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確率世界のヴァリエール-01


 確率世界のヴァリエール - Cats in a Box - 第一話



永遠にひとしいまどろみの中で、また、繰り返す。
他者と己との境目の無い世界、暗赤色の肉の檻の中で。
(少佐のうそつき、、、)
ヴァルハラで会おうと言ったのに。
みんなで殺したり殺されたりしようと言ったのに。
言ってくれたのに。

あの人は、望みどおりの死を迎えることができたのだろうか。
死ぬためだけに歩き続けた、人でなしの戦争狂<ウォーモンガー>。
あの人は、この世の地獄の何もかもを引き連れて
修羅の地獄へと下ることができたのだろうか。
ヴァルハラへと。


じわり、と視野が赤く染まってゆく。
ああ、彼がまた、暴れているのか。
あの狂王が。

全存在を賭して少佐と戦い、そして敗れた
少佐と同類、戦争狂の人でなし。
この『死の河』のあるじ。
神を愛するあまりに神を憎み、
人に憧れるあまりに人に殺されることを望んだ
あの哀れな不死の王<ノーライフキング>が。

現世に在ることを許されず。
地獄へ下ることも叶わずに。
今やただの虚数の塊、
この『死の河』ごと、虚無そのものと成り果てて、なお。
おのれが仕えるべき主の下へと。


不意に、視界がまばゆく輝き始めた。
その光に照らされて、思考の霧が晴れてゆく。

(、、、鏡、?)

すべてがただ赤黒いこの世界で、神々しく輝く光の渦。
すべてが曖昧だったこの『死の河』の中で
その光は、自分だけをはっきりと照らし出した。

思わず、その光へと手を伸ばす。
今やきっぱりと、境目の無い世界から分かたれた自らの手を。



そして、世界は反転した。

  。。
 ゚○゚


(ここ、は、、、?)
まばゆい光に目が慣れてくる。
草原、青空。
遠く連なる山脈。

「外、に、、出れた?」
見知らぬ石造りの建物、見知らぬ服装の子供たち。
どこだろう? どこでもいい!

「うわ、やたっ、スゴイや、外だっっ!!」
外だ! 外だ!! 外の世界だ!!!
喜びに全身の毛が逆立っていく。
両手と一緒に耳を高々と上げて伸びをする。

「喜んでる所悪いんだけど、あんた、、、誰?」

振り返ると、同じくらいの背丈の少女がこちらを睨んでいる。
薄桃色の髪が風に流れる。

「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
「さすがはゼロのルイズだ!」
「この歩く爆発オチ!」
「うるさい! ちょ、ちょっと間違っただけよ! って、耳?」

ピコピコと頭の上で揺れるその猫の耳に気づいたとたん、
それまで後ろで陽気にヤジを飛ばしていた少年たちがざわざわとトーンを落とす。
「平民、、、じゃない、、、?
 亜人なの? あんた」
不思議そうな声で桃髪の少女が問いかける。

「お姉さん、だあれ?」
「訊いてるのはこっちでしょ!
 まあ良いわ、よっくお聞きなさい。
 私は使い魔であるあんたを呼び出したあんたのご主人様、

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」

先ほどのいらだった表情とはうって変わって
右手の小さな杖をひゅんと払い、胸を張り得意顔で名乗りを上げる。
「呼び出した、、、って、君が僕を助け出してくれたの?」
「? え、ええ、まあそうよ。 感謝なさい!」
「すごいやルイズ!ありがとう!!」
叫んで目の前の少女に抱きつく。
公衆の面前で押し倒されたルイズは目を白黒させながらも
胸元で嬉しそうにピコピコ動く猫耳頭を押しのけようともがく。

