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瀟洒な使い魔‐01


ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは困っていた。
それはもう実家で粗相をして一番上の姉や母にどう弁明しようか考えていた時と同じくらい困っていた。
何をそんなに困っているのかと言えば、それは先日自身が召喚した使い魔のことである。

火を出そうが、水を出そうが、錬金をしようが、どんな魔法を使ってもロクに発動せず、
爆発と言う失敗でしか魔法を使えたためしのない『ゼロのルイズ』。
そんな自分でも、あの日は(何度も失敗したが)『サモン・サーヴァント』に成功し、
『コントラクト・サーヴァント』をも成功させる事ができた。
コモンマジックすら失敗するいつもの自分からしてみればあの日は絶好調といえただろう。

確かに高望みをしたかもしれない。
どんな使い魔でもいい、召喚されてくれと投げやりに思ったかもしれない。
しかし、魔法を学ばんとする姿勢では、そのために積み重ねてきた努力では、
同学年の誰にも負けはしないという自負が合った。
ならば、何がいけなかったのだろう?
自分に魔法の素質がなかったから?
普段の行いが悪かったから?
疑問は尽きず、そして解決の糸口は全く見えない。
そんな堂々巡りの思考の中、ルイズは今日何度目とも知れない溜息をついた。



ジャン・コルベールは困っていた。
それはもう上司のオスマンが秘書にセクハラをせんとしているところに出くわしてしまった時と同じくらい困っていた。
何をそんなに困っているのかと言えば、それは先日生徒の1人であるルイズ嬢が召喚した使い魔のことである。

ありとあらゆる魔法を『爆発』という失敗でしか使えたためしがない彼女。
しかし何よりも誰よりも努力を惜しまなかったであろう彼女も、
この間の『春の使い魔召喚の儀式』ではようやく(最後の正直といった具合に)「サモン・サーヴァント」に成功し、
『コントラクト・サーヴァント』をも成功させる事ができた。
コモンマジックすら使えない彼女にしてみれば、正に奇跡と言ってもよかっただろう。

確かに彼女は同学年の生徒たちがサラマンダーやジャイアントモール等を召喚しており、
自分もそれに負けないくらいの使い魔を欲しいと思っていたかもしれない。
いや、もしかしたらどんな使い魔でもいいから来てくれと投げやりに思っていたのかもしれない。
しかし、彼女は級友達の誰よりも努力してきたはずだ。何よりも苦労を重ねてきたはずだ。
ならば、何がいけなかったのだろう?
彼女が一体何をしたと言うのだろう?
一教師として、彼女になんと声をかけてやれるだろう?
疑問は尽きず、そして解決の糸口は全く見えない。
そんな堂々巡りの思考の中、コルベールは今日何度目とも知れない溜息をついた。

そして、件の使い魔もまた困っていた。
主人の妹が外に出たいと我侭をいい、それを自分が止める羽目になったときと同じくらい困っていた。
何をそんなに困っているのかと言えば、それは先日見知らぬ土地へと召喚された我が身の事である。

自分には勤めている場所があり、そうほいほいと持ち場を離れる訳にもいかない。
自分が居なければどうにもならないというのに、問答無用で召喚されてしまった。
今居る場所のことなど心底どうでも良いと思っている彼女にとっては、正に悪夢と言っても良いだろう。

その癖召喚した当人には悪いことをしたと言う自覚そのものがないらしく、
また元のところに戻す手段もないらしい。全くいい迷惑だと思う。
普段の行いが悪かったのだろうか?
もう少し門番に優しくしてやればよかっただろうか?
それとも、主人の食事に添える野菜をもう少し少なくすればよかっただろうか?
疑問は尽きず、そして解決の糸口は全く見えない。
そんな堂々巡りの思考の中、件の使い魔は今日何度目とも知れない溜息をついた。



