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萌え萌えゼロ大戦(略)-14


「ルイズったら、いったい何をしに街へ出たのかしら?っていうか、あたしたちにも
声かけてくれればいいのに友達甲斐のないったら!」
 実家が不倶戴天の仇敵同士なのを棚上げしたキュルケがシルフィードの背中から
目を皿のようにしてルイズとふがくの姿を捜す。あれだけ目立つ風体のふがくが
いるのだからとたかをくくってはいたものの……いざ捜すとなると簡単には
見つからなかった。

「――いた」
「え?どこ?」
「中央広場」
 自身の使い魔、風竜シルフィードとともにふがくの姿を捜していたタバサが
先にふがくの姿を見つける。その視線の先には、ルイズとふがくが並んで歩いている
姿が映る。
「……どこに行くつもりかしらね?それにふがくが手に持っているのは……剣かしら?」
「あっちには確かヴァリエール家御用達の服屋があったはず」
「ということは、ふがくの剣を買った後、服をあつらえに来た、ということね。
 ……おもしろいことになりそうね」
 そう言ってキュルケがやや意地悪な笑みを浮かべる。タバサはシルフィードに
命じてルイズたちを少しだけ先回りできる位置に自分たちを降ろすように指示する。
そうして、いかにも偶然出会ったように、二人はルイズたちの前に姿を見せた。

「はぁい。偶然ねこんなところで会うなんて」
「…………」
「……いったい何であんたたちがここにいるのよ」
 目の前のキュルケとタバサの姿にルイズは露骨にいやな顔をする……が、
キュルケがそれを柳に風と受け流した。
「だってせっかくの虚無の曜日だし、たまには羽を伸ばさなくちゃ」
「……嘘つき」
 キュルケのあからさまな嘘にタバサがぼそりとツッコミを入れる。その様子に
ルイズの怒りは一気に高まる。
「……あんたたちにつきあってる暇なんてないわ。ふがく、行くわよ!」
「私は別にかまわないけど……どうせ服見に行くだけでしょ?」
「わたしがかまうの!……って、何か聞こえない?」
 怒りの表情もどこへやら。唐突なことを言い出すルイズに、ふがくはさらっと答える。
「そう言えばさっきからサイレンのような音が聞こえるわね。こっちに向かって」
「サイレンって何?ていうか、そういうことは早く言いなさいよ!」

 ――ゥゥウゥワァァァーーーーーーーン……

 ルイズがふがくを責めるあたりから急に大きくなるそれはまさしくサイレンの音。
しかも空から。ルイズだけでなくキュルケや街の人々もその聞き覚えのないラッパの
ような甲高い音に怯え慌て始める。さらに大きくなるサイレン。その様子に広場から
人々が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。そして――

「いや~~~~ん。萌え萌えのかわいい女の子がこんなところにぃ~~~!
……って、あら?」
 上空からけたたましいサイレンとともにダイブしてくる黒い影。その目標は
――何故かルイズとタバサ。しかし、その直前でその影を、ふがくが手に入れた
ばかりのデルフリンガーを持ち前の膂力でとっさに鞘を割り砕いてまで迅速に
抜き放って押し留めた。
「ひえー。おっでれーたー。こんな無茶な抜き方されたのは生まれて初めてだ」
「……アンタ、ドイツの鋼の乙女ね。いったいどういうつもり?」
 驚くデルフを無視し、相手に剣を突きつけたままふがくが詰問する。

