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虚無と最後の希望 Level17


level-17「思想」


「力? 君達レコン・キスタは聖地奪還を目指しているのではないのかね」
「聖地などどうでも良いのです、力を手に入れなければならないのです」

 聖地奪還を掲げるレコン・キスタに参加している子爵。
 ならば同じ様に聖地奪還を掲げているのではないのか?
 メイジにとって始祖ブリミルは絶対的なもの、間違っても聖地などどうでも良いとは言えないはず。

「聖地奪還がどうでも良いとは、子爵が求める力はなんだと……」
「虚無です」

 そう子爵は、ラ・ヴァリエール嬢を見て言い切った。
 その視線にラ・ヴァリエール嬢は狼狽、声を上げた。

「虚無……、始祖が使っていたと言われる伝説の?」
「彼女はその使い手なのです」
「……まさか、そんな力無いわ!」
「あるんだ、君が系統魔法を使えないのが証拠だ」
「どういう事だね?」
「……クロムウェルから聞いた話によれば、虚無の使い手は皆まともに魔法が使えないらしいのです」

 貴族に生まれたからには、絶対に魔法が使えるはず。
 ならば上手く使えない理由は何か、普通に考えればその理由など思いつかないだろう。
 途絶えた虚無、虚無ゆえに系統属性が使えぬとなると……。

「……だから連れ去ろうとしたのかね」
「いいえ、彼女にはトリステインへと戻ってもらいます」
「なに? 子爵は無理やりにでも彼女を手に入れるのではなかったのかね」
「私が力を手に入れても、何の意味もありません。 彼女は彼女として、誇り高きトリステインのメイジとして、王と国の力になって欲しいのです」
「ならば何故裏切った、王と国のためと言いながらもこのような事を」
「……皇太子殿下、我が祖国であるトリステインの実情をご存知ですか?」
「いや、詳しくは知らないが……」

 語りだした時と同じ様に、悲観した声が子爵の口から漏れる。

「アンリエッタ姫殿下のお父上である先王陛下がお亡くなり、今のトリステインは王を戴いておりません」
「ああ」
「なれば、次代の王で在らせられるのはマリアンヌ大后様か、先王の御息女であるアンリエッタ姫殿下で御座います」
「確かに」
「ですが、王宮は元より地方の下に位置する貴族であっても……、御二方を敬っては居られないのです!」

 荒々しく、悔しさを露にして声を荒げる子爵。

「皆が世間を知らぬ大后様と、無知な王女様と影で罵っておられる! それだけに飽き足らず、己の私腹を肥やすために与えられた職で不正を行う! どこが貴族か! あのような見ることすら不愉快な屑どもに、これ以上国を荒らして貰いたくは無いのですッ!!」

 最後には怒声、溢れんばかりの怒り。
 その怒りで顔が歪み、感情を露にしている。

「王が王たる、先々代の王フィリップ三世のような、貴族達が自然に傅く様な力が。 国外にもその威光が通じるほどの、大きな力が必要なのです!」
「その為に力を求めるのか」
「そうです、レコン・キスタに狙われている今こそ、強大な力が王の元に必要なのです」

 子爵が言っているのは抑止力と言う意味か。

「攻撃を始める前に、クロムウェルから命じられた事をお覚えに?」
「……僕の命と、手紙と、ラ・ヴァリエール嬢の身柄の確保、だったかね?」
「はい、非常に心苦しく言い難いのですが。 ……既に崩壊していると言っても過言ではないアルビオン、崩壊に導いたクロムウェルの傍に居るには何らかの手柄が必要だったのです」
「そうか、手紙やラ・ヴァリエール嬢の身柄を確保できなくとも、最悪僕を殺しておけば……」

 クロムウェルの懐と言う一番深い位置、一番邪魔であろう王族を殺せたとなれば潜り込めるのも可能、か。

「……近づけた後はどうするつもりだったのだ?」
「目的のために奴は必ずやトリステインに牙を剥くでしょう」

 潜り込んだ後に暗殺か。
 自分の命令により他国とは言え敬うべき王族を殺しをした者が、自分に杖を向けてくるとは思いもしないだろうな。

「……手紙やラ・ヴァリエール嬢はどうしたと言うのかね?」
「手紙はその場で処分、ルイズには身を隠してもらい、秘密裏にトリステインに戻ってもらう予定でした」
「……そうか」
「私には体の良い言い訳にしか聞こえないけど」