――――その使い魔の名は、十六夜咲夜と言う。



瀟洒な使い魔 第1話「完全で瀟洒な使い魔」



「――――ふぅ」

石造りの塔の窓に肘を突き、スカートの丈が短いメイド服を着込んだ少女が溜息をつく。
彼女こそ件の使い魔、十六夜咲夜である。
咲夜の溜息は空しく空気に溶けて消え、鬱陶しいくらい晴れ晴れとした青空が頭上に広がる。
この世界、ハルケギニアに来て数日が経つ。召喚された際に立ち会っていた教師、コルベールや、
その上司であるオスマン等に様々な話を聞けば聞くほど、自分の住んでいた場所とは違う、
いわば異世界であるのだという事を実感する。
まだ仕事はたっぷりあるのに。自分が居ないということで元居たところがどういう状態になっているか、
それを想像するだに憂鬱になってしまう。

端的に言って、咲夜はこの世界の住人ではない。
『幻想郷』と呼ばれる、大規模な結界によって外界と隔たれた世界に住む人間である。
幻想郷には人間は余り住んでいない。では何が住んでいるのかと言うと、
俗に言う妖怪、魔物といった者達である。咲夜の主人もまたその1人で、紅魔館という洋館に住まう吸血鬼。
咲夜はそこのメイド頭を勤めており、館の一切を取り仕切る立場にある。
ちなみに、咲夜はれっきとした人間である。もっとも、普通の人間ではないが。
そんな立場の人間がこんなところに呼びつけられてしまえば、咲夜の心情ももっともである。

――――お嬢様は大丈夫だろうか? 自分が居なくとも好き嫌いなどしていないだろうか? 

こうした思案の時に浮かぶのはそうした主人や館の面々の事。
この世界に来てからと言うもの、特にやるべき仕事もないのでこうして考え事ばかりしている。
そうして思案に暮れていると、ふと後ろに気配を感じる。
振り返ってみるとそこには緑色の髪の女性が立っていた。咲夜が今居るここ、
トリステイン魔法学院の学院長であるオールド・オスマンの秘書、ミス・ロングビルだ。

「ミス・イザヨイ。こんな所にいらしたんですね」

「ええ、特にすることもないものだから。何か用かしら?」

「そのですね……毎度の事で大変申し訳ないのですが、オールド・オスマンからの伝言がありまして」

そういうミス・ロングビルの表情は大変申し訳なさそうであり、それを見て咲夜もこめかみを押さえる。

「もしかして、まだ諦めてないのかしら」

「残念ながら……まあ、ミス・ヴァリエールにとっても一生の問題でもありますし」

彼女が言うには、学院長が呼んでいるのでご一緒願えないか、との事。
またか、と咲夜は溜息をつく。ここ数日、1日1度はこうして呼ばれ、説得されている。
まあ無理もない。話を聞く限り、使い魔の召喚と言うのはそうほいほいと行えるものではないらしい。
召喚された対象が死ぬなり、この世界より居なくなりでもしない限りは新たに呼ぶことも出来ないようだ。

しかも、この使い魔召喚の儀式は学院の生徒が2年生に上がる際に必ず行うもの。
召喚した対象、この場合は咲夜と、必ず契約をしなければならない。
そうしなければ進級する事ができないのだと聞いた。
この世界において魔法使いとは特権階級、貴族とイコールである。例外がないわけではないが。
つまるところ、この学院に通う生徒は全てが貴族の子弟。
留年や退学などと言う無様を晒すわけには行かないのだろう。

気持ちは分かるが、だからといって束縛されてやる義理もない。
自分は紅魔館のメイド長であり、自分の主人は紅魔館の主、レミリア・スカーレットただ一人。
こんな異世界で貴族とはいえ他人の従者をやっている暇など無いのだ。
とはいえ、だからと言って戻る手段があるわけでもない。
紅魔館でも何らかの対策は練っているだろうし、魔法には明るくない自分が不用意に何かをして、
取り返しのつかない問題を起こしてもそれはそれで問題である。
そろそろ観念のし時だろうか、と咲夜は考える。

