「ちょ、ちょっと待て!/なんか話の前後につながりがねーんじゃねーか!?/おもわず感心しそうになったじゃねーか!/オデレータ/」
いつものように無理矢理納得させられそうになっていたデルフが我にかえって叫ぶ。
「それによ/協力しろだなんていうが、オレはおめーに協力する気はいっさいねーぞ!/」
全身をゆすって、なんとか孔明の手から逃げようとするデルフ。肩に柄を当てたら気持ちよさそうだ。
そんな様子を見て孔明がやわらかい笑みを浮かべる。
「いえいえ。おそらく、あなたは協力しますよ。間違いなく。」
そしてデルフにだけ聞こえるような声で、ボソリとあることを呟いた。
途端、デルフの抵抗が嘘のように消える。声を震わせながら、
「……そりゃーよ、本当なのか?/」
孔明が頷く。
「嘘はついておりませぬぞ。この孔明の調査に間違いはありませぬ。」
「オデレータ。/6000年も残ってるって言うのか?/ブリミルのやつはどんな手品を使ったって言うんだ??/」
手品じゃなくて魔法である。
「おそらく現時点で、このことに気づいているものはこの孔明ただ1人。火も、土も見落としておりますぞ。」
「……間違いなく協力するってのはそーゆーことか/たしかにな/オレっちが断れるはずもねーよな/」
そこでデルフははっと気づく。
「だがよ、なんでこんなもんが残ってるんだ?/そもそも使いものになるのか?/」
「その点は後心配なさらずに。ブリミルを説き伏せ、作り出した『最後の遺産』なのですから。」
「……わかったよ/協力すりゃいーんだろ?/でもよ、協力する前にどーいう事態が起こるのかだけは教えてくれ/なんでこんなものが
必要になるっていうんだ?/」
そもそも、なぜ相棒のためなのだ。いったいそれは何を意味しているというのだ。
「かしこまりました。疑問はごもっとも。デルフ様を信用するからこそお教えいたしましょう。決して他言なさらぬように……」
孔明の顔から笑みが消えた。羽扇を閉じ、目を閉じる。
「主は、バビル2世様は、おそらく白の国で死ぬことになるでしょう。」
いつものように無理矢理納得させられそうになっていたデルフが我にかえって叫ぶ。
「それによ/協力しろだなんていうが、オレはおめーに協力する気はいっさいねーぞ!/」
全身をゆすって、なんとか孔明の手から逃げようとするデルフ。肩に柄を当てたら気持ちよさそうだ。
そんな様子を見て孔明がやわらかい笑みを浮かべる。
「いえいえ。おそらく、あなたは協力しますよ。間違いなく。」
そしてデルフにだけ聞こえるような声で、ボソリとあることを呟いた。
途端、デルフの抵抗が嘘のように消える。声を震わせながら、
「……そりゃーよ、本当なのか?/」
孔明が頷く。
「嘘はついておりませぬぞ。この孔明の調査に間違いはありませぬ。」
「オデレータ。/6000年も残ってるって言うのか?/ブリミルのやつはどんな手品を使ったって言うんだ??/」
手品じゃなくて魔法である。
「おそらく現時点で、このことに気づいているものはこの孔明ただ1人。火も、土も見落としておりますぞ。」
「……間違いなく協力するってのはそーゆーことか/たしかにな/オレっちが断れるはずもねーよな/」
そこでデルフははっと気づく。
「だがよ、なんでこんなもんが残ってるんだ?/そもそも使いものになるのか?/」
「その点は後心配なさらずに。ブリミルを説き伏せ、作り出した『最後の遺産』なのですから。」
「……わかったよ/協力すりゃいーんだろ?/でもよ、協力する前にどーいう事態が起こるのかだけは教えてくれ/なんでこんなものが
必要になるっていうんだ?/」
そもそも、なぜ相棒のためなのだ。いったいそれは何を意味しているというのだ。
「かしこまりました。疑問はごもっとも。デルフ様を信用するからこそお教えいたしましょう。決して他言なさらぬように……」
