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確率世界のヴァリエール-07


 「土下座」

土下座(どげざ)とは、土の上に直に坐り、平伏して座礼を行うこと。
日本の礼式のひとつで、極度に尊崇高貴な対象に恭儉の意を示したり、
深い謝罪、お願いの意を表す場合に行われる。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「土下座」の項より引用
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%9C%9F%E4%B8%8B%E5%BA%A7&oldid=28443311



 確率世界のヴァリエール
  - Cats in a Box - 第七話



「真に申し訳御座いませんでしたっ、姫殿下!!
 気が動転していたとはいえ、姫殿下にあの様な無礼な物言いを!
 それに勝手に大使を名乗ったり勝手な振る舞いをしたり、、
 どうか、どうかお許しください!!」
額を床にこすり付けるルイズにアンリエッタはうろたえる。
「や、やめて頂だいな、ルイズ。
 あなたに感謝こそすれ、あなたが謝る事など何一つありませんわ!」

「そう、君は何も間違ったことはしてはいないよ」
窓からの声にルイズが顔を上げる。
「え? え? ワルド、、様?!」
「はっはっは、久しぶりだね、僕の可愛いルイズ」

「ええと、あの、ワルド? 、、、い、いつから、、そこに?」
アンリエッタが赤面しつつ尋ねるのへ、ワルドは黙ってそっぽを向いた。


絶望の涙に暮れるアンリエッタをキュルケが部屋の外へ引きずり出すと、
ワルドはルイズに朝食後に学院長室を訪れるよう告げて部屋を後にした。

しばしの仮眠から目覚めると、ルイズの猫耳は消えていた。
「やたっ!!」
喜びの声を上げて自分の頭をなでさする。
「ちぇー」
シュレディンガーが不満の声を上げるが気にしない。


朝食を取り、学院長室に向かう。
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「ちょ、部屋の前に行けって言ったでしょ!
 何でいきなり中入っちゃうのよ!」
「えへへ、ついクセで」

「なるほど、どこにでも行ける能力、というのは本当のようだな」
二人の目の前には白髪頭の痩せこけた、しかし威厳のある男が立っていた。
「ほう、カリーヌ殿に面差しがよく似ておられる。
 お初にお目にかかる、ミス・ヴァリエール」
「こ、こちらこそ初めまして、マザリーニ枢機卿」
トリステインの重臣へのいきなりの面会に緊張しながらも挨拶を返す。

「私をご存知か、それは光栄。
 で、オールド・オスマン。
 彼女のこの能力をどの程度の人間が存じているので?」
「そりゃこの学院におる者みんなじゃ」

「、、、はあぁ?! 何を考えている! 彼女のこの力が国防上
 どれほどの意味を持つかも判らんほど老いぼれたかジジイ?!」
「おヌシこそ昨日何があったか忘れるほどボケたか?
 おヌシとて数十年前、おヌシに仕える定めとなった哀れな使い魔を
 この学院で衆人の眼前に晒したじゃろが」
  使い魔のお披露目会に同席していなかったマザリーニはガリガリと頭をかく。
「だからといって馬鹿正直に晒す奴があるものか!
 ああ、もうよい、今からでも情報統制を、、」
「バッカじゃねえのおヌシ。
 トリステイン内外の王族や大貴族の子息令嬢が集まっとるんじゃぞココ。
 そんなもんできる訳がなかろうに。
 そんなことより早う本題に入らんかい、鳥の骨め」
「むぐ! くそう、判ったわ! この老いぼれめ」
ため息をつき皆に向き直る。

ルイズもあらためて学院長室を見回す。
まだ不満げなマザリーニの横にはアンリエッタとワルド。
そして髭をなでニヤつくオスマンの横にはキュルケが居た。
「ちょ、何でアンタもいんのよ」
「あたしに聞かないでよ」
「中途半端に知るのが一番危険ですのでな。
 ミス・ツェルプストーにもすべてを知って頂く」
マザリーニがジロリと二人をねめつける。

「では、本題に入る前に。
 このマザリーニ、殿下にお詫びをせねばならぬ事が御座います。

 承知のとおりアルビオンは内乱のただ中に御座います。
 貴族派の阿呆どもは打倒王政、ハルケギニア統一を旗印に掲げており
 内乱終わらばその矛先がわが国へ伸びるは必定。
 しかしながら今現在はあくまで内乱、先手を打とうにも
 こちらから攻め入らば内政干渉を口実に他国がわが国へ侵攻、
 野火の如くにその戦火はハルケギニアを覆いましょう。
 しかるにこのマザリーニ、その他の手を講じておりました。
 殿下にご尽力頂きましたゲルマニアとの同盟もその一つ。
 そして今ひとつが、アルビオン貴族派への内偵に御座います」

