自分以外の命なんて、どうなったっていい。
そう思っていた。
ただの好奇心のために、他人の宝物を踏み潰そうとしたこともあったし、親も他人も平気で騙し、利用した。
そう思っていた。
ただの好奇心のために、他人の宝物を踏み潰そうとしたこともあったし、親も他人も平気で騙し、利用した。
『ボクの夢はね… 平凡かもしれないケド、“幸せ”になるコトなんだ』
ロード
『ボクの前には誰も立っていない!!! どこまでも伸びるまっさらな“道”!!! そんな人生を歩けるなんて、これ以上の“幸せ”はないだろう?』
ロード
『ボクの前には誰も立っていない!!! どこまでも伸びるまっさらな“道”!!! そんな人生を歩けるなんて、これ以上の“幸せ”はないだろう?』
だからボクは、全てを滅ぼすコトに決めた。
「全部滅ぼして自分ひとりになるのが夢? そんなの夢でも何でもねえよ」
誰よりも強くなったボクを、倒した人が言った。
「叶った時、一緒に喜び合える誰かがいるから、“夢”なんだろ?」
「……! そうか…もしボクにも君達みたいな仲間がいたら…」
彼の言葉で、ボクは自分の夢に足りなかった物を悟り、神を解放した。
地面にトンネルが現れ、重力に引かれるまま、アノンの体は地獄界へと落下を始める。
だが、トンネルを落ちるアノンの前に、突如奇妙な鏡が現れた。
抵抗もできず、アノンは落ちる勢いのまま、鏡に突っ込む。
視界が、真っ白な光で覆われた。
だが、トンネルを落ちるアノンの前に、突如奇妙な鏡が現れた。
抵抗もできず、アノンは落ちる勢いのまま、鏡に突っ込む。
視界が、真っ白な光で覆われた。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より訴えるわ、我が導きに答えなさい!」
その独創的な呪文が起こしたのは、使い魔の召喚ではなく、広場の土を掘り返す、本日13回目の爆発だった。
あたりに土煙が立ちこめ、爆発を起こした張本人に、一斉に野次が飛んだ。
「また失敗だ!『サモン・サーヴァント』もまともにできないのかよ!」
「さすがゼロのルイズ!!」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
ルイズは周りから浴びせられる野次に、よく通る声で怒鳴り返した。
「いや、何か召喚できたようですよ、ミス・ヴァリエール」
ルイズと生徒達が騒いでいると、進級試験を兼ねたこの使い魔召喚の儀式を監督していた、ハゲ頭の教師、コルベールがそう言った。
慌ててコルベールの指すほうを見ると、確かに土煙の向こうに何かの影があった。
それも結構大きい。
(ドラゴン? グリフォン? もしかして誰も見たこと無いような幻獣とか!)
期待に胸を膨らませ、その影をみつめるルイズ。
しかし、土煙が晴れ、そこに現れたのはドラゴンでもグリフォンでもなく――一人の少年だった。
その独創的な呪文が起こしたのは、使い魔の召喚ではなく、広場の土を掘り返す、本日13回目の爆発だった。
あたりに土煙が立ちこめ、爆発を起こした張本人に、一斉に野次が飛んだ。
「また失敗だ!『サモン・サーヴァント』もまともにできないのかよ!」
「さすがゼロのルイズ!!」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
ルイズは周りから浴びせられる野次に、よく通る声で怒鳴り返した。
「いや、何か召喚できたようですよ、ミス・ヴァリエール」
ルイズと生徒達が騒いでいると、進級試験を兼ねたこの使い魔召喚の儀式を監督していた、ハゲ頭の教師、コルベールがそう言った。
慌ててコルベールの指すほうを見ると、確かに土煙の向こうに何かの影があった。
それも結構大きい。
(ドラゴン? グリフォン? もしかして誰も見たこと無いような幻獣とか!)
