あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと世界の破壊者-07a

第7話「王都トリスタニア・前編」


 日は変わり、今日は虚無の曜日。週に一度の学院の休日である。
 朝食を取り終え、外出の準備が整ったルイズは、何故か夏海と共に写真館の前で待たされていた。
「街に行くんだから、馬小屋で馬を借りるんじゃないの?」
「馬?そんな前時代的なものより、もっと便利なものがある」
 そう言われて写真館の前で待っていると、士とユウスケが何処かで見た事ある鉄馬を引いてやって来た。
「こ、これに乗るの…?」
 ルイズは顔を引きつらせた。
 それはルイズが夢の中で見た『仮面ライダー』達が乗っていた鉄馬だった。『バイク』と言う乗り物だと教えられる。
「ほらよ」
 ルイズは士からヘルメットを手渡された。どうするものなのか判らずにいると、先に冠っていた夏海に付けさせてもらった。
 この世界には道路交通法は無いので別に着けなくても問題無いのだが、そこは一応、安全上の問題である。
「お前は俺の後ろで良いな。夏海、お前はユウスケの方に乗れ」
「はい」
 夏海は頷くと、ユウスケのバイク、『トライチェイサー』の後ろに跨がった。
 それを見真似でルイズも士のバイク、『マシンディケイダー』の後ろに跨がった。
「ちゃんと掴まれ、振り落とされるぞ」
「う、うん」
 ルイズは士の腰に腕を回した。身体がぴったりと士の背中にくっ付いて、何か気恥ずかしい。
「行くぞ」
 そう言って士はエンジンを始動させ、ゆっくりとバイクを発進させた。それにユウスケのバイクも続く。
 だんだんとスピードは上がり、あっという間に馬では体感出来ないスピードに達した。
「…え?ちょっ!?速っ!!?」
 初めてのスピードに、ルイズは声を上げた。
 あっという間に学院の敷地から飛び出し、馬に乗った学院の生徒達を次々と追い抜いて行く。
 いつの間にか魔法学院はまったく見えなくなっていた。
「おい、ちゃんと道案内頼むぞ」
「わ、わかってるわよ!」
 ルイズはちょっとヒステリックに叫んだ。
 士達を召喚して一週間と少し、彼らには驚かされてばかりである。

 その日、キュルケは外から轟く聞き覚えの無い轟音に叩き起こされた。
「…もう、朝っぱらからなんの騒ぎよ…」
 キュルケは目を擦りながら自分の安眠を奪った犯人の顔を確かめようと窓から外を覗き込んだ。初めはまたコルベールが何か変梃な発明をしたんだろうと思ったが、違った。
 中庭を轟音を轟かせて疾走する2頭の馬…のような鉄の塊。そこに跨がっていたのは、間違いない。
「ツカサ!!?…と、ルイズも!?」
 片方は今キュルケが最も夢中になってる男、その後ろにしがみついていたのは特徴的なピンク髪の憎き宿敵に間違いない。少し距離が離れていたが、恋する乙女フィルターにかかれば相手が意中の男かそうでないかを見分ける事など雑作も無いこと。
 2頭の馬のような鉄の塊は名馬の如き速さで学院の外へ出て行ってしまった。
「…こうしちゃいられないわ!」
 キュルケはネグリジェを脱ぎ捨て、手早く着替えと化粧を済ます。手慣れたもので、10分掛からず全て終わらせ、寝起き姿からいつもの輝く良い女に変貌を遂げる。
「今から馬を借りて追いかけても追いつけそうにないわね…ってかあの鉄の馬みたいなのって何なのよ…馬?馬なのかしらね?あれ」
 しかしそんな事今はどうでも良い。あのスピードで走る士達に追いつく事が重要だ。考えうる最適な方法はただ一つ、キュルケは迷わず部屋の外へと向かう。
 こんな時、持つべきものは親友だ。


