あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

萌え萌えゼロ大戦(略)-03


「さっきの爆発……何だったのかなぁ?」
「スゴかったなー!」
 生徒たちがまだ煙の立ち上る塔を見上げて言う。やがて煙は収まったが、それでも
生徒たちはこの事態の元凶の名をいつものように口にしていた。
「どうせ今回の爆発も……」
「ああ、アイツの仕業だ!」


 爆発のあった教室からは、すでに気絶した教師、ミセス・シュヴルーズも医務室へと
運ばれ、ほとんどの生徒たちも移動を終えていた。そこに残っていたのはこの事態を
引き起こした張本人、ルイズと、その使い魔であるふがくだけだった。
「あーん。お風呂入りたーい」
「アンタねぇ!自分でやっといて何サボってるのよ!まじめに片付けなさいよ!」
 ルイズがとりあえず引き起こした教卓に腰掛けたまま言う。その姿にふがくが怒りを
あらわにするが、当のルイズは最初からふがくがその小さな体に見合わないほどの瓦礫の
山を軽々抱えて運ぶのを横目で見ているに近い状態だったので何を今更、である。
「……ねぇ、フガク」
「何?」
 不意にルイズがふがくに声をかける。その表情は真剣だ。
「さっき聞いたでしょ?わたしのこと……」
「それが何?」
「わたし、魔法が成功したことないの。成功率ゼロ。だから『ゼロ』のルイズって呼ばれてるの」
「…………」
「……おかしいわよね。魔法が使えるメイジであることが貴族なのに、魔法が使えないなんて」
「アンタ、バカ?」
「え?」
 ふがくがルイズの言葉を遮る。その顔は怒りに彩られていた。
「だったら、どうして私がここにいるのよ?ふざけるんじゃないわよ?
 ……私にはやることがあったのよ。あかぎを助けて、大日本帝国を勝利に導くはずの
私をこんな場所に呼んでおいて『成功率ゼロ』?今度そんな寝ぼけたこと言ったら
ぶっ飛ばすわよ?」
「……」
 ルイズは顔をうつむかせたまま上げることができない。よく考えるまでもない。ルイズは
ガーゴイルの一種だと理解した「ハガネノオトメ」――人間に似せてあるけれど人間じゃないと
聞かされたふがくでも、自分の生活、目的、使命があったはずなのだから。
「そ・れ・か・ら、私は『ふがく』!何度言ったら解るのよ!今度『フガク』って呼んだら
許さないからね!……だから、早くそんなつまんないことなんか忘れなさいよ」
「え?」
 ルイズが顔を上げる。ふがくは瓦礫の山で顔を隠してその表情を見せないようにしていた。
「……べ、別にアンタの気分がどうなろうと知ったことじゃないんだから!一応私を呼び出した
のはアンタだから、いつまでも沈んでいられたら困るだけ、それだけなんだから!」
 そう言ったふがくの言葉を遮るように、おなかの虫がかわいらしく鳴いた。その様子に
ルイズが思わず吹き出す。
「な、何笑ってるのよ!ルイズ!」
「あ、あはは……ご主人様と呼びなさいよ、ふがく!……そ、そうね……これが終わったら
お昼ご飯に行きましょう……あはは……」
「笑わないでよね!……まぁ、いいけど」
 そう言ってふがくは手にした瓦礫の山を片付ける。大日本帝国の秘密決戦兵器20トン
魚雷を扱えるふがくにとって、この程度はなんてことはない。ぼろぼろだった教室も、昼食
までには十分片付きそうな気配だった。
 その頃、中央本塔最上階の学院長室では、学院長秘書のミス・ロングビルが学院長
オールド・オスマンに今回の騒動の報告を行っていた。
「――先ほどの大爆発はミセス・シュヴルーズが行っていた『土』の授業で『錬金』を教えて
いた際、生徒が実践魔法で失敗したために起こったものだそうです。
 生徒の名は……」
