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ゼロの戦闘妖精-07

Misson 07「全系統使用不可」(後編)

その夜 魔法衛士隊 グリフォン隊隊舎は物々しい空気に包まれていた。
十数機の大型投光器が照らし出す空には、監視役の隊員が多数飛び回っている。
高度500メイルに8騎。火の系統も併せ持つ者は 浮遊式のライティングの術を使い 侵入者に備えているが、これは囮である。
ライティングの光も届かぬ 高度1500メイル、こちらの8騎こそが本命。闇に潜み、獲物を待っている。
もちろん、地上にも多数の隊員が待機している。
体制は万全の筈だった……普通の相手なら。

漆黒の大地に キラキラと輝く小さな点。
高度一万メイルから ルイズが見たグリフォン隊隊舎だった。
(ちょっと、上がり過ぎたわね。
 雪風、上段の部隊に高度を合わせて 南側からアプローチ。
 グリフォンを気絶させて、撃墜。可能な限り負傷させないこと。
 グリフォンも、もちろん人間も。
 出来る?)
雪風は、昼間の黒ワイバーンの件のデータから、グリフォンへの攻撃をシュミレートする。
《No problem.》

魔法衛士隊員の乗騎のうち、そのほとんどは『使い魔』ではない。捕獲した野生種か、育成獣舎で繁殖させたものである。
しかし 隊員と乗騎の繋がりは、生半可なメイジと使い魔の『絆』よりも よっぽど深く強い。
ゆえに グリフォン隊の隊員にとって 愛騎は既に自分の身体の一部も同然である。
その愛騎が、今夜は妙に暴れる。何かを嫌がるように抵抗する。
騎士には判らなかった。幻獣が その鋭敏な感覚で、雪風のレーダー波に反応していたという事に。
そして 人間にも感じ取れるもの、重低音と高音の入り混じった ジェット機特有の飛翔音に気付いた時点では、既に遅すぎた。

暗闇の空 迫り来る轟音、想像を超えた何かの強襲。何一つ対応することも出来なかった。
自分の直近 わずか1~2メイル先を駆け抜ける 巨大な黒い影。そして 風塊。
竜巻のような方向性すらない 無秩序な暴風が、幻獣と騎士を翻弄する。
人間の方はグリフォンにしがみついて かろうじて無事だったが、支えとなるものの無い獣は 頭部を激しく揺すぶられ、意識を失い落下していった。
「えぇい、こちらを先に襲うとは!」
高高度の襲撃班は、謎の敵により一瞬で4騎を落とされていた。
「副長、いっ今のは?」
残った隊員は 班の指揮官であるサジマ副長に問う。
「判らん。だが、敵だ!
 先に発見された以上、闇に隠れるのは もはや無意味。
 各騎 ライティング、可能な限り広域を照らせ! 囮班と合流するぞ。」
先ほどの攻撃を考えれば、密集した場合 一撃で全滅する可能性もあった。だが あえて副長が合流を選んだのは、ベテランの直感(一対一では、アレには勝てない)だった。
まだ その姿さえ拝んでいない相手に対して 即座にその判断を下せたのは、多くの実戦経験の為せる業か。しかし…

高度1000メイル付近。降下した襲撃班4騎と 上昇した囮班6騎が合流する。
「落下した4名は、こちらの2騎が付き添って地上へ降ろしました。
 一体何があったんです!」
「襲撃を受けた。敵は1騎だが 恐ろしく速い!
 風を纏っての体当たり いや、脇をすり抜けていっただけで あのザマだ。」
「そっ それは…」
「サジマ様。して、相手の姿は?」
「ユーゴか。うむ、闇の中 それも一瞬の事ゆえ、不覚にも何も見えなんだ。すまん。」
「実は 私、あのモノの鳴き声と言うか 音に聞き覚えが…」
「なにっ、よし ユーゴ、お前は攻撃に加わらんで良い。だが絶対に落とされるな!
 敵の正体を見定め、御頭に報告するのだ。」
「はっ!」 
「他の者は、魔法攻撃 準備!
 目で追おうとするな、音を聞け。進路の先を読め。
 私の合図で 一斉に放て、一撃したら 即座に次の呪文を唱えよ。
 仕留めるまで 何発でも撃つぞ!」
『『『了解!』』』