 学院を出て一時間程でルイズ一行はトリステイン王都・トリスタニアに到着した。
 2台のバイクは門の傍にある駅に馬と同じように預けた。初めてバイクを目の当たりにし、駅の親父が目をまん丸くしていたのが印象的だった。
「良いの?あんな所に置いてきちゃって。盗まれちゃわない?」
 この世界には存在しないある意味貴重なものだ。好事家達が欲しがらないとも限らない。
「キーは外してある。大体、この世界の人間には使えないだろう」
 それもそうか、とルイズは納得した。
「わぁ、ここがこの世界の街ですかぁ…」
 トリスタニアの町並みを目の当たりにして、夏海が思わず感嘆の声を上げた。
「そうよ。ここがトリステインの王都、トリスタニアよ!」
 ルイズは胸を張って誇らしげにトリスタニアを紹介してみせた。いつもは自分が驚いてばかりなので、ここで一発彼らを驚かせてやろうと胸を張った。
「思ったよりも狭いんだなぁ」
 が、まったく予期せぬ反応がユウスケから返って来たため、ルイズの腰が砕けた。
「ま、車もバイクも無い世界だからな、こんなもんだろう」
 士はそう冷ややかに言いながらも、目につく所を次々とカメラに収めていた。被写体としては気に入ったようだ。
「私は良いと思います。まるで絵本の世界に迷い込んだみたいで」
「似たようなもんだしな」
 素直に感心してるのは夏海くらいだ。
 三者の予想外の反応に、ルイズは少しだけ気が滅入った。だがまだ街に着いたばかり、こんな所でへこたれてどうする!と、無理矢理自分を奮起させた。
「…で、アンタ達、今日は情報収集って言ってたわね。一体どうやって情報を集めるの?」
「さてな。とりあえず、その辺をぶらついてみるか」
 そう言ってまた別の所を写真に収める。
「…無計画、なワケね…」
 ルイズはげんなりする。
「大体この世界の仮面ライダー探すって、そんなのがいたらとっくに国中で噂されてるわよ」
「人知れず活動しているって事もあり得るからな。まだ目覚めてないって可能性も十分にある」
「何よそれ、そんなの探しようがないじゃない!」
「ま、ともかくこの世界じゃお前の使い魔が俺の役割らしいからな。こうしてれば、いずれ向こうから現れるだろう」
「そんな都合良く行くのかしら?」
 士達の9つの世界の旅の概要は聞いている。なんでも世界を訪れると士にはその世界での役割を与えられる。衛士とか音楽家とか弁護士とか、コックに学生に郵便屋に…と、それこそ色々な。
 そしてその役割を果たす事でその世界の仮面ライダーと接触出来る、と言う話らしい。何とも都合のいい話である。
「だからってずっと学院に引きこもってるわけにもいかないだろう。何より健康的に良くない」
「ま、そうよね」
 ルイズだってたまの休みに羽を伸ばすために街に買い物に出る。仮面ライダーの情報が集まるかどうかは置いておいて、彼らを学院の外に出してあげる事が本日の第一目標、と言う事に今決めた。
「さあ!早く行って、聞き込みしましょう!」
「…張り切ってるわね、ナツミ」
「当たり前です!早くこの世界の事について知らないと。もう随分とこの世界に居っぱなしなんですから」
「ちょっと待ちなさい!アンタ道判んないでしょう!?」
 息巻いて街の方に歩いてゆく夏海を慌てて追いかけるルイズ。それにユウスケも続き、士もやれやれと肩を竦めながらその後を追う。
 と、ふと士は視線を感じ、そちらを振り向いた。
 だがそこには見知らぬ人々がただ街を行き交っているだけで、視線も何も感じられない。
「…気のせいか?」
「何やってんだよ士!」
 痺れを切らしてユウスケが士の元に駆け寄ってくる。
「いや…、何かの視線を感じて、な」
「視線?」
「ツカサ!ユウスケ!置いて行くわよ!!」
 先を行くルイズが二人に呼びかける。
「ほら、行くぞ士!」
「…あぁ」
 ユウスケに連れられて、士は疑問を拭い切れぬまま、ルイズ達と共に街の中心へと繰り出して行った。

 するとその近くの物影から、ぬっと一人の中年の男が姿を現した。この男こそ、さっき士が感じた視線の持ち主。
 茶色いコートを羽織り、茶色い帽子を目深に被っていた男は、明らかに周囲から浮いていた。
 もし士が彼と出会ったらこう呼ぶであろう。鳴滝、と。
「ディケイド…遂にこの世界へ足を踏み入れてしまったか…」
 鳴滝は眼鏡の奥から憎悪を含んだ視線で遥か先を行く士達を睨みつけた。
 しかしすぐさま口元をにやりと吊り上げる。
「…だが良い、今日ここでお前の命運は尽きる事になる!精々最期の時を楽しむんだな!はははははは!はははははははは!」
 高笑いを上げながら鳴滝は人ごみの中へと消えて行った。
 だが不思議な事に、周囲の人間は誰一人としてそのような奇行を振る舞う男の事など気に留めなかった。


