あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-13



「はい。まいどありがとうございます。少し待ってくださいね」
 年季の入った一本物のカウンターに、透き通った琥珀色の液体が入ったガラスの
瓶が置かれる。ワインと並ぶタルブの名産品、秘薬ミジュアメの瓶だ。その贈答品に
使われるような、ちょっと洒落たデザインの瓶を、すでに壮年も過ぎ老年の域に
入った女性が丁寧に袋に詰めていく。
「どうぞ。ちょっとおまけしておきました。新製品のドロップ、ぜひ食べてみて
ください」
「ありがとう。みんな喜ぶわ」
 そう言って袋を受け取るのは、翠の髪を下ろしたまだ若い女性――
ミス・ロングビルこと、マチルダ。あの『破壊の杖』騒動の翌日、早速アルビオンへ
帰る前に、血のつながらない妹や、彼女と一緒に暮らす子供たちへのお土産を
買うために、アルビオン行きのフネが出る港町ラ・ロシェールへ直行せずタルブへと
寄ったのだ。1日ほど余計に時間を費やすことになるが、そんなことは気にせずに、
にこやかに微笑む女性に会釈すると、そのまま店から出ようとする。
「……おっと」
「あ、し、失礼。大丈夫ですか?」
 入り口で誰かにぶつかりそうになる。視線を少し下げると、そこにいるのは
齢80には達しているであろう、腰の曲がった老女。ハルケギニアの平均寿命からすると
とんでもない長寿だ。老女は手に節くれ立ったメイジの証、杖を持ち、かつては
艶やかだっただろう白くなった髪を後ろでまとめている。
「問題ない。けれど、もうちょっと周りをよく見ることだね。戦場だけでなく
探索でも周囲の警戒を怠れば、そこに待っているのは死だけさ」
「ご忠告痛み入ります。ミセス」
「ミス、だよ。ミス・ルーリー・エンタープライズ。『土』のトライアングル。
アンタも気張らんと、アタシみたいになるよ」
 そう言って老メイジ、ルーリーは笑う。すでに適齢期の上限に達しかけている
マチルダにはそれは笑い話ではないのだが……引きつった笑みで何とかそれを
ごまかし――あることに気づいた。
「……エンタープライズ、ということはアルビオンのご出身ですか?」
「そうだよ。もう60年以上戻ってない。
 ……いや、もう戻れないがね」
 そう言ってルーリーは笑う。マチルダにはその家名に思い当たるところがあった。
さして領土を持たない代わりに、一族すべてが探求心の塊とも言える変わった
貴族。まさに家名そのままに世界を旅し、様々な見聞をアルビオンに持ち帰った
功績で知られていた。あるときまでは――
「……モード大公の叛乱、ですね」
 それはマチルダにとっても忘れることのできないこと。名を捨て、汚名をかぶり、
すべてを失った事件。
「ああ。エンタープライズ家はサウスゴータ家と並ぶモード大公の直臣だった。
 結果、家は断絶。アタシはずいぶん前に家を出たっきりだったからね。直接
叛乱には関わっていないし、独身だし、この年だし、二度と戻らないという条件付きで
赦されたのさ……だから、アタシが最後のエンタープライズだよ」
「……申し訳ありません」
「気にしとらんよ。昔の話さ。
 ……ところで、アンタ、どこかで会ったことはないかい?」
 そう言ってルーリーはマチルダの顔を見る。サウスゴータ家とエンタープライズ家は
親交が深かった。けれど、目の前の老女は60年以上戻っていないという。
知っているはずはない――
「……いえ、初めてお目にかかりますが……」
「そうかい。どこかで会ったような気がしたんだけどねぇ……アタシも耄碌したかな?」
「お知り合いの方に似ているとは光栄ですわ。それでは、失礼致します」
 話を切り上げマチルダは店を後にする。その姿を見送って――ルーリーは声を上げた。
「どうしたんですか!?ルリおばあちゃん?」
 カウンターにいた女性が思わず声を上げる。
「……あの目。あの髪の色。そうだよ、プリンス・オブ・サウスゴータにそっくり
だったんだよ!」
 ルーリーはそう言ってマチルダの去っていった方角を見る。そして彼女が
マチルダの名を聞くことになるには、まだ少しの時間を必要とした――