遠ざかっていった音が、再び迫ってくる。雪風のセカンドアタック。
「総員、撃てぇぇぇ!」
まだ姿は見えなかったが、次の攻撃の詠唱にかかる時間を考慮して 早めに初弾が放たれる。
前方の闇に向かって飛んでいく エアハンマー・エアカッター 計9発の攻撃魔法。
手応えは…無し!
「来るぞっ。
 耐えろ、詠唱も止めるな。すれ違いざまに もう一撃だ!」
無理は承知で そう命ずる。
照明の届く範囲に 巨鳥とも飛竜ともつかない黒い影を見たと思った瞬間、それは 隊員達の間を駆け抜けていった。
吹き荒れる乱気流、今度は不意打ちではない。にもかかわらず また2騎が飛行不能となった。
「逃すな、撃てぇ!」
姿は捉えた、もう外さない!
放たれたのは、不可視の風魔法7発。見えぬ攻撃 避けられるものではない!だが・・・
「馬鹿なっ。」
すべて 外れた。いや 避けられた。
剣術の達人が 相手の剣筋を見切って動く様に、最小限の動きで全弾回避された。
「あやつ、化物か!?」
『部隊の知恵袋』と呼ばれるサジマ副長でさえ このような相手と出会った記憶は無かった。

そもそも 風系統のメイジによって構成されたグリフォン隊が 雪風と戦う事自体が不運なのだ。
雪風の装備する『空間受動レーダー』は、大気の流れを精密に把握する 即ち「風を読む」装置である。
その機能と ルイズの魔法知識を合わせれば、風の攻撃魔法は ほぼ確実に回避可能だった。
そして、
「アレは、昼間のアイツだぁ~。 間違いない!」
攻撃隊から やや離れた位置で偵察任務についていたユーゴ隊員は、隊長への報告のため 即座に降下していった。

「えぇいっ、上は一体 どうなっておるのだ!」地上で苛立つワルド隊長。
飛行不能の自騎をフライやレビテーションで支えながら 次々と降下してくる隊員達。
だが 彼らの証言からは、
「黒い影が・・・」
「凄まじい速さで・・・」
「暴風に巻き込まれて・・・」
と、相手の正体が さっぱり見えてこない。
(ぬかった。上空部隊に『偏在』を仕込んでおくべきだったか。)
今晩 攻めてくるのは、ルイズとその使い魔の筈だ。この惨状は、その使い魔によるものなのか?
ひょっとしたら 昼間の盗賊団が、捕われた仲間を奪還に来たのでは?
いや それは無い。裏の情報屋や吟遊詩人に金を渡して 市中には、『賊は全員殺された』と偽情報を流してある。
ならば・・・

「御頭~ぁ!」
そこに 墜落するかのような勢いで降りてきた一騎。乗員は、グリフォンが着地するのを待てずに フライでワルドの元へ。
「ユーゴか、どうした!」
「ヤツです、奴が来ました!例の『奇妙なガーゴイル』です!!」
「やはり そうか!」
「まったく、これから 世間知らずのお嬢様にお灸を据えてやろうって時に、盗賊の残党が襲ってくるとは・・・」
「それは違うぞ、ユーゴ。
 あれこそが、ルイズの言っていた使い魔『雪風』だ。」
「へっ?」
「貴様も自分で言っていただろう。『賊の一味にしては、行動が妙だった』と。
 事件の現場には 彼女も居たのだ。それをもっと考えるべきだった。」
「あの~、どういうことでしょうか?」
「黒ワイバーンの逃げ足の速さを見て ルイズは、貴様では追いつけないと思ったのだろう。
 だから、自分の使い魔に賊の足止めをさせたのだ。」
「なんと!」
ワルドは、地上部隊全員に号令を発する。
「上空で暴れているのが ヴァリエール嬢の使い魔『雪風』である。
 これは ワイバーン如きは歯牙にもかけぬ程の強敵と判明した。
 よって 部隊総懸かりで当たる。
 全騎、上がれぇ!」