 そこまで言ったロングビルの報告を、オスマンは遮る。言われなくとも解っていると、その声は
告げていた。
「……ヴァリエール家の末娘ルイズじゃろ?これで何度目かのぅ?」
「まだ修行中の生徒ですもの。失敗の一度や二度、仕方ありませんね」
 翠の髪をアップにまとめ、眼鏡をかけた知的な視線が柔らかくルイズを弁護する。
その様子にオスマンはゆっくりと椅子から立ち上がった。
「一度や二度なら許してやるが……生徒のしたこととはいえ、魔法学院長であるワシが
全責任を負わねばならんのじゃ」
 言いつつ、オスマンはロングビルの後ろに回り込む。
「こんな年寄りに酷よのぅー」
 続けて「ヴァリエール家からはもっと寄付金を出してもらわんとな!」などと言いつつ、
オスマンはロングビルのおしりに頬をすりつける。
「……あの……オールド・オスマン?いじけたふりしてセクハラするのは止めてください。
 これ以上続くと、王室に報告しますよ……?」
「何を言うとる!上司を慰めるのも部下の仕事じゃろ?」
「ちょ!まっ?やっ!」
 立場上無下にも振る舞えないロングビルの抗議にも、オスマンはおしりから顔を話さずに
反論する。はっきり言ってその姿には威厳のかけらも感じられはしない……そればかりか
頬ずりだけでなく両手でおしりを鷲掴み、なで始める始末。立場上の問題でロングビルは
耐えているが、それも時間の問題だった。
「カッカしなさんな!そんな風だから――婚期を逃すのじゃ!」
 おしりをなでて鼻の下を伸ばしまくったそれはまさに禁句。その一言でロングビルの中の
何かがキレた。ぶちっという音を聞いたのは誰であろうオスマンだけなのだが……幽鬼の
ような表情のロングビルがゆらり、とオスマンに向き直る。
「……こ……のエ……ロジ・ジ・イ……」
 吹っ切れたロングビルのブーツが小気味よいくらいにオスマンを踏み、踏む、踏んだ。
そこにはもはや伝説ともいえる老メイジの威厳も、麗しい女性の慎みもない。しかも
こんな時に限って往々にしてタイミングの悪い人間が現れるものである。
「失礼します。オールド・オスマ……ン……!?」
「あら!イヤですわ。オールド・オスマンが腰が痛いとおっしゃるのでマッサージしてましたの。
健康を管理するのも私の仕事ですから(はぁと)」
 それは古びた書物を抱えた眼鏡で頭の寂しい中年教師――コルベール。コルベールは
学院長室で繰り広げられるスペクタクルを目の当たりにして硬直し……オスマンの尻を
ぐりぐりと踏みながら乙女じみた仕草を見せるロングビルの、この現状には全く似つかわしくない
言動で再起動した。
「――んで、何の用かの?ミスタ……えっと、コペルニクス君?
 ミス、お茶を淹れてくれんか?」
「はい」
「コルベールですっ!……誰が貨幣鋳造について論文を書いたのですか、まったく」
 先ほどまでの狂騒が幻だったかのような――オスマンの頭のこぶさえなければ――
雰囲気の中、ロングビルがお茶を淹れに席を外したタイミングを見計らって、コルベールが
オスマンに手にした古い書物を差し出す。それは「始祖ブリミルの使い魔たち」という、
始祖とその使い魔のことを記した古文書だった。
「まーた君はこのような古い文献など漁りおって」
「あの……こちらもご覧になってください」
 あくびをかみ殺すオスマンに、コルベールは一通のメモを手渡す。それは先ほどふがくの
左手のルーンをスケッチしたものだったが、それを目にしたとたんオスマンの顔色が
変わった。
「ミス・ロングビル、すまんが席を外してくれんか。ミスタから詳しく話を聞きたいんでの」
「――はい」
 ロングビルはオスマンの言葉に従い、一礼をして部屋を辞するべく学院長室の重厚な
扉に手をかける。その眼鏡の奥の視線が妖しい輝きを帯びたことに、二人の男は気づく
こともなかった――


