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ルイズと無重力巫女さん-23



「一時停止しろ。」
「一時停止!アイ・サー!」
甲板に出たウェールズの命令を挙帆手が復唱し、マリー・ガラント号がアルビオン大陸の丁度『真下』で動きを止めた。
この美しいアルビオン王国の皇太子の傍にいたルイズは頭上にある大きな穴を見て目を丸くした。
以前姉たちと旅行でこの大陸へ赴いたことはあるがこんな穴は観光名所のカタログには載っていなかった。
隣で唖然としているルイズを見て、ウェールズがさりげなく説明を入れた。

「驚いたかい?今頭上にある穴は自然に出来た物なんだ。恐らくこの大陸が浮遊したときからあったに違いない。
 僕たち王軍はこれを秘密の出入り口として用いている。中はもの凄く暗いが…なに、我々には造作もないことさ。」

「こんな大きな穴が自然に出来たなんて…とても信じられません。」
ウェールズの説明を聞き、信じられないという顔になったルイズを見て更にウェールズは説明する。 
「更にもしもの際の避難用として大陸のあちこちに井戸に偽装した抜け穴を―――おっと説明はここまでだ。」
得意げに話していたウェールズがふと口を閉ざし、後ろからやってきたワルド子爵の方へ顔を向けた。
「部屋の中で休んでいたら窓の外が暗くなったものだから…成る程、こんな場所があったとは。」
ワルドは感心した風に呟くと暗闇の中でテキパキと帆をたたんでいる空賊――もといアルビオン軍の水兵達を見つめ目ながら言った。
「秘密の出入り口を使って城に戻るとは…まさに空賊そのものですなですな。殿下?」
ウェールズがその言葉に少し顔を顰めたのに気が付いたルイズは少し焦ったが、すぐに元の表情に戻るとワルドにこう言った。
「あぁ、何せ貴族派の連中は僕達用の手形を作ってくれなくてね。仕方なくこんな所を使ってるんだ――仮装パーティをしながらね?」

その言葉にワルドはキョトンとした顔になり、しばらくして彼の口から小さな笑い声が聞こえてきた。
ついでウェールズも笑顔になると、マリー・ガラント号がどんどんと穴の入り口に向かって上昇していく。
「さてと、立ち話もなんだから一等客室でも借りてお茶でも飲みながら話そうじゃないか。」
爽やかな笑顔でそう言われると二人はなんだか首を横に振ることが出来なかった。
川の流れに乗るようにルイズ達は頷くと、ウェールズの後を追った。

イーグル号を先頭に二席の大型船が穴の中に入り、どんどんと上を目指して上昇していく。
船の甲板に立っている水兵達は松明や杖の先に明かりを灯し、見張りをしている。
ごつごつとした外壁に紛れ人が入れそうな横穴がポツポツとある。
船はどんどんと上昇していく時、既に通り過ぎた場所から人影が飛んできた。
死角の所為で船から見えなかったその人影は船の後に付いていくように上を目指して飛び始めた。



天蓋付きではないがそれなりの装飾が施されたベッドに大きなクローゼット。
部屋の中央に配置されているテーブルの上には篭に入った色とりどりの果物達。
少し小さめのシャンデリアは眩しいくらいに輝いており、一等客室を照らしていた。
そしてテーブルを囲むように置かれているソファーに腰掛けているウェールズが向かい合って座っている二人に話しかけた。
「さてと、何か聞きたいことがあったらプライベートな事を除いて、質問してくれよ。」
ウェールズの言葉にルイズがゆっくりと口を開いた。
「あ、あの…こんな事を聞くのは何ですけど、本当にウェールズ皇子なのですか?」
ルイズの質問にウェールズは少しだけキョトンとするとクスクスと笑った。

「フフフ…まぁ無理もないかな?何せ最初に顔を合わせたのは仮装パーティー真っ最中の時だったからね。」
冗談っぽくそう言うとウェールズは立ち上がり、ポケットの中に入っていた指輪をスッと薬指に嵌めた。
「どうだい?これは代々アルビオン王国の家宝の代表として君臨している『風のルビー』さ。」
ウェールズの言葉を聞き、ルイズは急いで頭を下げた。
「失礼を致しました。何分私は疑り深い性格なもので…」
「なに、気にすることではないさ。人間には様々な性格の持ち主がいるからな。」
ウェールズは笑顔でそう言うと指輪を外し、再びポケットの中に入れた。