何回目かのアタックを終えて グリフォン隊と距離をとったところで デルフリンガーが言った。
〔なぁ嬢ちゃん、こうやってチマチマ攻めて、最後の一騎まで落としちまうつもりなのかい?〕
(まぁ 今回のルールから言えば、その必要は無いんだけどね。
 どうせなら 出来るだけ多くの先輩騎士に、雪風の力を実体験してほしいのよ。後々 その方が動きやすいでしょ。
 それで 次のアタックだけど、何発かワザと避け損なうからね。デルフ、ヤれる?)
〔やっと出番か 任せとけ。待ちくたびれちまったぜ!〕
そこに 雪風が割って入る。
《マスター:報告
 地上より 32個の飛行物体が上昇中。グリフォン及び騎士と確認。》
(雪風、デルフ、本隊が来たわ。気合入れてかかりなさい!)
〔応よ!〕 
《マスター:要請
 「気合」=不明。要 詳細入力》
(あのねぇ雪風、こういう時は 空気読みなさいよ!
 『気合』は、後で説明してあげるから!!)
《マスター:報告
 空気読む=空間受動レーダー 正常作動中》
(…もう いいわ。
 雪風 先ほどの指示 撤回して。)
《R.D.Y》
〔…相棒よぉ…〕

グリフォン隊 地上班が合流したとき 残っていた上空班は僅か3騎だった。
「サジマ、どうだ戦況は?」
その状態で かろうじて部下を守ってきた副長は、隊長の問いかけに、
「はっ。
 敵は 一撃離脱の戦法を執り、乱気流にて騎獣を撃墜しております。
 そのため ライティングの届く範囲に留まるは ほんの一瞬。狙い撃つは困難。
 また こちらが闇に隠れても 変わらず攻撃されることから、相当に夜目が利くものと思われます。
 音を頼りに 先読みで魔法を放てども、あたかも風が見えるかの如く回避するのです。
 最早、打つ手が思い浮かびません。」
「ならば 避ける隙間も無い程の飽和攻撃、これしかあるまい。
 少々 騎数が足らんかもしれんがな。」

《マスター:警告
 一騎の騎士の周囲に、高圧電荷の発生を確認。小規模の雷雲と推測》
(ライトニング・クラウドね。デルフ、あれにするわ!)
〔へっ しょっぱなから キツいのを選んでくれるぜ。〕

雪風が飛行速度を敢えて一定にしているため 上空部隊はその速度に慣れてきていた。
サジマ副長が、方向とタイミングを計って全隊員で放った 魔法の一斉攻撃が雪風を襲う。
その全てを回避し 脅威の機動性を見せつける雪風。
だが 部隊の中でただ一人、ワルド隊長は同時攻撃に参加しなかった。
部下達の攻撃が避けられる事を前提に、回避終了後の雪風の位置を見切ろうとしていたのだ。
その目論見は成功し、まさに今 必殺の雷を放とうとする瞬間、雪風は90度右ロールし 機体下面を向けた。
(何だ?)訝しがるワルド。それでも 魔法発動は止めない。
「如何に素早くとも、雷撃をかわす事は出来まい!」

確かに その一撃は雪風に届いた。いや 正確には『吸い込まれた』。
雪風が吊り下げていた一本の剣、雷はそれに当たった。むしろ剣に引き寄せられた。
それだけだった。落雷の轟音も無く、雪風が壊れる事も 爆発が起きる事も無かった。
ワルドは その剣が、ルイズが見せた魔法剣『デルフリンガー』だったことを思い出す。
「魔法吸収・・・だと!?」