「たっ……たた、大変よー!」
 『破壊の杖』騒動のあった日から数日後の虚無の曜日――それはブリミル教徒に
とっての安息日。しかし、今日はそのイメージとはかけ離れた、ちょっとした
騒動が巻き起こる。
「タバサ!タバサー!!」
 そう叫びながら女子寮をどたばたと走り回るのはキュルケ。彼女はある一室の
前にたどり着くと、規則違反の『アンロック』と唱え中に入る。部屋の中には
堆く積まれた本とその中心に座る節くれ立った杖を手にした青い髪の少女、タバサ。
タバサはキュルケが「出かけるわよ!」と言いかけた瞬間、杖を手にルーンを
唱えようとした。
「あーん。やめて、まって!
 『サイレント』の魔法を唱えたいんだろうけど……でもダメよ。あたしの話を
聞いてほしいの!」
 そう言いつつタバサの両肩をつかんでがっくんがっくんと揺するキュルケ。
タバサが杖を握る手から力を抜いたことを見て、ようやくキュルケは揺するのを
止めた。
 荒い息を整えつつ、キュルケはタバサに向き直る。
「ふがくがルイズを抱えて街に行っちゃったのよ!」
「――わかった。……でも、追いつけない」
「いいのよ!街で探せばいいし!
 ありがとタバサ♪」
 キスしてきそうな勢いで感謝するキュルケを横に、タバサが窓を開けて口笛を吹き、
彼女の使い魔を呼ぶ。しばしの後に二人はシルフィードに乗ってトリステイン王国の
王都トリスタニアに向かうことになるのだが……当然、先に行った二人の影すら
見えなかったことは言うまでもなかった。


「……へぇ。ここが王都トリスタニアか。結構風情があるわね」
「今歩いているのがブルドンネ街。トリスタニアで一番大きな通りよ」
 先日の約束、というかルイズが一方的に宣言したとおり、ルイズとふがくは
トリステイン王国の王都トリスタニアへやってきた。馬で来るなら3時間ほどかかる
距離も、ふがくに抱えられて飛べばほんの数分。貴族の証であるマントを身につけた
ルイズと、それに従う、明らかに周囲と異なる風体のふがく。知らず二人の行き先の
人混みが割れて道ができるのだが……ルイズもふがくもそれが普通でないことに
気づいていなかった。
「ふうん。騎馬兵力の侵攻からの防御を前提にした狭い街路に見えたけど……」
 ふがくが幅5メイルほどの大通りに率直な感想を抱く。ルイズの話から大日本帝国の
帝都東京の銀座あたりに相当するのだと考えたが、どう考えても狭い。加えて
文字の書かれた看板もほとんどないことから、識字率も高くないのだとも。
ふがくの感想はある意味的を射ているのだが、当のルイズにはかちんとくる
一言でもあった。
「……ま、まぁ、そりゃあんたの国に比べれば狭いでしょうよ。
 あんなバカみたいに広い道なんてハルケギニアのどこ探してもないわよ……」
 ルイズは『破壊の杖』を取り戻した夜に見た夢に出てきた、あのだだっ広い道
――正確には試作機を飛ばすための滑走路なのだが――と比べているのだと勘違いして
ふるふると肩を震わせる。
「え?何か言った?」
「何でもない!ほら、先に剣を買いに行くわよ!」
 いらだちを隠さないルイズが、そのまま大通りから小路に入る。お世辞にも
清潔とは言えず……どころかゴミや排泄物の異臭が鼻をつく道に、さすがのふがくも
顔をしかめる。
「……う。……さすがに、コレは……」
「フン!わたしだってこんなところはイヤよ!
 でも、あんたの剣を買ってあげるんだから、黙って付いて来なさい!」
「アンタが勝手に話進めてるんでしょうが!私が頼んだわけじゃないし!」
 ルイズの身勝手な物言いにふがくが不満をあらわにする……がルイズは無視して
小路に面した武器屋のドアを開ける。カウベルの音が軽やかに鳴り響き、
カウンターの奥に座った、年老いた痩せぎすの小男がやる気のさなげな声を上げた。
「へーい。いらっしゃー……と、こりゃ貴族様で?
 うちはまっとうな商売をしておりまさあ。お上に目をつけられるようなことなんか……」
 入ってきたのがマントを着けたメイジと見慣れない風体の少女だと気づいた店主が
慌てて椅子から立ち上がる。ルイズはその様子に軽いいらだちを覚えはしたが、
あえて無視した。
「客として来たの!使い魔に持たせる剣が欲しいのよ」
 ルイズが言うと、店主はふがくの姿を頭の先からつま先、というか車輪の先まで
ゆっくりと見定める。背格好に見合わず大きな胸と背中の翼や足があるべき場所の
車輪などをなめるように見てふがくからきつい視線をぶつけられた後、店の奥から
細身の剣を持ってきた。
「(カモがネギしょってやってきたわい。せいぜい高く売りつけてやる。)
 お待たせ致しやした。美しい彩飾が施された『レイピア』でございます」
 そう言ってルイズたちの前に細身の剣レイピアを持ってくる。ルイズは
「綺麗」と賞賛したが、ふがくは深く溜息をついた。
「……それ、時速700リーグで飛び回りながら振り回して保つ?」
「……は?」
 店主は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。それもそのはず。ふがくが提示したのは
ハルケギニア最速の風竜の3倍以上の速度。そんな速度で振り回されることを考慮した
武器などあるはずもない。
 汗をかきながらレイピアを引っ込めた店主は、次に隣国ゲルマニアの高名な
錬金魔術師シュペー卿が鍛えた、鉄をも両断する店一番の業物だと金ぴかの大剣を
持ってくる……が、ふがくはそれも却下した。
「何でよ?すごい剣じゃない!」
「……超重爆撃機型の私があんなもの空中で戦闘機動しながら振り回したら
どうなると思ってるのよ!そ・れ・に、悪趣味な装飾が私の好みじゃないわ!」
 ふがくはそう言って、ある日姉二人がやっていた訓練を思い出した――