孔明の顔から笑みが消えた。羽扇を閉じ、目を閉じる。
「主は、バビル2世様は、おそらく白の国で死ぬことになるでしょう。」
「なにをしているんだい、きみ?」
窓の外からコルベールの研究所を覗きこんでいると、背後から声をかけられた。振り返ると薔薇の造花を咥えた金髪の少年が
立っていた。いかにも重そうな荷物を手にぶら下げている。
窓の外からコルベールの研究所を覗きこんでいると、背後から声をかけられた。振り返ると薔薇の造花を咥えた金髪の少年が
立っていた。いかにも重そうな荷物を手にぶら下げている。
「貴族の身で覗きとは趣味が悪い。遠慮せずに入ればいいじゃないか。」
「断る。」
誰がこんな臭いところに入るかというように拒絶の意思を示すルイズ。男前だ。
「というかなんでギーシュがこんなところにいるのよ?」
「こんなところとは失敬な。アルビオンで自分の戦闘の天才っぷりに目覚めて以来、ぼくはコルベール先生にえんじんなどの教えを
請うているのさ。いやあ、実にためになるよ。」
そういえばよく見ると手が機械油でベトベトだ。貴族というよりは職工のようだ。ちなみに服と顔はまったく汚れていない。ギーシュ
の才能によるものだが、ある意味魔法よりもすごいんじゃないだろうか。
「たとえば、これがなにかわかるかい?」
そう言って荷物を広げ、中から鉄のようなものを取り出す。
ルイズが身につけたアクセサリーのうち、鉄製のものが引っ張られるような感覚。
「……ひょっとして鉄の秘石『磁石』?」
「そう!よくわかったね、ルイズ。ぼくの愛しいヴェルダンデが探してきてくれたものを錬金術で純度をあげたのさ!ヴェルダンデは
なんて有能なんだろうか!」
目を掌で覆い、大げさなアクションで驚嘆するギーシュ。
「これを鉄棒に貼り付けて、銅線を巻いた円筒に入れてから、えんじんの力で動かすんだ。そうするとどうなると思う?」
「知るわけないでしょ。」
そう、知るわけがない。そんなものはこの世界にはまだ存在していないからだ。
「なんと!風の魔法を使うことなく雷が現れたんだ!すごいぞ!これだけあればぼくのワルキューレは雷の騎士になるのは間違い
ない!人雷の戦士だよ!」
「……ごめん。説明を聞いても何言ってるかさっぱりだわ。それより、いま中に誰もいないの?」
説明をさらに続けようとするギーシュを制して、問う。さきほどから中に人がいるのかいないのか、音と匂いと熱でさっぱりわから
ない。おまけに窓はどんよりと曇った空のように汚れていて影も見えない。
「うん?この時間にいないなら、コルベール先生はあの竜の羽衣の整備じゃないか?きみの使い魔くんはさっき部屋にかえって行
ったところだよ。」
「それを早く言え!」
弁慶の泣き所へ爪先がクリーンヒットする。足を押さえて地面を転がるギーシュ。
「断る。」
誰がこんな臭いところに入るかというように拒絶の意思を示すルイズ。男前だ。
「というかなんでギーシュがこんなところにいるのよ?」
「こんなところとは失敬な。アルビオンで自分の戦闘の天才っぷりに目覚めて以来、ぼくはコルベール先生にえんじんなどの教えを
請うているのさ。いやあ、実にためになるよ。」
そういえばよく見ると手が機械油でベトベトだ。貴族というよりは職工のようだ。ちなみに服と顔はまったく汚れていない。ギーシュ
の才能によるものだが、ある意味魔法よりもすごいんじゃないだろうか。
「たとえば、これがなにかわかるかい?」
そう言って荷物を広げ、中から鉄のようなものを取り出す。
ルイズが身につけたアクセサリーのうち、鉄製のものが引っ張られるような感覚。
「……ひょっとして鉄の秘石『磁石』?」
「そう!よくわかったね、ルイズ。ぼくの愛しいヴェルダンデが探してきてくれたものを錬金術で純度をあげたのさ!ヴェルダンデは