この世界においての使い魔は、主の為に尽くし、一生を捧げる。そんなものであるらしい。
一生を添い遂げるつもりなどさらさらないが、少なくとも迎えが来るまで、
もしくは帰還方法を見出すまでは使い魔の真似事をするのも良いのかも知れない。
契約するしないはさておいて、少なくともこの学院に留まれるよう交渉してみよう。
咲夜はそう結論付けると、ミス・ロングビルに同行する旨を伝えた。



所変わって、魔法学院の学院長室。
部屋の中にはこの部屋、ひいてはこの学園の主のオールド・オスマンと咲夜・ロングビルの他、
桃色がかったブロンドの少女が居た。この少女こそ誰あろう、
咲夜をこのハルケギニアへと召喚した、ミス・ヴァリエールこと、ルイズである。
さっきから一言も喋らず、腕組みをして咲夜をじとりと睨みつけている。
契約を拒否したことをまだ根に持っているようだ。

「おお、来てくれたかミス・イザヨイ。契約の件じゃが……どうにか承諾してくれんかのう」

「ええ、私もあれから色々考えたのですが、条件付でお受けしようと思います」

「ほう。して、その条件とは?」

ちらりとルイズのほうを見てから、咲夜はいくつかの条件を提示した。

1.自分が元の世界に戻る手段を探す事、また方法が見つかった場合自分が戻るのを止めない事
2.この世界に滞在している間の衣食住を保障する事
3.この世界の文字を教えること

「以上の条件を了承さえしていただけるのなら、ここに留まって彼女の使い魔をする事に異存はないのですけど」

薄く笑みを浮かべて言う咲夜。オスマンはふぅむ、と唸って髭をなで、
傍らに控えるルイズに語りかける。

「とのことじゃが、ミス・ヴァリエール。よろしいかな?
 他の使い魔とは違い、ミス・イザヨイは人間じゃ。彼女には彼女の事情もあろう。
 こうして条件付きとはいえ応じてくれた事も彼女なりの最大限の譲歩じゃろうし、
 ここはひとつこれで手打ちというわけにはいかんかのう?」

「うー…………分かりました」

ルイズは憮然とした顔のまま咲夜の前まで来ると、手で何かを押さえつけるようなジェスチャーを数度繰り返す。
それが『しゃがめ』という事なのだと理解した咲夜は、足を曲げてルイズと視線を合わせる。

「さ、お嬢さま、準備は整っておりますよ?」

悪戯っぽく笑う咲夜を一瞬だけギ、と睨みつけ、ルイズは神妙な顔で「コントラクト・サーヴァント」の呪文を詠唱する。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

短い詠唱の後咲夜の額に杖が置かれ、唇が重ねられる。全ての使い魔にそうするものらしいが、
ヌメっとしたカエルとか、ミミズを食べているようなモグラとか、
そういう奴の場合は不潔じゃないのかなぁ。と咲夜が考えているうちに、契約は終わったようだ。
ルイズが顔を離し、オスマンがうむうむと頷く。

「うむ、『コントラクト・サーヴァント』は上手く行ったようじゃな。
 ミス・イザヨイ、身体に変わりはないかの?」

「そういえば、少し身体が熱いような……っ!?」

突如として体内に生まれたその熱に、咲夜は思わず己が身を抱く。
そしてその熱が収まると、咲夜の左手には不思議な文字の羅列が記されていた。
これが話に聞いていた使い魔のルーンというものなのだろう。

「なんだか家畜の焼印みたいですよね、これ」

「あながち間違っておらんところがなんともフォローしづらいところじゃのう。
 ……しかし、これは見たことのないルーンじゃな。ミス・ロングビル、スケッチを取ってくれ」

左手をロングビルに預けながら、咲夜は新たに自分の主人となった少女を見つめる。
ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。通称、『ゼロ』のルイズ。
魔法学院のあるこの国、トリステイン王国の王家に連なる貴族の娘だが、魔法がほとんど使えない。
自分を召喚した『サモン・サーヴァント』、そして先ほどの『コントラクト・サーヴァント』の呪文が唯一の成功例だという。
魔法を使えることが貴族の存在意義のような世界で魔法が使えないということは、彼女にとってどれだけ辛い事であろうか。
事実、ここ数日を見ているだけでも彼女がこの学園でどういう立場にあるのかは概ね理解できた。
この世界に居る少しの間だけでも、この少女を手助けするのも悪くはないだろう。
咲夜はそう結論付けると、スケッチが終わったのを確認してオスマンに声をかけた。