「とりゃあ~~~~っ!あああ……あわわ、はわわわわ~~~っ!?」
 おかっぱ頭の小柄な航空機型鋼の乙女――艦上攻撃機・てんざんが零式艦上戦闘機・レイから
借りた刀――レイの魂とも言える愛刀『主翼斬(しゅよくぎり)』の予備――を
高速で戦闘機動を行いながら上段に振り上げて……刀の重みでバランスを崩す。
いつも抱えている爆弾よりずっと軽いのに!そう思うてんざんだが、いつもと
違う重心移動に身体の平衡が保てなくなっていた。
 その様子を見ていた、黒く艶やかな髪をポニーテールにし、高機動性能を追求した
スレンダーな体型にサムライ然とした出で立ちの航空機型鋼の乙女、零式艦上戦闘機・レイが
冷静に言葉を口にする。
「やはりな。私やナナより重いてんざんは、バランスに問題がある」
 さりげなくひどいことを言うレイ。
 確かに小柄な身体に時速400km以上の高速で800kg爆弾や必殺の酸素魚雷を
敵艦隊に叩き込める能力を持たせた艦上攻撃機型の鋼の乙女であるてんざんは、
持ち前のパワーだけなら同じ航空機型で単発の姉たちを超える。大日本帝国の
航空機型鋼の乙女でてんざんよりパワーがあるのは、大日本帝国の航空機型
鋼の乙女の長姉である双発の一式陸上攻撃機・いちこか、彼女たちはまだ知らない
末妹で6発の超重爆撃機・ふがくくらいなものだ。しかし……
「ひえっ、ふわわわ、わきゃ~~~~~っ!」
 悲鳴を上げるが体勢を立て直せないてんざん。だんだん海面が迫ってくる。
「故に私のように、戦闘機動で主翼斬を振るうというのは、てんざんには無理なのだ」
 あくまで冷静なレイ。そんなレイにてんざんが助けを求める。
「お姉さまっ、助けてください、レイお姉さま~っ!」
「残念だが、私に救助機としての性能はない。だがてんざん、その体験は無駄ではないぞ」
「そぉんなぁ~~~~っ!きゃーーーーっ!」