高速で容易に姿を捉えさせず、並大抵の魔法は避け切り、回避できなければ吸収する。三段構えの防御体制。
(ルイズが『空戦無敵』と言い切った 自信の元はコレか!)
副長のセリフではないが、確かに 空中では「打つ手が無い」。
「全騎 地上に降下するぞ!
 ルイズも、練兵場に剣を突き立てる為 あのバケモノから降りねばならん。
 いささか卑怯だが、そこを押さえる。」
次々と降下する隊員達から離れ、副長がワルドに問いかけた。
「御頭、この一戦は 確か『入隊試験』でしたな。
 既に ヴァリエール嬢の実力の程は判りました。もう よろしいのでは?」
眉間に皺を寄せ 口元を歪めるワルド隊長。だが、
「そうはいかん。グリフォン隊の、いや オトコの面子というものが…」
「なるほど。結婚前から『尻に敷かれる』ワケにはいかない と、
 ですが 御頭。」
「なんだ。」
「妻帯者としての経験から言わせていただければ、
 それは、『無駄な抵抗』ってもんですよ。」
ワルド隊長、ニガ虫を千匹位 まとめて噛み潰したような表情で降下していった。

〔おい嬢ちゃん、あいつら皆 降りてっちまったぜ?〕
(さすが隊長、判断が早いわね。でも、それも予想のウチよ。
 雪風 『精密爆撃モード』、投下目標 練兵場 中央。)
《ターゲット、ロック完了》
(投下タイミング その他、任せるわ。)
《R.D.Y. カウントダウン 30、29、・・・》
〔ちょっと待て嬢ちゃん、何だよ『爆撃』ってのは?〕
(さあデルフ、後は貴方が「グサッ」っと地面に突き刺されば 私達の勝ちよ!)
〔相棒ぉ~ まさかたぁ思うが、俺をこの高さから おっ放り出そうってんじゃ・・・〕
《20、19、18、・・・》
〔なぁ、冗談だろ?〕
(デルフ。確か 格好良く『ビシッと決めて』くれるんだったわよね?)
〔いくら俺が丈夫だからって、限度ってもんが!〕
《12、11、10、・・・》
〔ほら、俺って 空とべねぇし・・・〕
《7、6、5、・・・》
〔イヤだ~、死にたくねぇ~!〕
《2、1、0 》
〔うわァァァァァァァァァ・・・・・・〕(いってらっしゃ~い。)

空の怪物が、着陸したところを攻撃する。その瞬間を待っていたグリフォン隊員の頭上から 降ってきたのは、
「欠ける折れる壊れる死んじまうぅぅぅ~~~
 たぁーすけぇてぇぇぇえぇ~~~」
という 情けない悲鳴と、『ドス~ン』という落下音だった。
墜落に伴い 濛々と上がる土埃。それが晴れると…
一本の剣が 大地に深々と突き刺さっていた!
「ウウウゥゥゥ…
 ヒデーよ嬢ちゃん、ヒデーよ 相棒ぅ。
 なにも 落っことすこたぁ ネーじゃねーか。
 作りモンの かりそめの命たぁいえ、生まれてこの方六千年、こんなヒデー扱いされたこたぁネーよォ(泣)!」
そのころ、雪風のコクピットでは、
《着弾 確認》
(デルフ~、生きてるぅ?
 今夜は もう遅いから、私達は帰って寝るわ。「明日 また来る」って、ワルド隊長に伝えといて。じゃぁね~)
「うぉーい!置いてきぼりかよー(涙・泪)!」
さめざめと泣くインテリジェンスソードに、グリフォン隊隊員全員から 深い同情が集まった。

「完敗…ですな。」
肩をすくめて笑う サジマ副長。
「ああ、やられたよ。
 だが、あれが我が部隊の戦力になるかと思えば、それはそれで楽しみでもあるな。
 とはいえ、今夜は酒でも飲まんと 寝られそうも無いぞ。」
嬉しさ半分、悔しさ半分、その他少々といったところの ワルド隊長。
「どうです、あの『デルフリンガー』とか言う剣の事情聴取を肴に、ちょいと一杯などというのは?」
「おっ、いいですなぁ~。御頭、ぜひ私も ご相伴に預からせていただきたく…」
「私も。」「自分も。」「俺も。」「拙者も。」
地獄耳揃いの隊員達が、我も我もと集まって来る。
「よーし、
 誰か、そこのデルフリンガー殿を引っこ抜いて 会議室までお連れしろ!
 それと、倉庫から酒樽持って来い!!」
『了解!!!』
かくして始まる、ヤケ酒の宴…。