「内偵、と言うと、スパイ?」
「で、御座いますな、殿下。
 して、その内偵者の一人が、このワルド子爵に御座います」
「ええっ?!」
驚きの声を上げるアンリエッタへ、ワルドが深々と礼をする。
「職務の性質上止む無しとは言え、殿下に伏せていた事を
 このワルド、お詫び致します」

「い、いえ、良いんです。 それよりマザリーニ」
「は。 ではここからは子爵より説明を」
「かしこまりました」
受けたワルドが一歩前に進み出る。

「さて。
 枢機卿も仰いました通り、打倒王政とハルケギニア統一が
 彼らアルビオン貴族派の掲げる旗印です。
 しかしそれはあくまで表向きのもの。
 彼らの真の目的は始祖ブリミルの裔たる四王家に伝わる
 『始祖の秘宝』、そして、聖地の奪還」
「『始祖の秘宝』? それに、聖地の奪還、、ですか?」
「その通り、ルイズ。 君が土くれのフーケから
 取り返してくれた「コレ」を覚えているかい?」
ワルドが黒塗りのケースを中央のテーブルに置く。

「それって、、『破壊の杖』!」
「そう。 実はコレは私が彼らから秘密裏に盗み出したものだ。
 この『破壊の杖』を初めとして、聖地の付近では
 現在の技術では作り得ぬ様な様々な武器や道具が見つかっている。
 ロマリアでは『場違いな工芸品』と呼ばれているそうだが。
 彼らによれば聖地には別の世界への門があり、これらの品は
 そこからの『漂流物(ドリフターズ)』だと言う」

ワルドがケースを開け、禍々しい空気をまとう黒い銃を取り出す。
「その異界への門を開くための鍵、それこそが『始祖の秘宝』。
 我らの世界では成し得ぬ技術、持ち得ぬ武力。
 それを手にする事が出来れば、ハルケギニア大陸全土、、
 いや、全世界を手にする事も夢ではない、、、」
「それが、、、」
アンリエッタが息を呑む。
「そうです、殿下。 アルビオン貴族派の陰に潜み、
 この世界の覇を狙う狂気の集団。

 『レコン・キスタ』

 それこそが、我らの真の敵の名です」

「なんとまあ。 おっとろしい事もあったもんじゃ。
 しかし、その銃が異界からの漂流物ということは」
「そーよ学院長、その銃ってシュレちゃんの故郷のなんでしょ?
 ってことはー、聖地と繋がってるその異界って」
部屋の皆がいっせいにシュレディンガーを見る。

「何よシュレ! あんた東方から来たんじゃなかったの?!」
「あっれぇー? ルイズには言ってなかったっけ?」
「聞いて無いわよ!!」

「ちょ、ちょっと待ち給えミス・ヴァリエール!
 使い魔の、シュレディンガー君と言ったかな。
 君が、その異界から来たというのは本当かね?」
マザリーニが驚いた顔で詰め寄る。
「ええ。まあ」
「これはまた、なんという」
天を仰ぎ、ため息をつく。 

「で、わしらの敵の何たるかは判ったがの、
 それをどうするつもりじゃ、マザリーニ」
「異界への感慨にふける間も無しか。
 ロマンのかけらもないジジイめ」
現実に戻され、悪態をつく。

「まずはミス・ヴァリエール。
 今後は今日の様な軽挙妄動はお控え願う」
「そんな、マザリーニ!
 ルイズはウェールズのためを思い命を懸けて!」
「左様で御座いましょう。
 が、殿下。 それでは国を危くいたします。
 ワルド子爵。
 これより王宮に戻り、不安定になった国境警備の為の
 巡回および不明勢力への攻撃権限を持つ部隊を設立する。
 が、それはタテマエだ。
 予算の8割は『ゼロ機関』の創設資金とする。
 上はわしだけ。
 人選は任せる、階級なしの実力主義だ。
 これを対レコン・キスタの工作部隊とする」
「はっ!」