「そういえば、部屋の件はどうしましょう? いつまでもミス・ロングビルの部屋にお世話になるわけにも行きませんし」

「そうじゃなぁ。部屋を用意するにしても今すぐとはいかん。
 ……そうじゃ、今日ぐらいはミス・ヴァリエールの部屋で休んではどうかの?
 紆余曲折の末の契約じゃし、積もる話もあろう。よろしいかな? ミス・ヴァリエール」

「……まあ、いいですけど。ほら、いくわよサクヤ。
 あんたにはこれから使い魔の役割って物をみっちり叩き込んであげるから」

相変わらず憮然とした表情で学院長室を後にするルイズと、その後を苦笑して追いかける咲夜。
しかし部屋を出る直前、咲夜が後ろを振り返り、ふいにその視線を鋭く尖らせた。

「――――次はありませんよ、オールド・オスマン」

今までとは全く違うドスの効いた声でそう言うと、咲夜は今度こそ部屋を後にする。
ロングビルが首を捻っていると、オスマンは冷や汗を一筋垂らしながら、ぽつりと呟く。

「今の眼つき、ホントに今度やったら殺されかねんのう……ミス・イザヨイにだけはやめておくか」

そう言うオスマンの視線の先、先ほどまで咲夜が立っていた場所にはいつの間にか床に深々と突き立った1本のナイフ。
そして、鼻先1サントに突き刺されたナイフに驚いて気絶しているオスマンの使い魔、ネズミのモートソグニルの姿があった。



トリステイン魔法学院、ルイズの部屋。
契約を済ませて部屋に戻ったルイズと咲夜は、椅子に腰掛け、テーブルを挟んで向かい合っていた。

「なんでこの私があんたみたいなのを使い魔にしないといけなかったのかしら……」

「それは貴方が召喚したからでしょ? こっちにとってもいい迷惑だって言うのに。
 いい加減観念しなさい、子供じゃないんだから」

「ああもう、そんな事は分かってるのよ!」

バン、とルイズがテーブルを叩く。
咲夜はそんなルイズを見ながら優雅に紅茶の香りを楽しんでいる。
ルイズはそんな余裕に満ち溢れた様子が気に入らないらしく、ぎりぎりと歯軋りをしながら咲夜を睨みつける。
そんなルイズを尻目に咲夜は紅茶を音もなく啜り、テーブルに置くとルイズのほうを見る。

「な、何よ……」

咲夜の青い瞳に見据えられ、思わず居住まいを正すルイズ。
しかし、自分は貴族なのだ、ここは使い魔に負けてはならないとばかりに視線だけは咲夜を睨み返す。
そのまましばしにらみ合った後、咲夜が口を開いた。

「それで、今日貴方と使い魔の契約を済ませたわけなのだけど。
 使い魔というのは具体的に何をするものなの?
 主人の友人の方の使い魔は身の周りの世話をしたり本をとってきたり管理したりしていたけれど、
 そう言った事をすればいいのかしら?」

「あ、ああ、そういうことね……
 そうね、概ね間違ってないわ。もうちょっと細かいけど」

そうしてルイズは咲夜に使い魔の役割を説明する。

使い魔とは、主人を助ける為に『サモン・サーヴァント』によって召喚されるハルケギニアの生物である。
亜人が召喚される事はあるらしいが、咲夜のように人間が召喚された事例はなく、
要するに今のこの状況は異例中の異例であるらしい。
その為なのか本来使い魔に与えられるべき主人と視聴覚を共有する能力は使えず、ルイズを大いに落胆させる事となった。
また、使い魔は魔法の触媒となる物質を見つける役目もある。
咲夜はこの世界のそういったものについては知識がないが、図鑑などで調べて覚えれば可能であるだろう。

