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ルイズと無重力巫女さん-26



平日ならば王宮で仕事をしている貴族や上流階級の商人をよく見かけるトリステインの王宮はいつもと違っていた。
王宮の門の前には当直の魔法衛士隊の隊員達が幻獣に跨り闊歩しており、いつもはこれ程厳重な警備ではない。
数日前からトリスタニアに住む人々の間ではこれは戦争の前兆かも知れないと囁き合っていた。
その話は三日前に隣国であるアルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』の存在もあって、現実味を帯びている。
王宮の上空を幻獣、船を問わず飛行禁止命令が出されたり、検問のチェックも激しくなったりすれば尚更である。
トリステイン軍のこの様な異常な行動に市民は恐怖し、いずれ来る戦火に今から怯えていた。

そんな状況であったから、王宮の上に立派な竜籠が現れたとき、警備の魔法衛士隊の隊員達は色めきたった。

三隊ある魔法衛士隊の内一隊であるマンティコア隊の隊長、ド・ゼッサールは部下を引き連れ王宮上空へと飛び上がった。
「全く、私の隊が警備をしてる時に限って厄介事が降ってくるな…」
苦労性の隊長は部下を率いつつ竜籠の方へ向かいながらふと愚痴を漏らした。
出来るならば何も起こらないでいて欲しかった。そうすればすぐに交代の時間がやってきて熱い紅茶とビスケットが食べられる。
まぁ過ぎた事と仕事にこれ以上愚痴を言っても仕方ない。と心の中で呟き、竜籠の方へ視線を移す。
立派な風竜に四隅を持ち上げられた巨大な籠の側面には見知った国旗が貼り付けられており、ゼッサールは目を丸くした。
縦長の赤地に3匹の竜が並んで横たわっているその意匠は、間違いなくアルビオン王国の国旗であった。
「アルビオン王国…だと?そんな馬鹿な」
ゼッサールのみならずその周りにいる隊員達も隊長と同じ事を思っていた。
滅び去った王家の印をつけた竜籠が堂々と空を飛ぶなど、あってはならない事だ。
だが、もしかするとうまく逃げ延びた王族達がトリステインへ亡命しに来たのかも知れない。
そう考えると目の前にある竜籠にも説明がつく。とりあえずゼッサールは竜籠の方へ近寄ろうとした、
しかし、ゼッサールが口を開く前に竜籠が急に高度を下げ、王宮の中庭へ降りようとした。
突然のことにマンティコア隊と中庭にいた衛視達が慌てふためき、一斉に槍や杖を竜籠に向ける。
籠を持ち上げていた風竜は武器を向けられているにもかかわらず平然と中庭の芝生に降り立った。
「ジャスティン、おまえはあの竜をなだめてくれ。俺がドアを開ける」
「了解しました」
マンティコア隊も地上に降り立ち、ゼッサールの指示でジャスティンと呼ばれた一人の隊員がマンティコアから降り、風竜にとりついた。
その間にゼッサールはいつでも呪文が唱えられるよう杖を構えつつ、籠のドアを思いっきり開けた。

そして、ゼッサールは籠の中にいた者達が自分の想像とは180℃違っていたことに、目を丸くした。
てっきりアルビオン王国の王族やその関係者(正妻や側室)が乗っていると思っていたばかりにその分反動が大きかった。
立派な風竜が持ち上げていた籠の中にいたのは、なんとうら若き美少女であった。それも二人。
「ふぁ…何よ、もう着いたの…?」
ゼッサールから見て左側のソファに寝転がっていた桃色がかったブロンドの少女が目を擦りつつそう呟いた。

そして右側のソファには珍妙な紅白の服(ゼッサールの個人的な感想)を着た黒色がかったロングヘアーの少女がその言葉に応えた。
「まぁ、降りたんだから着いたんだと思うけど…アンタ誰?」
黒髪の少女はそう言って、ドアを開けたゼッサールを指さした。
一方、指さされたゼッサールはそれに眉を顰めることも出来ず、呆然としながらも呟いた。

