あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロニスター-05


 ハルケギニア最強殺人鬼決定戦の予選は、「メダル集め」である。
 森の中に落ちているメダルを拾う他、他人を殴ったりどついたりして奪うのもありとされている。
 相手が死んでも同様である。

「う……、うう……」
 森の中の岩が転がる一角に、負傷した参加者の女性が倒れ呻き声を上げていた。
 そこに長剣を背負った小太りの男が歩み寄っていく。
「誰にやられたのかは知らねーが……、メダル1枚持ってるじゃねえか。悪いが俺がいただいていくぜ……。へへへ……」
 笑みを浮かべつつ男が女の手首に巻かれたホルダーのメダルに手を伸ばした時、
『うおーっ!!』
 雄叫びと共に木陰からルイズ・サタニスターが踊り出た。
「そいつは囮だよ、間抜け~っ!!」
「あんたが持ってるメダル全部出しなさい!!」
「ぐわ~っ!!」
 と男を袋叩きにしてメダルを巻き上げると1枚だけ男のホルダーに残して地面に転がし、
「次の獲物を待つわよ、ルイズ、シエスタ」
 再度木陰に隠れたのだった。
「うう……」

 同時刻、1人の男が鎌を片手に藪を分け入り歩いていた。
「ちくしょう……、全然メダル落ちてねえじゃねえか。くそっ……、くそっ……。だいたいこのデリバリー・ヘル様の得意分野は『毒入り食品』による攻撃であって、こういう状況は想定しては……」
 そう呟きつつ汗を拭っていたデリバリー・ヘルの視線が、1本の木に止まる。
「!! 木の幹に……はまってやがる!」
 にやりと笑いメダルに手を伸ばすデリバリー・ヘル。とその時、
「へへ……、見つけられると結構楽しいな。ようやく2枚目……」
 ――ドッ……
 突然聞こえた鈍い音にデリバリー・ヘルが見下ろすと、鎖に繋がった鎌の鋭い刃が彼の胸を貫通していた。
「な……!?」
 驚愕の表情になったデリバリー・ヘルの背後にビダーシャルが降り立ち、手にした鎌とデリバリー・ヘルの胸に刺さった鎌とを繋ぐ鎖でデリバリー・ヘルの体を宙吊りにする。
「おげえええ!!」
 ――ザン!
 そして鎖のもう片方の端に繋がっていた鎌の刃が、空中でデリバリー・ヘルの腹を狙い撃ちにしてとどめを刺した。
「がふっ!」
 絶命したデリバリー・ヘルの体が地面に落下するのを横目で確認しつつ、ビダーシャルはにやりと笑みを浮かべる。
「本当はじわじわ殺(や)るのが好きなんだけど」

 ビダーシャルがデリバリー・ヘルを血祭りにあげているとも知らず、ルイズ・ナックルスター・シエスタは倒木に腰かけ戦利品のメダルの枚数を数えていた。
「メダルが8枚になったわ! 想像以上にちょろかったわね」
「規定枚数をクリアしたからお二人とも予選合格ですね。もうスタート地点に引き返してもいいのでは?」
「駄目よ。3人で本選に出るんだからあと1枚は稼がないと。1人3枚が最低条件なんだから」
「……は?」
 ナックルスターの言葉の意味を一瞬理解できなかったシエスタだったが、ナックルスターは彼女の顔を正面から覗き込み、
「あたしはあんたにも本選で戦ってもらうつもりでいる」
「ははは。またまたあ~、冗談きついですよ、ミス・ナックルスター」
 にこやかに笑みを浮かべたシエスタ。しかしルイズ・ナックルスター共にその表情は真剣以外の何物でもない。
「馬鹿言わないでくださいよ!! 私はただのメイドで……」
「だったら何? メイドの身で殺人者となる奴は世にいくらでもいる。だったら殺人者を倒すメイドだっていてもいいはず」
「それに私達だって好んで2人だけで戦い続けてるわけじゃないわ。同志が多ければ私達も助かるのよ」
「『才人』があたし達を襲った時、あんたはあたし達を庇ってくれたけど、あんた本当はあの時可能なら戦いたかったんでしょう? 敵わないのがわかってるからやらなかっただけで」
「それは……。でも私には力なんて……」
「そんなもん『ズル』すればいいのよ」
「フェアプレー精神にのっとった殺人鬼なんていないんだからね」
 ルイズはそう言いつつシエスタに何かを投げ渡した。
「!?」
 放り投げられたそれをシエスタは反射的に受け取って、その後それに視線を向けて戦慄した。
「こ……、これは……!?」
 それはナックルスター・ルイズが身につけている物とまったく同じダブルヘッド・クロスだったのだ。
「ダブルヘッド・クロスよ。シエスタにも作ってあげたわ」
「あたしのナックルを少しだけ削って溶かして……ね」
 そう言って腕に装着しているナックルをシエスタに見せるナックルスター。
 それを見た瞬間、シエスタは自分に渡されたダブルヘッド・クロス(正確にはその材料であるナックルスターのナックル)が恐るべき代物である事を思い出した。
「え……、ち……、ちょっと待ってください……。確かそのナックルには……、無数の怨霊が……!!」
「耐えてちょうだい、シエスタ!!」
 次の瞬間、シエスタの周囲を取り巻く空気が一変した。
 形容し難い表情に顔を歪める無数の半透明な生首達が、シエスタの周囲にまとわりついたのだ。
「ぎっ……、ぎゃあああああ!!」