 トリスタニアの西側大通り。
 その衛士の詰め所で、二人の衛士がポーカーを興じていた。
 本日も街は至って平和。平和であれば衛士達の出番も無い。
 今日は虚無の曜日、遠出してここトリスタニアにやってくる人も多く、街はとても賑わっていた。
「キャーーーーッ!!」
「う、うわぁぁぁーーーっ!!!」
 だが突如上がった悲鳴が状況を一変させた。
「ば、化け物だぁーーーーっ!!!」
「何!?」
 大通りは阿鼻叫喚の大騒ぎに陥り、人々が突如襲った何かから逃げ惑う。
 衛士二人はトランプを置くと壁にかかっていた槍を持って詰め所を飛び出した。
 外に待っていたのは地面に転がる無数の死体と、血の水溜まり、そしてその真ん中に立つ、くすんだ緑色の肌の見た事も無い亜人。
「何だ?オーク鬼…?」
「いや違う…こんな亜人、見た事も無いぞ」
 横並びの六つの丸い眼、側頭部から伸びた突起、その姿は彼らの知るオーク鬼のそれとは大きくかけ離れていた。
 初めて見る亜人に戸惑いつつも、衛士達は手に持った槍の切っ先をその亜人に向けた。こう言った輩をこの街から排除するのが彼らの仕事だ。
 だが亜人はまったく恐れる様子もなく、むしろそんな衛視達を嘲笑うかの様にゆっくり首を回した。
「なめやがって!俺ら平民でも、お前一匹どうとでも出来るんだ!」
「貴族だけがこの国を守ってるんじゃないって、証明してやる!」
 そして同時に二人の衛士は亜人に斬り掛かった。
 亜人は顎を左右に割り、言葉を発した。
『ゲゲルン ザジラシザ!』
 それが、衛士達が今生で聞いた最後の言葉だった。


 一方、時間的にそろそろ昼食を取ろうとルイズ一行はカフェの建ち並ぶ区画を歩いていた所で、遭う筈のない人間と遭遇した。
「あらん、偶然ね、ダーリン♪」
 ルイズの顔が引きつる。
 偶然?嘘だ。絶対嘘だ。ルイズは心の中でキュルケの言葉を真っ向から否定した。
 キュルケの後ろにはタバサがいつもと同じ無表情ではあるが、若干不機嫌そうに立っていた。
 恐らくルイズ達が出掛けるのを見て、キュルケは慌ててタバサに風竜で追いかけてもらうよう頼んだのだろう、と、ルイズは推理した。
「なんだ?お前らもこの街に来てたのか」
「勿論!ダーリンを追いかけて来たに決まってるじゃない♪」
 そう言っていつものように士の腕に絡み付こうとしなを作って近付くが、その前に夏海が立ちはだかった。
「………」
「………」
 夏海から繰り出される無言のプレッシャーに、キュルケは思わずその場でたじろぐ。
(この娘、平民のくせに…出来る…!)
 一触即発の二人の横で、士は小さく肩を竦めた。
「おい、それより昼飯はどうするんだ?まだ店も決めてないだろ?」
 すると耳聡いキュルケは渡りに舟とばかりに士の発言に食らいついた。
「えっ?お昼まだなの!?じゃああたしがいいお店紹介してあげましょうか?」
「ふざけないでよ!何で私がツェルプストーなんかと一緒にランチを食べなきゃいけないのよ!?」
「あら、別にルイズと一緒にだなんて思ってないわよ。あたしはダーリンと二人っきりでって言ってるのよ?」
 と、キュルケは夏海の一瞬の隙を付いてするりと士の腕に抱きついた。夏海が憎々しくキュルケと士を睨む。
「それこそふざけんじゃないわよ!キュルケ!いっつもいっつも人の使い魔にちょっかい出して…!!」
「仕方無いでしょ、あたしの愛は完全独走。誰にも超えられないわ」
「私が超えてやる!」
「ふふ、出来るかしら?愛の前に立つ限り、あたしに恐れる物は何もないわよ!」
「お前らいい加減にしろ…」
 グダグダとまるで進展しない口喧嘩を続ける二人に、さしもの士も呆れ気味である。

