あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ナイトメイジ-33


Gホーネットを退けたルイズ達は通路のさらに奥へと足を進める。
途中には落とし穴を主力としたいくつものトラップ
──底に剣山がある落とし穴とか、底で火が燃えている落とし穴とか、底でGスネークが口を開けて待ち構えている落とし穴とか──
が仕掛けられていたものの、それらは全てギーシュの尽力により探知され、ルイズ達は怪我を負うこともなかった。
彼がどんなすばらしい貢献を果たしたかはここでは割愛させていただく。とにかく大変活躍していたのは確かだ。
この通路も見かけ自体はなんの変わりもない普通の通路だった。
だからルイズ達はそれまでと同じように進んでいたし、ギーシュの注意も足下にばかり向いていた。もっとも、その注意が役に立っていたかどうかは別だが。
何がきっかけだったのか。
たぶん、この一角に踏み込んだのがきっかけだったのだろう。
突然、前の通路が轟音とともに落ちてきた壁で塞がれた。
音の余韻は後ろからも響いていた。
嫌な予想はよく当たる。既に後ろの通路も壁で閉じられていた。
その途端、通路の壁に、床に、天井に無数の光が走る。
光のあるもは円を描き、あるものは直線に走り、またあるものは無数の文字を書き出し、やがて通路を埋め尽くす魔方陣となる。
そんな中でルイズが左右からキュルケの首に走る緑の風を見つけたのは全くの偶然だった。
偶然ではあったが、ルイズにはそれが危険なものであることを予感した。
ただ、それをキュルケに伝える術をルイズは持たなかった。
緑の風は声よりも速く走り、キュルケの腕を引っ張ろうと差し出した手も間に合いはしない。
そして緑の風は交差し、その後で鮮やかに赤いが吹き上げられた。
「フレイム!」
跳ねた自分の使い魔に突き飛ばされたキュルケが床にへたり込み、その足下にキュルケの代わりに緑の風の交差に晒されたフレイムが半ばまで切られた体を床に落とした。
再び吹いた緑の風がルイズ達の間を駆け抜け、戦闘を歩いていたギーシュの腋をも吹き抜け、その向こうの床に転がる。
ただし、それは緑の風が自信の力で吹いたのではない。
風と一塊になって飛んだ誰かに突き飛ばされていたのだ。


立ち上がった彼に緑の風が吹きつける。
無論、風のように見えたのであって、風そのものではない。
あまりにも早い振りのために視認すら難しいそれは、二丁の鎌だ。
鎌はあるときは横薙ぎに、あるときは頭上より振り下ろされ、またあるときには跳ね返るように戻り無謀にも戦いを挑んだ獲物の命を奪おうとする。
その動きはまさに達人。否、人ならざる技という他はない。
ではあるが鎌を振るう敵の姿を見れば、なるほどこの敵ならば人外の技を操るのも当然という気にもなる。
眼前に立ちはだかるのは、針のように細い体ながら、見上げるほどの岩山よりもなお圧倒的な威圧感を持つ壁。
まるで無数の瞳で見つめるような冷たい視線を持つ敵。
それこそG(ジャイアント)マンティスである。


「フレイムをこんなふうに!やってくれたわね」
キュルケの杖が弧を描き、紅を引いた唇からルーンが紡がれる。
彼女の二つ名は「微熱」ではあるが一度火がつけば心は猛火よりもなお熱く燃えさかる。
それを体現する魔法を持つ彼女は自分の使い魔を切り裂いた報いをGマンティスに与えようと杖を振り下ろした。
が、火花一つ起きない。
杖を二度、三度振るがでるのは空を切る音だけだ。
「どうしたのよ」
「魔法がでないのよ」
そんな馬鹿な。
ルイズも魔法を使おうとする。普段なら失敗の証として爆発が起こるはずだ。
だが、なにも起きない。爆発どころかなにも起きないのだ。
「なんで?」
「ここじゃ無駄ね」
ベルが天井を見上げ、そこに描かれた魔法陣の意味を読み取る。
「封魔陣よ。ここじゃどんな魔法も使えないわ。しかも、コンシールで隠されてたみたいね。まいったわね」
もっとも、ベルはまったくまいった様子はない。
「そうですな……まいりましたな」
それに対しコルベールの焦りがはっきりと目に見える。
「魔法を使えない我々では、あれに勝てそうにありませんぞ」
メイジの力とはすなわち魔法の力である。
それを封じてしまうこの罠はまさにメイジ殺しのための罠と言える。
「なら、彼に任せてみてもいいじゃない」
ベルはその目を単独でGマンティスに立ち向かう「彼」に向けた。


『生きているかい?』
『死んじゃいねえけどな』
『だけど浅い傷ではないだろう』
『少しくらい千切れてもかまわないんだが……うごけねえ。マヌケすぎたな』
『いや、主人を守った君は既に自分の仕事を果たした。次は僕の番さ』