「まさかこんなに年の浅い少女二人が側室…なんてことは無いよな?」



三日前 ニューカッスル城

「レイム…」
既に城の6割が炎に飲み込まれている中、ルイズは自分を助けてくれた霊夢の名を呟いた。
脇腹に出来た切り傷と右胸に致命的なダメージがあるのにも係わらずルイズの危機に飛んできたのである。
一体どうして?とルイズは不思議に思っていると、ふと左手の甲が不自然に光輝いている事に気がついた。
(光…?左手が、光り輝いているわ。でも…何処かで見覚えのあるような)
左手だけが光り輝いている不思議な現象にルイズは既視感というものを感じ取る。
以前何処か…大きなイベントで見たような気がする光景。
しかし、思い出そうにも半ばパニック状態のルイズの頭の中では思い出すことが困難であった。
そんな時…ふっと光が消え、それと同時に糸の切れた人形のように霊夢の体が仰向けに倒れた。
アッと思いルイズはすぐさま霊夢の傍へ近寄り、そして驚きの余り目を見開いた。
自分の記憶通りならば、今倒れている霊夢は傷を負っている筈である。
脇腹に浅い切り傷、そして右胸にはワルドにつけられた致命的な刺し傷。
今ルイズの目に何も異常がなければ、その二つの傷は『見あたらなかった』
それどころか自分と同じくらいに汚れていた服も綺麗になっており、脇腹に巻いていたリボンもちゃんと頭に戻っていた。
何故?と思いつつルイズは目を瞑って倒れている霊夢に声をかけた。
「あんた、傷は……傷はどうしたのよ傷は!?っていうか大丈夫!?」
「ふぁ…?」
その一声で霊夢は目を開け、眠たそうな顔をルイズの方へ向けた。
顔色の方も健康と言っても差し支えなく、何処も異常はない。
まさかの事に、ルイズは呆然とするよりも先に怒りが沸々とわき始めてきていた。
一方の霊夢はというと、そんなルイズの態度を知らず、ボロボロになった彼女の姿を見て暢気そうに言った。

「どうしたのよルイズ…?雷にでも当たったかのような格好ねぇ」

何気無い一言により、ルイズの中の何かが再びプツンと切れた。
「こんの…バカッ!!!」
「イタァッ!!」
その瞬間、今のルイズに出せる力の約三分の二で霊夢の頭を叩いた。
寝ぼけている状態の霊夢に当然避けれる筈もなく、思いっきりルイズの攻撃を喰らってしまった。
ルイズにとって霊夢は使い魔(召喚しただけだが)であり命の恩人であるが、今の今までいつも召喚の儀式以降に堪っていくストレスの原因の大半も霊夢であった。
だから彼女が自分の目の前から去る前に一度だけその怒りをぶつけてやろと思ってはいたがいつもいつもその怒りを避けられていた。
そして今こんな危機的状況の中でやっと怒りをぶつけられた事にルイズは叩いた後に喜んで良いのか迷ってしまった。
一方の霊夢はと言うと、頭をさすりながら敵意むき出しの目でルイズを睨み付けながら口を開いた。
「何すんのよ。怪我人を虐めるのがアンタの趣味なの?」
霊夢のその冷たい一言にしかし、ルイズはムッとなり咄嗟に返事をした。
「アンタ自分の体見てみなさいよ。怪我なんて何処にもないじゃないの?」
「は?アンタ何言って…――――あ」
ルイズの言葉に霊夢はキョトンとした顔になり、自分の体を見て目を丸くした。
そんな霊夢を見てルイズはもう一言何か言ってやろうかと思ったが、その前に霊夢が口を開いた。
「やっぱりただの夢じゃなかったか…」
「夢じゃない?」
霊夢の口から出たその言葉に、ルイズは眉をひそめた。
一体どういう意味なの、と聞こうとしたとき。後ろから男のうめき声が聞こえてきた。
振り返ってみると、そこにはウェールズ皇子の死体があった。
ただの骸と成り果ててしまったアルビオンの若き皇太子を見て、霊夢が目を細める。
「…もしかして、ワルドに殺されたの?」
霊夢の言葉にルイズは何も言わず、ただコクリと頷いた。その瞬間―

「う…ウゥ…」

てっきり死んでいたと思っていたウェールズの指がピクリと動いた。
突然のことにルイズは驚愕し、霊夢は目を丸くした。
左胸を貫かれて死んだのにも拘わらず、突然口からうめき声を出して指をいきなり動かせば誰でも驚く。
霊夢にとっては死者が突然動き出すということは少し珍しいくらいである。
だからこそルイズのように驚かず目を丸くしただけに留まったのだ。
それからスクッと立ち上がると、指をピクピクと動かしているウェールズ皇子の元へと近づいた。
「ちょ…ちょっとレイム待ちなさい!」
ルイズの制止も振り切り、霊夢はウェールズ皇子の傍に近寄り、声をかけた
「ちょっと、まだ生きてる?」
霊夢の口から出た、その言葉に数秒遅れて返事が帰ってきた。
「う…君…大丈夫だったのか…」
「まぁね、ちょっと夢の中で知り合いに助けられたわ。知り合いって呼ぶのは少し嫌だけど」
死んでいたと思われたウェールズが顔を上げ、霊夢の方を見つめてそう言った。
生きていた皇太子を見て、すぐさまルイズはウェールズの傍へ近寄り、声をかけた。
「ウェールズ皇子、大丈夫ですか!?」
「ミス・ヴァリエール……ワルドの奴め…どうやらわざと心臓を狙わなかったようだ…うぐ!」
ウェールズはルイズに微笑みつつ冗談に交じりそう言ったが、すぐに痛みで顔を歪めた。
左胸に出来た小さな傷からはドクドクと少しずつ血を流れ続けている。
心臓に直撃しなかった分、地獄のような痛みと出血がウェールズに襲いかかっているのだ。
応急処置もせずに、このままにしておけばすぐにあの世へ逝ってしまうだろう。
だがそれでも、ウェールズは痛みを堪えてルイズとその横にいる霊夢に話しかけた。