 相手は手に重機関銃を持ち黒を基調としたナチスドイツの軍服を身にまとった
赤毛の女。黒い制帽にはナチスの国章鍵十字をつかむ鷲の徽章をつけ、背中には
背面をカーキグリーン系の迷彩に塗り内面を翼端部を黄色く塗った、後付けの
機関砲をつけられドイツの主権紋章鉄十字が描かれた青緑の翼を背負い、左肘に
スピナー付きのプロペラを装着して二の腕を通した肩まで覆う迷彩模様の装甲と
いう典型的な航空機型鋼の乙女。また太ももからカーキグリーンの迷彩が施された
長方形状の尾翼を生やし、脚部もふがくと似たような感じで車輪になっており、
その車輪にはカーキグリーンのスパッツがついている。ふがくはその航空機型
鋼の乙女をどこかで見たような気がするのだが、思い出せなかった。
「あらん。その格好、日本の鋼の乙女ね。見たことない娘だけど、可愛いわぁ。
お姉さん、ぞくぞくしちゃう」
「私の質問に答えなさいよ!それに、何で私以外の鋼の乙女がこんなところにいるのよ!?」
「あら?人の名前を聞くときにはまず自分から名乗りなさいって、教わらなかったのかしら?
子猫ちゃん」
 目の前の鋼の乙女の態度は変わらない――いや、その気になれば表情も変えずに
引き金を引いて辺りを血の海にできるだろう、そんな雰囲気すら漂わせている。
もはや彼女たち二人とルイズたちしかいない中央広場に、さらなる緊張が走る。
真っ正面で相手しているふがく以外、誰も声すら発することはできなかった。
「こ、子猫……人をバカにするのもいい加減にしてよね!
 私は大日本帝国の鋼の乙女、ふがくよ!……い、今は訳あってこんなところで
使い魔なんてやってるけど……」
「……相棒……気持ちは分かるけどな」
 ふがくの最後の言葉は無理に濁したのが丸わかり。しかも視線をそらして言う
その言葉にデルフまでが突っ込む始末。しかし、目の前の鋼の乙女はそれを聞いて
楽しそうに笑った。
「うふふ。ふがくちゃんか、見た目通り可愛い名前ね。でも、その錆びた変な剣は
ちょっといただけないわねぇ。
 私はドイツの鋼の乙女、急降下爆撃機Ju87スツーカのルーデル。よろしくね」
「か、可愛い……って、ちょっと何するのよ?やめっ……うひゃああっ!?」
 そう言ってルーデルはふがくの手を握る。その雰囲気に身の危険を感じたふがくが
とっさに手を引っ込めようとしたが、間に合わなかった。

「うわぁ。ふがくが手玉に取られてる……」
 その様子を遠巻きに見るキュルケが半ば呆れた様子になっていた。両手両足で
数え切れなくなったあたりから数を数えるのをやめたほどの経験を積んだ彼女なら
解る――相手はホンモノだ、と。しかし……
「な、なんか、ふがくの知り合い……かしら?」
「……でも、さっきはわたしたちをめがけて飛んできていたような……」
 ダメだ、とキュルケは心の中で溜息をつく。ルイズもタバサもあのルーデルとか
いう相手がどんな質(たち)なのか気づいていない。というか、間違いなくタチだろう、
アレ。でも、まぁ、お持ち帰りされるところをすんでの所でふがくが止めてくれたから
良かったわ、と一人納得することにした……


「……で、どうしてこうなるわけ?」


 ――あれから数十分。ようやくルーデルから解放されたふがくは、ルイズの
実家ヴァリエール家御用達の服屋で不機嫌な様子を隠そうともしない。先ほど
鞘を割られたデルフも今は即席の布巻き状態でふがくの手に握られているが、
場を読んでいるのか沈黙を保っていた。

 ちなみに、服屋の女主人が真っ先にふがくに対して興味を引かれたのはやはり
その服。ハルケギニアから見て東方風なデザインもさることながら、ハルケギニアの
砲弾の常識の埒外にある46サンチ対空砲弾の直撃ですら服が破れる程度で済んで
しまう(多少衝撃は伝わるが)というとんでもない強度は、やもすれば服どころか
鎧の概念すら変えてしまいかねない代物。しかし、肝心の生地すらトリステイン
王国どころかハルケギニアのどの国の手にも負えそうにないことが分かると、
がっくりと肩を落としてしまっていた。