「ミス・ヴァリエール、勿論貴女にも参加してもらう。
 今後はアルビオンの為、ウェールズ皇太子の為では無い、
 トリステインの為、姫殿下の為に命を懸けて頂く。
 宜しいか?」
「は、はいっ!!」
奮い立ち、返事を返す。
「結構。
 オールド・オスマン、彼女の身辺の情報管理は任せるぞ」
「おヌシに言われずとも生徒の身を安んじるはワシの務めじゃ」

「それと、ミス・ツェルプストー」
「判っておりますわ、枢機卿。
 聞いてみれば対岸の火事とも行かぬ様子、
 それに乗りかかった船ですわ。
 出来うる限りの協力はさせて頂きます」
「有難い」

「しかしワシは心配じゃのう。
 シュレ坊よ、この鳥の骨に変な事をされそうになったら
 キチンとこの爺に言うんじゃぞ?」
オスマンがシュレディンガーの頭をなでる。
( (お前が言うな!!) )
ルイズとキュルケは笑顔のまま心の中で突っ込んだ。

「で、何から始めるつもりじゃ? マザリーニ」
「そう急くな、爺。 もう仕込みは済んでおるわ。
 子爵、首尾は?」
ワルドに向き直る。
「は。 枢機卿の命どおり、チェルノボーグ監獄にいた
 土くれのフーケを脱獄させ、レコン・キスタへと
 渡りを付けておきました」

「ええっ! フーケを?!」
驚くルイズをよそにオスマンがニヤリと口を歪ませる。
「成る程の。
 内乱のままではこちらから手出しは出来ん。
 しかし、トリステインに恨みを持つ者が
 あちらから仕掛けてくれば話は別、か。
 しかも内乱の只中であれば、挟撃も出来ようて。
 火の無いところに火薬を仕込む。
 おヌシ、学生時代から変わらず陰険じゃのう」
  「ぬかせ、人聞きの悪い。 火なら轟々と燃えておるわ。
 ワシはただ火中に栗を投げ入れたに過ぎん」
クックック。 と、二人が悪役然とした顔で笑い合う。

ルイズが思わず考え込む。
(フツーの大人はこの組織に居ないのかしら)
いません。

マザリーニが懐を探る。
「そうそう、ミス・ヴァリエール。
 これが君への初任務だ、『エージェント・ゼロ』。
 この手紙をアルビオンへ届けてくれ給え」
トリステイン王家の花押の入った封筒を差し出す。
「皇太子は君に「王家の務めを果たす」と言ったそうだね。
 ならば、果たして貰おうではないか。
 例え卑怯者の汚名を着る事になろうともな」
「マザリーニ? それはどういう、、」
「つまりはですな、殿下。
 王族に死に際を選ぶ権利なぞ無い、と言う事で御座いますよ。
 アンリエッタ殿下も肝に銘じて置かれるが宜しい。

 泥をすすり、石に噛り付いてでも生き延びる。
 それこそが「王家の務め」で御座います」

  。。
 ゚○゚


「はあ、とんでもない事になっちゃったわねー」
その日の晩、ルイズは自室の窓から星空を見上げていた。

マザリーニからの手紙を一読した後の、ウェールズの表情を思いだす。
ほんの一瞬だけ垣間見せた、絶望と憎悪の入り混じった表情。
あれは、何へ、誰へ向けてのものなのか。
「死」という約束を自分から奪った、私へのものなのだろうか。
判らない。 ただ、一生忘れることは出来ないだろう。
その後、皇太子はいつもの凛々とした表情に戻り、
トリステインとの同盟と、地下への潜伏を確約した。

ルイズの中に、逝くあての無い罪悪感だけが残った。

「判って無いなあー、ルイズってば。
 君が世界を「とんでもない事にした」んだよ」
ルイズの横でシュレディンガーが二つの月を見上げる。

罪悪感と言えば。
「ねえ、シュレディンガー」
仕方が無いとはいえ、この使い魔も自分が無理やりに喚び寄せたのだ。
月が一つしかないという、聖地の向こうにある『異世界』から。
「あんた、もしかしてさ。 自分の世界に、、戻りたい?」
「ん~? 今は別に。
 なあに? ルイズ。 僕の世界へ行ってみたいの?」
「へ?」
「よーし! じゃあ、案内しちゃお!!」
突然のキスに、世界が揺れた。