「もうこの城はお終いだ…地下の港にある竜籠で…脱出を…」
「喋らないでくださいウェールズ皇子!今すぐ応急処置を…!」
なんとかしようとルイズは思ったが治療道具は無く、それどころか応急処置の仕方も分からない。
一応擦り傷や軽い怪我の治療法は知っているのだが、こんな命に関わる大怪我の治し方は流石に知らなかった。
咄嗟に横にいた霊夢の方へ顔を向けたが、彼女の方ももうお手上げと言いたそうな顔である。
そんな顔を見てルイズは目を細めたが、霊夢は文句交じりにこう言った。
「もう諦めなさいな。どうせ応急処置をしても血の出すぎで死ぬのは時間の問題よ」
確かに霊夢の言うとおりである。ウェールズの体から流れ出た血の量は半端ではない。
応急処置を施してもすぐに死んでしまう。要は遅すぎたという事である。
一方のルイズは目の前にある人の死をあっけなく許すような霊夢の言葉に従うことが出来なかった。
「そんな事言わないでよ!―――――姫殿下の…姫様の思い人をむざむざ見殺しにしたりなんか私には…」
小粒の涙を流ししつつも霊夢に反論するルイズを、ウェールズが制止した。
「もういい…ミス・ヴァリエール。…彼女の、言うとおりだ…僕はもう助からないさ」
ウェールズはそう言うと、ポケットの中から一つの指輪を取り出した。『風のルビー』だ。
「ミス・ヴァリエール。僕からアンリエッタへのプレゼントと言って…渡してくれ」
そう言いながらウェールズはルイズに『風のルビー』を手渡した。
アルビオン王家の秘宝を手渡されたルイズは悲痛な面持ちになり、悟った。
――――――――もう、これ以上の説得は無駄なんだと。
「ウェールズ皇子…。――――わかりました。必ず手紙と共にお渡しします」
指輪を手渡されたルイズはコクリと頷くと『風のルビー』を胸ポケットに入れた。
小さくもゴツゴツとした感覚がルイズの胸を刺激し、その存在をアピールしている。
ようやくわかってくれた目の前の少女の顔を見てウェールズは微笑んだ。ニッコリと…
「頼むミス・ヴァリエール…。地下にある港の右端に風竜と竜籠がある…あの竜ならトリステインへ真っ直ぐ行くだろう。それに乗って逃げなさい」
ウェールズの言葉を聞き、ルイズはしっかりと、力強く頷いた。

「そして…アンリエッタにはこう言ってくれ。『このウェールズ、例え死のうとも常に君の傍にいる』と…」

瞬間―――三人のすぐ近くで爆発が起こり、霊夢が咄嗟にルイズの腰を掴み後ろへ下がった。
次いで、倒れているウェールズの直ぐ傍に榴弾が落ち…

爆発した。



王の寝室というのはどこもかしこも豪華な造りをしている。
そしてその妻である王妃や王女の部屋も平民や低級貴族の居室とは比べたら失礼な程豪華な部屋である。
王宮の水系統メイジに怪我を治療してもらったルイズと霊夢の二人はアンリエッタ王女の部屋に招かれていた。
最初は中庭で衛士隊の者達と揉めてはいたが途中からやってきたアンリエッタのお陰でこの部屋へ来ることが出来た。
部屋に入った後、アンリエッタはルイズから手紙と――『風のルビー』を手渡され目を丸くした。
一体どうして…とアンリエッタが思ったとき、ルイズは任務の最中に起こった事の次第を説明した。
説明を聞き終えたアンリエッタは、顔を両手で隠し嘆いていた。
「そ…んな…ウェールズ…様。私が殺した…ようなものだわ」
泣きつつもそのような事を言うアンリエッタの気持ちは、ルイズにもある程度分かった。
愛する者を失い、更には自分が選んだ護衛が愛する者を殺したのだ。嘆くのは無理もない。
一方の霊夢は、まるで目の前で嘆いている王女の事など関係ない、と言いたいかのように紅茶を飲んでいた。
召喚の儀式以来の付き合いであるルイズは霊夢の態度に怒る事は無かった。目は細めたが。