翌日の放課後、ルイズと雪風は 再びグリフォン隊舎を目指していた。
デルフリンガー経由で「これから行きます」と連絡しておいたので、迎撃される事はなかったが、
練兵場の 昨晩デルフが刺さっていた辺りに着陸すると、待ち構えていた大勢の隊員達に取り囲まれてしまった。
(やだっ、昨日ので そんなに恨まれちゃったの!?)
ルイズは身構えたが…
「ヒューヒュー」「ドンドン」「ワーワー」「パフッパフッ」「イエェーイ」!!!
一斉に鳴らされる口笛や鐘 太鼓、喇叭に法螺貝、パーティ用のクラッカー。
後ろの方には『歓迎 ルイズ&ユキカゼ』の横断幕まで掲げられている。
安堵したルイズ、思わず 脱力。
「とっ とりあえず 受け入れてもらえたみたいだけど。
 …どーいう人達なのよ、ここの隊員って!」 

キャノピを開けて シートから立ち上がり、ヘルメットを脱ぐ。ピンクブロンドのロングヘアが零れ落ちると ギャラリーから再び歓声が湧き上がった。
「皆様、お怪我はございませんか? 昨夜は どうもすみませんでした!」
ルイズの第一声は、謝罪の言葉だった。
隊員の一人が それに応えて、
「お嬢さん、気にしなさんな。
 俺達ぁ、バカな政治屋とクソ生意気なガキは大っ嫌いだが、強いヤツには敬意を表するぜ。
 ましてや それが、キレーなネーちゃんなら 大歓迎さ!」
「右に同じ~。」「うむ 同意する。」「もっちろん。」「異議な~し!」… 
「まずは、貴女の大事な戦友、デルフリンガーをお返しする。」
手渡されたソレは、何故か酒臭かった。
「おうっ 嬢ちゃん(ヒック!)。こかぁ~ イ~イ所だぜ。(ヒック!)
 み~んな 気のイイ奴ばっかりさね。(ヒック!)」 
「アンタ 酔っ払ってるの!?ていうか、なんで剣のくせに酒なんか飲めるのよ!」
「そりゃあもう、俺ぁ 魔法だって飲み込んじまえるんだぜ(ヒック!)。酒ぐらい 飲めて当然よォ!」
「すまないルイズ。
 彼から事情を聞く時に、緊張を解そうと軽い気持ちで酒を薦めたら これが結構いけるクチでね。
 ついつい飲ませすぎてしまったよ。」
やや遅れて登場したワルド隊長。
そう言う彼も、徹夜で飲み明かした酒を抜くため、昼過ぎから先程までランニングを続け 風呂で汗を落としたばかりだったりする。
「ところで、ワルド様。入隊試験の判定は? 結果を教えていただけますか。」
「うん。おめでとうルイズ。合格だよ。
 とりあえずは『騎士見習い』だけど、今日から君も グリフォン隊の一員だ。それでイイね?」
「はい、ありがとうございます!」
ルイズは、荒くれ揃いの隊員達すら ほれ込んでしまうような、晴れ晴れとした笑顔で即答した。

