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汝等、虚無の使い魔なり!-04


「は? 神様?」
「うむ」

 場所はルイズの部屋、決闘騒ぎの後ギャラリーなど全て置いて部屋に戻ってきた3人。
 紅朔はさっさと一人部屋に戻ってきて、ルイズのベッドでぐっすり。
 勿論激昂したルイズではあったが、九朔が懸命になだめて落ち着かせた。

「あんた、さっきので頭打ったりしたんじゃ……」
「正気だ、そして先ほど言った事は全て事実」
「……本当に、……頭」
「打ってはおらぬ!」
「……いきなり神様何たら言われても、信じられないんだけど」
「神は信じず、始祖だけは信じると?」
「実際居たんだから信じるしかないじゃない」
「それを言えば始祖も同じであろう、その目で実物は見た事はあるか?」
「う……、そ、そう言うあんたは」
「ある、我等は旧神、親父殿と母上に我等が魂と、身と、道を、未来を救われた」

 迷い無く、ただ真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐルイズの瞳を見据える。
 そんな真剣すぎる九朔の瞳に、ルイズは一瞬で引き込まれた。

「……あ、あんたがそう言うなら、そうなんでしょうね」
「ああ、あの時の親父殿と母上の背中はとても……。 いつかはあの背中に追いつきたい、肩を並べたいのだ」

 九朔は右手の拳を堅く握り、それを見つめる。

「……そう、お父様とお母様が居る高みに上るの。 そしてあのアバズレを……、ひき肉にぃ……」

 とのっそり起き上がった紅朔。
 アバズレと言うのは十中八九悪神の事だろう、必ずは滅ぼし尽くさねばならん仇敵。

「あばず……、誰なのよそいつ」

 紅朔の怒気が篭った声におびえつつも、ルイズは誰の事を言ってるのか聞いた。
 それを聞いた九朔と紅朔から表情が消える。

「『這い寄る混沌』」
「『無貌の神』」
「『闇に棲むもの』」
「『燃える三眼』」
「その存在は『ナイアルラトホテップ』」
「それが打倒すべき邪神の名よ」

 最も凶悪な愉快犯、ありとあらゆる存在を嘲笑し続ける存在。
 アザトースさえも冷笑する神柱、凶器と混乱を齎す有限にして無限の存在。
 親父殿と母上が無限に続く無窮の果てに滅ぼし続ける存在、未来永劫負け続ける荒ぶる古き神。

「じゃしん? 邪悪な神様?」
「うむ、おぞましいほど性質が悪い存在だ」
「……本当にそんなのが居るの?」
「居なければ我等は今ここに居なかったであろうな」
「関係あるのね」
「ああ」
「我等の成り立ちもあの悪神が関わっておる……」
「あんたたち人間じゃない人間って言ってたわね、あれってどう言う意味よ」
「其のままだ、我等は人間の親父殿と、魔導書の精霊の母上の間に生まれた子だ」
「……せいれい?」
「うむ、先ほど言った旧神の子である。 神の子とは言っても神性があるわけではない、あくまで我等は『半人半書』なのだ」
「……なんか、よく分からないけど凄いわけ?」
「凄いかどうかは分からぬ、特異である事は間違いないが」

 存在としては圧倒的に少ない、希少と言っても良い、もしかしたら世界に一人しか居ない存在かもしれない。
 人間の男と、最高位の魔導書に生まれた精霊との間にもうけられた命。

「ふーん……」
「我等は元は一人だった、そして旧神の仇敵である邪神が目をつけ利用された。 其のとき我等は邪神の手によって二つに分けられ、闘争に導かれてしまった」
「は? 分ける? あんたたちを?」
「我の因果を、魂を引き裂き取り分けたのだ、そうして紅朔が生まれた。 そうして別った我等、己を取り戻したくば管理者<ゲームキーパー>を追え、そして紅朔を追えとな」
「そいつが邪神なのね?」
「そう、わたしたちはお互いを憎み殺しあった。 でも世界を何度も渡り戦ってきたけど決着は付かなかった、いえ、付いてはいけなかった、でしょうね」
「うむ、付いていればやはり我等はここに居ない所か、存在すらしていなかっただろう」
「そうして一つの世界に、わたしたちのお父様とお母様が居る世界へと辿り着いた」

 あの出来事は胸に残る強烈な思い出、お父様とお母様の愛を知った掛け替えの無い思い出。

「そこでも起こった闘争の果て、そうして悪夢と戦い、全てを仕掛けた邪神を親父殿と母上と一緒に打ち滅ぼしたのだ」
「大円満じゃない」
「そう、大円満<デウス・エクス・マキナ>。 この物語はな」