それからしばらくして、マリー・ガラント号と黒塗りの船『イーグル号』が穴に入ってから既に数分が経過していた。
ワルド子爵はマリー・ガラント号の船長と話す事があると言って部屋を出て行った。
窓の外から見える苔が生えた岩肌を背にルイズはウェールズにアンリエッタからの任務の事について説明をしていた。
アンリエッタが以前彼に送った手紙を返して欲しいと言われたウェールズは少しだけ目を丸くしていた。
「そうか、あのアンリエッタもとうとうそんな年になったのか。」
嬉しそうに――だけど若干哀しさを含んだ口調でそう呟き、ウェールズはルイズの方へ向き直った。
その時ルイズは見た、ウェールズの皇子の顔には言いようのない哀しさが滲んでいた。
しかしその哀しさはすぐに顔から消え失せ、先程のような眩しい笑顔に戻っていた。
「貴君らの任務についてはわかったよ。しかし、アンリエッタから貰った手紙はこの船には――――――っ!?」

ルイズの方に向かって喋っていたウェールズは突然目を見開くと杖を取り出した。
一方のルイズは血相を変えて杖を取り出した皇子に驚き、思わず窓の傍から離れた。
そしてそれを見計らってウェールズが瞬時に詠唱したエア・ハンマーが窓を叩き破る。

耳に残る嫌な音と共にガラスが外に飛び散り、冷たくも何処かジメジメとした風が部屋に入ってきた。
立ち上がったルイズはオロオロとしながらもウェールズに話しかけた。
「ど、どうしたんですか!?」
彼女の言葉にウェールズは杖を下げると口を開いた。
「今窓の外に人影が――」

「ちょっとちょっと、何もいきなり攻撃するのはないんじゃないかしら?」

ふと窓の外から聞こえてきた少女の声に、二人は驚愕した。
ウェールズは急いで杖を構え直しルイズを連れていつでも部屋から出れるようドアの方へと下がる。
一方のルイズはと言うと、生まれてこのかた感じたことのない程の驚愕を今まさに感じていた。
それは謎の声に対する恐怖ではない、むしろその声は彼女にとって聞き慣れたものである。二年生になってから。
では一体何なんだというと、それは「どうしてここにいるんだ?」という感じの驚愕であった。
「誰だ!素直に出てくるのなら攻撃はしない!」
ウェールズは声だけの相手に勇気を振る舞ってそう叫んだ。
その言葉を聞いて、声の主である少女はスッと窓の外から部屋の中へ飛んで入ってきた。
ルイズは相手の姿を見て限界点まで両目を見開き、心臓が喉の方までせり上がりそうになった。
紅白の特徴的な服を着た黒髪の少女の方も赤みがかかった黒い瞳でルイズの姿を捉え、キョトンとした顔になった。

「……なんか知らないけど、これもサモンなんとかの影響かしらね。全くどうなってるのよ?」
霊夢がうんざりしたかのように呟いた言葉に、ルイズは思いっきり叫んだ。
「それはこっちの台詞よ!」

何でこんなところにいるのかが一番の疑問であったが、その時ルイズが一番気にしていたのはそれではなかった。
(とりあえずは皇太子様にこいつがどれほど無礼な奴なのか先に言っておかないと。下手したら打ち首だわ!)
自分が召喚したこの少女がどんな相手に対しても頭を下げないという事を知っているルイズは後ろにいる皇太子にすかさず説明を入れた。

「…この少女と君は知り合いなのかい?」
「うぇ…ウェールズ皇太子!この者はですね…えっと、その、なんて言ったらいいか…そう、ちょっとしたワケありで一緒にいるんです!」
急いで喋ったせいか彼女自身何を言ったのか把握していなかったが、ウェールズはそれである程度理解したようだ。
とりあえず大丈夫だと確認したウェールズはホットしたかのように一息ついて杖を下ろした後、霊夢の方へ顔を向ける。
少し黄色が入っているがほぼ純白に近い肌、艶やかに光っている長い黒髪、少々赤みがかかっている黒い瞳。
そしてなによりも彼の目に入ったのはあまりにも特徴的な霊夢の服装と手に持っていた杖であった。
頭につけた赤いリボン、服とは別になっている袖。そして見たことのない装飾を施されている杖を手に持っている。
貴族かと思ったがマントを着けていないようだ。
一通り彼女に嫌な感じを持たされる前にウェールズはそこまで確認すると霊夢に先程の攻撃に対する謝罪の言葉を掛けた。

「先程の無礼は許して欲しい。何分戦時下のため、下手に緊張していt――」
「別に謝らなくてもいいわよ。どうせ当たらなかったんだから。」
「ちょっとアンタ!相手を見なさいよ相手を!?」
ウェールズの謝罪の言葉を遮り言い放った霊夢の何気ない一言にルイズは怒鳴った。
一国の皇太子直々の謝罪を遮って喋るなどルイズにとってあってはならない事である。