「さて、君の入隊祝いに 今夜は美味いモノでもご馳走しようと思うんだが、少々帰りが遅くなっても大丈夫かい?」 
「ご心配はいりません。手は打ってあります。」
以前の『フーケ捜索隊』の件で 各種特別許可を取り付けたのは、こういう場合の為でもある。
ルイズ本人の承諾は得られたが、隊員達からブーイングの嵐が起こった。
「くわぁ~ またしても一人、女性が御頭の毒牙に!」
「『ロリコン』の噂に根拠を与えて どーすんですか!?」
「まったく、オンナを落とす早さも『閃光』のワルドって シャレになんないッス。」
「御頭、商売女や有閑マダムはともかく『幼女』はマズイ!!」
最後の一人が、ルイズの中の地雷を踏んだ。
「誰が『幼女』ですってぇ~!!!」
得意の失敗魔法が、不用意な発言者に炸裂。巻添えを食らって 周りの数名も吹っ飛ばされる。
それでもまだご立腹のルイズ。ワルドの手を引いて
「さっ 行きましょ、隊長。」
「お、おい ルイズ!」
グリフォン厩舎の方へ去っていった。

ルイズとワルド そして爆発の土煙が消えた練兵場で、吹き飛ばされた隊員達が起き上がる。
あれくらいで怪我をするようでは、グリフォン隊の激務は勤まらない。
「いや~参った参った。あれが『ヴァリエール嬢の失敗魔法』か。」
「まぁ、あの娘は怒らせない方がイイってこった。」
「あれで『ゼロ』だなんて、魔法学院のガキどもは 見る目が無ぇよ。」
「発動は早いし 威力もそこそこ、攻撃魔法としちゃあ充分だと思うがなぁ。」
「でも、真っ当な貴族って奴等は それを認めない…」
彼等の胸中に ある思いが広がってゆく。
他人と少し違うだけ、常識と言うツマラナイ規準に収まらなかっただけで、認められなかった自分。
それは、隊員の誰もが経験してきた 過去。
「結局 あの嬢ちゃんも、来るべくして此処に来ちまったんだな。」
「それが 良かったのか、悪かったのか。」
「そいつは、誰にも判らんさ。」
なにせ、此処は『魔法愚連隊』
心優しき はみ出し者の 吹き溜り。

トリスタニア郊外の とある一軒家。
ここは、ビストロ『ゴ・テーツ』
闘鶏という賭博に使われる特別な鶏、『軍鶏』を使ったシチューが名物の 隠れた名店である。
そして、ワルド隊長以下 グリフォン隊御用達の店でもあった。
店の最深部 とっておきの部屋。差し向かいでナベをつつく ワルドとルイズの姿があった。
「そうすると、雪風の主な攻撃方法は、あの乱気流じゃなく、内臓式の連発銃か。」
「はい。銃の口径は2サントですが、威力は戦艦の大砲と同等か それ以上だと思ってください。
 発射する弾数が違います。一分間に数千発ですから。」
「それは凄いな!」
「逆に それが弱点にもなります。」
「何故だい?」
「あっという間に 弾切れするからです。」
「そうか。そういうことか。」
「召喚の際に雪風が装備していた弾丸も、既に半分程使ってしまいました。
 他に『ミサイル』というのも数発装備していますが、これらを撃ち尽くした後、補給のアテはありません。」
「トリステインで それを作る事は出来ないのかい?」
「難しいでしょうね。弾丸一つにしても、こちらの物は精度が低すぎます。
 雪風の銃は、強力な武器であると同時に オルゴールや懐中時計と同様の精密機械です。
 十分の一 いえ百分の一サントの誤差で、弾詰まり 最悪で破裂の危険性が生じます。
 それだけの精度のものを 大量生産しなければならないのです。
 こういったことは、メイジの錬金よりも 平民の職人を育てる方が有効ですが、時間が掛かります。」
「では、どうする?
 君の事だ。何も腹案が無いとは思えないが。」
「お見通しですか。
 実は 運用方法についてなのですが、雪風は 攻撃力もさることながら、本来の用途は『偵察機』です。
 大砲も魔法も届かぬ 空の高みから、兵士一人一人の動きを把握し、物陰に潜む伏兵すら発見する『索敵能力』。
 それに、隊長の魔法を組み合わせれば…」
「面白いな。
 似たような事を考えて 試してはいるんだが、中々上手くいかなくてね。」
そこに 店のオーナーシェフ、サンジが グリフォン隊員一名を連れて顔を出す。
「ワルド様、部隊の方が『火急の用事』とのことで参られました。」
「うむ。どうした、何があった?」
「はっ。昨日の黒ワイバーン一味の者、ようやっとアジトの場所を白状いたしました。」
「でかした!よし、すぐ出場するぞ!!」
「既にサジマ様が、夜襲の準備を整えておいでです。」
「丁度いい。 ルイズ 君の提案、さっそく試させて貰うよ。」