期待に胸を膨らませ、その影をみつめるルイズ。
しかし、土煙が晴れ、そこに現れたのはドラゴンでもグリフォンでもなく――一人の少年だった。
彼は地面に両脚を投げ出して、不思議そうに辺りを見回していた。
歳はルイズたちと同じくらいに見える。
ルイズよりも濃いピンク色の、背中まで伸びた長い髪。
顔や体に刻まれた刺青のような模様が目を引いたが、どうにも全身が小汚い。
上から下まで埃まみれで、着ているものといったら腰に巻いたボロ布一枚。
どう見ても裕福な者には見えない。
いや、それどころか――
「平民だ! ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「それになんだあの格好。乞食じゃないのか?」
一瞬静まり返った生徒達だったが、召喚された少年を見て、またすぐに大騒ぎを始めた。
中には腹を抱えて笑っている者もいる。
「ココは…?」
ここは、地獄界ではないのだろうか。
アノンは周りの風景に、違和感を感じた。
ロベルトと神、取り込んでいた二人の天界人を解放した以上、待っているのは地獄界への強制送還のみ。
だが、ここは自分の知っている地獄界とは、似ても似つかない。
少し離れた場所に、数十人の人間達が人垣を作っていた。
歳は全員、自分と同じくらいに見える。
皆、同じような制服にマントと杖を身につけ、こちらを見て可笑しそうに笑っていた。
加えて、馬鹿にしたような野次も飛び交っている。
「…?」
アノンが状況を飲み込めずに、きょろきょろしていると、眩しい頭に向かって何かを訴える一人の少女が目に付いた。
「ミスタ・コルベール! もう一回召喚させてください!」
少女はずいぶん必死な様子だったが、ハゲ頭が横に振られるとがっくりと肩を落とし、アノンのほうに顔を向けた。
桃色掛かったブロンドの髪を揺らし、整った眉を不機嫌そうに歪めて、コルベールと呼ばれたハゲ頭の男と一緒に近づいてくる。
少女は目の前まで来ると、アノンを見下ろしながら、
「あんた誰?」
と言った。
歳はルイズたちと同じくらいに見える。
ルイズよりも濃いピンク色の、背中まで伸びた長い髪。
顔や体に刻まれた刺青のような模様が目を引いたが、どうにも全身が小汚い。
上から下まで埃まみれで、着ているものといったら腰に巻いたボロ布一枚。
どう見ても裕福な者には見えない。
いや、それどころか――
「平民だ! ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「それになんだあの格好。乞食じゃないのか?」
一瞬静まり返った生徒達だったが、召喚された少年を見て、またすぐに大騒ぎを始めた。
中には腹を抱えて笑っている者もいる。
「ココは…?」
ここは、地獄界ではないのだろうか。
アノンは周りの風景に、違和感を感じた。
ロベルトと神、取り込んでいた二人の天界人を解放した以上、待っているのは地獄界への強制送還のみ。
だが、ここは自分の知っている地獄界とは、似ても似つかない。
少し離れた場所に、数十人の人間達が人垣を作っていた。
歳は全員、自分と同じくらいに見える。
皆、同じような制服にマントと杖を身につけ、こちらを見て可笑しそうに笑っていた。
加えて、馬鹿にしたような野次も飛び交っている。
「…?」
アノンが状況を飲み込めずに、きょろきょろしていると、眩しい頭に向かって何かを訴える一人の少女が目に付いた。
「ミスタ・コルベール! もう一回召喚させてください!」
少女はずいぶん必死な様子だったが、ハゲ頭が横に振られるとがっくりと肩を落とし、アノンのほうに顔を向けた。
桃色掛かったブロンドの髪を揺らし、整った眉を不機嫌そうに歪めて、コルベールと呼ばれたハゲ頭の男と一緒に近づいてくる。
少女は目の前まで来ると、アノンを見下ろしながら、
「あんた誰?」
と言った。
「ボクは…アノン」
「どこの平民?」
「ヘイミン?」
耳慣れない言葉に、思わず聞き返すアノン。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
そんな声が聞こえ、笑い声が一層大きくなった。
「だ、だからちょっと間違っただけだってば!」
目の前の少女――ルイズというらしい――が怒鳴った。
「ミス・ヴァリエール。早く儀式を続けなさい」
ハゲ頭の男がルイズを急かした。
「か、彼と?」
急に顔を赤らめて、しり込みするルイズ。
「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね? いいから早く契約したまえ」
コルベールに急かされて、ルイズはう~、と小さく唸り、アノンに向き直った。
「あ、あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
(キゾク?)
またも、耳慣れない言葉。
だが、アノンがそれを聞き返す前に、ルイズは、手に持った小さな杖振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ぎゅっと目をつむって、ルイズの顔が近づいてくる。
アノンは思わず身を引いたが、杖を持っていないほうの手で、がっしりと頭を掴まれた。
唇が、重ねられる。
(!?)
混乱しながらも、アノンは身動きできずに、横たわっていた。
唇が、離れた。
「どこの平民?」
「ヘイミン?」
耳慣れない言葉に、思わず聞き返すアノン。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
そんな声が聞こえ、笑い声が一層大きくなった。
「だ、だからちょっと間違っただけだってば!」
目の前の少女――ルイズというらしい――が怒鳴った。
「ミス・ヴァリエール。早く儀式を続けなさい」
ハゲ頭の男がルイズを急かした。
「か、彼と?」
急に顔を赤らめて、しり込みするルイズ。
「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね? いいから早く契約したまえ」
コルベールに急かされて、ルイズはう~、と小さく唸り、アノンに向き直った。
「あ、あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
(キゾク?)