 舞台は変わって、ちょっとした広場に1本立っている大木を望む藪の中。
 そこに隠れているブラッドロリータが、大木の傍で彼女に背を向け立っている2人の男の様子をじっと伺っていた。
(何ぼーっとしてんのかね、大の男2人が。隙だらけだっつーの)
 2人が完全に油断している事を確信し、ブラッドロリータは2人の前に踊り出る。
「ヘイ!! おとなしくメダルを出しな!! もたもたしてっと1滴残らず血を――」
 そこまで言ってブラッドロリータは絶句した。
 2人の背中に隠れて見えなかったが、大木からはデリバリー・ヘルの生首と腕を鎌に尖った木の杭と共に鎖・臓物で残虐にくくりつけた物がぶら下がっていたからだ。
「………!!」
『………』
 しばらく続いていた沈黙は、ブラッドロリータがやっとの思いで吐き出した一言で破られる。
「な……、何これ……」
「誰かが仕掛けた『罠(トラップ)』だよ……。歩いてたら急にこいつが降ってきたんだ。ギリギリでかわす事はできたが……」
「これ作った奴絶対おかしいぜ。『楽しみながら作りました』って感じが伝わってくるんだよ、これ見てるとよ……」
「いくらなんでもえぐすぎる……。やる気なんか消し飛んだぜ」
 男達は自分のホルダーを取り出し、ブラッドロリータの足元に放り投げた。
「メダルが欲しいんなら持ってけよ」
「俺らは必要無くなった」
「殺人鬼にもレベルの違いというものが存在する事を思い知らされたぜ。正直なところもうやってられん」
「怖気づいたと思われようがかまわねー。とにかく俺達はもう嫌だ」
 そして2人はそのままくわえ煙草で広場から去っていったのだった。
「………!」
 1人残されたブラッドロリータは、まだ見ぬ強敵の存在に戦慄していた……。

 話を再度シエスタに戻す。
 高台の岩場に挟まれた谷間のような場所をシエスタは1人歩いていた。
 そしてそのシエスタをメンヌヴィル・飴姫・石牙のマリコルヌが見下ろしている。
「サタニスターがいつも連れ歩いてる……、『シエスタ』ってガキだぜ!」
「なぜ1人で歩いてるんだ、武器も無しに?」
「重要なのは、こっちは『サイト』をサタニスターにやられてるって事よ。サタニスターにも仲間を失ってもらわないと……割に合わないさね」
「それにあの小娘……」
「メダルを持っている」

