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アノンの法則-13


翌朝、トリステイン魔法学院は大騒ぎとなっていた。
巷で噂になっていた『土くれのフーケ』が宝物庫の壁をぶち抜いて、学院が保管していた秘宝『奇跡の木札』を持ち去ったのだ。
壁には、『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。
『奇跡の木札、確かに頂戴いたしました。土くれのフーケ』
事件現場となった宝物庫には学院中の教師が集まり、醜く責任をなすりつけ合っていた。
「土くれのフーケ! 貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か! 魔法学院にまで手を出しおって! 随分とナメられたもんじゃないか!」
「衛兵はいったい何をしていたんだね?」
「衛兵などあてにならん! 所詮は平民ではないか! それより当直の貴族は誰だったんだね!」
「ミセス・シュヴルーズ! 当直はあなたなのではありませんか!」
その様子を、事件の目撃者と言うことで呼び出されていた、アノン、ルイズ、キュルケ、タバサ、シエスタの五人は、あきれたように見ていた。
さっさと捜索隊を組んで犯人を捜しにいけばいいものを、いつまでも誰が悪い、誰が責任を取るだのと騒いでいるのだ。
これではフーケも楽々逃げおおせてしまうだろう。
「喝ぁッ!!!」
宝物庫での様子を黙ってみていたオールド・オスマンが、我慢できんとばかりに教師達を一喝した。
「責任のなすり付け合いなどやめんか、見苦しい! わしを含めてじゃが、誰もまさかこの魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思っていなかった。
つまり、我々は油断していたのじゃ。責任があるとするなら、我ら全員にあるといわねばなるまい」
教師たちは、恥ずかしそうに顔を伏せた。
「で、犯行の現場を見ていたのは誰かね?」
オスマンが尋ねると、コルベールが自分の後ろに控えていたアノン以外の四人を指差した。
「この四人です」
ルイズ、キュルケ、タバサが進み出て、シエスタその後ろに続く。
こんな場は初めてで緊張しているのか、シエスタの動きが妙にぎこちない。
そんなシエスタを見ながらアノンは、使い魔って数に入らないのか、と小さく漏らした。
「ふむ……、君たちか」
オスマンが進み出た四人より、アノンを興味深げに見ているのは気のせいだろうか。
「詳しく説明したまえ」
オスマンに言われ、ルイズが見たままを述べた。
「あの、大きなゴーレムが現れて、ここの壁を壊したんです。肩に乗ってた黒いメイジがこの宝物庫の中から何かを……、その『奇跡の木札』だと思いますけど……、盗み出したあと、またゴーレムの肩に乗りました。
ゴーレムは城壁を蹴り崩して歩き出して……、最後には崩れて土になっちゃいました」
「それで?」
「後には、土しかありませんでした。肩に乗ってた黒いローブを着たメイジは、影も形もなくなってました」
「後を追おうにも、手がかりナシというわけか……」
オスマンはひげを撫でた。教師達も秘宝の奪還は不可能では、と場の空気が重くなる。
「失礼します」
その時、静まり返っていた宝物庫にミス・ロングビルが現れた。
「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか! 大変ですそ! 事件ですぞ!」
興奮した調子で、コルベールがまくし立てたが、ミス・ロングビルは落ち着いた態度でオスマンに告げた。
「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」
「調査?」
「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。
すぐに壁のフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」
「仕事が早いの。ミス・ロングビル。で、結果は?」
「はい。フーケの居所がわかりました」
「な、なんですと!」
コルベールが、驚いて声をあげた。
「近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒いローブの男を見たそうです。おそらく、それがフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」
「黒のローブ? それはフーケです! 間違いありません!」
ルイズが叫んだ。
オスマンは、鋭い目で、ミス・ロングビルに尋ねる。
「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
「では、捜索隊を編成する。我こそはと思う者は、杖を掲げよ」
だが、誰も杖を掲げない。皆、トライアングルクラスの腕と、数々の恐ろしい噂を持つフーケにしり込みしているのだ。
「おらんのか? おや、どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」
情けない教師陣に、オスマンが眉をひそめる。
すっと杖が掲げられた。
「ミス・ヴァリエール!」
コルベールが、驚いた声をあげた。
教師達の杖が上がらぬ中、フーケ討伐を志願したのは、ルイズだった。
「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか、ここは教師に任せて……」
「誰も杖を掲げないじゃないですか」
唇を強く結んで、ルイズはそう答えた。
「ふん。ヴァリエールには負けられませんわ」
そう言って、今度はキュルケが杖を掲げる。
キュルケが杖を掲げるのを見て、タバサも掲げた。
驚いて見つめる二人に、タバサは短く、
「心配」
とだけ言った。
「ありがとう……。タバサ……」
感極まったように、ルイズとキュルケはタバサにお礼を言った。
「アノンさんも、行くんですよね?」
なんだか場違いな気がして、居心地の悪い思いをしていたシエスタが、こっそりとアノンに尋ねた。
「たぶん、連れてかれるんだろうね」
「じゃ、じゃ私も……!」
「やめときなよ、きっとあのゴーレムに踏み潰されるよ?」
アノンに止められ、シエスタはしゅんと肩を落した。
意志の固い三人を見て、オスマンが、
「そうか。では、頼むとしようか」
と言うと、コルベールが声を上げた。
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒たちをそんな危険にさらすわけには!」
オスマンは、まあまあとコルベールをなだめる。
「彼女たちは、敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いているが?」
シュヴァリエとは金では買えない、実力の称号。教師たちは驚いたようにタバサを見た。
オスマンは次に、キュルケを見た。
「ミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」
キュルケは得意げに、髪をかきあげる。
そして次にルイズを見て……目を逸らした。
「その……、ミス・ヴァリエールは優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いている! しかもその使い魔は!」
真剣さの篭った目で、オスマンはアノンに視線を移した。
「平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」
オスマンは思う。彼が、本当に伝説の『ガンダールヴ』なら……。
土くれのフーケにも、後れを取ることはあるまい。そして、この機会に、彼がミス・ヴァリエールに御しきれるものか、見極める。
「この三人に勝てるという者がいるのなら、前に一歩出たまえ」
そう言って、誰も名乗り出ないのを確認すると、オスマンはアノンたちに向き直った。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
ルイズとタバサとキュルケは、顔を引き締めて直立すると「杖にかけて!」と唱和した。それからスカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。
アノンも三人を真似ようとしたが、スカートをはいていなかったので、やめておいた。
「では、馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地に着くまで温存したまえ。ミス・ロングビル!」
「はい。オールド・オスマン」
「彼女たちを手伝ってやってくれ」
ミス・ロングビルは頭を下げた。
「もとよりそのつもりですわ」