==============================


「へー、こっちはお昼なんだ」
眩しい光に目が眩む。 ごう、と風が髪を巻き上げる。

天を突かんばかりに立ち並ぶ、キラキラと陽光を反射する幾百の銀の塔。
地平へと続く巨人の塔の連なりの、そのあまりに広大な景色に距離感を失う。
ルイズ達はその中でもひときわ高い塔の頂上付近にいる様だった。
おそるおそる、数百メイル下の地上を見下ろす。
シュレディンガーが手を広げ笑う。
「ハルケギニアのお姫様、ニューヨークへようこそ!」


「ななななにこれ何これ何コレ!!」
上から見下ろしたときに見えていた無数の点は、やはり人間だった。
興奮と驚愕を隠そうともせずに、ごった返す人ごみの中を歩く。
先ほどまで自分達がいた塔を見上げる。
あまりの高さに脳の芯が冷えていく様だ。
「シュレ、これって?!」
「これはエンパイア・ステート・ビル。
 この街のランドーマークだよ」
見上げた視界を翼の生えた白い何かが轟音と共に横切る。
「あれは?! シュレ!」
「あれは飛行機。 ボーイングかな?」
「あれは?! あれは?!」
「あれは車。 わお、カマロだ!」
「人が写ってるあれは?! おっきい!」
「あれはモニター。 あは、ミコラス・ケイジ!」
見えるもの全てをシュレディンガーに尋ねつつ、
顔を輝かせ手を繋いで通りを走る。

「すごい、すごい、すごい!!」


「ねえ、シュレ! あの人が履いてるのって?!」
作業服の様な生地だが、刺繍が入ったその青色のズボンは
スリムでいかにも格好良さげだ。
スカートの女性もいるが、道を行く若い女性の結構な数が
腰周りの素肌も露わなその服を身に着けている。
「あれはジーンズ。
 へえ、ローライズがまた流行ってるんだ」
シュレディンガーがルイズを覗き込む。
「ルイズも着る?」
照れながらこくこくとうなずく。


「えへへー」
ちらりとのぞくおへそに少しはにかみながらも、
白色のギャザーの着いたタンクトップにローライズジーンズ、
黒のリボン付きローヒールで街を歩く。
「やだ、おいし」
マスタードの利いた肉汁たっぷりのホットドックを
シュレディンガーと半分こしながら、それをペプシで流し込む。

「あ、あれ!」
シュレディンガーが指差す先には巨大な絵が飾られてある。
「007だ! わ、新作やってるんだ!」
「ダブルオーセブン? 何それ」
「映画だよ!
 ええと、観れば判るよ!!」
シュレディンガーに手を引かれ、絵の下にある入り口から
少し薄暗い建物の中に入る。

数十分後、ルイズはダニエル・クレイグを応援する声と共に
手に持ったキャラメルポップコーンを握り潰していた。

映画が終わって通路に出てくるなりルイズが叫ぶ。
「すすすすごいわすごいわコレってナニ?!
 他にもあるの? 他にもやってる! 他にも観たい!!」

数十分後、ルイズはキャメロン・ディアスを襲う悲劇に
手に持ったジンジャーエールと共に悲嘆の涙を床にこぼした。

「偉いわ、、偉いわ、彼女はよくやったわ、、
 努力は報われるべきなのよ!」
涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら
ルイズはえぐえぐとハッピーエンドに感涙する。


「他は?他は? まだ観たい~!!」
「もう、また今度!」
未練がましくシュレディンガーに引きずられ、表通りに出る。
衝撃で揺さぶられた脳が、地面をたわんで見せる。
「わ、もうこんな時間?」
外灯に照らされた街の上には、夕映えの空が広がっている。
「うわー、、! 綺麗、、、」
ルイズは視界を埋め尽くすイルミネーションを見上げる。
「夜景もいいけどー、これもまた今度ね」
そう言いつつキスをした。

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きりりと冷えた空気がルイズを包む。
「ここは? って、うわっ!!」
大きな車輪のついた針金細工にまたがった人々が
二人の周りを猛スピードで通り抜ける。
「これが北京名物の自転車通勤ラッシュだよ!
 さ、中華中華~♪」

屋台の小えびのたっぷり入った朝がゆと北京ダック風のチキンに
舌つづみを打ち、小籠包で二人そろって口の裏を火傷した。

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その後二人は万里の長城に感嘆し、
タイガーバウムガーデンで驚嘆し、
ディズニーランドの夜景を堪能し、
エアーズロックからの夕景に涙し、
エベレストの頂で鼻風邪を引いた。