「何って、あんたの服を選んでるんでしょ?」
 ふがくのその様子を完全無視してしれっと答えるルイズ。最初にドレスを作るとか
言ってふがくをお針子さんたちに取り囲ませただけでは飽きたらず、ふがくの
目の前にはプレタポルテのエプロンドレスが突きつけられていた。
 どういう場所で着られることを想定しているのか、そのパープルを基調とした
スカートの短いドレスは、今のふがくの格好とは正反対のもの。ふがくはあからさまに
拒絶の意を示すが、それが逆にルイズの隠れた嗜虐心を刺激していた。
「あんたの背中の翼はとりあえず外してから着られるけど、足が問題よね。
ストッキングもニーソックスも履けないし」
 ルイズがわざとらしく溜息をつく。絶対わざとだ、とふがくは思ったが、
口には出さない。表情には出ているが。
「え?ふがくの羽、アレ外せるの?」
「あら、私も外せるわよ?外せないと服が着られないでしょ?
 でも、いいわぁ。可憐な美少女の生着替えが見られるな・ん・て」
「もう見せないわよ!まったく……何でアンタまでここにいるのよ……」
 ルイズもふがくも話していなかったため知らなかったことに驚くキュルケに
返したのは、何故かここまでついて来たルーデル。そのせいか、ふがくが余計に
疲れているように見える。
「あらん。いいじゃない。こんな世界の果てでせっかく同盟国の鋼の乙女に
出会えたんだし、もう少しお話ししたいわぁ」
「私は、別に話したいことなんか……」
 ふがくが拒絶を示すように顔を背ける。だが……
「あら?残念。でもぉ……」
 そんなふがくを見るルーデルは妖艶な笑みを浮かべた。
「そ・ん・な・こ・と・よ・り・今はぁ……みんなでふがくちゃんのお服を
選んじゃいましょう!」
 そう言ってルーデルがふがくの目の前に突きつけたものを見て、いつもの強気も
どこへやら、ふがくは冷や汗すら垂らして声を荒げる。
「何それ!ていうか、何でお堅い貴族の御用達の店にそんな怪しい服が何着もあるのよ!?」
 ルーデルがふがくに突き出したもの――それはルイズが手にしているものよりも
さらにスカートも短く背中の開きも大きいセクシーなエプロンドレス。
そこに端で見ていたキュルケまでおもしろがって参加してくる。
「さぁ?ヴァリエール家のヒミツ、ってことじゃない?おもしろいからあたしも
手伝うわね」
「おもしろくないし!手伝わなくてもいいっ!」
「……悪趣味」
 その様子を見たタバサは、そのとばっちりが自分に回ってこないよう、極力
静かに本を読み始めた――


 ――それからさらに時間は過ぎ……すっかり昼下がりになった頃合いに、
ルイズ、ふがくを筆頭とする5人は落ち着いたカフェでテーブルを囲んでいた。
なお、結局ルイズはふがくに自分が選んだあのエプロンドレスと、あろうことか
ルーデルの選んだエプロンドレスまでお買い上げしてしまい、ふがくが疲れ切った
顔で渋面を作ったことはまた別の話である……