「はっ!」
 ただならぬ殺気を感じてシエスタが振り返った時、頭上から飴姫が踊りかかってきた。
「死ねえ小娘っ!! 飴姫ブレードっ!!」
 飴姫が大きく右腕を振った瞬間、液状の刃がシエスタめがけて飛来した。
 しかし刃がシエスタのいた場所を通過した時には、既にシエスタは飴姫の背後に回っていた。
「馬鹿なっ!?」
「!!」
 だがそのシエスタのさらに背後にいた人影が、彼女を羽交い締めにした。
「僕の名は石牙のマリコルヌ!! お前の頭をビスケットみたいに噛み砕いてやろうか!!」
 大口を開けたマリコルヌの顔を横目に見つつ、シエスタはダブルヘッド・クロスを渡された時のサタニスター達の言葉を思いだしていた。
「シエスタ!! 怨霊どもには『目的』がある!!」
「まずはその『目的』をシエスタも理解するのよ!!」
「うわあああ!」
 ルイズ・ナックルスターの言葉も耳に入らない様子で、シエスタは頭を抱えうずくまっていた。
 その脳内では歪んだ生首達がひっきりなしに喚き声を上げている。
(暴れさせろ!!)
(誰でも言いから殺させろ!!)
(相手は誰でもいい!!)
(俺達に……敵を与えろ!!)
 その言葉の中に隠された怨霊達の「目的」に気付き、シエスタははっとする。
(あっ……!!)
「気をつけるんだよ……。こいつらと『組む』には意志の強さが重要になる」
「精神力の弱い人間が組もうとすれば、逆に『取り込まれる』わ。自分の体をコントロールできず主従が逆転するのよ!!」
 するとシエスタが脂汗をかきつつも顔を上げ、ルイズ・ナックルスターを見上げた。
「今……、連中を押さえつけました。怨霊の呻き声が、止んだ……!!」
「………!!」
「でも……、わずかな土嚢でかろうじて濁流をせき止めてる感覚です。ほんのささいなきっかけで決壊しそうな感じがします……!! ミス・ナックルスター、ミス・ヴァリエール……。しばらく1人にしてください。一緒にいない方がいいです……!!」
 そしてシエスタは立ち上がり、そのまま1人森の奥に消えていった。
(シエスタ……)
(あいつは一瞬だけ……、あたし達を襲おうとした……!!)

「うわああああ~っ!!」
「!!」
 叫び声を上げつつ、羽交い絞めにされたままの体勢から体を捻り腕を伸ばしてマリコルヌの頭部に手をかける。
「ふん!」
 ――ダンッ
「ぐえっ!」
 そしてそのまま力任せにマリコルヌを引き剥がし、地面に叩きつけた。
「マリコルヌ!!」
「マジか!? あの小娘!!」
 驚愕の声を上げた飴姫・メンヌヴィル。
 しかしシエスタの勢いは止まらない。
「ああああああ~っ!!」
 ――ドンッ!
「ゲボッ!!」
 倒れたマリコルヌに手刀を叩き込み、鈍い音と共に血を吐かせた。
 動かなくなったマリコルヌにメンヌヴィルが歩み寄り、首の辺りを触り始める。
「首の骨を……折りやがった……!!」
 今まで以上に殺気を強めている目の前の飴姫・メンヌヴィル以上に、シエスタは初めて人間の命を奪った自分自身に戦慄していた。
「あんたを許すわけにはいかなくなったわ」
「俺らの仲間をこんな目に遭わせてくれるとはな……。どうしてくれるんだ、てめー」
 あまりに理不尽な敵意にシエスタは顔をしかめる。
(自分達からしかけてきたのに……!!)

 ――ガシャーン
「あーっ! ちょっとシエスタ、どうしてくれんのよーっ」
 シエスタを含む数人の男女が集まっている室内で、頭に花飾りを着けた少女が壊れた筆箱片手に喚き声を上げていた。
「あたしの筆箱壊れちゃったじゃないのーっ! 弁償!! 弁償!!」
「あーあ、シエスタはどうしようもねーなあ~っ。ひでー事するぜーっ。物を大事にする精神の欠片もねえ~っ!!」
「わ……、わざと私の体に当てて落としたのに……」
 一緒にいた少年の非難にシエスタは反論するも、
「はあーっ!? 言い訳してんじゃねーよ!! 明日までに50エキュー持ってきな!!」
「ぎゃはは、5エキューの筆箱なのに!! シエスタむごーっ!!」

『!!』
 飴姫・メンヌヴィルは目を見開いた。
 シエスタは毅然とした表情で2人を見据え、戦闘体勢を取っていたのだ。
(こいつらに負けるわけにはいきません……!!)


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