「そして最後の一つ、というか一番やらなきゃいけないこと。
 それがご主人様、つまり私をその能力を持って守る事よ。……でも、メイドだし女の子だし、
 なんか心配ね……無理なら私の身の回りの世話だけでも良いわよ?」

「ああ、要するにボディーガード兼召使、って事なのね。いつもやってる事とあんまり変わらなくて安心したわ。
 ルイズ、私こう見えてもそういうのは大得意よ? 結構日常的にそういう事してたし。
 私が仕えてるお屋敷の警備も私の仕事だったもの」

にこやかに言う咲夜に、口の端をひくつかせながらルイズが問う。

「……あんた、メイドなのよね?」

「ええ、紅魔館メイド長、十六夜咲夜。それが私の肩書きよ」

「……普通メイドってそう言う事しないと思うんだけど」

「だって周りが頼りにならないし、私が何とかするしかないじゃない?
 基本的に問答無用な所だったし……」

そこまで聞いてルイズは一旦話を打ち切り、改めて咲夜に質問する。

「……とりあえず使い魔としてそこそこ使えそうだっていうのは分かったわ。
 しかし、あんたって何者なの?」

「メイドだけど」

「いやそれはもういいから。メイドって事は平民でしょ?
 でもミスタ・コルベールのディテクトマジックでは反応あったみたいだし……親のどっちかが貴族だったりしたの?」

「んー……多分違うと思うわ。だって私、この世界の住人じゃないもの」

その返答にルイズは腕を組み、首を捻って唸る。

「それよ。この世界の人間じゃないって言うけど、それ、ホントなの?
 オールド・オスマンは信じてるみたいだけど……」

「本当よ。信じる信じないは自由だけど、事実に変わりはないわ。
 私の世界は結界で区切られた世界だけど、その外の世界とも違うみたいね、ハルケギニアは」

咲夜はそう言うが、ルイズにはまだいまいち理解できない。
まあ無理もない。ハルケギニアの文明レベルは中世レベルであり、
咲夜の言う事はルイズにとって完全に理解の外であった。
そのうち考えてもどうにもならない、という結論に至り、ルイズは思索を打ち切り、溜息をつく。

「うーん……ま、いいわ。とりあえず使い魔の仕事はそんな感じね。
 あと、洗濯とか掃除とか、雑用もして頂戴。本職なんだからできるでしょ?」

「その位だったらやってあげるわ。これからよろしくね、ご主人様?」

そう言い、咲夜はくすりと笑いかける。ルイズはぷいとそっぽを向くと、
「ふ、ふん、当たり前よ。手を抜いたら承知しないんだからね!」と顔を少し赤くしながら言った。
しかし、その顔はすぐに凍りつく事となる。咲夜が何気なく首を巡らせた先に、
咲夜を召喚した日から置きっぱなしにしてあった藁束があったからだ。

咲夜の眉が顰められ、半眼でルイズのほうに向き直る。
『何あれ。まさかアレが私のベッドじゃないわよね?』とでもいいたげな視線に、ルイズの胃がキリキリと痛む。
あれがかねてより使い魔のために用意していたベッドである事は間違いない。
召喚されるのは動物や幻獣だと思っていたし、まさか人間が召喚されるなどとは夢にも思っていなかったからだ。
片付けるのを忘れていたのも仕方ないだろう。人間が召喚された上に契約を拒絶した事に腹が立ち、
平民なんかここで寝ればいいんだわ! とばかりにそのままにし、忘れていたのである。

咲夜の視線が痛い。何も言わないのが余計プレッシャーとなってルイズにのしかかる。
どこかからマットでも借りてきてそこで寝てもらおうと考えていたが、
咲夜の表情を察するにそれも難しそうだ。どうしよう、キリキリと痛む胃を軽く押さえ、ルイズは悩む。
彼女の強さがどれほどのものかは分からないが、なんとなく怒らせるとやばそう。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの16年生きてきた直感が、そう脳裏で警鐘を鳴らしている。

結局、その日はルイズのベッドで2人で寝ることとなった。



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