アンリエッタはそれから数分くらい泣いていたがやがて手を下ろし、泣きはらした顔でルイズと霊夢の方へ顔を向けた。
「とりあえずは、ルイズ、そしてハクレイレイム…でしたね。無事に戻ってきてくれて何よりです」
その言葉にルイズは深く頭を下げ、霊夢はカラになったティーカップをテーブルの上に置き、軽く手を振った。
王女の言葉に手を振るだけという行為に流石のルイズもムッとし、立ち上がろうとしたがそれをアンリエッタが制止した。
「構いませんよミス・ヴァリエール。彼女のお陰で今こうして貴方がここにいるのですから」
ソレを言われルイズは固まってしまう。確かに霊夢がいてくれたから、こうして無事でいられるのだ。
(でもどうしてレイムの奴はアルビオンにいたのかしら…まぁそれも後で聞いてみようっと)
今回の無礼は姫殿下に免じて無かった事にしようとルイズが座り直したとき、改めてアンリエッタがこう言った。

「それに…彼女がアルビオンに行く原因を作ったのは私ですからね。多少の事は許さないと」

「あぁ、そうですか――――――――――って、えぇ…!?」
アンリエッタの口から出た一言に、ルイズは勢い余って立ち上がってしまった。



ポツポツ明かりが灯りつつあるトリスタニアの街を、ローブを羽織った一人の少女が駆け回っていた。
背丈から見て大体9歳か10歳ぐらいである。この時間帯だと子供の一人歩きは危ないのだが何故か親らしき同伴者はいない。
少女の横を通った街の住人はと危ないなー思いつつ、自宅や酒場へと進む足を止めはしなかった。
やがて少女は、トリスタニアでも比較的治安が悪いチクトンネ街へと入っていた。
トリスタニアの大通りにあるブルドンネ街とは違い、ここには裏カジノや表には出れない武器屋などが点在している。
当然そこに住む人間も普通ではなく、派手な格好をした女や酔っぱらいなどが通りをうろついている。
しかしそれがどうしたと言わんばかりに少女は悪戯気分で声をかけてくる人々を無視し、とある酒場の前で足を止めた。
頭上にある看板を見上げ、今自分『達』が宿泊している客室がある場所だと確認した後に、羽扉を開けて中へと入った。

「いらっしゃいませ~~~~!!」

入った途端、革の胴着を身に付けた背の高い男が出迎えにきた。
大声であった為思わず後ろに倒れそうになったがなんとかこらえる事が出来た。
「…って、あら!おかえりなさい!こんな遅くまでどこ行ってたのよぉ~♪」
男はその体には似合わない女言葉でそう言うと身をくねらせた。
その動作に流石に少女は引いた。多分『この世界』に来て自分と『主人』にとって最初の驚異は彼、スカロンであろう。
「丁度今さっきあなたの保護者さんが部屋へ帰ってきたところよ。心配してると思うから早く行ってあげなさい」
スカロンはそう言うと少女の背中を軽く叩いた。軽く咳き込みながらも少女は二階へと続く階段を上っていった。
ここ『魅惑の妖精亭』にある二階の客室は酔いつぶれて帰れない客や適当な宿が取れなかった観光客…そして諸事情で家を持たない従業員たちの為に作られている。
少女とその『主人』も『この世界』へ来た時期が悪かったのか、何処も宿にも空いている部屋がなかったのだ。
そんな時にようやく見つけたここは、ちょっとオカマっぽいスカロンを除けば比較的良い場所である。
やがて少女は一番右端にある部屋の前へたどり着くと、ドアを開けて部屋の中へと入った。
部屋の造りは近辺の宿屋と比べてみれば結構綺麗な方である。
窓際にベッドが二つ置かれており、それに挟まるようにして設置している小さな机の上にランタンが置かれている。
右端には安いクローゼットとタンスが置かれている。部屋に泊まる客が衣類等を入れるのに使っている。
そして、真ん中のテーブルに肘をついて窓の外を眺めていた金髪の女性が入ってきた少女の方へ顔を向けた。
国を傾ける程の美女。とは正に彼女の事を言うのであろう。それ程の美貌の持ち主であった。
少女はローブを上げて、嬉しそうな表情を目の前にいる女性に向ける。
ローブの中に隠れていた栗色の髪が静かに揺れた。
金髪の女性はというとそんな少女に優しい笑顔を見せた。

「ただいま戻ってきました。藍様!」

少女が大きな声でそう言った瞬間、ピョコンと栗色の髪の間から『猫耳』が飛び出した。
決してそれは作り物などではなく。少女、橙の持つ『耳』である。正真正銘の。



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