「うっさいわね、というよりなんでアンタがここにいるのよ。」
霊夢が鬱陶しそうに言い返すと、途端にルイズも大きな声で言い返した。
「それはこっちが聞きたいわ、大体どうやったらこんな所にたどり着くのよ!」
「森の中を飛び回って枯れた井戸の底にあった穴に入れば誰でもたどり着けるわ。」
「い、井戸?というより良く入れたわね、アンタの他に誰が好きこのんで井戸の中にはいるのよ。」
「う~ん…井戸神様かしらね。」
「なによそのイドガミさまってのは?どうせ架空の存在でしょう。」
「嘘だと思うのなら井戸の上に戸板をのせて歩いたらどうかしら?本当にいるってその身で実感できるわよ。」
霊夢がそう言った直後、ふと窓の外から眩しいくらいの明かりが入ってきた。
光に気づいたウェールズはポケットに入れていた懐中時計を取り出し、時刻を確認した後、呟いた。
「おや、ようやく港に着いたようだね。」
何だと思い二人が窓の外を除いてみると、マリー・ガラント号は何処か広い空間に出てきていた。
そこは巨大な港であった、大きな詰め所があり奥の出入り口から多数の水兵達が出てくる。
ルイズはその港を見て息を呑み、霊夢の方もジーッと港を見つめている。
そんな二人を見てか、ウェールズは得意げそうに口を開いた。

「どうだい?ニューカッスル城が誇る、地下の巨大港は。」


冥界 白玉楼――――――

生きとし生けるものは必ず何かを食べなければ行けない。
それが神から与えられた使命なのか、それとも生物として本能なのかは誰も知らない。
ただ、食べるという行動自体は別に生きてはいないモノ達でも行うことがある。
例えば、今テーブルの上に置かれている大福餅を食べている西行寺幽々子などがその一例である。

「はむっ♪」
幽々子は満足そうな表情で大福餅にかぶりついていた。
既に死んでいる存在の彼女がこうして何かを食べているのを見れば、別に亡霊が何かを食べていても不思議ではない。
最も、幽々子は冥界に存在する幽霊、亡霊、生霊、悪霊達よりも更に格上の存在ではあるが『霊』という種のグループに入っているのは間違いない。
そして早くも一個目を平らげた幽々子は二個目へと手を伸ばそうとしたとき、ふと後ろから声を掛けられた。
「幽々子様、そろそろ夕飯も近いですしそこまでにしておいては…。」
まるで鍛え抜かれた刀のように鋭く、しかし何処か子供っぽさが残っている声の持ち主は幽々子の従者兼庭師の魂魄妖夢であった。
小柄な体ではあるが接近戦においては随一であり、楼観剣と白楼剣という二本の刀を所持している。
妖夢の傍には他の幽霊と比べればあまりにも大きすぎる幽霊が漂っており、彼女が普通の人間ではないということを示している。

「大丈夫よ妖夢、2個だけならあと六分目くらいお腹にはいるから。」
妖夢の言葉に幽々子はからかうようにそう言うと二個目の大福をすぐに口の中に入れた。
モグモグと口を動かし幸せそうに食べている主の顔を見ていると妖夢も次第に怒る気がなくなり、ため息だけをついた。
そろそろ夕食の仕上げに掛かろうと思い台所の方へ足を進めつつ妖夢は口を開く。
「もう、まぁほどほどにしておいてくださいね。」

「は~い♪」

「本当、あなたってのんびりとしてるわねぇ。むぐむぐ…」

「ふぅ…ん?」
主の返事を聞き、妖夢は一人頷くと台所の方へ行こうとしたが、咄嗟に後ろを振り向いた。
そして幽々子の隣に座って大福を頂いている八雲紫がいつの間にかいたのである。
いつの間にかちゃっかり座っているスキマ妖怪を見て、思わず妖夢は驚いてしまった。
「あっ!紫様ではござりませんか、一体いつの間に?」
「本当だわ、気づいたら人の大福に手を出してる妖怪がいるわね。」
「まぁいいじゃないの、それより今晩は二人とも。今宵は良い月だわね。」
紫はすぐに大福を食べ終わると、あらためて幽々子に挨拶をした。

「こちらこそ今晩は、こんなにも良い月だから夕食前に大福を二個も食べちゃったわ。」
幽々子の方はまんざらでもないという顔になっており、妖夢の方は紫に頭を下げ、挨拶をした。