 僕とワルドの会話に割って入る声がひとつ。
 気が付けば長い赤毛の、褐色の女性が立っていた。

「キュルケ! いつの間に……」
「さっきから居たわよ? ルイズが虚無ってあたりから聞いてたけど」

 見れば床に穴が空いており、そこからまた一人と誰かが這い上がってくる。

「ふぅ、やっと外にって。 何でチーフは子爵を踏みつけてるんだい?」

 金髪の、薔薇を持った少年と。

「もう最悪、何でこんなとこに一日も居なきゃいけないのよ」

 と金髪縦ロールの少女が穴から出てきた。

「あんた達、無事だったのね」
「ルイズ? ここってどこなのよ?」
「ニューカッスル城の礼拝堂よ」
「流石はヴェルダンデ、ぴったりだ!」
「はいはい、今はそんな話してる場合じゃないの。 ウェールズ皇太子殿下とお見受けしますわ、ゲルマニアのキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーと申しますの」

 ツェルプストーと名乗った少女、それに続きグラモンとモンモランシと後に国柄の礼式で名乗る。

「僕はこのアルビオンの皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

 貴族に名乗られれば、名乗り返すのが礼儀。
 お互いに礼を済ませ、ツェルプストー嬢が言葉の続きを話し始める。

「子爵が裏切り者で、ダーリンに打ちのめされたんでしょう? で、このままじゃ命が危ないから、以前からか即興か、どちらかは分からないけど作った言い訳で皆の良心を引き出し国思いの貴族に、と言う風にしか見えませんわ」
「皇太子殿下もそうお思いになられるのでしたら、今この場で私の命をお断ちになってください。 我が身が王や国の為にならないのでしたら、存在する意味がありませんので」
「随分と思い切った事を仰るのね、まぁ魔法で多少甚振れば本性が出るでしょうが」
「両の手足を切り落とされようが、目玉を刳り貫かれ焼き潰されようとも、我が思いは変わりはしない」
「試してみましょうか?」
「好きなだけ試すが良い」

 薄ら笑いのツェルプストー嬢が杖先から炎を浮かべ、向けられようとも平然と受け答えする子爵。

「待ちなさいよ! キュルケは関係ないんだから、少し黙ってて!」
「そんな言い方無いでしょ、こうやって脱出のルート作ってきたんだから」
「うっ……」

 ふふん、とキュルケが笑みを作り、ルイズは悔しそうに息を詰まらせた。

「いや、そこまでする必要は無い。 子爵、最後に一つ聞きたい」
「何なりと」
「レコン・キスタは本当に聖地奪還を目的としているのか?」
「はい、国の統一を成し遂げ総力を挙げてエルフを駆逐する。 クロムウェルは本気でそう考えております」
「出来ると思うかね?」
「無理でしょう、アルビオンを落とし、トリステインをも手中に収めようとも、ガリアやロマリアによって簡単に瓦解する可能性があります」
「……国力と信仰か」

 国土に見合う強大な軍事力と、ハルケギニアの総人口の9割以上とも言われるブリミル教徒。
 軍事的圧力による外部からの崩壊と、教皇猊下の一言での内部からの崩壊。
 どちらをとっても抗うのが厳しい、国家統一を成し遂げるには大きすぎる壁。
 前者はトリステインを取り込み合わせても、国土の差は倍以上、かなり厳しいものになるだろう。
 後者は暴挙的なクロムウェルに対し、ブリミル教徒としてふさわしくない異端認定を受けるかもしれない。

「クロムウェルはそれを理解していません、単なる夢想家……だったのなら良かったのですが」
「何かあるのかね?」

 少しずつだが子爵の顔が青くなってきていた。
 今更ながら、床の広がる赤い水溜りに気が付いた。

「これ以上は危険だな、治癒が使えるものは手伝ってくれ」

 その言葉を機に、タバサ嬢とモンモランシ嬢が杖を取り子爵に治癒を掛け始める。
 無論、チーフ殿には変わらず押さえつけて貰う。
 怪我が簡単に塞がらないので、モンモランシー嬢が持ってきていた秘薬まで使い治療、そうして怪我を治した。
 傷が塞がり、話せる状態に戻ると、子爵がゆっくりと語りだす。

