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エデンの林檎 四話

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四話 『林檎を噛んで歯から血が出た』


 ルイズは魔法が使えない。それは自他共に、特に自分では認めなくてはならない事実である。
 正確には魔法がすべて爆発してしまうのだが。

 ボムボムの実という爆発の象徴のようなものを引き当てて以来、ルイズは開き直ることに決めた。
 とりあえず爆発は爆発として認識し、何故そうなるのかを考えるようになったのだ。
 それにこの不思議なルーンは役に立つに違いない、そう考えながら。

「それに恩恵もあるといえばあるのよ」
「何ですか?」

 シエスタが用意したサンドイッチをパクつきながら、ルイズは杖を持ち近くの小石へ向ける。
 ポンッと軽い音が響き、石が消えてなくなった。

「実の恩恵だと思うけど、爆発なら制御できるようになったのよ。まあ壊すのにしか使えないけど」
「でも適当にはじけるよりはずっといいんじゃないでしょうか? あ、キュルケさんたちが来ましたよ」

 視線の先にはキュルケとタバサを乗せたシルフィード。
 タバサのほうはなにやら本を抱えている。

「ハーイルイズ、見つかったわよ」
「これ」

 キュルケがルイズをその大きな胸で抱きかかえながらシエスタをにらみ、シエスタが対抗意識を向ける。
 それをまったく気にも留めず、タバサはルイズに本を差し出した。

「何この本。『始祖の使い魔たち』ってこんなのに載ってるの? 私のルーンが」
「ここ」

それは確かにルイズの額にかかれたルーンだった。
 その使い魔の名は『ミョズニトニルン』、神の頭脳とまで言われる伝説の使い魔のルーン。

「触れたマジックアイテムのあらゆる情報を読み取る、ね」
「なーる。だからあんた鑑定ができたのね」

 ルイズの頭を撫でながらキュルケがうなずく。シエスタさん、そんなににらまないで。

 ルイズはキュルケを跳ね除けたりはしなくなった。
 理由はまさに今自分が頭をうずめているものだ。
 そう、それは胸、それは巨乳。
 魔法の練習で疲れ果ててシエスタの胸に頭をうずめて休んだことを思い出す。
 程よいやわらかさで今まで使ったあらゆる枕よりも寝心地がいい。
 ルイズは己の頭を挟んでいる肉の塊をじっと見つめた。

 アレはいい物だ。

 使い魔のルーンに関する本を開く。
 キュルケを通してタバサにルーンの検索を頼んだときに一緒に探してもらったコモン・サーヴァントについての本。
 ルーンを刻むことでの恩恵は大きく分けて三つ。
 一つ目は使い魔の主への好意のすり込み、二つ目は主との意思の疎通、三つ目は場合によってはそのほかの何か。
 三つ目は場合によっては使い魔が人語を話すようになる、といった特殊なものである。
 おそらくは自分のこれもそういう特殊効果、って物なのだろう。
 そんなことを考えながらルイズは額に触れる。

 そしてなるほど、とその本を閉じる。
 なぜ自分はこんなにポジティブなのか、その理由に思い当たったからだ。
 ルーンは主への好意を使い魔に少しずつすり込んでいく。
 今現状は自分が主兼使い魔。

 つまり自分は、自分自身への好意を自分自身へすり込んでいるのだ。

 自虐に走らなくなった理由の検討がつき、ルイズは一人苦笑した。
 もう一度『始祖の使い魔たち』の本を開く。

「ガンダールヴがあらゆる武器を、ヴィンダールヴはあらゆる幻獣を、ミョズニトニルンはあらゆる魔法道具を支配する、か」
「すごいわねぇ」
「便利」
「二つ目は何か憧れますね」

 ふと、ルイズはそれを読み直す。

「てかこれさ、どれも人間じゃないと、少なくとも亜人じゃないと活用しようがない効果じゃない?」

 沈黙が四人を包んだ。

「ブリミルの使い魔は皆人間か亜人ってこと?」
「でもブリミル様はエルフと戦ったんですよね? じゃあエルフのわけはありませんし……」
「他の亜人は凶暴」
「……人間しか残ってないじゃない」

 再び四人を沈黙が覆う。

「娘っこよ、そいつら呼んだのはそれだけじゃねえだろ?」

 ありがとうデルフ! と流れを断ち切ってくれたデルフに心の中で礼を言いながら、ルイズは立ち上がった。

「そそそそそうね! キュルケ、ちょっとついてきて。シエスタ、先に行ってもう一個のほうも用意」
「はい!」

 デルフを担いでかけていくシエスタを目で追いながら、キュルケたちはルイズに続く。

「もう一つの用のほうよね?」
「ええ。かなり便利なものなのよね」


 大きな木がそこにはあった。
 五メイルくらいだろうか、おどろおどろしい印象を受ける実がいくつかなっている。
 見るとはしごをかけたシエスタがその実のうちのいくつかを採取していた。

