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ゼロニスター-02


 深夜の山道、いかにもといった風貌をした3人の若者達が大騒ぎしつつ馬を駆っていた。
 そのうち先頭を走っていた1人が、前方に見える女性らしい人影に気付く。
「おい見ろよ!! 女がいるぜーっ!!」
「検問か!?」
「違うな!! 1人しかいねえ!!」
「踏ませちゃうぞ、コラア~ッ!!」
「待て!! 別嬪っぽいぞ、こいつ!!」
「何い」
「女だ女だ女だオンナア~ッ!!」
「やっちゃうか!? ひゃははは」
 女性は若者達の下卑た笑い声にも全く動じず、
 ――シャリンッ
 涼やかな金属音を立てて袖口に仕込んでいた刃を展開した。
「はっ!?」
 ――ドッ!
 そして前方を走っていた青年達の馬が自分の横を通過する一瞬のうちに、彼らの首を切断したのだ!
「ひ……」
 そして自分に向かってくる最後尾の馬に向かって跳躍、それに騎乗していた青年の背後に立つ。
「さー、遊びまショ」
「うっ……、うおおおおおお!!」
「クイズに3問正解したら見逃してあげる!! 間違えたら殺す!!」
 そして胸元から取り出した人の顔が描かれている帳面を若者に突きつける。
「クイズその1!! これは誰!!」
「ダ……、ダークドリーム!!」
「チッ、正解!! ……じゃーこれは!!」
「チャチャ……じゃなくて、バレッタ!!」
「くそっ、正解!! ……ラストよ!! これは誰!!」
「『CAGE BOY’Sヒロインセレクション』のヒロインのゆず!!」
「はずれーっ。正解はヒロインのゆずに生き写しの少女・さつきでしたーっ!!」
 女は喜色満面の表情で刃の先端を若者の脳天に突き刺した。
「ぎゃーっ!!」
 そして女はひらりと馬から飛び降り、闇の向こうに消えていく若者の死体を乗せた馬を見送った。
「ああ、面白かった。魔法金属で作った新作武器の威力も確かめられたし、帰ろ」
 ――ビダーシャル 年齢不詳。自作の武器による殺人ゲームを楽しむ女エルフ。

「………!!」
 そんなビダーシャルの様子を、離れた木陰から眺めていた2人の少年がいた。
「み……、見たか!?」
「見たよ……、見ちまったよ……。『殺人現場』……!! 何なんだあの女、まともじゃねえぞ……!!」
「だ……、誰かに言うのはやばいよ。僕らがこの山にいた理由を聞かれたらまずいし……」
「バカヤロー、情報屋とかに売るんだよ。普段の俺らのシノギより絶対金になるぜ」
「とりあえず帰ろうよ。見つかったら……」
 そう言って少年の1人・トーレスが1歩足を踏み出した瞬間、
 ――パキッ!
 彼女に踏みつけられた小枝がかすかに高い音を発して折れた。
「ひっ!!」
 その音を聞き逃さず、ビダーシャルはゆっくり2人がいる方向に振り返った。
「ばれた~っ!! 逃げっぞ、イルミー!!」
 2人は慌ててその場を離れようとするが、
 ――ドシュ!
「ぎゃっ!!」
 ビダーシャルの投げた刃物がトーレスの背中に突き刺さった。
「ひえっ!!」
 そのままばったり倒れ伏すトーレス。
「う……、う……、うわあーっ!!」
「た……、助けて……。イルミー……、たすけ……」
 トーレスの呻きも虚しく、イルミーはそのまま遁走していってしまった。
「………」
「うう……」
 そしてそのトーレスを見下ろすビダーシャルの視線は、その手から落ちた杖に注がれていた。

 翌日の夕方、トリステイン魔法学院。
 メイド服姿の少女が、伝声管を通じて校内に残っている生徒達に下校を促している。
『――下校の時刻になりました。寄り道せずに速やかに寮に帰りましょう。なお……、女子寮近くにある教会ではシスターが無料で生徒の悩みを聞いてくれますが、野獣のように強いので冷やかしとかは避けましょう』
「何、野獣って」
 隣にいた同じくメイド服姿の少女が呆れた声でツッコんだ。

『ジャンケンほい』
「ありゃ」
「そんじゃ放送室の鍵返すのはシエスタだね。お先にね~、シエスタ!」
「チャオ」
 ――シエスタ サタニスターに命を助けられたメイド。モット伯一味が全員死んだので、今は明るい毎日。
 同僚のメイド少女と別れて職員室に向かおうとしたシエスタの前に、イルミーが現れた。
「ねえ……、俺今すっごいやばいんだよ……。そのシスターってのに会わせてくれよ……」
 イルミーの顔には脂汗が浮かび本気で言っている事は見てとれたが、それでもシエスタは半信半疑という表情で、
「ええ~、本気でですか?」
「冗談かましてる余裕なんか無えんだよおお!! 見ろ!!」
 そう言いつつ手に持っていた袋から何かを取り出しシエスタに突きつけるイルミー。
 それはトーレスの生首で、額には血と思しき赤い液体で「次はお前だ」と書かれた紙が添付されていた。
「この生首は、俺の友達(ダチ)なんだよお~っ!!」
「いやああ、人殺し~っ!! ミス・サタニスターに言いつけてやる!!」
「何でもいいから助けてくれーっ!!」
 逃げるシエスタと生首を振りかざして追うイルミー。2人の追いかけっこは教会に到着するまで続いた。