紫はそれを見て妖夢に微笑むと幽々子に話しかけた。
「ふふっ、貴方の庭師さんは顔を合わせる度に良い子になっていくじゃない。」
「でしょ?私が手塩にかけて色々と教えてるんだから。」
幽々子がそう言ったとき、妖夢が少し慌てたように幽々子にこう言った。
「あのー…幽々子様が塩を握ったら成仏してしまうのでは?」
妖夢の言葉に二人は黙ってしまったが、すぐにクスクスと笑い始めた。
それにつられて妖夢も笑いそうになるがふと思い出したかのように紫に話しかけた。
「そろそろ夕飯の時間ですが…紫様、もし良ければ今晩はここで食べていきますか?」
「えぇ、もともとそのつもりだったから頂くわ。…あぁ後話しておきたいことも一つあるわ。」
「?…話したい事って何かしら。」
幽々子にそう問われ、紫は一息つくと口を開いた。

「実は少しだけ頼み事があるのよ。」


マリー・ガラント号とイーグル号が無事港に停泊した後、
ルイズ、ワルド、そして霊夢の三人はとりあえずウェールズに連れられて城の中へと入った。
ニューカッスル城には大勢の貴族やその妻子達が住んでいた。
常に敵軍とその旗艦『レキシントン号』の砲火に脅かされているにもかかわらず、何処か明るい雰囲気があった。
普通なら隣り合わせの死に怯えているはずだというのにそんな感じは微塵もない。
ルイズがそんな風に思いつつ、一同はウェールズの居室へとたどり着いた。
しかし、天守の一角にあるその部屋はとても粗末なモノであった。
木製のベッドにイスとテーブルがセットで一組、壁には戦の模様を描いたタペストリーが飾られている。
一国の皇太子がここで寝ているとはとても思えないような部屋を見てルイズは目を丸くした。
「随分と粗末ですまない、何分売りに出せるモノは全て売ってしまったのでね。」
イスに座ったウェールズはそう言うと机の引き出しを開けた。

そこにあったのは、綺麗な装飾が施されている小箱が入っており、それを手に取りテーブルの上に置く。
次に首からネックレスを外す。その先には小さな鍵が開いていた。
その鍵を小箱の鍵穴に差し込み、鍵を開けて蓋を開ける。
蓋の内側に小さなアンリエッタの肖像が描かれていた。
それに気づいたルイズがその箱を覗こうとしたことに気が付いたウェールズははにかんでこう言った。
「宝箱でね、この箱の中身は多分僕の生涯の中でも最高の財宝さ。」
ウェールズは中に入っていた一通の手紙を取り出し、色褪せた封筒を開いてゆっくりと読み始めた。
何度も読まれボロボロ一歩手前のソレは何処か哀しさを漂わせていた。
やがて手紙を読み終えたウェールズは手紙を丁寧にたたみ封筒に戻すとルイズに手渡した。
「では、アンリエッタ姫殿下からの手紙、確かに返却したぞ。」
「ありがとうございます。これで祖国の危機も去る事でしょう。」
ルイズは深々と頭を下げ、その手紙を受け取った。
受け取った手紙をちゃんと懐にしまったのを確認すると、ウェールズは再度口を開いた。
「明日の朝に非戦闘員を乗せたイーグル号とマリーガラント号がここを出発する。それに乗って帰りなさい。」

その言葉を聞いたワルドはコクリと頷いたが、ルイズだけは歯痒そうにこう言った。
「あの、殿下…殿下は明日の朝にはレコン・キスタと戦うのでしょうか?」
「その通りだ。私は先陣に立って真っ先に死ぬつもりでいる。」
ウェールズの言葉にルイズは少し驚いたが、他の二人はそれ程驚きもしなかった。
ワルドは軍人であるため皇太子の言葉にはある程度同感はしているが、霊夢の場合は単純に興味が無いだけである。
その後ルイズはアンリエッタから預かっていた手紙をウェールズに渡した。
手紙を受け取ったウェールズはゆっくりと読み、懐にそっとしまった。
それを見計らってルイズがおそるおそるウェールズ皇太子に話しかけた。
「殿下…私は使者である故その手紙を見ることは適いませんが、なんと書かれていましたか?」

ルイズの言葉にウェールズは微笑むとからかうようにこう言った。
「そんな事では使者は勤まらないがまぁ特別に教えよう、…ただ手紙を返して欲しい事と武運をお祈りします。とだけ書かれていたよ。」
ウェールズの言葉にルイズは有り得ないと言いたげな顔になった。
「そんな…、私は幼少期にあなた様と姫殿下がどれ程仲が良かったのかハッキリと覚えています。だから…」
「そこまでにしよう。私は王族だ、王族が嘘をつくときは世界の終わりが来た時だけだ。」
ルイズの言葉を途中で遮ったウェールズは一息つくとイスに座り直し、ため息をついた。
気まずい空気が流れそうになったとき、ウェールズはルイズにこう言った。

「ミス・ヴァリエール、君は本当に正直で真っ直ぐな子だ。ここにいる誰よりもね…。」


場所は変わって、白玉楼―――
そこの主である西行寺幽々子は八雲紫と共に夕食をとっていた。

「成る程…あの紅魔館のお嬢さまがねぇ~…はむっ。」
幽々子はのんびりとそうに呟き、カマボコを口の中に入れる。
「そうよ、どうやらかなり殺る気まんまんらしいわ。」
「まぁ霊夢がいなくなって聞いてからあの吸血鬼、かなりピリピリしてたからねぇ~。」
ゆっくりと口の中のカマボコを咀嚼している幽々子を相手に紫はどんどんと話していく。
どうやら夕食だというのに何やら話し合いをしているようだ。一体その話し合いとは何なのか?