なんて有能なんだろうか!」
目を掌で覆い、大げさなアクションで驚嘆するギーシュ。
「これを鉄棒に貼り付けて、銅線を巻いた円筒に入れてから、えんじんの力で動かすんだ。そうするとどうなると思う?」
「知るわけないでしょ。」
そう、知るわけがない。そんなものはこの世界にはまだ存在していないからだ。
「なんと!風の魔法を使うことなく雷が現れたんだ!すごいぞ!これだけあればぼくのワルキューレは雷の騎士になるのは間違い
ない!人雷の戦士だよ!」
「……ごめん。説明を聞いても何言ってるかさっぱりだわ。それより、いま中に誰もいないの?」
説明をさらに続けようとするギーシュを制して、問う。さきほどから中に人がいるのかいないのか、音と匂いと熱でさっぱりわから
ない。おまけに窓はどんよりと曇った空のように汚れていて影も見えない。
「うん?この時間にいないなら、コルベール先生はあの竜の羽衣の整備じゃないか?きみの使い魔くんはさっき部屋にかえって行
ったところだよ。」
「それを早く言え!」
弁慶の泣き所へ爪先がクリーンヒットする。足を押さえて地面を転がるギーシュ。
「ったく。これじゃあネズミの嫁入りじゃないの!主人の許しも得ずに、勝手に部屋に帰るなんて使い魔としてたるんでるわね!」
むちゃくちゃなことを言いながら、大またでドスドス音を立てて立ち去るルイズ。
そんな様子を物陰から見ている少女の姿があった。
「なによ、ギーシュったら。最近格好良くなったと思ったら、ヴァリエールなんかといちゃいちゃして!」
モンモランシーこと、モンモンであった。
むちゃくちゃなことを言いながら、大またでドスドス音を立てて立ち去るルイズ。
そんな様子を物陰から見ている少女の姿があった。
「なによ、ギーシュったら。最近格好良くなったと思ったら、ヴァリエールなんかといちゃいちゃして!」
モンモランシーこと、モンモンであった。
モンモンと言っても刺青のことではないし、つの丸の漫画とは関係ない。
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水系統の才能を持つメイジである。
二つ名を「香水」といい、その名の通り香水『ポーション』作りが趣味の彼女は、ある一大決心をもって今日という日を迎えていた。
それはなにか?ずばり禁断の秘薬の調合である。
自分で作った香水をコツコツと売りさばいて得たお金を全て使って手に入れた禁断のレシピと秘薬を元に、『惚れ薬』を作ろうとして
いるのだ。メイジといえども、見つかれば国の法律で厳重な処罰が下されるのは間違いない。だが、モンモンはすでに意識を暗黒の
フォースにとらえられているのだ。罪も罰も目に入らない。選ばれた人間は犯罪を犯しても許される。老婆を殺してお金を奪いそうな
モンモンを止めることができるものは存在しない。
だが、完成したとして、一つの問題があった。
そう、誰に使うのか、ということである。
モンモンは信念として、
「薬は使うべきもの。飾っておくなど愚の骨頂」
というものを持っていた。当然、完成したこの薬も使わなければ意味はないと考えている。
だが、相手がいない。特に今恋人がいるわけではないし、誰かに渡すのはリスクが大きすぎる。
あえて使うならばギーシュだが、今モンモンはギーシュとは絶縁状態にあった。
なにしろデートをしていて気を抜くとすぐに他の女に目をやっている。落ち着きがなくなったと思えば近くに美少女が座っていたり
する。それだけならまだしも、手洗いに行っている間に他の女を追いかけて姿を消していたこともある。
そこであの事件が起こった。
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水系統の才能を持つメイジである。