「ナッニッ、いきなり呼び捨てにしてんのよ!
 ご主人様って呼びなさいこのバカ猫!
 って、い、う、かっ、抱きつくなあぁ!!」


「ハアハア、大体あんたどっから来たのよ。 東方とか?」
「え? うーん。 『死の河』?」
「な、何よ、その怖そうな地名」
露骨に嫌な顔をして体を遠ざける。
「いや、地名じゃなくって~、そーいう吸血鬼」
「きゅっ、、?!」
「少佐の作戦でね、僕の血をわざと吸わせてそいつを倒したんだ。
 そんでー、そのかわり僕もその『死の河』に取り込まれちゃったんだ」
「ハァ? 全っ然ワケ解んない。
 大体誰よ、その『ショウサ』って」

「あ、そうだ! 少佐!」
多分もうこの世界にはいないだろう、彼の望みどうりに。
でも。 会いに行こう。
不意にそう思い立ち、『跳』んだ。


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鎚の音が眼下に響く。 再生の鎚の音が。
晴れ渡る空の下、そびえたつ時計台<ビッグベン>の屋根の上、
そこかしこから響く、その平和の音を聞く。

ロンドン塔。 ロンドン橋。 タワーブリッジ。
ウェストミンスター寺院。 セントポール大聖堂。
大英博物館。 大英図書館。 スコットランドヤード。
ピカデリー。 ソーホー。 シティー。 サザーク。

昔のままに復元されたもの、新しく生まれ変わったもの、
そして、今まさに生まれ出でようとしているもの。
かつて自分たちが一つ残らず瓦礫に変えたその街をテコテコと歩く。

トラファルガー広場の前で、不意に立ち止まった。
ネルソン像の替わりにそこに立っていたのは
凛々しく剣を掲げた小太りの男。
ひげを蓄えたその顔は銅像となってもなお
祖国を守る為に鋭い眼光で上空の敵を見据えている。

碑文にはこうある。

『すごく格好良い英雄  悪いナチスをやっつけて
 すごく格好良く    ここに眠る』

「お、なんだ、坊主。
 ペンウッド卿の像を見に来たのか?」
資材を担いだ労働者風の男に声をかけられる。
「その変なかぶりもんは取っとけよ、バチが当たらあ。
 このお方はなあ、飛行船事件の英雄よ。
 このロンドンを守るため、
 腹に爆弾巻きつけて敵陣に突っ込んだって言うぜ?
 お前さんも良っく拝んどきな」

「ぷ、ぷふふ、あははは!!」
思わず笑い出す。 おなかを抱えて。

涙を拭きながら遠くを見やる。
「僕たちの『戦争』って、
 いったい何だったんだろうね、少佐」


============================== 


「へえ、ここは無事だったんだー」
がらんどうの薄闇に大きく響く足音を聞きながら
懐かしく体を包む甘やかな香りをゆっくりと吸い込む。

鉄の匂い。 油の匂い。 火薬の匂い。 血の匂い。

ジャブローの密林奥深くに隠された、我らが夢の棲家。
そして我らが夢のあと。

『豹の巣』<パンテルシャンツェ>

飛行船格納庫はかつての主を失いカラになったままの構内を晒し、
物言わぬままに突然の来訪者を受け入れている。
もう二度と開く事は無い可動式天井をゆっくりと見上げた。

格納庫を離れ兵舎へ。
蜘蛛の巣の様に張り巡らされた地下道を歩く。
食堂を通り過ぎて武器庫へ。

「わは!」
思わず声を上げる。
懐かしい顔ぶれがそこにはあった。

ラインメタル FG42 自動小銃
ハーネル StG44 突撃銃
MP40 “シュマイザー” 短機関銃
山積みにされた7.92mm弾の弾薬箱
床に散らばったままの9mm弾
ケースに入れられ並ぶM24型柄付手榴弾
無造作に立てかけられたHAS パンツァーファウスト