夕食の前に、紫は幽々子に頼み事があると言った。
それは先程彼女が言っていたレミリア・スカーレットへの警戒である。
「私は霊夢がいる異世界へ乗り込んだら、すぐに霊夢を連れて帰るって計画だったけど…あの吸血鬼は余計な事を考えてるのよ。」
まだ夕食に手を付けていない紫は苦虫を踏んでしまったような顔でそう言い、話し始めた。
何でも式の報告によると最近紅魔館内部の図書館で司書している小悪魔とメイド長の十六夜咲夜が何やら目立った動きをしているという。
咲夜は紅魔館にいる妖精メイド達を何十匹か集め、誰が一番強いのか弾幕ごっこを行わせている。
小悪魔の方は魔法の森や妖怪の山の近くにある樹海へと足を伸ばし、何かを集めているというのだ。
それが気になった紫の式である藍は小悪魔の後を追おうとしたが、何故だか小悪魔の身体にもの凄い『厄』がまとわりついていて、近づくのは無理であった。
最も、小悪魔自身も紅魔館にたどり着いた時には厄に耐えきれなくなり中庭に墜落したのだが。当然誰も知らない。

「もしも異変も何もなかったらただの児戯だろうと思って無視するけど、今の状況を考えるに放っておけないのよ。」
紫の言葉に、幽々子はまるで珍しい物を見るかのような目つきで紫の顔を見ていた。
「貴方、何処か頭でも打ったの?幻想郷を常に愛している貴方なら喜び勇んでその世界を焦土に変えそうだけど…。」
幽々子の言葉に妖夢はハッとした顔になり幽々子の方へ顔を向けた。
紫はしばらく無言で幽々子の顔をジッと見つめていたが、ふと口を開いた。
「幻想郷を愛しているからこそ過激な干渉はせず、なるべく穏便に済ませたいの。」
彼女はそれを皮切りに、幽々子とその隣にいる妖夢にある話を始めた。

「今回霊夢が飛ばされた世界は、幻想郷の次に私たちが住むのに適した場所なの。
 機械や科学などといったモノが殆ど進化しておらず、魔法が高度に発達した夢のようなところ。
 霊夢を喚んだ少女の記憶を辿ってそれを知った私はまさかと思ったわよ。
 だからこそ大規模な破壊や大虐殺といった干渉は避け、霊夢を連れ戻した後にその行く末を観察したいの。
 もしかしたら幻想郷に住む妖怪達の生活基準を向上できるかも知れないのよ。」

滅多に見れない八雲紫の熱弁に、幽々子は思わず面食らってしまったが無理もない。
幻想郷の要である博麗の巫女を何も言わずに攫った挙げ句に結界に細工をするようなのを相手にそんな事を言うとは思ってもいなかった。
まぁ多分それを言う理由は彼女の言う「外の世界」のような場所ではないからだろう。要は興味深いからその世界を壊したくないという事だ。
もしも紫の興味が沸いてこなければ、霊夢を攫った仕返しにと目を瞑るような酷い事をしていたに違いない。

幽々子は一息置いてから、返答を出した。
「わかったわ。貴方がそこまで言うのなら協力してあげる。」
「…ありがとう幽々子♪貴方のおかげ頭の中に残る悩みの種がなくなったわ。」
幽々子の答えを聞き満足そうに紫はそう言うと、手元に置かれた箸に手を伸ばした。
既に夕食を食べていた幽々子はそんな友を見て可愛いと思った。
幻想郷の創造主であり大妖怪として怖れられている紫は他の者達が思っている性格はしていない。
胡散臭いがその分長く生きている者特有の嫌みはなく、割と多くの者を引き寄せる。

だが、紫とは旧知の仲である幽々子は冥界に住む者である。
今更言うのも何ではあるが本来は顕界やそこで起こる事情は無闇に首を突っ込んではならない。
幽々子自身、幻想郷で何かあった場合妖夢や代理の幽霊達に任せており、彼女自身が幻想郷へ行くことは滅多にない。