宿敵、好敵手あるいはライバルと呼ばれるものがある。
だが、誰しもそのような相手に出会えるわけではない。
もし、あなたがそのような者に出会えたならばそれは幸なことなのだろう。
なぜか。
宿敵と出会うことで大きく成長し、
好敵手と戦うことでまた大きく成長し、
ライバルに勝利することでさらに大きく成長するからだ。
ここに男がいる。
彼は今、まさに、この地の底に作られた通路で宿敵と出会った。
故に彼は成長した。
彼は好敵手との戦いを決意する。
彼はまた一つ成長を遂げた。
そして彼はライバルに打ち勝つことを望む。
さらなる高みに登らんとして。
四肢に力を込めるジャンアントモールのヴェルダンデにとって、ここで出会ったGマンティスはそのような相手だったのである。


頭でざくりと音を立てたGマンティスの鎌が毛皮をごっそり削った。
毛皮を赤に染めながらもヴェルダンデは首を振って、鎌を振り払う。
すぐさま二つめの鎌が迫る。
ヴェルダンデは前肢の爪でそれを受け止めた。
ジャイアントモールの爪は地面を掘削し、時には岩盤をもくりぬくような頑強な代物だ。
いかに鋭いGマンティスの鎌といえど受け止めるのに不都合などない。
そしてヴェウダンではもう一方の前肢を突き出す。Gマンティスの腹に当たれば殻を貫けるだろう。
だが、羽を広げたGマンティスが少し下がるだけでそれは届かない。ジャイアントモールの前肢はそこまで長くはないのだ。
距離を取ったGマンティスが再び鎌を振り上げる。
ヴェルダンデは後脚で地面を蹴り、距離を取った。
自分の爪も当たらないが、Gマンティスの鎌も届かない。少し時間を稼ぐなら十分な距離だ。
その時間を使い、ヴェルダンデは使い魔となって取得した知性で考える。
これではジリ貧だ。自分の攻撃は避けられ、敵の鎌で切り裂かれていく。
このままでは出血を強いられていずれ倒れてしまう。
主人を含めた魔法を使えないメイジ達ではこのGマンティスに勝ち目はない。
友のフレイムは動けない。シエスタという人間の女が手当をしているようだが、いくらトカゲでも決着がつく前に回復するとは思えないし、当然魔法での回復も望めない。
ベルという人間の使い魔もだめだ。これは当てにしてはならない種類の存在だ。
この場を切り抜けるにはヴェルダンデ自身が力を尽くすしかないのだ。
勝ち目はないわけではない。
岩を砕く前肢の爪の一撃をくれてやれば確実に倒せる。
そのためにはGマンティスの鎌のついた前肢とジャイアントモールの力はあるが短い前肢の差をどのような方法を使ってでも埋める必要があった。
Gマンティスがふるわせる。
これからそちらに行くと言いたげだ。
ヴェルダンデはもう一度下がることも考えた。が、それはできない。下がればGマンティスの鎌は主人達に届くようになるからだ。
もはや不退転。ヴェルダンデは後脚で床を蹴り、宙に跳ぶ。
砲弾とも見まごう速度のまま、つきだした爪は、しかしあのときと同じ。Gマンティスがわずかに下がるだけで空を切る。
Gマンティスがにやりと笑った。殻でおおわれて変化はのないはずなのに、確かにそう見えたのだ。
なぜか。役割を果たすことなく地面に落ちたヴェルダンデの体はその鎌を振るうに絶好の位置に落ちたからだ。
そして既に振り上げられていた二丁の鎌は地面に這いつくばるヴェルダンデに振り下ろされ、その身を切り刻む──前に、Gマンティスの体は吹き飛び、前方の通路をふさぐ壁に叩きつけられる。
Gマンティが体を起こそうとしたとき、ヴェウダンデの爪が目前に突きつけられていた。


『まさか、あそこで後ろ足の蹴りが来るとはな』
『ジャイアントモールは地中を馬と並ぶ速度で掘り進むことができる。そのための脚が強くないわけないだろ』
『それで最大の武器であるはずの前脚を軸にして体を反転させた蹴りか。してやられたな』
『他に方法が思いつかなかったからね』
『そうか……俺を倒した男の名を聞きたい』
『ギーシュ・ド・グラモンの使い魔。ジャイアントモールのヴェルダンデ』
『そうか。殺すがいい』
『そうはいかないさ』
『なに?』
『フレイムを切り裂いて、主人を殺そうとした君は殺してしまいたいさ。だけど、聞かないといけないことがある。壁を開ける方法を教えて欲しい。こんなところに僕の主人を閉じ込めたままにしておけないからね』


Gマンティスの鎌が背中の壁をついた。
すると、壁の一部に魔法陣が浮かび上がると、前後の壁が石のかけらを落としながらせり上がる。
塞がれていた通路が姿を現した。
それにヴェルダンデが目を奪われた一瞬、今度はGマンティスが大きく跳び退り、距離を開けた。
細い背にある翼は広げられたまま上下に羽ばたき、その体を浮遊させる。


『気が変わった。ヴェルダンデよ。その顔、名前。確かに覚えた。いずれ再び会おうぞ』
『なにをする気だ?』
『簡単なことよ。再び貴様と戦いたくなった。勝ちたくなったそれだけよ。さらばだ』


緑の風のようにGマンティスが通路を吹き抜ける。
タバサが反射的にルーンを唱えたが、封魔陣の上では魔法は使えるはずもなく、闇の中にGマンティスが消えていくのを見送るだけだった。


『いいだろう。だが、勝つのは次もこの僕だ!』



新着情報

取得中です。