれば、勝てる可能性の方が高いとでも言いたいか?
 だが生憎、そのようなつまらん理屈ではない。理ではなく、実なのだ。
 まして生命の危機など、やむにやまれぬ事情ならいざ知らず。
 己が望む目的の為の手段として、自らすすんで化物になることを私は肯定はしない」


 アーカードは「経験者からの言だ」と呟いた後、諭すように続ける。

「信念がある、志がある、生きる目的、守るべきもの。己を知り、諦めを踏破し、今を歩いている。
 復讐と、その先の未来を見据えている。だからお前は強い。それこそが人としての強さなのだ。
 故にこそ私は・・・・・・。私の大好きな、強く、すばらしい、人間のまま、生きて欲しいと願うのだ」

 アーカードは「それに・・・・・・」と、付け加えた。
「人間として生きる覚悟と、化物として生きる覚悟は違う。タバサ、お前に覚悟はあるのか?
 人間を糧とし、人間に打ち倒される覚悟が。打算的に化物になったところで後悔するだけだ」
  (尤も・・・・・・そのような道を進まず、うす暗がりをおっかなびっくり歩く例外を一人だけ知っているがな)
だがそんなことは言わない。
何故ならそれは、誰かに言われて進めるような道程ではない。

 タバサの表情に変化は見られなかったが、その瞳の色は僅かに変わっていた。
確かに・・・・・・打算的だ、それでも力を欲する。それが復讐の為に必要であるのなら・・・・・・。
アーカードはさらに続ける。

「・・・・・・私は弱い人間だった。故に私は・・・・・・化物に成り果て、成って果てる。
 だがお前は強い人間だ。強い意志と力がある。そんなお前が化物になるのを私は見たくない。
 まっ、これは私の願いでしかない。強要はしないし、それでも尚望むのならば吸血鬼にしてやろう」

 アーカードは「きちんと覚悟があるのならな」と、牙を見せて笑った。
それは先ほどまでの、化物になる強い人間を見たくない、といったものとは違う。
化物になるならなるで、それも構わず面白い。といった感じのものに見えた。
そしてタバサの返答を待たず、アーカードは郷愁に耽るかのように、独りごちるように話し始める。


「100年程前に、私は一度人間に打ち倒された。全身全霊を以って闘った。そして敗れた、完全に」
「・・・・・・」
「うっそ・・・・・・」

 タバサは沈黙し、ルイズは驚嘆の声を漏らす。全身全霊ということは、つまり全力ということ。
ルイズの実際に見た死の河も含めてのことだろう。その上で完全に敗れたなんて信じられない。
アーカードは「そういえばこの話をしたことは無かったな」と続ける。

「私はあの時に、人間の強さを見た。そして知ったのだ。
 そうだ。あの男は、あの年老いた・・・・・・ただの人間のあの男は・・・・・・。
 アンデルセンもそう・・・・・・。人間とは夢の様だ」

 アーカードは言を閉じる。そして今度こそタバサの返答を待った。

(アンデルセン・・・・・・)
タバサはアーカードと肩を並べて戦っていた、その人物を思い出す。
あれが純然たる人間の強さ。安易に化物となって得られる強さとは全く別種なのだろう。
そしてアーカードが言っていること。饒舌に語ってくれたこと。
きっとそれは紛れも無い真実。人間と・・・・・・化物と・・・・・・。


 タバサは瞳に確かな色を秘め、アーカードに頷いて答えた。
化物ではなく人間として。今以上に強くなり、復讐を完遂し、そして未来を生きると。

「んむ、まぁ些少の手伝いくらいはしてやろう。ルイズと共に鍛えてやる、スペシャルにな」

 アーカードは満足気に頷く。
ルイズは「げっ」と表情を歪ませながら呻き、タバサは決意を新たに拳を握り締めた。




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