 そんなこんなで結局、一同はキュルケお勧めのカフェとやらで揃って昼食を取る羽目になってしまった。
「…別にあんた達まで来る事無いんじゃない?宿敵ツェルプストーとは一緒にランチなんて食べたくないんじゃなかったの?」
 皿の上のパスタをくるくると巻き上げながら、キュルケはつまらなそうに言った。
「だからってツカサとアンタを二人っきりになんて出来るわけないじゃない!」
 ルイズはぷんすかと頭から湯気を吹き出しながら切り分けた鳥もも肉のロースを口の中に放り込んだ。
 そんな二人に挟まれて座っている士は、頬杖をついてうんざりしたようにフォークで皿の上の人参のソテーを転がしている。
 その正面には夏海が座り、一心不乱にサラダを口に運びながら、二人の動向に気を配っていた。
 因みに4人掛けのテーブルに収まり切らなかったユウスケとタバサはその隣のテーブルに着いている。
 タバサはただひたすら無言ではしばみ草のサラダを頬張っていた。
「…よく、そんなに食べられるね…」
 しかしタバサは無言。ユウスケは居たたまれない気持ちでサンドイッチを頬張りながら、隣のテーブルの動向に目をやった。
 3人の女性に囲まれて流石の士も消耗している様子、何とも珍しい光景だ。
(三角…いや、四角関係か…大変だけど頑張れ!士!)
 ユウスケは心の中で無責任なエールを送った。
 その士はいい加減うんざりしていた。
「…ったく、お前らもいい加減懲りろ、少しは」
「文句ならルイズに言ってちょうだいな。あたしは無益な争いなんて望まないのに、いつもルイズの方から仕掛けてくるんだもの」
「アンタが私を怒らすような事をするから悪いんでしょう!?その意味じゃケンカをふっかけてくるのはいつもアンタよ!」
「あなたには堪え性ってのが無いのよ。もう少し我慢するって事を覚えたら?」
「目の前で人の使い魔を奪い取ろうとしてるのに我慢出来るわけ無いでしょう!?」
「奪うだなんて人聞きの悪い。男と女、誰と誰が恋愛したってそれは当人達の自由でしょ?」
「ツカサは私の使い魔よ!使い魔の相手を選ぶのも主人の役目!ツェルプストーの女なんかお断りよ!」
「あら、じゃあどんな相手なら良いって言うのよ?まさか、自分が相応しいとか、そんな事言うんじゃないわよね?」
 キュルケが目を細めてそう言うと、ルイズの頬にさっと朱が差した。
「なっ…!?そ、そんなわけないじゃない!ツカサには…」
 と、そこでそれまで蚊帳の外にいた夏海が視線に写った。
「そ、そう、ナツミ!ナツミがいるわ!」
「えぇっ!?」
 夏海は思わず口に含んでいたサラダを吹き出しそうになった。
「わ、私が、ですか…?」
 二人の視線が集まり、夏海は狼狽する。
「夏みかんが?冗談じゃない」
 が、そんな空気をぶちこわす士の一言。間髪言わずに『笑いのツボ』が押されたのは言うまでもない。
「っははは!あははははは!」
 床で笑い転げる士を尻目に、女達の会話は続いた。
「で、実際どうなの?あなた達って恋人なの?」
「い、いいえ!全っ然!そんなんじゃないです!」
 キュルケの疑問を夏海は真っ向から否定する。キュルケは口元をにやりと吊り上げた。
「ほら、つまりツカサはフリーなんじゃない。誰と恋愛したって自由でしょう?」
「だからってアンタなんか認めてやらないわ!ツカサの主人として、断固として反対よ!」
「ツカサがアタシを選んでくれても?」
「ツカサがなんと言っても、よ!」
 ルイズとキュルケの間でバチバチと激しく火花が散った。
 すると不意にキュルケの口元がツイッと吊り上がった。
「…どうやら、お互い譲れないみたいね」
 ルイズの方もキュルケの意図が見透け、その口元を緩めた。
「…そうね、とうとうこの時が来てしまったみたいね」
 ルイズが言い終わると同時に、二人は同時に杖を抜き、互いの鼻先にその切っ先を突き付けた。
 和やかだったカフェの店内が、一色触発の状態に陥る。
「あ、あの、二人とも…!」
 これは流石に止めねばと慌てて夏海も立ち上がろうとしたが、それよりも早くタバサが二人の間に自分の杖の頭を割り込ませた。
