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とある魔術の使い魔と主-32


タルブの村の火災はおさまっていたが、一日前の平穏な村ではなく、戦場へと変わり果てていた。
草原には、アルビオンの軍隊が集結している。対して、トリステイン軍隊は港町ラ・ロシェールに立てこもっていた。
両者睨み合ったまま時間だけが過ぎていく。いつ決戦の火ぶたが切られるのかおかしくない状態。
また、タルブの村の上空では、空からの攻撃を部隊から守るため、『レキシントン』号から発艦した竜騎士隊が見張りを兼ねて飛び交っている。
実際何回かトリステイン軍の竜騎士隊が攻撃をしかけてきたが、いずれもこちらにそう被害なく返り討ちに合わせた。
決戦を行う前に、トリステイン軍に対し艦砲射撃が実地する事をアルビオンは決めていた。
これで一気に敵の士気を下げようとする。そのため、『レキシントン』号を中心としたアルビオン艦隊はタルブの草原の上空で、砲撃の準備を進めていた。

タルブの村の上空を警戒していた竜騎士隊の一人が、自分と同じ高度の一点から、近づいてくる一騎の竜騎兵を見つけた。
竜に跨がった騎士は味方に敵の接近を告げる為、竜に甲高い泣き声を鳴かせた。
こちらが気付いたのならば、それは向こうの竜騎兵も同じ事が言える。もっとも、彼らには武器と呼べるような代物は一切持っていない。
「とととトウマ? 敵がこっちに来てるけど大丈夫なの?」
ルイズが目の前にいる少年に話しかける。しかし、返事は返ってこない。
当麻は、タルブの村をシルフィードの上から覗き込んでいた。
つい一日前に見た、素朴で美しい村はそこにはなかった。ほとんどの家は燃やされたのか、黒い煙りがもんもんと立ち昇っている。
ギリッと奥歯を噛み締めた。呼吸が心なしか荒くなる。
シエスタと一緒に見た草原が、アルビオンの軍隊で埋まっていた。綺麗だったその光景は、いまや醜いものにしか見えない。
そして、一騎の竜騎兵が村のはずれの森に向かって、炎を吐きかけた。瞬く間に森は燃え広がる。

当麻の中で、なにかがキレた。


怒りで、体が震えた。
当麻の体内で、歪んだ熱が暴走する。
噛み締めた奥歯が、そのまま砕けてしまいそうになる。
そんな中、ただ一つ、気持ち悪いぐらい冷静な自分が導き出した結論がある。
絶対にコイツラを許してたまるか、と。
戦争が人間をこんなにしたんだとか言われいるが、そんなもの当麻には関係ない。もう、気にする前に手が出てしまいそうなのだ。
迫ってくる竜騎兵を迎え撃つ為、握っていた拳を開いた。
「トウマ!」
ルイズの叫びに、当麻ははっとなる。怒りで我を忘れかけた使い魔を、主が落ち着かせたのだ。
「なにさっきから黙っているのよ! 敵が来てるのよ!?」
「サンキュ、もう少しで見失うところだったぜ」
同時、敵の火竜がブレスを吐いてきた。
シルフィードは咄嗟に方向を斜め下に向け、重力の流れに従い、敵の攻撃を避ける為急降下する。
そのまま地面にへとぶつかりそうな感覚を二人は覚えたが、シルフィードは再び羽を広げて風の抵抗を受けて、再び一定の高度を保つ。
グッ! とGがかかり一瞬だが数倍の体重になるが、それだけだ。命に別状はない。
「ふいー。助かったぜ」
きゅいきゅい、と喜ぶシルフィード。一方のルイズはお怒り心頭である。
「バカ! もう少しで死んじゃうところだったでしょ!」
「いや……こればっかりかは俺じゃなくてシルフィードが頑張らなきゃいけないんだが……」
ルイズの理不尽な要求に困る当麻。やはりと言うべきなのかやりにくい。今生死の境目にいるという実感が沸いてこない。
逆に言えば、それは死なないという自信を持っているからであるのだが……。
ともわれ先のような奇襲はもう受けない。ここからが、反撃のチャンスである。
「さって、と」
当麻は言う。
まるで肩の調子を確かめるように、右腕を大きく回す。
「これで実は何も起きませんでしたよというオチは勘弁してくれな」
最悪な展開を想定しながら、左手のルーン文字を見る。
未だに輝いているそれは、早く呼んでくれと待ち望んでいるようだ。
当麻は小さく笑うと、こちらに向かってくる竜騎兵を見つめる。右腕を前に突き出し、言葉を紡ぐ。

かつて、一度だけ当麻を助けてくれたそれ。あの時は、意識が半分なかったからイマイチ覚えていなかった。
まさかもう一度出会えるとは思わなかった。いや、そもそもこれが自分の力だとすら感じなかった。
(頼むぜ……)
少年は願うかのように、叫んだ。
「『竜王の顎』!!」