 ――サタニスター 年齢不詳。暴力的手段で殺人鬼を「狩る」恐るべきシスター。
 ――ルイズ・ヴァリエール 爆発魔法でサタニスターと共に殺人鬼を「狩る」恐るべきメイジ。
「山で女殺人鬼が襲いかかってきて友達を殺し、さらに相手は友達の生首を窓から放り込んできたわけね」
「襲われたのは昨晩だそうだけど……、どうして先生方に言わなかったのよ?」
 イルミーに生首入りの袋を返したサタニスターは、葉巻をくわえてルイズから受け取ったライターで点火する。
「そ……、それは……。俺……、その友達と違法な秘薬を売りさばいてて……。物は普段その山に隠してて……。学院にバレたら……、その……、大変な事になるだろ?」
「イルミーだっけ。帰りな」
「ええーっ、何でえーっ!?」
「てめーの安全しか考えてないのが気にくわない!!」
「昨日の時点で通報してれば、まだ救いはあったかもしれないわね」
「ぎゃああ! 助けてーっ! あいつが俺の所に来たらどーすんだよおーっ!! 逃げる時に友達が俺の名前を呼んじまったから名前はバレてるし、住所録だって……」
 イルミーの襟首をつかんで引きずっていくルイズ・サタニスターだったが、シエスタが何かに気付いて声をかける。
「ミス・ヴァリエール、ミス・サタニスター!! ミスタ・イルミーへの手紙が投げ込まれました」
 シエスタから手紙を渡され、イルミーは恐る恐る開封する。
『お友達の生首は気に入ってもらえたかしら、イルミーくう~ん。お友達から君の事いろいろ聞き出したわよ。住所聞く前にくたばったけど、学校名がわかったからそれでもう十分。あんた今トリステイン魔法学院内の教会にいるね。なぜわかったと思う? 私の「殺人鬼友達」が知らせてくれたの。そいつあんたの事校舎からずっとつけてたのさ。あんたの話をしたら、「小生意気なガキを殺すのが大好きだ」「頼むから譲ってくれ」と聞かなくてねえー。彼、今そっちに向かってるよ。あいつに狙いを付けられたが最後……、チーズみたいに全身穴だらけにされちゃうよ。ひゃははっ!』
「うわああ! 俺帰る~っ!!」
 絶叫して扉の方向に全力疾走するイルミー。
「待ちなさい!!」
「今外に出るのは危険よ!!」
「ほっといてくれよ!!」
 サタニスター・ルイズの警告を無視してイルミーは扉を開ける。
 ――バゴオ!!
 次の瞬間、光を帯びた杖がイルミーの頭部に風穴を開けた。
「こんにちわ」
 頭部が原形を留めなくなっているイルミーの体を蹴り飛ばし、羽根帽子を被った長身の青年が教会内に侵入する。
「!?」
「きゃあああ!」
「自己紹介させてもらうよ。名は『貫通のワルド』。ブレイドをかけた杖で人を刺すのが大好きでね……。君達にも悪いけれど死んでもらうよ。運が悪かったと思って……!!」
 そこまで言ってワルドは、ルイズ・サタニスターの胸に掛かっているロザリオの十字架に気付いた。
「その十字架……、お前達『サタニスター』か!!」
 2人ともその声には答えず、修道服の下でルイズは杖を握りサタニスターはナックルを装着する。
「………!!」
 完全に戦闘態勢を整えた上で、初めて2人はワルドに話しかける。
「そのサタニスターがいると知らずにここに来てしまったの?」
「『殺人鬼狩り』のサタニスターがこの教会にいると知らずに?」
「むう……」
 予想外の存在に、ワルドは杖を構えたまま動こうとしない。
(迷ってます……。戦うべきか否か迷ってます!! 武器もあるのに……)
 すると突然サタニスターがワルドの杖を両手でしっかりと抱えた。
「!?」
「1分だけ時間を与えるわ。懺悔なさい」
 平然としているサタニスターの態度にプライドを傷つけられ、ワルドは強気に出る。
「………!! 私の杖に触れる事の意味がわかっていないようだな。私がこの杖にブレイドをかければ……、君の腕はズタズタのザクロと化す」
「へえー、やってみれば?」
「ミス・サタニスター、手を離した方がいいです!!」
「シエスタ、だまらっしゃい。……こちらも忠告してあげる、貫通のワルド。『ブレイドをかければお前は負ける』」
「何だと!? 言っている事が意味不明だな!! もう君にはさっさとくたばってもらおう!!」
 叫びと共にワルドは呪文を詠唱する……が、
「何?」
 突然ワルドの視界が上下逆転した。
「ぎいや~っ!!」
 サタニスターはブレイドがかかった杖をワルド諸共高々と持ち上げていたのだ! その左手の甲には、ガンダールヴのルーンがナックルを透過するほど強く輝いている。
「うお~っ!! 腕力が魔力に勝った~っ!!」
「……ねえルイズ……ミス・ナックルスター……クックベリーパイ持ってき……」
 そこへバスケット片手にタバサがルイズ達を訪問したが、ブレイドのかかった杖を旗竿にして掲げられているワルドの有様に言葉を失う。
「ひいええええ~っ!!」
「1分経ったわよ、貫通のワルド!! 地獄の釜で茹でられながら己の罪を悔いよ!!」
 顔面が8割方無くなっているイルミーを見下ろし、持ち上げられたワルドを見上げてから、タバサはシエスタに質問する。
「……近くを通りかかったから寄ってみたけど……どういう状況なのか説明して……」
「あの……、えーと……、持ち上げられてる人が殺人鬼で……」
「いつもの殺人鬼狩りよ、タバサ!! ……そして貫通のワルド!! お前が穴を開けるのは……これが人生で最後と知れ!!」
 ――ボガス!!
「ぎゃ!!」
 一際眩く輝くガンダールヴのルーンを宿したサタニスターの左ストレートで、ワルドは教会の壁に人型の穴を開けて外まで吹っ飛んだ。
「アーメン」
 ――ドガアッ!!
 教会の壁を貫通したにもかかわらず貫通のワルドの勢いは止まらず、近くに立っていた校舎の壁にめり込んで止まった。