「……クロムウェルは、虚無の使い手なのです」
「……まさか」
「私はこの目で見たのです、クロムウェルが虚無の魔法と称し……、死んだ者を生き返らせているのを」

 その場に居るもの全てが一様に驚く。

「馬鹿な、死んだ者が生き返るなど……」
「私も最初はそう思いました、しかしながら生き返った者はしっかりと会話をこなしていたのです。 私の声にもしっかりと反応して……」
「……何たる事だ、それが本当なら……」
「恐らくは、私に皇太子殿下を殺害させた後に生き返らせ、手駒にするために命じたのでしょう……」

 レコン・キスタも完全とは言えない、反抗する勢力、他の貴族達が居るだろうし。
 トリステインを攻める前にアルビオンの王族を組み込み、王族も認めたと声高々に宣言でもして押さえるつもりだったのか。

「……つまりは」
「トリステインでも同じ手法を取り、反抗しようとする貴族達を押さえ込むでしょう」
「クッ……、なんと卑劣な」

 これが本当なら奴らに死に様を見せ付けられない。
 死んでしまえば奴らに利用されるだけではないか!

「皇太子殿下、本当に裏切り者の言葉を信じますの?」
「……信憑性は薄い、だがもし本当だったら取り返しのつかない事になるだろう」
「なら今ここで子爵を処分して、殿下は私達と一緒にトリステインへと向かえばよろしいのでは?」

 そうすれば嘘でも本当でも、任務が達成できて殿下も死なずに済むじゃありませんこと? とツェルプストー嬢が言い切る。

「脱出するのでしたら、お早く。 もうすぐレコン・キスタが攻め入ってきます」

 そのようなやり取りを気にせず、己の命がもうすぐ終わろうと言うのに先を急がせる。
 やはり子爵の言う事は本当か、そう考え迷情。

「子爵、君の行いを他に知っている者は?」
「居ません」
「……単身で画策したと言うのか」
「はい、私の裏切りは同じ裏切り者でも知らないはずです」
「他に裏切り者が居ると言うのか」
「判明している者で10名以上、中には政治の根幹に触れる者さえ居るのです」
「……そこまで手を伸ばしていると言うのか」
「無論、私でも全ての裏切り者を知っている訳では有りません。 迂闊に協力を仰ぎ、私が知らない裏切り者の耳にでも入ったなら……」

 トリステインの間諜として処分されかねない、と言う事か。

「ならばマリアンヌ大后様や、アンリエッタ姫に伝えても良かったんではないか」
「……それは、出来ませんでした」
「……知っているのか」
「はい」

 アンリエッタなら間違いなく反対するだろう。
 叔母上も恐らくは反対する、忠臣である子爵に王族殺しをさせるなどしないはず。
 故に誰にも知らせず、反逆と王族殺しの罰を受ける事になると言うのに決断したのか。

「……子爵、君の心は何処にある」
「王と国に」
「……良いだろう、その言葉信じよう」
「随分と寛大ですこと」
「狭量たるのは王族としてあってはならぬ」
「間違いの代償は命ですのに」
「その時は受け入れよう。 チーフ殿、子爵を離してやってくれ」
「本当によろしいのですか」

 その問いに頷く。
 それを見たチーフ殿は立ち上がり、子爵の拘束を解く。
 拘束を解かれた子爵はゆっくりと立ち上がり、軽く衣服の汚れを払い一礼。

「寛大なお心、真に感涙の極みで御座います」
「君が行った事の処分は僕が決めれる事ではない、トリステインへと戻り姫か叔母上の裁きを受けるが良い」
「どのような決定であろうとも、甘んじて受ける所存で御座いますが……」

 歯切れの悪い言葉。

「……何をする気だね」
「ここに残りクロムウェルを討つ心算で御座います」
「出来るのかね? 手柄を何一つ持たず戻っても受け入れられまい」
「皇太子殿下を殺したと口先だけ伝えれば、クロムウェルなら信じましょう」
「なるほど、口頭の際に討つか」
「はい」

 直接伝えたいと言えば、付いてくるか?