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「ひぐしゅ!!
 そりゃ確かにもっと見晴らしのいい所って言ったけど、
 ものには限度ってもんがあるでしょ!」
「だから今度はあったかい所に来たでしょー? もう」
「ふわー、今度もまたずいぶんと賑やかな所ねえ。
 ここは何ていうの? 何か北京に似てるけど」
「ここはトーキョー! さあ、おスシ!」

スシローできゃあきゃあと20貫を平らげ、外に出ても
トビッコとえんがわの美味しさについて熱く語るルイズの目に
先ほどスクリーンごしに応援した映画俳優が飛び込んだ。
「ボンド! ほらシュレ、ボンドがいる!」
「ふえー、ポータブルDVDプレイヤーかあ。 すごい時代だなあ。
 ほら、ルイズ。 このDVDっての一枚に映画が一本入っててー、
 画面はちっちゃいけど、これでどこでも映画を観れるの。
 へー、新作の封切りにあわせて昔のやってんだー」
「シュシュシュシュレ、あの、あれって?」
「ああ、あの奥の棚の? うん、全部DVDだね」

あまりの感動にぐらりと傾き、体勢を立て直してから
もじもじとシュレディンガーを観る。
「シュレ、あのね、、あのね、、」
「欲しいの?」
真剣にこくこくとうなずく。


入り口のカゴを引っつかみ歓声を上げて店の奥へ突撃した
ルイズを目で追うと、シュレディンガーは感慨深げに街を見上げる。
(懐かしいな、、少佐と来たのも、もうずいぶんと昔なんだろうな)
ルイズと出会ってから忘れかけていた、甘い感傷にしばし浸る。
彼の趣味に付き合ってよくこの街へ来た。
この国の言葉もカタコトながらその時に覚えた。
彼が世界の全てを滅ぼしたとしても、なぜかこの街だけは残っている、
そんな気がする不思議な街だった。

「うわ、ラスト・バタリオンじゃん!」
後ろから急にかけられたその言葉に、思わず身をちぢこませる。
振り返ると、二人の若者が携帯電話を自分に向けている。
「ナアニ?」
おそるおそる尋ねる。
「スッゲ、ネコミミ! 動いてるしw
 あー、ガイジンさん? キャンニュースピーチジャパニーズ?」
「うわー、クオリティー高けーw
 えーと、写メオーケー?
 それってアレでしょ?
 ラスト・バタリオンのコスでしょ?」
若者が指し示したその先には、赤と黒の飛行船を挟んでにらみ合う
英国空軍のフライトジャケットを羽織り髭を蓄えたトム・クルーズと
頭をツーブロックに剃り上げナチス士官服を着たキアヌ・リーブスの姿があった。

「ぶふうっ?!」
思わず吹きだす。
「おー! もうやるんだ、ラスト・バタリオン。
 そーいや人権団体がどーたらってどうなったん?」
「何かドキュメント風やめてバリバリフィクションらしーよ。
 ナチス側は凶悪な改造人間勢ぞろいでー、
 イギリス側は吸血鬼だの狼男だの古い怪物が味方してんの」
「ナチスの科学力は世界一ィ!! ってやつ?w」
「それそれw
 んで、興行収入も半分くらいロンドン復興資金にすんだって」
「うはw、さすがジョークの国イギリス」
「でもさー、このトム・クルーズのペンウッド卿さー、
 本人つべで観たけどスゲーデブだったよw」
「みたみたw 美化しすぎだろハリウッドw」


写メを撮り終えた若者二人と別れ、もう一度映画のポスターをみる。
自分の力なぞはるかに及ばない、この世界の持つ「どうでも良さ」を
思い知らされ、知らずにやけ笑いがほおに浮かぶ。

「おまたせー! って何よ、にやけちゃって。
 知り合いにでも合った?」
「あはは、知り合いっていえば知り合いかな?」
ふてぶてしくトム・クルーズを見下ろすキアヌ・リーブスに目をやる。
「ふふ、やっぱり別人だったみたい。
 っていうかルイズ、何その山! そんなに買うの?!」
「えー、いーじゃない!
 てゆうか、向こうは何時くらいなんだろ?」
「もう朝方じゃない?」
「うぇ?! うそっ! 帰るわよ、シュレ!」

空を見上げ、大きく息を吸い込み、自分の主人を振り返る。
繋いだ手に力を込め、にっこりと微笑む。


「うん! 帰ろ、ルイズ。
 『僕たちの世界』に」

  。。
 ゚○゚




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