「な、に!?」
竜騎兵の顔に衝撃が走る。
向こうの敵の腕に、なにか得体の知れない透明なモノが、そのカタチをゆっくりと表してく。
顎。
大きさにしてニメートルを越す程の、獰猛にして凶暴。既存するどの竜よりも絶対的な恐怖を与えるような――巨大に強大な、竜王の顎(ドラゴンストライク)。
今浮かび上がったはずの透明な顎はなぜか血に染まり、少年はそれがまるで己の腕であるかのように、ノコギリのような牙がズラリと並ぶ口をゆっくり広げた。
思わず火竜の動きが止まる。透明な竜王の眼光が静かに一匹の竜と一人の人間を睨み付け、それに恐怖したからだ。
それが、彼らの命取りとなる。
轟ッ! と風の唸りをあげてシルフィードは彼ら目掛けて突っ込む。
そして、最大限に開かれた竜王の顎が、竜騎兵を頭から呑み込んだ。

敵を撃破した後、シルフィードはさらに降下する。彼女の目には、敵の姿がはっきしどこにいるかが見えている。再び全速力でその地点に向かう。
半分まで距離を縮めて、敵が気付く。当麻の目にも確認が取れる。一、二、三匹といる。
もっとも、何匹こようが当麻には関係ない。
「とととうま!? その右腕はなんなの!?」
ルイズが驚きの声をだす。
気付くと、当麻の右腕には竜の顎が生えているのだ。誰だって怖くて、何事かと思うに違いない。
「いやまあ大丈夫です。これ一応俺の力だし、あ、つか気をつけろよ。一気に急上昇するから」
「へ……いやぁぁぁぁああああ!」
敵のブレスを羽ばたかせて、さらには上昇気流に乗って、やり過ごす。
シルフィードには、力はないが速さはあった。これは当麻の竜王の顎と相性がいい。
急上昇したと思いきや、再び急降下、三匹の傍まであっという間に竜王の顎を連れ込む。
そして、全員が竜王の餌食と化した。

呑み込む、といってもこの竜王は物理的なものではなく、精神的なものである。肉体に傷一つつけず、精神だけを破壊する存在。
たとえどれだけ許せない人間だとしても、決して『殺す』事をしないという思いを持つ上条当麻だからこそ手に入れた力。
「後方から十匹、周りを囲むように来てるわよ!」
ルイズの言う通り、距離はあるが完全に背後をとられた。
しかし、だからといって上条当麻もシルフィードも焦る様子はない。いや、そうする必要がないのだ。
「囲むということは各個撃破だな」
そう言うと、シルフィードがほとんど直角と言っていい角度で旋回した。

(やっぱり……怖い)
ルイズの心の中で恐怖の波が全身へと広がっていく。当麻の背中がなければ、取り込まれるに違いなかった。
そもそも当麻の右手にくっついているあれは一体なんだろう?
あんなのは普段から勉強熱心なルイズでさえ見たことがなかった。いや、そもそも幻想殺しすら知らないのだ。今更そんなとんでもない展開になっても驚きはしない。
しないが、気にはなった。
あの右手は一体なんなんだろう、と。
再び竜王がすれ違い様に敵を、今度は竜ごと呑み込む。
呑み込まれた人達は、みな心が破壊されたかのように、立ち尽くしていた。
当麻やシルフィードはそんな彼らに一切目をかけることなく、次の敵の標的を捕捉して距離を縮める。
何と言うかルイズの必要性が全く感じられない。
(なによ、なによ! わ、私にだってやることはあるんだから!)


模索するが、浮かばない。これでは当麻一人で戦っているようにしかない。
何か、何かないかと、ルイズは手を服にあてる。
すると、マントの裏には始祖の祈祷書が入ってあった。そしてアンリエッタ王女から貰った大切な水のルビー。
(この二つでどうするのよ!?)
何も書かれていない本とただの指輪に、ルイズは内心泣いた。
しかし、だからといって現実が変わるわけではない。残る手段としては、神に祈る事ぐらいである。
もっとも、目の前の少年はその神様でさえ殺してしまう事のできるのだが……
雰囲気を出す為、水のルビーを指に嵌めて、両手を胸の前で強く握る。
「お願い……、トウマとわたしをお守りください」
呟くと、もう一つこの場にもってきた本を手に持つ。
思えば、そろそろアンリエッタの結婚式がもう少しで行われる。こんな状況でも、いつもと変わらない事を思ってしまう自分が不思議だ。
ずっと抱いていた疑問、
何故この本には何も書かれていないのだろう?
詔を考える為に渡されたのに、いくななんでもそれはおかしかった。
結局どういう理屈であったんだろうと、
何となく開いた。特に理由もなく、本当になんとなく。
だから、
その瞬間、水のルビーと始祖の祈祷書が光だしたとき、心底驚いた。


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