 そんな場所でつつがなく自己紹介を終えてルーデルが切り出した話題は、
ルイズたちにとっても興味深く、ふがくにとっては驚愕としか言えないことだった。

「……あかぎの……ペンフレンド?」
 ふがくの言葉にルーデルはにっこりと微笑む。
「そう。毎週届くあかぎちゃんからのお手紙、お姉さんいつも楽しみにしていたの。
 戦争が終わったら二人で可愛い女の子について夜通し語り合う約束もしてたしぃ、
ああ、今度はぜっったいイタ公抜きでさっさと連合軍なんて片付けてやりたいわぁ♪」
(な、何?この身の危険を感じるような感覚は……)
(……逃げちゃダメ、逃げちゃダメ、逃げちゃダメ……)
 さりげなく怖いことを言いつつ自分の言葉で熱が入り身をよじらせるルーデル。
その様子にルイズは顔を引きつらせ、タバサは悪寒を感じて逃げ出したいが
逃げ出せないという状況に身震いし――その言葉にやっぱりか、と自分の勘の
正しさを再確認するキュルケという微妙な空気が生まれる。
「そ、そう言えばあかぎって『殿方も好きだけど可愛い女の子はもっと好きなのー』
って言って憚らなかったっけ……」
 そしてふがくも、今更ながらに自分の長姉の憚るべき事実(本人は全然憚らなかったが)を
思い出していた。
「……そ、それで、どうしてルーデルはここに?私みたいに誰かに召喚されたとか?」
 ふがくが話題を変えるべく本題を口にする。それを聞いたルーデルはそれまでの
痴態もどこへやら、真顔で即答した。
「何それ?」
「え?だって、ここにいるってことは……そうじゃないの?」
「あらやだ。私はお空の散歩をしていたら、目の前に変な魔法陣が現れて
ドーバー海峡がいきなり砂漠になっちゃった、ってだけよぉ。
 うっかり地中海を飛び越えてサハラ砂漠に入っちゃった?とも思ったら、
別の意味のサハラ砂漠でお姉さんもうびっくりよぉ」
 そう言ってルーデルはひらひらと手を振る。ドーバー海峡からサハラ砂漠へ
行くには少なくともフランスをまるごと縦断してその上で地中海を抜ける必要が
あるのだが……電撃戦の脅威排除を目的とした急降下爆撃機型鋼の乙女にそれだけの
航続力があるとは思えなく、果たしてそれが冗談なのかどうなのか、ふがくには
判断できなかった。そんなふがくをよそに、ルーデルはさらに暴走する。
「それでね~、とりあえず帰る方法がないかな~って探しながら、こっちの
女の子たちもすごく可愛いからどうしようかな~って思ってるわけなのよぉ。
 レンちゃんやフェイちゃんたちと遊べないのはつまらないしぃ♪でもでもぉ
こっちの娘たちも可愛いしぃ♪」
(ひっ……き、貴族は背中を見せないのよ……そうよ、わたしは貴族なんだから!)
(……に、逃げちゃ……ダメ……だけど……)
 再びくねくねと身をよじらせるルーデル。その顔は紅潮し妖しい雰囲気を放っている。
しかも時折こちらを艶めかしく見つめるその様子にタバサばかりかルイズまで
貴族の誇りがかろうじて椅子にとどまらせているだけの状態になっているが、
ルーデルは気づく気配すらない。その惨状にふがくは深く溜息をつく。
「……はぁ。結局帰る方法は解らないってことね」
「ちょっと待って。ミス・ルーデル、貴女『サハラ』って言ったけど……
もしかしてエルフと一戦交えた、とか?」
 唯一平常心を保っていたキュルケがルーデルの言葉に紛れていた重要な
キーワードに気づく。サハラに召喚されたなら、その召喚主はエルフに違いないと
キュルケは考えた。しかし、目の前のルーデルは誰にも従っているようには見えない。
そうなれば、答えは一つ。その手にしたタバサの身長ほどもある黒光りする銃は
どう見てもふがくのものより強力に見えるし、最初の時のように不気味な音を
立てながら上空からいきなり襲いかかられてはエルフとて無事では済まないだろう。
だが――
「エ、エルフ?そんなのいるの?物語の中じゃなくて?ああん。見てみたいわぁ」
 ――ルーデルはそんなものは知らないらしい。多分ふがくみたいに飛べるから
そのまま召喚主に顔を合わせることもなくハルケギニアへ来てしまったのだろうと、
キュルケは考えるしかなかった……というより、必要以上にルーデルと接点を
持ってしまうことに彼女自身が危機感を抱いていたという方が正しい。それは
真理であると同時に盲点でもあることに気づけた者は、残念ながらここにはいなかった。

「……と。さて、お姉さんはそろそろおいとまさせてもらうわね」
 キュルケの質問に答えてすぐ、目の前のカップの中身を飲み干したルーデルは
あっさりと真顔に戻って立ち上がる。あまりにも唐突な出来事にふがくは
「え?」と返すことしかできない。そんなふがくにルーデルは大人の微笑みを
向ける。
「私は私なりに帰る方法を探してみるわね。見つかったらふがくちゃんにも教えて
あげるから……ここに来れば会えるかしら?」
「え?ここ?」
 話を振られたふがくがルイズを見る。その視線にルイズもようやく正気に戻った。
「……へ?あ、こ、ここじゃダメね。このトリスタニアから馬で2時間ほどの距離にある
トリステイン魔法学院に、わたし、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・
ラ・ヴァリエールの使い魔に用があるって聞いてちょうだい」
 学院ではふがくが准貴族扱いのためそのまま名前を言ってもつないでもらえるのだが、
ルイズはあえてそうしなかった。自分はふがくの主なのだ。知らないところで
話が進んで勝手に帰られたくない、との想いが先に立ったことを責める者はいない。
「そう。馬で2時間ということは、そんなに遠くないわねぇ。ありがとう、
フロイライン・ヴァリエール。ところで、その建物、目印はないのかしら?」
「中央に大きな塔があって、それを囲むように5つの小さな塔が立っているわ。
そんな場所なんてそうそうないからすぐに分かるわよ」
「ありがとう。みんな親切でお姉さんうれしいわぁ。それじゃ、ここはお姉さんのお・ご・り」
 そう言ってルーデルがその豊かな胸を包む制服のポケットから取り出したのは
ハルケギニアの金貨。しかも新金貨ではない。それを見たルイズたちが驚くのを
見て、ルーデルはばつの悪そうな顔をする。
「……あら?もしかして足りなかった?」
「た、足りないどころか多すぎるわ。いったいどこでこれを……」
「ああ、これ?こっちに来てから手持ちのマルクが通じなかったからぁ、
持っていた宝石を換金したの。換金するにも勲章じゃダメみたいだったしねぇ」
 キュルケの問いかけに困った顔をして答えるルーデル。確かにルーデルの制服には
翼を広げた鳥をかたどったような徽章や様々な勲章がぶら下がっている。
特に左胸につけられた、光り輝くダイヤモンドがちりばめられた黄金の柏葉と
交差する剣を象る見事な飾りがつけられた鉄十字の勲章などは自分が買い取りたいほどだ。
ただ、下手すると実家の財産が飛びかねないそれには、さすがのキュルケも諦めざるを
得なかった。おそらく勲章が断られたのも、自分が考えたのと同じ理由だろうと、
キュルケは納得する。
「『マルク』ってのが分からないけど……要するに持っていた貴女の国のお金が
使えなかったから宝石を売った、ってことね……」
 ルイズが溜息を漏らす。いくら貴族向けの店とはいえ5人分のお茶代にエキュー
金貨を出すなんて、いったいどんな国から来たのよ、と――