「信じると言った手前、それを認めたいのだが……」
「お認めください、クロムウェルを討ち、少しでも軍備を整える時間を……」
「……正直に言えば子爵を一人行かせたくは無い」
「当たり前ですわね」

 ツェルプストー嬢がフンと鼻息を鳴らし、ラ・ヴァリエール嬢はそれを睨むように見ていた。
 タバサ嬢はチーフ殿の隣に立ち、右手で竜の鼻先を撫でていた。
 残りの二人、グラモン殿とモンモランシー嬢はその話を聞いて驚いていた。

「ならば自分が残ります」
「チーフ!?」
「……チーフ殿、よろしいのか」
「はい」

 子爵を打倒した彼が監視に付くと言うなら、本当に裏切っていたとしても打ち倒せるか。

「ラ・ヴァリエール嬢、チーフ殿をお借りしてもよろしいか?」
「………」

 そう言って見たラ・ヴァリエール嬢はチーフ殿と私を交互に見つめ。

「無事に戻ってくると約束してもらえるなら」
「約束しよう」
「すまない、ラ・ヴァリエール嬢。 チーフ殿をお借りする」
「……いえ」
「では二人とも」
「はっ」

 子爵は一礼し、チーフ殿は頷く。
 そうして脱出する者と残る者に別れた。

「……さぁ、行こうか」

 外から聞こえる音、父上や家臣たちへの裏切りとなるだろうか。
 いや、なるだろうな。
 華々しく散り様を見せ付けると豪語していたのに、こうやって逃げ出そうとしている。

「……殿下、彼の者達なら喜んで殿下のために時間を稼ぎましょう」
「本当にそう思うかね?」
「逆にお聞きします、本当に彼の者たちが一緒に散って欲しいとお考えで?」
「……どうだろうな」

 こんな私を見て父上はなんと思うだろうか、パリーならば何と言うだろうか。
 今も城で戦っている臣下たちは、本当に喜んで時間を稼いでくれるのだろうか。

「……殿下、彼らの忠義を心に刻み付けるようお願い申し上げます」
「ああ、忘れぬよ」

 忘れてなるものか。
 報いるために刻みつけ、王権復興を成し遂げる。
 そう強く思い、ラ・ヴァリエール嬢へと顔を向けた。

「ラ・ヴァリエール嬢、昨晩の返答を撤回させてもらうよ。 僕はトリステインへと亡命する、……死んで名誉を示せない情けない僕だが、受け入れてくれるだろうか」
「勿論でございます!」
「……ありがとう」

 そうした会話が終わると、嫌でも争いの音が大きくなっていく。
 もうすぐこの礼拝堂までレコン・キスタが攻めてくるだろう。

「……ルイズ、怖い思いをさせてすまない」
「貴方が裏切っていないなら、水に流すわ」
「ありがとう、気をつけて帰るんだよ」
「……そこまで子供じゃないわよ。 ……チーフ、気をつけて」
「ああ」

 そう言って穴に入り込んで、姿が見えなくなる。

「子爵、無事に帰ってくるんだ。 君は大変な事を仕出かしたのだから」
「勿論五体満足で帰り、裁きを受ける所存です」

 子爵の応えに頷き、チーフ殿を見る

「……チーフ殿、後を頼みます」
「はい」





「まずは穴を塞ぐとしよう」

 全員が穴に入り込んだ後、周囲を見渡す。
 穴を塞げそうな物を探すが。

「……天井を落とせば良い」

 ガンダールヴからそう言われ、天井を見る。
 なるほど、天井を落として瓦礫だらけにすればすぐに皇太子を殺したと言う嘘がばれないだろう。

「……ガンダールヴ、僕が皆を裏切っていると判断した時はすぐにでも処分してもらって良い」

 天井から視界を落とし、弾き落とされたレイピアを拾い上げる。

「……マスターチーフ、そう呼ばれている」

 ウインド・ブレイクを唱え、天井に向けて打ち放つ。
 風の突風が天井にぶち当たり、天井を支える支柱に大きな亀裂を入れた。
 さらにもう一発、そうして支柱が耐えられなくなりミシミシと大きな音を立て始めた。

「……すまない、僕の我がままに付き合ってくれ。 マスターチーフ」

 天井が落ち、崩壊する礼拝堂から二人抜け出した。


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