またも、耳慣れない言葉。
だが、アノンがそれを聞き返す前に、ルイズは、手に持った小さな杖振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ぎゅっと目をつむって、ルイズの顔が近づいてくる。
アノンは思わず身を引いたが、杖を持っていないほうの手で、がっしりと頭を掴まれた。
唇が、重ねられる。
(!?)
混乱しながらも、アノンは身動きできずに、横たわっていた。
唇が、離れた。
「終わりました」
顔を真っ赤にして、ルイズがコルベールに言った。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」
コルベールが、祝福してくれたが、ルイズは、まったくもって喜ぶ気にはなれなかった。
アノンはわけが分からず、顔を真っ赤にした少女と、ニコニコするハゲ頭を交互に眺める。
不意に、左手の甲に異様な熱を感じた。
「! これは…?」
「『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ。すぐ終わるわ」
確かに、左手の熱はすぐに収まり、体は平静を取り戻した。
「『ツカイマノルーン』って、なに? いや、その前にココはどこ? キミ誰?」
「あのね?」
「うん」
「アンタ、それが貴族にものを尋ねる時の口の利き方?」
「はあ」
気の抜けた返事をするアノンに、ハゲ頭が近寄ってきて、アノンの左手を確かめる。
そこには、見たことも無い、文字のようなものが刻まれていた。
「なんだこれ?」
「ふむ……珍しいルーンだな」
そう言って、ハゲ頭はすばやくその文字を紙に模写すると、改めてアノンの体を観察した。
「ほう……いや、全身に刺青とは珍しい。君は一体どこから来たんだね?」
「その前に、こっちの質問に答えてくれないかな。ここはドコ? キミ達は何者なんだい?」
興味深げに、尋ねてくるハゲ頭に、アノンは質問を返したが、
「先生。早く行かないと、次の授業が始まりまーす」
後ろから、そんな声が聞こえ、
「おお、そうだった。君の話は、また今度聞かせてくれ」
そう言ってハゲ頭は、質問に答えないまま、文字を描き写した紙を懐にしまってきびすを返すと、宙に浮かんだ。
顔を真っ赤にして、ルイズがコルベールに言った。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」
コルベールが、祝福してくれたが、ルイズは、まったくもって喜ぶ気にはなれなかった。
アノンはわけが分からず、顔を真っ赤にした少女と、ニコニコするハゲ頭を交互に眺める。
不意に、左手の甲に異様な熱を感じた。
「! これは…?」
「『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ。すぐ終わるわ」
確かに、左手の熱はすぐに収まり、体は平静を取り戻した。
「『ツカイマノルーン』って、なに? いや、その前にココはどこ? キミ誰?」
「あのね?」
「うん」
「アンタ、それが貴族にものを尋ねる時の口の利き方?」
「はあ」
気の抜けた返事をするアノンに、ハゲ頭が近寄ってきて、アノンの左手を確かめる。
そこには、見たことも無い、文字のようなものが刻まれていた。
「なんだこれ?」
「ふむ……珍しいルーンだな」
そう言って、ハゲ頭はすばやくその文字を紙に模写すると、改めてアノンの体を観察した。
「ほう……いや、全身に刺青とは珍しい。君は一体どこから来たんだね?」
「その前に、こっちの質問に答えてくれないかな。ここはドコ? キミ達は何者なんだい?」
興味深げに、尋ねてくるハゲ頭に、アノンは質問を返したが、
「先生。早く行かないと、次の授業が始まりまーす」
後ろから、そんな声が聞こえ、
「おお、そうだった。君の話は、また今度聞かせてくれ」
そう言ってハゲ頭は、質問に答えないまま、文字を描き写した紙を懐にしまってきびすを返すと、宙に浮かんだ。
「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
それに続いて、他の生徒らしい者達も、一斉に宙に浮いた。
神器を使ってる様子はない。
アノンは目を見張った。
浮かんだ全員はすうっと、城のような石造りの建物へ向かって飛んでいった。
(天界人でないなら……まさか能力者?)