 結局ルーデルの好意に甘えた4人だったが、ルーデルがウィンクを残して
飛び去った後でも、しばらく彼女の消えた空から目が離せなかった。
「……な、なんか途中すっごい悪寒がしたけど……いい人みたいね」
「…………」

 ルイズとタバサがルーデルを好意的に見ている横で、再びキュルケが頭を抱える。
タバサは自分が守ろう、ルイズは……タバサのためにがんばって、と心に決めながら。
 その3人の様子に目を向けながら、ふがくは自分以外の二人目の鋼の乙女の存在に
想いを巡らせる。30年前のこの世界にやってきた燕は多分帰った。けれど、自分と
同じ時代に召喚されたルーデルは――帰れるのだろうか。そして自分は……
「……らしくないわね」
「どした?相棒?」
「何でもない。こっちのこと」
「……そか。ま、気長に構えるこった。こっちも悪くないぜ。多分、な」
 デルフはそう言うと再び沈黙する。うるさいと聞いていたが、なかなかどうして
核心を突く。錆び付いてはいるけれど存外六千年存在しているっていうのは
嘘じゃないのかもね、とふがくはデルフリンガーの評価を改めることにした。


 ――そうしてふがくたちがルーデルとの邂逅を果たした同時刻、某所――

「……はうぅ。ここはどこでしょう?」
 鬱蒼と茂る森の中、鉄兜をかぶり、右腕に奇妙な武器を持ち、足に茶色を
基本とした迷彩模様の脚甲を身につけ、ふがくに似た衣服を身につけた――全然
違う柄の布であちこちつぎあてられた様はみすぼらしいものだが――一人の少女が
途方に暮れていた。いや、ぺたんと下草の生える地面にへたり込んでいた。
「戦争が終わって、日本を復興するお手伝いをしていたはずなのに……変な魔法陣の
前でこけたりするから……はうぅぅ」
 涙目で指をつんつんさせる少女。そうやっていると頭にかぶせた鉄兜が
ずり落ちてくる。それがいっそう少女の気持ちを惨めにした。
「私、鳥取で作業していた覚えはないんですけど……落っこちた先が砂漠で、
変な人たちに追いかけられて……」
 少女はゆっくりと自分の身に降りかかったことを整理する。急に砂漠に現れて、
変な人たちに追いかけられて、人目につかないようにさまよった先で奇妙な桟橋から
船で密航して……気がつくとどこかの森の中。右も左も分からない状況で少女は
途方に暮れる。
「私、どうしてこんなところにいるんだろう。はうぅ。日本に帰りたいですぅ」
 森の中に少女の悲痛な叫びがこだまする。その声に応えるものはいなかった……
そう、今は。


 ――そして――

「……あれがフガクちゃんか……うふふ。まさかこんなところで出会えるなんて、ねぇ」
 誰もいない空でルーデルは独り笑う。その笑みの意味を知るものもまた、
そこにはいなかった――







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