しかし――冥界でもまた今現在幻想郷で継続している異変とほぼ同等の異変が起きていた。
一度は何が起こったのかもわからず大混乱を起こしたほどであった。
それが収まった後に幻想郷の結界が変異し始めたのを以前の会合で知った幽々子のもとに閻魔の使いがやってきた。

その内容はこうであった…。
「もし八雲紫が協力の申し出をしてくるのならばそれを受け入れなさい。今回の異変は幻想郷の異変と関連しています。」

霊夢が失踪した後に起こった冥界での異変、恐らく紫も知っていたうえでこの協力を申し込んできたのだろうか。
多分、というより確実にそうであろう。妖怪も人間も年を取れば自然と耳に色々な事が入ってくる。
今、冥界にも幻想郷にも、未曾有かつ大規模な異変が起こっているのである。


一方、こちらはニューカッスル城のホール。
今やここは王族派貴族達のパーティー会場と化していた。
辺りは楽しそうな声と華やかな演奏によって彩られ、この世に二つとない盛大な宴である。
ウェールズに手紙を渡した後、ルイズ達三人はパーティーにゲスト出演することとなった。
しかし、明日には外で陣取っている敵に殺される者達が楽しそうに振る舞っているのを見て、ルイズは途方もない悲しみを覚えた。
死を前に楽しく振る舞う者達は、勇ましいというより何処か悲しいというのだろうか…遂にルイズはそれに耐えきれずすぐに会場を出て行った。

霊夢はそんなルイズを見てまぁ無理もないかと思った。最も、一体何に耐えきれなくて出て行ったのかわからないが。
最も、ルイズがもし今の霊夢が見ているモノと同じモノを見ていたらパニックに陥っていただろう。
(全員が喜び勇んで死ぬ気だから、ついでに連れて行こうっていう奴等がうようよいるわね…。)
決して常人には見えないタチの悪い亡霊の類やらが大量にホールを漂っている事に気が付いているのは霊夢だけであった。
大方、ここで起こっている戦かなにかで死んだ者達のなれの果てであろうが、霊夢にとってはあまりいいものではない。

一方のワルドは何やらウェールズと話し合いをしていたようだ。
「では皇太子殿、明日の朝に式を頼みます…。」
「あぁ、私も朝早くに起きて準備をしておこう。それよりもまずはこのパーティを楽しみたまえ!」
ウェールズは最後にそう言うと後ろにいた貴婦人達の方へと戻っていった。
話を終えたワルドは後ろを振り向くといつの間にかルイズがいなくなっている事に気が付いた。
どこに行ったのかと辺りを見回しているとふと前から声が聞こえてきた。

「あの子なら耐えきれなくなって出て行ったわよ。」
そちらの方へ顔を向けると扉の傍にある椅子に座ってサンドイッチを食べている霊夢がいた。
一体何処からサンドイッチを持ってきたのかわからないがワルドはすぐに霊夢の傍へよると話しかける。
「やぁ使いm――失礼、えっと名前はハクレイレイム…とか言ったね。すまない、ルイズは一体何処に…?」
「たぶんウェールズから借りた部屋じゃない?」
霊夢はワルドの顔を若干嫌悪感を混ぜたような表情で見つめ、言った。
「そうか、感謝する。」
ワルドは礼を言うとすぐに大きなドアを開けてパーティー会場を出て行った。

それからしばらくした後、霊夢もティファニアから貰ったサンドイッチ(昼に食べるつもりだったもの)を食べ終え食後のお茶を飲んでいた。
すると、パーティーとアルコールの摂取で多少ハイテンションになりつつも人々の間からウェールズ皇太子が霊夢のもとへやってきた。

先程ウェールズの部屋で話が終わった後、霊夢だけ話があると言って残ったのだ。
その後、霊夢は何故アルビオンへ来たのかをウェールズに話したのである。
アンリエッタというお姫様から聞いたというその話に、ウェールズはあっさりと霊夢を信用してしまった。
しかしもうすぐパーティーが始まるのでその後でも、と言われ霊夢は一人待っていたのだ。
「いやぁーすまない、家臣達がもっと酒を飲めと言うモノだからついつい遅れてしまって。」
「別に良いわよ、どうせ急ぎの用でもないしね。」
霊夢はそう言うと腰を上げ、ウェールズと共に騒々しいパーティーホールから出た。


霊夢を部屋に入れ、ドアを閉めたウェールズはすぐに壁に飾られたタペストリーを勢いよく捲った。
捲った先には壁に取り付けられた小さなドアがあり、それを開いて中にある数十冊の本を一気に取り出した。

「この数々の本は、アルビオン王国が出来た頃には既に存在していた物さ。
 発見された当時は多くの学者達が競って解読したらしい。だけど結局誰にも解読できなかった。
       僕が生まれた時には誰も興味を示さなくなっていた。だから僕がこっそり盗んでやったのさ。」