 破壊された教室の片付けを終えたルイズとふがくは、学院の中央本塔にある立派な構えの
扉の前にいた。中ではもう早い昼食を迎えている生徒たちの声が聞こえる。その扉の前で、
ルイズがその薄い胸を目一杯張って言う。
「ここが『アルヴィーズの食堂』よ。貴族しか入れないけれど、今日からあんたもここで
食べるのよ」
 その言葉にふがくはあっさりと答える。
「貴族だけ、ね。それじゃ私は別のところで食べるわ」
「え?」
「だって、貴族だけ、でしょ?私は貴族に列せられたことなんてないし。軍だと将校扱い
だけど」
「将校なら貴族でしょ?」
「ここじゃそうかもしれないけど、大日本帝国は違うわ。優秀な者が将校になるのよ。
それが平民出身でもね。
 第一、ここじゃどこにしても普通の食事以外できそうにないし。堅苦しいのは嫌いなの」
 ゲルマニアみたいね……とルイズは思った。それが資産か才能かの違いはあるけど、とも。
確かふがくの国って――貴族と平民それぞれの代表者を集めた二つの議会で政策を決め、
それを建国以来2600年途絶えたことのない皇族から即位した、なんとかいう代々の皇帝が
承認して動く国、だったっけ――トリステイン王国より歴史は浅いしやっぱり変わった国よね、
と昨夜のケンカと書いて話し合いと読む情報交換で得た知識を反芻するが、それで
引き下がるルイズでもない。
「いいのよ!わたしが決めたんだから。それで、どんなのが食べたいのよ?」
「……言ったところで用意できるとはとうてい思えないけど?」
「言いなさいよ!東方の料理でもヴァリエール家お抱えの料理人を呼んででも作らせるわよ!」
「ぜっったい無理」
「言いなさい!」
「うるさいわね!いくら私でも自動車も走ってないのにガソリンがあるなんて最初から
期待もしてないわよ!」
 肩で息をするルイズとふがく。一息ついて落ち着いてからルイズが聞く。
「……が、『がそりん』?それに『じどうしゃ』?」
 頭に「?」が浮かんでいそうな表情で聞くルイズに、ふがくは「ほら見なさい」という顔をする。
「説明は面倒だからしないわ。とにかく、聞いたこともないんじゃ見たこともないでしょ?
だからいいって言ったの」
「ぐっ。……と、とにかく、今日からわたしと一緒に食事をするの。授業にもわたしと一緒に
出るのよ。これは命令よ!」
 そう言って、ルイズは入り口付近で給仕をしていた黒髪のメイドを呼ぶ。そう言えば
今朝も見かけたっけ、と思ったのは、メイドが目の前に来てからだった。
「どのようなご用でしょうか。ミス・ヴァリエール」
 肩で切りそろえた艶のある黒い髪に黒い瞳。そして出るところは出て引っ込むところは
引っ込んだスタイル。ルイズが思わず嫉妬しそうなメイドだったが、平民に嫉妬することは
貴族として恥ずかしいことだと努めて平静を装った。
「今日からわたしと一緒にこのふがくもここで食事をするから。準備してくれない?」
 ルイズがそう言うと、黒髪のメイドは一瞬驚いたような表情を見せ――たような気がした。
「かしこまりました。それでは中でしばらくお待ちください。ミス・ヴァリエール、ミス・フガク」
 黒髪のメイドはきちんとしつけられた礼を二人にした後厨房へと下がっていく。言われた
ように中に入り席に着いた二人にやがて運ばれてきた食事を前にして、ルイズはふがくが
トリステイン風とは違ってもきちんとしたテーブルマナーを披露したことに驚いていた。
「あんた、黙ってたわね。アルビオン風というか、ガリア風というか……きちんとしたテーブル
マナー学んでいたなんて」
「帝国海軍の幹部用の食事はちょうどこんな感じだし。こっちに来てフランス、というか
オランダ料理っぽい、かな……こういう料理を食べることになるとは思っていなかったけど」
 フランス?オランダ?多分ふがくのいた国の近くにある別の国だろうと、ルイズは理解した。
「何よ。さっき将校は貴族以外でもなれるって言ったけど、やっぱり貴族じゃない。平民が
こんな料理を口にできるはずもないもの」
 そう言ってルイズはデザートのケーキを待つ。そのとき、少し離れた場所から甲高い
少女たちの声と、甘ったるい雰囲気をたたえた少年の声が聞こえてきた。