「ねえルイズ、この木ってもしかしてあの実?」
「そうだけど?」
「いくらなんでも成長が早すぎるわよ」
「そういう種類なの。シエスタ!」
「あ、はい。小屋に用意してあります」
「アリガト。回収し終わったら飲み物用意して」
「はーい」
「シエスタよう、俺は剣なんだ、高枝切りバサミじゃないんだ、ねえ聞いてる?」

 木の管理のためだろう、備え付けられた小屋の中は以外にも明るい光を放っていた。
 上を見ると巻貝のようなものが光を放っている。

「……タバサ、あれ」
「この前の貝」
「二人とも、こっち」

 大きめの机の上にいくつもの貝殻が並んでいる。
 どうやら種類ごとに分けられているらしく、半分くらいはきれいに磨かれている。

「いい、見ててね」

 ルイズはそのうちのひとつを拾い上げ、とがっている部分を押し込む。

 ゴウッ、と真っ赤な今まで燃えていたような火炎を噴出す。

「今の、何?」
「この貝、“ダイアル”って言うんだけどね、特定のものを蓄えることができるのよ。これは炎、これは水、こっちは音ね」
「もしかして上の明かりもそうなの?」
「あれは光ね」

 そういうとその炎を出し切った貝をキュルケに手渡した。

「してほしいのはこれ。魔法を封じれるかどうかよ」
「……ルイズ、協力はするからひとつだけいい?」
「何?」
「どうしてわざわざ呼び出してこっそり?」

 ルイズは突然貝を置き、二人の肩をつかむ。シューシューと手のひらが音を立てる。

「これは私の成果、私の発見よ。たとえルーンのおかげであったとしても」

 暗い。明かりがあるのにルイズの顔が暗い。ガタンと音がして恐る恐る振り返ると抜き身のデルフリンガーを構えたシエスタ。

「だから私のものなの。わかる? ミスタ・コルベールとかに教えたら適当に触れ回っちゃうでしょ? ね?」
「そそそそそそそうね」
「あなたたちなら漏らしたりしないだろうし教えてもいいかなって思ったの。もらしたりしないわよね? ねぇえ?」

 ルイズの目が真っ赤に光る。後ろでさびを落とされたデルフリンガーがギラリと光る。

「ももももちろんよ! ねえタバサ!」
「(コクコクコクコク)」

 その返答を聞いてるルイズは手を離す。後ろでシエスタがデルフを鞘に収める。

「じゃあお願いねキュルケ」

 結局ダイアルは魔法の炎すらそのうちに溜め込んだ。
 その夜キュルケとタバサはいつもより多くの下着を洗濯したという。


 小屋の中にいくつかの悪魔の実が並んでいる。
 映像(ビジョン)貝が記録されている映像を流している。
 それに写っていたのは悪魔の実が熟すまでの記録。

 ただの小さなつぼみに本当に小さな実がついている。
 しばらくそのままだったそれが何かに影響されたのかびくりと震える。
 目に見える形で大きくなっていきバナナの形を取る。
 そして木から禍々しい何かが注ぎ込まれ表面に唐草模様を描いた。
 そして動きがなくなる。

「うはあ~何か怖いですねぇ」
「でも成長要因がわからないのよ」

 そう言って並べてある実を一個ずつ触る。

「これは“イヌイヌの実”、こっちは“ウマウマの実”、こっちは“トリトリの実”、これはあろうことか“ヒトヒトの実”」
「うはあ、見事に動物ばっかりですねぇ。ゾオン系でしたっけ?」
「私がほしいのはロギア(自然)系、せめてパラミシア(超人)系よ? どうしてゾオン系ばかりなのかしら」
「ミョズニトニルンの能力で育て方はわかってるはずなんですよね?」
「“悪魔の木の育て方”はね」

 ふう、とため息をつく。

「駄目なのよ。実の育て方がわからないのよ」
「困りましたねぇ」

 ふと、シエスタは棚を見る。
 そこに並んでいるのはコルベール謹製『しびれる蛇君試作二号』と『燃えるぜ蛇君試作三号』

「あれは使わないんですか?」
「作ってもらったはいいけどわからなくなったのよ。電気を流せばいいのはわかってるのよ。でもどこに? どうやって? 生き物から情報を引き出すのは限界があるのよ」
「でもボムボムの実の詳細は引き出せたんですよねぇ?」
「食べたからね。自分の能力になってるからわかるのよ」
「……埒が明きませんねぇ」

 結局何もわからぬまま、実の談義は終了と相成った。
 空はどんよりと曇り始め、小雨が降り始める。

「いけない! 戻りましょう、ルイズ様」
「そうね」


 夜、雷鳴がとどろき豪雨が降る。
 窓が風にがたがた揺れ使い魔たちもおとなしくうずくまっている。
 雷が輝き直後に雷鳴がとどろく。近い場所で落ちた証拠だ。

 雷がひとつ、悪魔の木に落ちる。
 余波がパリパリと木を覆い、熱量に負けて炎が吹き上がる。
 燃え上がるかと思った瞬間、電撃と炎が写真のように停止する。

 そしてそれがまるで木に吸い込まれるように消滅した。
 雷で焦げた痕跡も炎で燃えていた痕跡も残っている。

 ゆっくりと、悪魔の実が二つ膨らんでいった。


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