ウェールズはそう言いながら一冊を手に持ちパラパラとページを捲った。
霊夢も興味本位に覗いてみたところ、どうやら妖精について調べた書物のようだ。
書いた本人の趣味だろうか、背中に生えてる羽の事まで丁寧に書かれている。
覗かれている事に気が付いたウェールズは霊夢の方へ顔を向け話し掛けた。
「どうだい、中々可愛い妖精の絵だろ?僕はこれが一番気に入ってるんだ。」

ウェールズはそう言うととある妖精の絵を指さした。
(多分というより絶対これはチルノね。絵の中でも自信満々な顔だわ…)
そんな事を考えている霊夢をわきに、ウェールズは楽しそうにページを捲っていく、文字は読めないが妖精の絵を見ているのだろう。
しかし実際には妖精は確かに可愛いが残虐な心を持っているため、霊夢にとっては害虫以上の存在であった。
空を飛んでいるときには集団で寄ってきて下手な弾幕を放ってくるので鬱陶しいことこの上ない。
妖精の実態を知っている者なら霊夢と同じイメージを持つが、どうやらウェールズは違うようだ。まぁ教えなくてもいいだろう。

霊夢はため息をつくとテーブルに置かれた本の一冊一冊を調べていく。
大抵は山草や魚の専門書や最近幻想郷でも見るようになった「雑誌」という本ばかりであった。
しかし霊夢の気をそれほど引くものはなく、いよいよ最後に残った一冊を手に取った。
それは本というよりまるで日記のような感じで、表紙に書かれている日本語のタイトルを見て、霊夢は怪訝な顔になった。

「……ハルケギニアについて?」
ポツリと呟き、ページを捲ると一ページ目にはこの世界、つまり『ハルケギニア大陸』の全体図が載っていた。

本の内容は、この大陸に住む人間の格差社会や幻獣、亜人。魔法と先住魔法について詳しく書かれている。
といっても辞典のような感じではなく、これには気をつけろとか…どう対抗したらいいか、というような事が書かれていた。
一体誰が書いたのかは分からないが、少なくとも霊夢と同じ世界から来た者が書いたのには違いない。
霊夢は一通りページを捲り、まぁ何かの役に立つだろうと思いその本を懐にしまうとウェールズに話し掛けた。
「わざわざ出してくれて有り難う。手がかりになりそうな物も見つかったし。」
その言葉を聞いてウェールズは振り向き、霊夢の懐に一冊入っているのに気が付いてニヤニヤとした。
「おやおや?どうやらお気に入りの一冊を手に入れたようだね?」
霊夢はその笑顔を見て、必要もない新聞を玄関に置いていく鴉天狗を思い出した。


本を懐にしまいウェールズの部屋を出た霊夢は貸し与えてくれた部屋へ行こうとした。
霊夢自身何か手がかりになる物を見つけたらすぐ出て行くつもりだったがどうせなら泊まっていけとウェールズは言ったのだ。
最初はどうしようかと思ったが、すぐに身体が重いことに気が付いた霊夢は部屋を借りることになった。
(まぁいっか、明日は飛んで帰らずにすむし。)
ここに来て最初、ルイズ達とウェールズの部屋に来たとき明日の朝早くに船が出ると言っていた。
勿論霊夢はそれに乗るつもりである、わざわざ数時間もかかる飛行はしたくない。
ただでさえ飛んだり戦ったりしたのだから今の霊夢はかなりの疲労を体内に蓄積していた。

部屋へと向かう途中、ふと月明かりが彼女の身体を照らした。
今霊夢が居る場所は丁度中央部分が中庭となっており、そこから夜風も吹いてくる。
「…折角だから夜風に当たっていこうかしら。」
その風があまりも冷たくて気持ちよかったのか、霊夢は誘われるように中庭へと出た。
芝生特有の柔らかい感覚が靴を通して足に伝わり、それがまた心地よかった。
空を見上げると無数に輝く星と双つの月が煌々と輝いており、暗い夜空を色鮮やかにしている。
すぐに近くには水路もあり、水の流れる音もまた耳を癒してくれる役割を果たしていた。
そんな風にして霊夢が心を落ち着かせていると、ふと後ろから足音が聞こえてきた。

誰かと思い後ろを振り返ると、そこには羽帽子を被ったワルドが立っていた。
霊夢はワルドの姿を見て、誰かと思ったが帽子の下にあったその顔を見てすぐに思い出した。
「アンタ、そう言えば…以前街で出会ったワドルって名前の男だったかしら。」
名前を呆気なく間違われ、ワルドは少しだけガッカリした表情になった。
「ワドルじゃなくてワルドなのだが…まぁ一回だけしか顔を合わせてないから無理もない。」
「…で、何の用?疲れてるから他人とはもう話し合いはしたくないんだけど。」
霊夢にそう言われ、ワルドはその場でこう言った。

「何、君には永遠の眠りをあげようと思ってね。」

その言葉が聞いた瞬間、霊夢は咄嗟に結界を自身の周りに張った。
しかし、簡単な結界であった為かワルドの魔法を防ぐ事は出来なかった。


バ   チ   ン   !   !