 この話はここで終わりなのだ、そうして直ぐにも新たなる物語が始まる。
 終わらぬ、未来永劫繋がり続ける物語が。

「終わる事が無いのかもしれん、それを理解して親父殿と母上は物語を始めたのだ」
「永遠なる苦痛、終わりが無い終わり、永劫の時の流れが刹那、奇跡の上に奇跡が成り立ち、重ね上げる奇跡が最低条件の世界に足を踏み入れた覚悟を」
「我等はそこに足を、この身を沈めたい。 それこそが我等の幸せ、親父殿と母上の愛に報いるための意思」
「……本当にそれで良いの? 聞いてる話じゃ向こう側に来て欲しくないみたいだったけど」
「それで良いのだ、それが我等の目指す大円満<デウス・エクス・マキナ>なのだ」
「……大体わかったわよ、信じるかどうかは別にして」
「歪であるからな、信じられぬのも判る」
「あんたたちが人間じゃない人間だと言うのも理解した、でもそれが魔法を使えることと関係が有るように見えないんだけど」
「言ったでしょう? わたしたちは『半人半書』だと。 そして書に書かれている言語は『血液』。 『血』を媒介として魔術を操るのよ」
「……じゃあ」

 そう、ハルケギニアの魔法は血に宿る。
 貴族に流れる血を取り込み、理解して使いこなす。
 それが魔法を使用できた筋書き。

「あんたがフライやゴーレムを作り出せたのも……」
「あの愚図から血を得たからよ、だから『土』の魔法を使えたの」
「……他の人と血を吸えば他の系統も使えるって事?」
「出来るだろう、素直に血を分け与えるような殊勝な者は居ないだろうが」
「じゃ、じゃあ私の……!」

 血を吸えば何の系統か判るんじゃないか、と言おうとしたところに九朔が遮る。

「恐らくそれは無理だろう」
「な、なんでよ!」
「主殿から得た知識からすれば、主殿が系統魔法を使う事は恐らく出来ないだろう」
「……え? な、なんでよ? 何で使えないって判るのよ!?」
「貴女の血には魔法が宿っていないからよ」

 その一言を聞いて、主殿から表情が抜け落ちた。

「つかえない? きぞくであるわたしが、まほうをつかえない?」
「系統魔法は恐らく、永遠に使えぬだろう」
「……まほうが」

 完全な脱力、全てを失った抜け殻のように。
 だがそれも直ぐに元通りになる。

「主殿は特殊であろう、血ではなく魂に宿る物。 我等はそう判断した」
「……え?」
「主殿の属性は恐らく『虚無』、魔法が何時も失敗するのは使用に適していない呪文を唱えているからか。 故に使えぬ、主殿から得た情報ではそれが一番濃厚な線だと思われる」
「貴女の血を手に入れても意味は無いのよ。 わたしたちは『血』を媒介とするのだから、『魂』を媒介とする魔法を使えないの」

 紅朔が大きく欠伸をしながら背伸び。

「きょむ? わたしが、きょむ? あの、伝説の、始祖ブリミルが使ってた、あの『虚無』!?」
「その可能性が最も高い、しかし属性が判っても使うのはかなり難しいであろうな」
「何でよ!」
「『呪文』、どのような魔法があるか分からぬし、それを使用するための呪文をどうやって詠唱するのだ? 知らぬ物を唱えよと言われても出来はすまい、頂点に経つ始祖も抽象的な描写しか残されてはおらぬし、手に入れるのは絶望的だと思うのだが」
「……そんな、わたし、魔法が使えないの?」
「六千年、それだけの年月を経て残っている物など極小数、もしかしたら存在しないかもしれん」
「そ、んなぁ……」

 ボロボロと、大粒の涙がルイズの頬を伝い始める。
 すかさず九朔がハンカチを取り出して拭う。

「主殿、絶望するのはすべき事をしてからで十分間に合う。 まずは縁の品を探してみてはどうだろうか」
「……つ、う、すん、そうよ、ね……。 それからでも、遅くは無いわよね」
「わたしたちの出自を信じず、わたしたちが出した可能性は素直に信じるのね。 全く、愚かしいったらありはしない」
「うるさい! ちゃんとした魔法が使えるって言うなら何でもするわよ!」
「なんでも? なんでもしちゃうの?」
「な、なんでもよ!」

 それを聞いて紅朔はにやぁっと笑みを作る。

「確か王家には『始祖の祈祷書』があった筈よねぇ」

 始祖の祈祷書、数百数千の紛い物があると言われる書物。
 ある豪商が、ある大貴族が、ある小国の王が、皆が本物だといって書を所持している。
 本物だと主張しているだけで、それが本当に本物だと言う証拠を提示できていない時点で偽物だろうが。
 トリステイン王国にある始祖の祈祷書も同類の物かもしれん、余り期待しない方が良いかもしれないな。