 どぼーん。

 結局、てんざんはそのまま盛大な水柱を上げて海に墜落したのだった――


 ――確か、あれは実戦配備前とはいえいつまで経っても『みんなのてんちゃん』な
半人前扱いのてんざんが一人前と認めてもらいたくてレイから愛刀『主翼斬』の
予備を借りて戦闘訓練やったんだっけ、とふがくは思い出す。開発中だった自分は
秘密格納庫からその様子を見ていただけだったが、自分がああなると考えると
悪寒がするどころの話ではない。

「あっはっは。おもしろいこと言うな、姉ちゃん」
 突然、武器屋の中に今まで聞いたことのない声が響き渡る。突然のことに
店の中をきょろきょろと見回すルイズとふがく。そうこうしているうちに、
ふがくがたくさんの長物武器が十把一絡げに押し込まれた樽の中から一振りの
錆が浮いてぼろぼろの長剣を引き出した。
「……ひょっとして、今しゃべったのアンタ?」
「おうよ。俺はあの伝説の剣デルフリンガー様だ……って、おでれーた。
てめ、『使い手』か?」
 剣を手に会話するふがく。その様子にルイズが驚きの声を上げる。
「それ、意志を持つ魔剣『インテリジェンスソード』じゃない!」
「やいデル公!静かにしやがれ!いつもいつも商売の邪魔しやがって!」
「へっ!てめーの売り方(やりかた)には反吐が出るぜ!」
 ふがくに握られたまま店主と喧嘩を始める魔剣デルフリンガー。そのやりとりを
ふがくがデルフリンガーの柄を強く握りしめることで止める。
「痛たたた……止めてお願い潰れる……」
「くだらないことしてるからよ。少しはおとなしくしてなさい」
 そう言って、ふがくはデルフリンガーを数回軽く振る。片刃の刀身の長さは
さっきのシュペー卿とかいうのが鍛えたらしい悪趣味な大剣と変わりはないが、
妙に手になじむ。それに初めて握ったとは思えないこの感覚……
ふがくはデルフリンガーを手にしたままルイズに向き直った。
「これにするわ」
「ええーっ?こんなのにぃ?」
 ルイズが不満をあらわにする。お小遣いはまだあるし、『破壊の杖』を取り戻した
褒賞としてオスマンからもらった金一封もある。シュペー卿の大剣の値段は
聞かなかったが、多分買えたはず。それなのにふがくが選んだのは錆の浮いた
ぼろぼろの剣。確かに珍しい魔剣としての価値はあるのだろうが……見た目に
こだわる貴族の矜恃がそれを認めることを拒否していた。
「私が気に入ったの。使うのは私よ?」
 そう言ってふがくは譲らない。結局、根負けしたルイズが店主に値段を聞く。
「はぁ。……これ、いただくわ。おいくら?」
「普通ならあの樽の中のものはどれも新金貨で200……と言いたいところですがね。
そいつに限っちゃ厄介払いできるなら100で結構でさ」
「わかったわ。……これでいいわね?」
 そう言ってルイズがふがくに持たせていた財布から新金貨を100枚取り出して
カウンターに置く。店主はそれを数え終わると、カウンターの奥からあまり拵えの
よろしくない鞘を取り出した。
「若奥様、あれは見たとおり小うるさい奴ですが、普段はこいつに収めておけば
静かになりまさあ」
「そう。ありがと」
 ルイズがそう言って店主に礼を言い、ふがくが鞘を受け取る――が、そのまま
収めることはせずデルフリンガーに話しかける。
「ところで『使い手』ってどういうこと?」
「ふん……自分の実力も知らねーのかよ……まぁいい……」
「もう一度聞くわ。どういうこと?」
「……こっちのことさ。とにかく……よろしくな、相棒!」
 ふがくの質問には答えないまま、デルフリンガーはそう言うと沈黙した。
それ以上は実がないと判断したふがくが剣を鞘に収めるのを見て、ルイズが歩き出す。
そうやって店を出て行く二人の後ろから店主が声をかけた。

「まいどあり~。さて、今日は久しぶりにうまい酒が飲めそうだ」
 店主の最後の言葉は、幸か不幸か扉を閉めるカウベルの音に遮られ、
ルイズたちの耳には届かなかった。

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