「ギーシュ様!はっきりしてください!」
「どうして嘘つくのよ!」
「待ちたまえ!君たちの名誉のために……」
「そんなものはどうでもいいわ!」

「……何、アレ?」
 ふがくが声のした方を見る。そこには金髪ドリル髪に赤いリボンをつけた少女と栗色の
セミロングの少女に囲まれている金髪癖毛の見るからに気障ったらしい少年がいた。
少年と金髪ドリル髪の少女はルイズと同じ黒色のマント、栗色セミロングの少女は茶色い
マントを身につけている。
「……ギーシュとモンモランシー、それに名前は知らないけど1年生の子ね。またギーシュが
つまんないことでもしたんでしょ?」
「ふぅん」
 ふがくはしばらくその様子を眺める。どうやらギーシュという少年が二股かけていたようだ、
ということは解った。気障ったらしい仕草が鼻につく。その大仰な動きのせいでギーシュの
ポケットから何か紙の束――どうやら手紙のようだ――が落ちる。それを見たふがくは、
その紙の束に近づく不運な人間を確認すると静かに席を立った。この世界にはないラジアル
ゴムタイヤで磨き抜かれた床の上を足音も立てずに滑るように移動するふがく。横にいた
ルイズも、ふがくが席を立ったことに気づかなかった。
「まったく。ギーシュも懲りないわね。二股なんて……って、あれ?ふがく?」
 ギーシュが落とした手紙の束を拾ったのは、先ほどの黒髪のメイドだった。そのメイドが
ギーシュに声をかけようとしたとき、静かに近づいたふがくがその手から手紙の束を奪う。
「え?」
 驚く黒髪のメイド。ふがくは唇に指を当てて言った。
「……黙って私に任せて。
 そこの色男。ポケットから手紙の束が落ちたわよ」
 ギーシュは返事をしない。なるほどね、とふがくは一人納得すると、やや挑発するような
口調で言葉を継ぐ。
「もしかして、これ恋文かしら?バラ模様の封筒なんて……見た目通りに気障ね」
 その言葉がギーシュの後ろにいた金髪ドリル髪の少女と栗色セミロングの少女に昏い
炎を点す。
「ギーシュ様ひどい!」
「何よこのラブレターの数!こんなにモーションかけてたなんて!」
 立て続けに響く小気味よい音と鈍く重い音。二人が怒りも収まらぬまま去った後には、
ぼろぞうきんのように這いつくばるギーシュが残る。遠巻きに見ていた他の生徒たちも、
この状況にはさすがにやや引き気味の様相を見せていた。
「自業自得ね。これに懲りたら女の子にはもっと誠実になることね」
 手紙の束をギーシュに投げ渡し、黒髪のメイドに今日のデザートのことを聞くふがく。
その後ろで、ギーシュがゆらり……と立ち上がった。
「君ィ……覚悟はできているんだろうね?」
「覚悟、ねぇ。どうしたいのかしら?色男さん?」
 肩をすくめてみせるふがく。それがいっそうギーシュを挑発する。
「その態度……万死に値するよ。さすがに『ゼロのルイズ』が呼び出した使い魔だ。誰が
造ったか知らないが、礼儀も知らないガーゴイルには、僕が貴族に対する礼儀というものを
教えてあげよう」
「はぁ?そっちこそ相手を見て物を言いなさいよ。相手の力量も量れないようじゃ、戦場に
出たらアンタ真っ先に死ぬわよ」
 ばかばかしい――そんな雰囲気を隠そうともしないふがくに、ギーシュは肩を震わせる。
「ふ……ふふ。それはこの僕、ギーシュ・ド・グラモンが武門の出だと知っての侮辱かい?
 ……いいだろう。ヴェストリの広場で決闘だ!」



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