「国宝じゃないの、そんな物どうやっても手に入れられないわよ!」
「さぁ、どうかしら? 貴女は近い内にそれを手に入れるかもしれないわねぇ」

 ククっと笑い、またベッドに寝そべる。

「なんですって!? どう言う事よ!」
「どう言う事かしらねぇ」
「恐らくは、何かあるかも知れぬと言う事」
「だから! 何があるってのよ!!」

 怒鳴るルイズの声を聞き流しながら、九朔は物思いに耽る。
 運命が回り始めた、いや、何者かが回し始めたか?
 そう考えて、此度の事も奴が関与しているのかとも考える。

「主殿、過去にも似たような人物が居たかも知れぬ。 無論、今の主殿のように魔法が使えなく、この世界の生物以外を召喚した事例が恐らくはあったであろう」
「………」
「その者たちはそこで終わった可能性が、いや、終わっていたのだろう。 虚無の呪文を知る術が無かったであろうし、生涯魔法が使えず主殿のように中傷され続け無念の内に没したはず」
「う……」

 ゴクリと、ルイズが九朔の言葉に息を呑む。
 ありありと想像できるのだ、ずっとこのままで、両親の期待に応えられず魔法が使えぬ『ゼロ』と馬鹿にされ続けて終わる人生が。

「その者たちと比べ、主殿の環境は『整っている』。 虚無であると言う可能性を告げる我等、そして姫と幼馴染であり、始祖の祈祷書を手にする事が出来る可能性が僅かばかりではあるが可能性がある。 さじ加減では主殿は虚無に目覚める可能性があるということ」
「じゃあ、じゃあ私は!」
「……それが問題なのだ、何故ここまで『整っている』のか。 六千年という膨大な時間の中で、何故他の『虚無のメイジ』が現れなかったのか。 始祖ブリミル以外の虚無のメイジが六千年の間に現れたという話は聞いた事無いであろう?」

 世界が違う以上、邪神が介入出来ぬ因果が有る訳でも無し。
 世界を覆う結界は何なのか、詳しく知られざる虚無とは何なのか。
 持たぬ方がおかしい疑問が幾つか浮かんでいる、これが邪神の介入ではなくただ世界の謎としてあったならば良いのだが……。

「それはその人たちの運が無かっただけじゃない? 私がついているだけよ!」
「だと良いが、『何者』かの手によって『覚醒』するように仕向けられているようにしか思えないのだ」
「そんなの、どうやって運命なんて操るのよ!」
「……先ほど言った『邪神』、奴ならばこの程度幾らでも手を加えられる。 何か目的があって……いや、何も無いかもしれんか」
「考えすぎじゃない、何でもかんでもそいつのせいにするってのは良くないわよ!」
「杞憂であれば良いのだがな」

 対象の面白い反応を見れるなら、嬉々として回りくどい手を打ってくる邪神。
 奴の性根の悪さなど身に染みている、邪神が関わる可能性が露ほどにもあれば警戒せずには居れん。

「……あんたたちが魔法を使えるってのは分かったわよ、それじゃあ魔術って何なのよ。 魔法とは違うんでしょ? まさか呼び方だけが違うってんじゃないでしょうね?」
「魔術とは外道、異界の神々から知識を得るための物」
「げどう? 神々の知識?」
「本来人が扱えないモノを、扱えるようにした物だと思ってもらえればよい」
「例えば?」
「大衆的なものだと異形召喚などがあるな」

 ズルリ、そう言った表現が似合う存在が九朔の影から這い上がってきた。
 半透明のゼリー状、その表面に半分埋まる目玉が一つ。

「てけり・り」

 その不定形な、軟体生物を見てルイズは一瞬で引き込まれた。
 ぐにゃりぐにゃりと、軟体の理解不能で触手っぽい物を伸ばす奇形の小刻みに揺れて柔らかそうな這いずるオレンジ色で理解不能のプルプルギョロリと目玉が踊ってよく分からない向こう側が透けて見える理解できない何かがこっちを見て







「あれ?」
「主殿、気が付かれたか」
「……あれ? なに? 何か……」

 気が付くとベッドに寝ていた、何とか起き上がり部屋を見回す。
 『あれ』が居ない、その事にほっと安堵する。
 ……『あれ』? 『あれ』って何?