厚く積もった埃をなぞる。
彼らも置いていかれてしまったのか。
皆、行ってしまったというのに。

会議室を抜けて通路の突き当たり。
何度も何度も通ったその扉を開ける。
いや、きちんと「扉を開けて」入ったのは初めてかも知れない。

磨き上げられた机、革の張ったチェア、嗅ぎ慣れた匂い。
そして、机の後ろに掲げられた、呪われた我らの『旗』。
この見慣れた光景にも、やはり等しく時間は流れていた。
目を細め、埃をかぶった景色に微笑む。

ようやく、あらためて、理解をする。
全てはもう終わってしまったのだ、と。
あの時間はきっともう、戻らない。
あの人は本当に、何もかもを引き連れ行ってしまったのだ。
鉤十字の腕章を外し、そっと机の上に置いて小さくつぶやいた。

「さようなら、少佐」

  。。
 ゚○゚


(明日になったら、退学届けを出そう)
枕に顔をうずめたまま、少女はぼんやりと決意する。

この世に生まれ落ちて初めて成功した魔法。
彼女がメイジであるただ一つの証。
幾百幾千の失敗にもくじける事のなかった心は
たった一度の成功の証が目の前から消え失せた時、
熱したグラスに冷水を注いだかの如くに
いともた易く砕け散った。

あれならば、いつもの様に爆発するだけのほうが幾万倍もましだった。

召喚した使い魔がその場から掻き消えた後に
級友はいつもの如くにはやし立てたが、
少女がひざから崩れ落ち声も無く涙を流すに至り、
いたたまれぬ空気に耐えかねて
一人二人とその場を去っていった。
そして、その涙ももはや枯れ果てた。

(ミスタ・コルベールは明日もう一度
 追試をすると言ってくれたけど)
これ以上、家名に泥を塗るわけにもいかない。
砕けた心に最後に残されたのは、貴族としての義務感のみだった。
「ごめんなさい、母さま」
水分を無くし、かさつく唇で詫びる。

============================== 

ガタリと背後で音がした。
(誰か、冷やかしにでも来たのかしら)
そちらを見もせず、ベッドに横たわったままで無感動に思う。

「あ。 いたいた!」

がばっ!
陽気な声に思わず飛び起きる。
この声は。 この人をバカにしたような声。
振り向くと、二つの月に照らされた人影がそこにあった。

自分と同じくらいの背格好に、月光に輝く金色の髪。
軍服風の半そでシャツと半ズボン、手袋にネクタイ。
切れ長の目に小生意気そうな口元。
そして何より、頭に生えたその猫の耳。

「あ、あ、あんた?!」
「なあに? ルイズ」
のん気に返事を返す。

脳内が轟々と音を立てて渦を巻く。
なんで? 何でこいつがここに?
失敗したはずなのに? 失敗じゃなかった?
消えたんじゃなかったの?
干からび切ったはずの心に、混乱とともに
何かがなだれ込んでくる。

「あれ? ルイズ。
 泣いてるの?」
ひょいと顔を覗き込まれる。
「な!? そ、そんな訳無いでしょ!!」

枕を顔面に叩き込むとあわてて顔を背ける。
「レディの顔を覗き込むなんて失礼でしょ!」
次第に状況を把握するとともに、猛烈に腹が立ってくる。
今までどこをほっつき歩いてたの!?
どうしてまた自分のことを呼び捨てにしてるの!?
大体―――

「大体、何で今頃戻って来てんのよ!!」
「いてて。
 何で、って、僕はルイズの使い魔になったんでしょ?」
「へ?」
「へ?って、違うの?」
耳をパタ付かせて小首をかしげる。

回収した枕を胸に抱く。
「ち、違わないわよ、違うわけ無いでしょ!
 でも、、でもそうよ、
 私まだあんたの名前も聞いてないじゃない!
 私に自己紹介させときながら。
 あんた、、名前は?」

待ってましたとばかりに胸を張る。
得意顔で目を細め、張った胸にぽむと手を乗せる。

「えっへん。
 良くぞ聞いてくれました。
 僕の名前は シュレディンガー !

 よろしくね、ご主人サマ!」

  。。
 ゚○゚





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