馬車は、襲われたときに、すぐに飛び出せるほうがいいということで、屋根の無い荷車のようなものが用意されていた。
「はい、ダーリン。これ使って」
馬車に乗り込むアノンに、キュルケが例のアノンのために買ったという剣を差し出した。
「あのフーケを相手にするのに、その剣だけじゃねえ?」
横目にルイズを見ながら、キュルケがアノンに剣を持たせる。
決闘はうやむやになってしまったが、確かにあのボロ剣だけでは心もとない。
ルイズは不愉快そうにそっぽを向いた。
(コレ、デルフがナマクラって言ってた奴だ…)
そう思ったアノンだったが、とりあえずデルフと一緒に、その剣を背中に背負った。
これで、アノンの装備はデルフリンガーと金ピカの剣。それに、モット伯の屋敷から持ち帰った魔法の杖だ。
ルイズたちの杖と違い、簡単に隠し持てるサイズではなく、かといって他の武器に偽装するには小さすぎるこの杖を、アノンは服の下、背中に差し込んで持ち歩いている。
「さて、全員乗りましたね?」
皆が乗り込み、出発しようとした時、シエスタがバスケットを持って駆けてきた。
「途中でおなかがすいたら、皆さんで召し上がって下さい」
そう言ってアノンにバスケットを渡す。中にはサンドイッチが入っていた。
「あんた、ピクニックじゃないのよ?」
ルイズがじろりとシエスタを睨む。
しかしキュルケとタバサは、
「あら、いいじゃない。おなかが空いてちゃ戦はできないわ」
「ハシバミサンドはある?」
「あんたたちねえ…」
渋い顔をするルイズをキュルケが笑う。
「ふふ、自信が無いのね。そんなにメイドにアノンを奪われるのが怖いのかしら? 」
「そんなわけ無いでしょ!」
「う、奪うだなんて、そんな、私……」
「だからなんであんたは赤くなんのよ!」
「あの、そろそろ行きませんか…?」
ミス・ロングビルが、すまなさそうに言った。

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