二つ名を「香水」といい、その名の通り香水『ポーション』作りが趣味の彼女は、ある一大決心をもって今日という日を迎えていた。
それはなにか?ずばり禁断の秘薬の調合である。
自分で作った香水をコツコツと売りさばいて得たお金を全て使って手に入れた禁断のレシピと秘薬を元に、『惚れ薬』を作ろうとして
いるのだ。メイジといえども、見つかれば国の法律で厳重な処罰が下されるのは間違いない。だが、モンモンはすでに意識を暗黒の
フォースにとらえられているのだ。罪も罰も目に入らない。選ばれた人間は犯罪を犯しても許される。老婆を殺してお金を奪いそうな
モンモンを止めることができるものは存在しない。
だが、完成したとして、一つの問題があった。
そう、誰に使うのか、ということである。
モンモンは信念として、
「薬は使うべきもの。飾っておくなど愚の骨頂」
というものを持っていた。当然、完成したこの薬も使わなければ意味はないと考えている。
だが、相手がいない。特に今恋人がいるわけではないし、誰かに渡すのはリスクが大きすぎる。
あえて使うならばギーシュだが、今モンモンはギーシュとは絶縁状態にあった。
なにしろデートをしていて気を抜くとすぐに他の女に目をやっている。落ち着きがなくなったと思えば近くに美少女が座っていたり
する。それだけならまだしも、手洗いに行っている間に他の女を追いかけて姿を消していたこともある。
そこであの事件が起こった。
これ幸いとばかりにギーシュと縁を切った。やった、これで悩みの種がなくなった。新しい恋に生きよう。最初はそう思っていた。
だが、新しい恋人ができる気配は一向にない。
そうこうしているうちにギーシュはルイズたちとつるみはじめた。それだけならまだ我慢できたが、最近はなぜかかっこよくなって
きている。根拠のなかった自信が、先日の使いで得た経験で本物になったからだが、モンモランシーはそんなことを知らない。
ルイズたちと付き合い始めたおかげで魅力があがったのだと思った。
それはつまり、自分にギーシュの魅力を引き出すだけの力がないということだ。
完全な勘違いである。だが、その勘違いが、嫉妬の炎を燃え上がらせた。
「ギーシュをどんな手を使ってでもいいから取り戻す!」
そこまでする相手じゃないと思うんだが、そう結論付けた。
とりあえず、まずはギーシュを見張ることからはじめる。使い魔のロビンを使って、朝な夕な行動をチェックし、ギーシュ奪還計画を
練ろうというのだ。だが、その結果は裏目に出る。
「なによ。本当に格好良くなってるじゃないの…」
嫉妬に狂って目が曇っていることを差っ引いても、ギーシュはたしかに格好良くなっていた。元々ポーション作りという趣味があった
モンモンにとって、工作機械を弄る人間は好意の対象である。ペドを炎のゴーレムで倒して以来、科学技術に興味を持ったギーシュが
エンジンを弄る姿は、ほれぼれするほどであったという。ほれぼれする、というのはモンモンがこの時点で参っちゃっていたということ
なのだろう。とにかくギーシュとよりを戻したいという方向に、モンモンの意思は傾いていたのだ。
だが、決定的な浮気をして別れた相手に「よりを戻そう」などと言えるほどモンモンのプライドは低くない。むしろギーシュが頭を
下げて「もっぺんやり直させてください」と言ってくるのが当然だと考えていた。
そしてギーシュが頭を下げてくる方法を考えに考えた結果……。モンモンは秘薬にたどり着いたのである。
趣味と実益が一致する素敵な考えに、モンモンの胸は躍った。ポーション作りにとっては夢といえる惚れ薬を作れて、かつギーシュ
を取り戻すことができる。まさに一石二鳥。ナイスアイディア。
だが、新しい恋人ができる気配は一向にない。