「ちょっと、邪魔するって言うの?タバサ」
 キュルケが親友とは言え無粋を働くタバサを咎めたが、タバサは無言で首を横に振った。
「街が騒がしい」
「え?」
 ルイズとキュルケは同時に声を上げた。
 今日は休日で、街もいつもより賑わっているのは当たり前だ。だがタバサの言わんとしてる事はそうではない。
「…何かあったのかしら?」
 ルイズの相手は一度保留にし、キュルケは店の外に目をやった。
 確かにさっきまでの活気ある賑わいとは違って、何やら不穏な雰囲気が外から漂っていた。
「…行ってみましょう。ツカサ、いつまで寝てんのよ!」
 ルイズは床にひっくり返っていた士を叩き起こすと、伴ってカフェの外に飛び出した。
「ちょっと、ルイズ!?」
 慌ててキュルケもそれを追う。夏海、ユウスケ、タバサも後に続く。タバサはその際しっかりと食事のお代をテーブルの上に置く事を忘れてなかった。
 店の外は、店内で感じた通り騒然としていた。
 街を行き交う人達は、何故か皆同じ方向に向かって走っていた。まるで何かから逃げる様に。
「ちょっと、一体何があったの!?」
 ルイズは近くを通り過ぎようとした平民の男を適当に一人呼び止めて事情を聞こうとした。
「あ、あんた、貴族様かい?」
「そうよ、トリステイン魔法学院の生徒。一体この騒ぎは何?何が起こってるの?」
「お、オーク鬼だ!オーク鬼が暴れてるんだ!もう何人も殺されてる!立ち向かった衛士達もだ!」
「オーク鬼ですって!?」
 ルイズ、キュルケ、タバサの表情に緊張が走る。
「オーク鬼ってなんだ?」
 3人の緊張を感じ取り、士は神妙な面持ちで尋ねた。
「この世界に生息してる亜人よ。辺境の村とかで暴れ回ってるって聞くけど、まさか王都に現れるなんて…」
「トリステインの魔法衛士隊は何やってんのよ!?」
 キュルケがヒステリックに叫ぶと、そこを影が通り過ぎた。
 一同が見上げると、鷹の頭と獅子の身体を持つ幻獣、グリフォンが数体、その背にマントを羽織った騎士を乗せて街の西側へと飛んで行った。
「あれは、トリステイン魔法衛士隊のグリフォン隊!」
「やった!これで助かるぞ!」
 グリフォン隊の勇姿を見て、男がはしゃぐ。釣られて街を逃げ惑っていた人々も歓喜の声を上げたり安堵の表情をしたり。
 これで安心と、キュルケとタバサの緊張も解れた。
 が、ルイズはそうとはいかなかった。
「…行くわよ、ツカサ」
 ルイズはグリフォン隊が飛んで行った街の西側へと足を向けた。
「ちょっ…!ルイズ!?何処行くのよ!?」
「オーク鬼の所によ」
 それを聞いてキュルケの顔が青くなる。
「何言ってるのよ!?魔法衛士隊に任せれば良いじゃない!何もゼロのあなたが行く事ないわ!」
「ゼロだとか関係ないわよ!私の祖国、それも王都が汚されてるのよ!?それを見過ごしたら、トリステイン貴族の名折れよ!」
「だからって、ゼロのアンタが行っても何の役に立たないわよ!」
 ルイズを必至に引き止めようとするキュルケだったが、その横をスッと士が追い越した。
「大丈夫だ、俺も一緒に行ってやる」
「ツカサ…」
 士の強さはキュルケも折り紙付きだ。士に出てこられてはキュルケも閉口するしかない。
「行くわよ、士!」
「あぁ!」
 すぐにルイズは街の向こうへと走り出した。士が空かさずそれを追う。
「待て!俺も行く!」
「わ、私も!」
 ユウスケと夏海も慌ててそれを追って駆け出し、4人はあっという間に視界から消えた。
 キュルケとタバサの二人だけがその場に取り残された。
 キュルケは深い溜息を付いて頭を抱えた。
「どうするの?」
 傍らのタバサが尋ねた。
 しかし、キュルケの心は決まっていた。
「…決まってるわ。ヴァリエールばかりに良い格好させてたまるもんですか!」
 そう言ってキュルケもルイズ達の後を追って走り出した。
 タバサも、黙ってキュルケの後に続いた。




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