アノンは浮かんだ考えを、すぐに打ち消した。
三次選考に残ったメンバー以外の能力者たちは、すでにバトルをリタイアし、能力を失っているはず。
そうでなくても、これだけの能力者が一箇所に集まるなど…。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」
空から、そんな言葉が投げつけられた。
残ったのは、ルイズとアノンだけ。
とりあえず、アノンは地面から腰を上げた。
ルイズは、服に――と言っても腰のボロ布だが――に付いた泥をはらうアノンに、向かって大声で怒鳴った。
「あんた、なんなのよ!」
「それはこっちのセリフだよ。ココはどこ? キミ達は能力者なのかい? この『ツカイマノルーン』って言うのは何? まだ何も答えてもらっていないよ」
「能力者って何よ、メイジって言いなさい。ったく、どこの田舎から来たかしらないけど、説明してあげる」
「あ、その前に」
「なに?」
「ココは地獄界じゃないの?」
「地獄? 何馬鹿なこと言ってるのよ。ここはトリステイン! そしてかの高名なトリステイン魔法学院よ!」
「まほーがくいん?」
「わたしは二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあんたのご主人様よ。覚えておきなさい!」
「ふーん。ルイズくん、か」
「私はあんたの主よ? ルイズ“様”、もしくはご主人様と呼びなさい!」
「ルイズ。とりあえず、あの皆が入ってった建物まで、連れて行ってくれないかい? そこでいろいろ聞かせてもらうよ」
「ちょっと、なんで呼び捨てになってるのよ!?」
キーキー怒るルイズを無視して、アノンは建物に向かって歩き出した。
が、
「あれ?」
一歩踏み出したところで膝が折れ、そのまま地面に倒れこんでしまった。
「ちょ、ちょっと、あんた!? どうしたのよ一体!」
倒れたアノンに、駆け寄るルイズ。
突然の事態に忘れていたが、アノンはついさっき、大地を削る自分の“魔王”を砕いた、植木の“魔王”の直撃を食らったのだ。
まともに動けるはずがない。
まるで動かない自分の体に、戦った者の強さを思う。
(植木くん、強かったなあ……)
幼い頃から修行を重ね、ロベルトと神、二人の十ツ星天界人を取り込んで、誰よりも強くなったはずの自分を倒した男――植木耕介。
彼の顔を思い浮かべながら、アノンは、意識を失った。
それに続いて、他の生徒らしい者達も、一斉に宙に浮いた。
神器を使ってる様子はない。
アノンは目を見張った。
浮かんだ全員はすうっと、城のような石造りの建物へ向かって飛んでいった。
(天界人でないなら……まさか能力者?)
アノンは浮かんだ考えを、すぐに打ち消した。
三次選考に残ったメンバー以外の能力者たちは、すでにバトルをリタイアし、能力を失っているはず。
そうでなくても、これだけの能力者が一箇所に集まるなど…。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」
空から、そんな言葉が投げつけられた。
残ったのは、ルイズとアノンだけ。
とりあえず、アノンは地面から腰を上げた。
ルイズは、服に――と言っても腰のボロ布だが――に付いた泥をはらうアノンに、向かって大声で怒鳴った。
「あんた、なんなのよ!」
「それはこっちのセリフだよ。ココはどこ? キミ達は能力者なのかい? この『ツカイマノルーン』って言うのは何? まだ何も答えてもらっていないよ」
「能力者って何よ、メイジって言いなさい。ったく、どこの田舎から来たかしらないけど、説明してあげる」
「あ、その前に」
「なに?」
「ココは地獄界じゃないの?」
「地獄? 何馬鹿なこと言ってるのよ。ここはトリステイン! そしてかの高名なトリステイン魔法学院よ!」
「まほーがくいん?」
「わたしは二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあんたのご主人様よ。覚えておきなさい!」
「ふーん。ルイズくん、か」
「私はあんたの主よ? ルイズ“様”、もしくはご主人様と呼びなさい!」
「ルイズ。とりあえず、あの皆が入ってった建物まで、連れて行ってくれないかい? そこでいろいろ聞かせてもらうよ」
「ちょっと、なんで呼び捨てになってるのよ!?」
キーキー怒るルイズを無視して、アノンは建物に向かって歩き出した。
が、
「あれ?」
一歩踏み出したところで膝が折れ、そのまま地面に倒れこんでしまった。
「ちょ、ちょっと、あんた!? どうしたのよ一体!」
倒れたアノンに、駆け寄るルイズ。
突然の事態に忘れていたが、アノンはついさっき、大地を削る自分の“魔王”を砕いた、植木の“魔王”の直撃を食らったのだ。
まともに動けるはずがない。
まるで動かない自分の体に、戦った者の強さを思う。
(植木くん、強かったなあ……)
幼い頃から修行を重ね、ロベルトと神、二人の十ツ星天界人を取り込んで、誰よりも強くなったはずの自分を倒した男――植木耕介。
彼の顔を思い浮かべながら、アノンは、意識を失った。