そうこうしているうちにギーシュはルイズたちとつるみはじめた。それだけならまだ我慢できたが、最近はなぜかかっこよくなって
きている。根拠のなかった自信が、先日の使いで得た経験で本物になったからだが、モンモランシーはそんなことを知らない。
ルイズたちと付き合い始めたおかげで魅力があがったのだと思った。
それはつまり、自分にギーシュの魅力を引き出すだけの力がないということだ。
完全な勘違いである。だが、その勘違いが、嫉妬の炎を燃え上がらせた。
「ギーシュをどんな手を使ってでもいいから取り戻す!」
そこまでする相手じゃないと思うんだが、そう結論付けた。
とりあえず、まずはギーシュを見張ることからはじめる。使い魔のロビンを使って、朝な夕な行動をチェックし、ギーシュ奪還計画を
練ろうというのだ。だが、その結果は裏目に出る。
「なによ。本当に格好良くなってるじゃないの…」
嫉妬に狂って目が曇っていることを差っ引いても、ギーシュはたしかに格好良くなっていた。元々ポーション作りという趣味があった
モンモンにとって、工作機械を弄る人間は好意の対象である。ペドを炎のゴーレムで倒して以来、科学技術に興味を持ったギーシュが
エンジンを弄る姿は、ほれぼれするほどであったという。ほれぼれする、というのはモンモンがこの時点で参っちゃっていたということ
なのだろう。とにかくギーシュとよりを戻したいという方向に、モンモンの意思は傾いていたのだ。
だが、決定的な浮気をして別れた相手に「よりを戻そう」などと言えるほどモンモンのプライドは低くない。むしろギーシュが頭を
下げて「もっぺんやり直させてください」と言ってくるのが当然だと考えていた。
そしてギーシュが頭を下げてくる方法を考えに考えた結果……。モンモンは秘薬にたどり着いたのである。
趣味と実益が一致する素敵な考えに、モンモンの胸は躍った。ポーション作りにとっては夢といえる惚れ薬を作れて、かつギーシュ
を取り戻すことができる。まさに一石二鳥。ナイスアイディア。
モンモンは完成した秘薬を、慎重にビンに入れる。小さなビンに入ったそれは、怪しい光を湛えている。
おもわず笑みを浮かべるモンモン。だが、忘れてはいけない。待て、私にいい考えがある、などと主張して行ったことは、たいていの
場合失敗するものなのだということを。
おもわず笑みを浮かべるモンモン。だが、忘れてはいけない。待て、私にいい考えがある、などと主張して行ったことは、たいていの
場合失敗するものなのだということを。
「タバサ、ほら見て!すごい!牛よ!牛!」
街道を行く馬車の窓から顔を出し、きゃあきゃあ騒ぐキュルケ。
「草を食べてる。もー、もーもー」
しかしタバサは一顧だにしない。相変わらず本を読み続けている。
「ねえ、タバサ。せっかく学校を休んで帰省するんだから、もうちょっとはしゃぎなさいよ。これじゃあアタシが頭の可哀想な子みたい
じゃないの。」
タバサが帰省するというので、無理矢理ついてきたキュルケがブーたれる。突然来た手紙を読んで、帰省のために荷物をまとめ
だしたタバサの様子を見て、何かを感じたキュルケは、授業をサボって無理矢理ついて来たのだ。
それにしても意外だったのはタバサがガリアの出身だったことだ。しかもどうやらかなりの名門の出らしい。
途中街道がラグドリアン湖の氾濫の影響で通行止めになっていたため迂回をする。タバサの話ではもうすぐ実家らしい。
と、そのとき馬車の様子がおかしくなった。
もうすぐ実家だというのに、速度を上げていき、止まる気配がない。まるで崖を転げ落ちる岩のように、どんどん速度が上がっていく。
「ちょっと、なにが起こったのよ!」
さすがにたまらず、キュルケが御者に文句でも言ってやろうと前に移動する。そこで見たものは…
「く、首がない!?」
