あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ときめきメモリアル0-5

貴族趣味にこってかたまった『フリッグの舞踏会』なるものが来週開催されるらしい。
ぼくはあまり気乗りしなかったのだけど、ルイズの一存で参加する羽目になった。
おまけに、正装でないとまずいらしい。面倒臭いことこの上ない。
仕方なく、ぼくはモンモランシーを引き連れ、洋服を買う為に城下町へと出かけた。
彼女には、件の決闘で大きな貸しがある。洋服代をたかるくらい可愛いものだろう。
しかし、彼女は呆れるくらい体力がなかった。一時間程、城下町を散策しただけで、根をあげ始めたのだ。
「もう、歩けない。これ、お金。わたし、そこの喫茶店で休んでるから、一人で買ってきて」
ぼくに財布を差し渡すと、彼女はよろよろと喫茶店に入っていった。
弱音ばかりを吐く彼女を宥めすかすことに疲れきっていたぼくは、彼女の提案に従うことにした。
一人で買った方が早いに違いない。
ぼくは連なる商店の庇に掲げられた看板を一点一点確認しながら歩いた。そのせいで、曲がり角から現れた人影に気付くのが遅れ、肩と肩がぶつかりあった。
「あ、すいませ…」
謝罪相手の姿を認めたぼくの口が硬直する。
肩まで伸びる柔らかそうな金髪とフリルのたくさんついた可愛らしい洋服が良く似合う美しい『青年』が立っていたからだ。


まごうことなくギーシュ・ド・グラモン、その人である。
ぼくに気付いた彼の顔から血の気が引いた。
当然だ。ひた隠しにしていた女装趣味が第三者にばれたら、誰でも同様の反応をするだろう。
しばしの沈黙が流れ、気を取り直したギーシュがぼくに向かって嘆願した。
「コナミ、お願い。このことは誰にも言わないで」
ギーシュの口から、清涼で澄み渡る様な声が出て来たことに、ぼくはたじろいだ。紛れも無く、少女のそれであったのだ。
「ギーシュ、きみ、ひょっとして…」
ギーシュは頷く。
「そ、女よ。普段は男装してるの。だから、このことは誰も知らないわ。と言うか、ばれたらまずいのよ。だから、誰にも言わないで、いいわね?」
「なんで、そんな真似を…?」
彼女の顔があからさまに暗くなった。
「グラモン家の掟よ。それ以上は言えない」
「掟?なんだ、それ?男装を強制するのが掟なのか?」
「馬鹿げた話だと思うでしょ。でも、仕方ないの。私は何があっても男に成り切らなくちゃいけないのよ」
ギーシュは俯いた。理不尽な掟に従うのが不本意なのは明らかといった様子である。
「ギーシュ。ぼくは何も見てないし、何も知らない。これでいいんだね?」
「……協力してくれるの?」
「人が困るような真似を進んでやる人間じゃないからね」
ギーシュがぼくの右手を両手で強く握った。彼女の指は細く繊細で、改めてギーシュが女であることを実感させられた。

「ありがとう。恩にきるわ」
「そういや、今日はなにしにここまで?」
「秘薬を買いに来たのよ」
「秘薬?」
彼女が露骨にため息をついたので、ぼくは嫌な予感がした。
「聞いたわよ、惚れ薬の件、洗いざらいね。惚れ薬の解毒剤を錬成するには、秘薬が必要なの」
目眩を越して激しい頭痛に襲われた。
「あいつ、自分から話したの?」
「私が問い質したのよ。モンモランシーが勧めるワインを飲んでから、どうも自分の様子が変だと思ってね」
「モンモランシーは効果がなかったって言ってたけど…」
「当然でしょ。彼女と私は同性。惚れ薬は異性にしか効果ないもの」
「はぁ、つまり、好きな男ができたわけだ」
ぼくが呑気な声で言うと、彼女が突き刺すような視線で睨んできた。
「なにを人事の様に。あんた、当事者でしょ」
おっしゃる通りだ。
「ごめん。なんでも協力するから、許して」
ギーシュは首を傾けて、またもや、大きなため息をついた。


「だったら、私が解毒剤を服用するまで、私に近寄らないで。あなたが目の前にいると、胸の高鳴りがひどいの」
ぼくは唾を飲んだ。
「……つまり、惚れ薬の対象がぼくだっわけ?」
「そうよ。決闘をやった日の夜、やり過ぎたかなと思って、保健室までコナミを見舞いに行ったのよ。あなた、気持ち良さそうに寝てたけどね。
そしたら、急に変な気持ちになったってわけよ。明らかにおかしいと思った。コナミなんて、何の取り柄もないただの平民じゃない。最近、モンモランシーの様子が変だったし、これはワインの中に何かを盛られたなって確信した。だから、彼女を問い詰めたのよ」
モンモランシーの言った通り、ギーシュは優れた勘の持ち主だった様だ。
そんな彼女が右指でこめかみをぐりぐりやっていた。
「掟には従う。その覚悟はあるわ。だけど、好きな人くらいは自分で選ばせてほしいわよ」
痛烈な皮肉である。だけど、反論はできない。
「それにしても、あなたこそ、なんで城下町に?」
モンモランシーの存在に気付いたぼくは慌ててギーシュに言った。
「いや、それよりも、モンモランシーも近くにいるんだ。早くこの町から離れた方がいい」
ギーシュの目がはっと開かれる。
「わかった。それと、このことは絶対に内緒ね」
ぼくに念を押すと、ギーシュは短くフライの魔法を詠唱した。飛翔を始めた彼女の体がみるみる小さくなっていく。
風にはためく彼女の姿に見とれていた自分に気付いたのは、そのすぐ後のことだった。

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