「ショゴスで逸るとは思いもしなかった、申し訳ない」
「しょごす?」
「主殿が見た不定形生物だ、小さな狂気を孕んでいたが……予想以上に耐性が低かったようだ」

 ばつが悪そうな表情の九朔。
 狂気? 耐性?

「『あれ』、一体何なのよ。 なにか、よく分からない……」

 気分が悪くて大きな声が出せない。
 何かよく分からない、分かっちゃいけない。
 上手く考えられない、なにこれ。

「人間ではない『古のもの』が作り出し使役していた奉仕種族、無論自然発生した生き物ではない」
「……あれなに? しょごす? ショご……、ショゴスね。 なにか、言葉にしにくいわ……」
「これが魔術の本質、理解できない物を理解し、人が通るべきではない道を通る、故に外道と呼ぶ」
「あんなのが一杯あるわけ?」
「あれは最も優しいものだ、深くなればなるほど狂気が満ちる。 もし間違って神柱にでも触れれば、一瞬で魂が犯されるだろう」

 あれで優しい? これ以上ってのが全然想像できない……。

「プライドは鎧じゃないわ、ただの虚勢に過ぎない。 むき出しの魂を叩かれて平気な人間なんて居ないわ」

 ベッドに寝たまま、背を向けて紅い方が言う。

「この世界は怪異が少ないのであろう、防禦を怠っても仕方が無い」
「良いことよねぇ、誰であろうと幾らでも覗き見ることが出来るしぃ、幾らでも仕込む事が出来るわねぇ……」
「紅朔、よもや……」

 血を媒介にした『枝』。
 紅朔が望む時に人を操る『枝』。
 魔術的防禦所か、簡単な精神防壁すら薄いこの世界の住人。
 『枝』が付けられた人間に、ほんの少し魔力を流すだけで簡単に人が堕ちる。
 最強と名高い魔導書ネクロノミコン、その原書である『キタヴ・アル・アジフ』直下の写本であるダイジュウジクザクならば容易い。

「まだ付けてないわよぉ」
「知られぬからと言って無闇に覗くべきではない」
「情報はとても大切よ?」
「知られたくないものもあるだろうに、情報の取捨選択を徹底すればよかろう」

 応えずひらひらと手を振る紅朔。

「はぁ……、全く。 主殿、少なくとも魔法は魔術より安全である事には違いない、好奇心で手を出すと必ずや痛い目に合う」
「……身に染みたわよ」

 九朔が言う通り好奇心でどのような物か聞いた結果が前後不覚。
 そんな危ない物に懲りず手を出すほど馬鹿ではなかったルイズ。

「……問題はどうやったら私が魔法を使えるかって事よ、あんたが虚無かもしれないって言ったんだから責任持ちなさいよね」
「確かにそうではあるが、実際問題呪文が記されている可能性がある祈祷書。 それを手に入れる可能性は我が動くより、主殿が行動したほうが手に入れやすいと思うのだが」
「姫様に『始祖の祈祷書ください』って言っても貰える訳ないじゃない!」
「ならば如何様に? 我に盗んで来いと?」
「……うーん」
「可能性を提示したからって、律儀に付き合う必要ないんじゃなあい?」
「しかし……」
「可能性は『可能性』、確率であって『確立』じゃなぁい。 実はこのピンクブロンドが虚無と言うのは嘘で、ただ弄んでいるだけだったらーって、ねぇ?」

 ベッドから浮き上がりつつ、紅朔が哂う。

「は? なにそれ!?」
「いきなり怒鳴ってどうしたの? あるじどのは私たちの話を信じたんじゃなかったの?」
「っ! あんたが言うとイラつくのよ!」
「あらあら、騎士殿だけは信じるのね」
「うるさい! あんたはいい加減口を閉じてなさいよ!」
「こわいこわぁーい、魔法が使えない子はすぐ怒っていやぁねぇ」
「くっぬぅ!」

 紅朔の軽い挑発にすぐ乗り、怒りに任せて杖をとるルイズ。
 そんな様子を見て紅朔はキャハハと哂いながら飛び、窓から出て行く。

「主殿、制御が上手く出来ぬのであるから……」
「ファイアー・ボール! エア・カッター! 当たれ! 当たれ!」

 追いかけるように窓枠に手を掛け、ルイズは数撃ちゃ当たると言わんばかりに杖を振る。
 狙ってはいるものの全く狙う場所ばかり、つまり紅朔にかすりもしない。
 あまつさえ学院の壁やら地面で爆発が起こっていた。

「……煽るなと申したのに」

 窓の外から聞こえてくる爆発音と笑い声、それを耳に入れながらため息を付いた。
 強大な怪異よりも、ルイズや紅朔を相手にするほうが精神的に疲れる九朔であった。



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