「う……」
 ワルドを追って教会の外に出たルイズ達4人。彼女達の目の前でワルドは壁から這い出そうともがいていた。
「……まだ息がある……」
「ええ。こいつには仲間がいるらしいから、そいつについて聞き出さないと」
「たぶんこいつの同類……。野放しにはできないわ」
「殺……されろ」
 それまで呻き声を上げているだけだったワルドが、サタニスターの姿を認めた途端呪いの言葉を吐いた。
「!!」
「サタニスター……、殺されろ……。ビダーシャルに、殺されろ……!!」
『「ビダーシャル」!?』
 ワルドの口から出た意外な名前に、ルイズ・サタニスター・タバサは目を見開いた。
 そしてタバサは壁に開いた穴からワルドを引きずり出し、胸倉をつかみ上げる。
「ぐっ!!」
「ミ……、ミス・タバサ!?」
「……女殺人鬼『ビダーシャル』を知っているの……奴はどこ……答えて……」
「ふふふ……、そんなにいきり立つものじゃないさ……」
「……4年前……私の両親が殺された……今の私の人生は……奴を追い詰めるためだけにある……」
「それはご愁傷様だな……。美人だぞ……、ビダーシャルは……。会ってみたいか……?」
 顔の至る所から出血しつつも不敵な笑みを浮かべるワルドは、懐から1通の封筒を差し出す。
「だったら丁度いい……。これをお前達にくれてやろう……。私にはもう必要無い……。『ある大会』の招待状……。それに出れば彼女に会える……」
「『大会』って?」
 封筒を受け取ったルイズは封蝋に刻まれた奇妙な紋章を見つめる。
「ハルケギニア最強殺人鬼決定戦……。ハルケギニア中の殺人鬼が様々な好条件の元に招待されて……、己の強さを競い合う……。主催者は『虚無壺の会』という闇のシンジケート……。大会は試合形式で行われ武器の使用も許される……。上位入賞者は『虚無壺の会』の保護の下に置かれ……、一生涯に渡って完全な身の安全が保証される……。サタニスター……、お前達はそういった勝者の特典には興味が無いかもしれない……。だが……、ビダーシャルをはじめ『お前達の獲物』はうじゃうじゃいる……!! もっともお前に勝ち進む事などできない……。修道服で悩み相談をしているような女が勝ち進めるほど甘くはない……。ごぼっ! お前達が試合で目玉をえぐられ乳房を削がれピーピー泣く様が……見たかっ……た……」
 そう言い残してワルドは事切れた。

 そんな5人の様子を、校舎屋上から4つの人影が見下ろしていた。
「貫通のワルド……、死んだか」
 何の感情も含まない口調で言ったのは、毛皮の服を纏った青年。
「ビダーシャルが仇を取ってくれるんじゃない」
 黒髪の妖艶な美女が青年の言葉に答える。
「だな」
 小太りの少年も黒髪の美女に同意した。
「それよりまさか、サタニスターも参加する気じゃないだろーね」
「貫通のワルドめ、余計な真似を」
 するとそれまで黙っていた全身金属鎧に固めた少年らしい人物が口を挟む。
「俺なら殺す自信があるぜ。今やってやろうか?」
 それを毛皮の服の男が片手で制し、
「まー待て。サタニスターは目障りな女達に違い無いが……、あいつらには死ぬ前に恥をかいてもらいたい。あいつらに最も相応しい死に様はな……、会場に集まった殺人鬼達に笑われながら死ぬ事さ」


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