御者台に座っていた男の頭が消えていた。馬は、目が血走って明らかに尋常でない様子で疾駆している。
「……敵。」
タバサが呟いて、空めがけて杖を振る。ぐわっ、と声を上げて何かが地面に落ちる。落ちた何かは、バラバラになって飛び散る。
人間ではない。魔法で動く、意志を持った人形、
「ガーゴイル!?」
キュルケも杖をふるって反撃する。空中を何体ものガーゴイルが飛び交いながら、馬車を攻撃しているのだ。
「ちょっと、タバサ!なによ、これ!?アンタいったいなにしでかしたの!?」
だがタバサは何も答えない。杖を黙々と振って、ガーゴイルを落としていく。
街道を行く馬車の窓から顔を出し、きゃあきゃあ騒ぐキュルケ。
「草を食べてる。もー、もーもー」
しかしタバサは一顧だにしない。相変わらず本を読み続けている。
「ねえ、タバサ。せっかく学校を休んで帰省するんだから、もうちょっとはしゃぎなさいよ。これじゃあアタシが頭の可哀想な子みたい
じゃないの。」
タバサが帰省するというので、無理矢理ついてきたキュルケがブーたれる。突然来た手紙を読んで、帰省のために荷物をまとめ
だしたタバサの様子を見て、何かを感じたキュルケは、授業をサボって無理矢理ついて来たのだ。
それにしても意外だったのはタバサがガリアの出身だったことだ。しかもどうやらかなりの名門の出らしい。
途中街道がラグドリアン湖の氾濫の影響で通行止めになっていたため迂回をする。タバサの話ではもうすぐ実家らしい。
と、そのとき馬車の様子がおかしくなった。
もうすぐ実家だというのに、速度を上げていき、止まる気配がない。まるで崖を転げ落ちる岩のように、どんどん速度が上がっていく。
「ちょっと、なにが起こったのよ!」
さすがにたまらず、キュルケが御者に文句でも言ってやろうと前に移動する。そこで見たものは…
「く、首がない!?」
御者台に座っていた男の頭が消えていた。馬は、目が血走って明らかに尋常でない様子で疾駆している。
「……敵。」
タバサが呟いて、空めがけて杖を振る。ぐわっ、と声を上げて何かが地面に落ちる。落ちた何かは、バラバラになって飛び散る。
人間ではない。魔法で動く、意志を持った人形、
「ガーゴイル!?」
キュルケも杖をふるって反撃する。空中を何体ものガーゴイルが飛び交いながら、馬車を攻撃しているのだ。
「ちょっと、タバサ!なによ、これ!?アンタいったいなにしでかしたの!?」
だがタバサは何も答えない。杖を黙々と振って、ガーゴイルを落としていく。
しかし多勢に無勢。衆寡敵せず。ついには馬車にガーゴイルが乗り込んできて、するどい爪を向ける。
「シュー…北花壇警護騎士団……ノ雪風ダナ……」
それは鷲の頭とライオンの胴体、ゴリラの腕にナイフのような爪を持ったガーゴイルだった。
4体のガーゴイルが馬車に乗り込み、残りが馬車を持ち上げていく。
「北花壇ノ人間ガ呼バレタトキキ……シュー……国境デ網ヲハッテイテ正解ダッタ……シュー」
「シュー……貴様個人……ニハ恨ミハナイガ……」
「同ジ北花壇ダ……シュー……運命ト思イ……覚悟シテモラオウカ……」
わけのわからぬことを言いながら、じりじりと距離をつめるガーゴイルたち。この距離では杖をふるって1体倒す間に、別のガーゴイル
の爪の餌食になるのが関の山だ。完全にチェックメイトである。
「待テ……ドウセモウ逃ゲラレヌ……ドウセナラ他ノメンバーノ情報ヲシャベッテモラオウジャナイカ……シュー」
中の一体が他のガーゴイルを制する。他のガーゴイルがそれを聞いて頷く。意思があるというのは本当らしい。
「ナラバコノママ馬車ゴトツイテキテモラウトスルカ」
外のガーゴイルが速度を上げる。たちまち高度は増し、雲の上へ飛び出る。
「タバサ、風竜は?」
ふるふるとタバサが首を横に振る。
「置いてきたの?これじゃあ逃げられないじゃない。」