何かが弾けるような音が辺りに響き、ワルドの体から無数の稲妻が現れ霊夢に襲いかかった。
その場しのぎの結界では稲妻を完全に防ぐことは出来ず、残りの稲妻は服の中にある結界符が防いでくれた。
しかし、この世界に来てから取り替えていなかったボロボロの結界符では稲妻の威力をほぼ微力にすることしかできない。
微力といっても、その稲妻は疲れ切っていた霊夢を吹き飛ばすほどの威力を残していたのだが。
「――――――――ッ!!?」
吹き飛ばされた霊夢は悲鳴を上げる暇もなく、空中で体勢を戻せずそのまま芝生に叩きつけられた。
先程の稲妻を放ったワルドは予想よりも相手に攻撃が通じなかったことに驚いていた。
霊夢の体からは少し薄い煙が上がっているがただそれだけで、特に目立った外傷が無いのである。
あの稲妻―――ライトニング・クラウド――はほぼ一撃必殺の呪文なのである。致命傷でなければおかしいのだ。
そんな風に唖然としていたワルドを尻目に、霊夢はなんとか立ち上がろうと動いていた。

しかし体内に軽い電気が走ったことにより全身が震えており、生まれたての子鹿のようにうまく立つことが出来ないでいた。
唖然としていたワルドはその様子を見てハッとした顔になると素早く呪文を唱え、杖を震動させる。『エア・ニードル』だ。
「何故僕の『ライトニング・クラウド』を喰らってそれだけですむのか知らないが、とりあえずは死んで貰おう。」
見下した風にそう言い放つワルドを尻目に、震えながらも霊夢はなんとか立ち上がった。
呼吸は荒く、軽く小突けば倒れてしまうような状態だったがそれでも彼女は口を開いた。

「どうしてこう…この世界で出会う男は…私の背中を…狙うのかしら…ねぇ。」
霊夢の罵言にワルドは少し見下した風に応えた。

「好きに言えよ。どっちにしろ僕は君を殺し、ルイズを利用してレコン・キスタの一員として世界を手に入れるんだ。
     ルイズと形だけの愛を結び、あの娘の体内に秘めた力を使いレコン・キスタは世界をその手中に収めるのさ!!」

ワルドは自信満々にそう叫ぶと懐から真っ白な仮面を取り出して顔に付けた。
先日ラ・ロシェールの町で霊夢を不意打ちしたあの仮面の男こそ、ワルド子爵であった。


―――そう、ワルド子爵は王宮に不満を持つ貴族達の集まりである『レコン・キスタ』の一員だったのだ。
詳しい経緯は知らないが、一員となった後に彼はトリステインでの工作活動をしていた。
賄賂や脅迫によるレコン・キスタへの勧誘。アンリエッタに対しての媚売り。その他様々――
今回のルイズとの同行も、アンリエッタのお気に入りになったからこその結果である。

言いたいことを言えて満足したワルドはそのまま震動する杖を霊夢の胸に突き刺――

ド ゴ ォ ォ ン ! ! 

――そうとしたが、突如右の地面がもの凄い爆発音と共に吹き飛び咄嗟にワルドは後ろへ下がった。
まさかこいつが!と思った瞬間、霊夢は瞬時に懐から出したお札をワルドに投げつけた。
一直線に飛んでくるお札をワルドは地面に伏せる事でよけ、素早く辺りを見回し――とんでもないモノを見つけてしまった。
本来ならそこに居るはずのない青年と少女が二人、こちらを信じられないというよな目つきで見ていた。
風のメイジならばすぐにその気配に気づけていた。無論ワルドはそれなりの風の使い手である。
しかし、霊夢を仕留めようとしたり、自信満々に説明していた所為で気づかなかったのだ。
少女の隣でワルドを睨み付けていた青年――ウェールズは恐る恐る口を開いた。
「わ…ワルド子爵、まさか貴殿が敵だったとは…!」
そして次に、ウェールズの隣にいたルイズは杖をワルドに向けながらも涙目になって叫んだ。


「子爵様の…子爵様の…子爵様の ウ ソ ツ キ ィ ! 」 


純粋な乙女心を真っ向からへし折られたルイズの叫びは…
哀しくも未だにホールで飲んだくれている王族派達の耳には届きはしなかった。



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