それは、久方ぶりの大捕物であったが、たった半刻程で終了してしまった。
一味の者は ほぼ全員捕縛、部隊員に大きな負傷者ゼロの大勝利だった。
この結果を生んだのは、もちろん 雪風の参入だ。
ワルド隊長は ルイズと共に雪風に搭乗、風魔法で四体の分身『遍在』を作ると 各分隊に配属した。
そして 作戦開始。
森林地帯の奥深くに存在した 賊のアジトを、気付かれぬよう高高度から偵察し、人数や幻獣の数を把握する。
突入部隊に追い立てられ、散り散りに逃げる盗賊。その方向は全て 雪風に把握されていた。
情報は雪風からルイズへ、そしてワルドへと伝えられ、周辺配備の各分隊員は 遍在ワルドの指示により、確実・迅速・効率的に賊を捕えることが出来た。
「口を開けて待ってりゃ、相手の方から飛び込んで来てくれる様なモンだった。」と 後に隊員達は語っている。
それでも 盗賊は必死に逃走した。グリフォン隊を引き付け 少しでもアジトから遠ざけるために。そこに残った頭目と 最大最速の黒ワイバーンを逃がすために。
だか、それも雪風に察知さていた。
黒ワイバーンは、飛び立ってすぐに 二十㎜機関砲の餌食となって撃墜、頭目も地上部隊に追い詰められて 自害した。 

「『遍在』を使った分隊間の連携ってのは、以前から試みてたんだが、そこに雪風という『天の目』が加わるだけで、こうも変わるとは…
 ルイズ、やっぱり君はスゴイよ!」
「いえ、全ては雪風の力です。
 それよりも 今回の方式を、トリステインの全軍に導入できるとしたら、どう思われますか?」
「何だってぇ?」
「雪風の世界には、遍在を使わずとも 遠方の人間に指示を出せる『無線機』という機械があります。
 魔法学院の教師に、機械工作を得意とする方がいらっしゃるので、現在 製作を依頼しているのですが それが出来れば…」
「間違いなく ハルケギニアにおける戦争の歴史に、革命が起きるな!」
「ええ。来るべき戦争、避けられない脅威に対して、短時間で効果を上げられる方法の一つです。」
「戦争か。君もそう思っているんだね。
 レコンキスタの矛先が、次に向かうのはトリステインだと。」
「女子供でも、簡単に理解できる『事実』です。」
「フフフ…ハハハハハ、すごい 凄いよルイズ。 
 君が『見習い騎士』だなんて もったいない。一日でも早く 正式な騎士に 僕の右腕になってくれ!
 「辛い」とか「辞めたい」とか言い出しても、絶対逃がさないからね。」
「入隊をお願いした時、いえ その前から覚悟は出来ています。
 でも その為には、隊長に一肌脱いで頂かなければならないんですが?」
「ん?なんだい。」
「実は、実家には 入隊の事、何も言ってないんです!
 だから、次の虚無の曜日 ウチに来て 家族を、特にお父様とお母様を説得してください!!」
「なっ、なんだってぇ~!!!
 はっ『謀ったな』、ルイズゥ~!!!!」
顔面蒼白のワルドに、ルイズは、
「だって そんな恐ろしい事、私一人じゃ とても出来ないモン。
 『絶対に逃がさない』んでしょ。ねっ、た・い・ちょ!」 

余談
後日 雪風のコクピットで、『デルフリンガー爆撃』の記録データを見て、武器屋の主人は 呼吸困難になる程笑い転げていた。

              〈続く〉

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