「シュー……何ヲタクンデイルカダイタイケントウハツクゾ。残念ダガ、周囲ニ我々以外ノ気配ガナイコトハ確認ズミダ。」
シューシューと笑うガーゴイル。
「ソレニ、別ニソチラノ赤毛ハ、生カシテオク理由ハナインダ。何ナラ今カラソウシテヤッテモイインダゾ……」
まだ乾いていない血のこびりついた爪を向けるガーゴイル。こいつが御者を殺したのだ。
「シュー…北花壇警護騎士団……ノ雪風ダナ……」
それは鷲の頭とライオンの胴体、ゴリラの腕にナイフのような爪を持ったガーゴイルだった。
4体のガーゴイルが馬車に乗り込み、残りが馬車を持ち上げていく。
「北花壇ノ人間ガ呼バレタトキキ……シュー……国境デ網ヲハッテイテ正解ダッタ……シュー」
「シュー……貴様個人……ニハ恨ミハナイガ……」
「同ジ北花壇ダ……シュー……運命ト思イ……覚悟シテモラオウカ……」
わけのわからぬことを言いながら、じりじりと距離をつめるガーゴイルたち。この距離では杖をふるって1体倒す間に、別のガーゴイル
の爪の餌食になるのが関の山だ。完全にチェックメイトである。
「待テ……ドウセモウ逃ゲラレヌ……ドウセナラ他ノメンバーノ情報ヲシャベッテモラオウジャナイカ……シュー」
中の一体が他のガーゴイルを制する。他のガーゴイルがそれを聞いて頷く。意思があるというのは本当らしい。
「ナラバコノママ馬車ゴトツイテキテモラウトスルカ」
外のガーゴイルが速度を上げる。たちまち高度は増し、雲の上へ飛び出る。
「タバサ、風竜は?」
ふるふるとタバサが首を横に振る。
「置いてきたの?これじゃあ逃げられないじゃない。」
「シュー……何ヲタクンデイルカダイタイケントウハツクゾ。残念ダガ、周囲ニ我々以外ノ気配ガナイコトハ確認ズミダ。」
シューシューと笑うガーゴイル。
「ソレニ、別ニソチラノ赤毛ハ、生カシテオク理由ハナインダ。何ナラ今カラソウシテヤッテモイインダゾ……」
まだ乾いていない血のこびりついた爪を向けるガーゴイル。こいつが御者を殺したのだ。
「く……」
キュルケが奥歯をかみ締め、苦々しげなうなり声を上げる。爪がキュルケへ迫っていく。触れた髪の毛が、一本はらりと切断されて
落ちた。
「アッー!」
そのとき、外のガーゴイルが叫び声とも悲鳴ともつかぬ声を上げた。
「ウワッ!前ヲッ!」
「何ダ!?」
あわてて外に身を乗り出し、周囲をうかがうガーゴイル。その目に飛び込んできたのは、雲の上に腕を組んで立つ一人の男。
太陽の光を浴びて輝きながら、悠然と馬車の前に仁王立つ。
ローブのような白い頭巾をかぶり、ゴーグルを嵌めた男だ。ドジョウのような長いひげを蓄え、奇妙な服を着ている。
男は馬車を避けるそぶりを一切見せず、腕組みをしたまま優しい笑みを浮かべた。
「迎えに来たよ。シャルロット君!!」
全てを包み込み、心を穏やかにする不思議な声であった。
キュルケが奥歯をかみ締め、苦々しげなうなり声を上げる。爪がキュルケへ迫っていく。触れた髪の毛が、一本はらりと切断されて
落ちた。
「アッー!」
そのとき、外のガーゴイルが叫び声とも悲鳴ともつかぬ声を上げた。
「ウワッ!前ヲッ!」
「何ダ!?」
あわてて外に身を乗り出し、周囲をうかがうガーゴイル。その目に飛び込んできたのは、雲の上に腕を組んで立つ一人の男。
太陽の光を浴びて輝きながら、悠然と馬車の前に仁王立つ。
ローブのような白い頭巾をかぶり、ゴーグルを嵌めた男だ。ドジョウのような長いひげを蓄え、奇妙な服を着ている。
男は馬車を避けるそぶりを一切見せず、腕組みをしたまま優しい笑みを浮かべた。
「迎えに来たよ。シャルロット君!!」
全てを包み込み、心を穏やかにする不思議な声であった。
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