あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

アノンの法則-01


自分以外の命なんて、どうなったっていい。
そう思っていた。
ただの好奇心のために、他人の宝物を踏み潰そうとしたこともあったし、親も他人も平気で騙し、利用した。

『ボクの夢はね… 平凡かもしれないケド、“幸せ”になるコトなんだ』
         ロード
『ボクの前には誰も立っていない!!! どこまでも伸びるまっさらな“道”!!! そんな人生を歩けるなんて、これ以上の“幸せ”はないだろう?』

だからボクは、全てを滅ぼすコトに決めた。

「全部滅ぼして自分ひとりになるのが夢? そんなの夢でも何でもねえよ」

誰よりも強くなったボクを、倒した人が言った。

「叶った時、一緒に喜び合える誰かがいるから、“夢”なんだろ?」

「……! そうか…もしボクにも君達みたいな仲間がいたら…」

彼の言葉で、ボクは自分の夢に足りなかった物を悟り、神を解放した。

地面にトンネルが現れ、重力に引かれるまま、アノンの体は地獄界へと落下を始める。
だが、トンネルを落ちるアノンの前に、突如奇妙な鏡が現れた。
抵抗もできず、アノンは落ちる勢いのまま、鏡に突っ込む。
視界が、真っ白な光で覆われた。




「宇宙の果てのどこかにいる、私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より訴えるわ、我が導きに答えなさい!」
その独創的な呪文が起こしたのは、使い魔の召喚ではなく、広場の土を掘り返す、本日13回目の爆発だった。
あたりに土煙が立ちこめ、爆発を起こした張本人に、一斉に野次が飛んだ。
「また失敗だ!『サモン・サーヴァント』もまともにできないのかよ!」
「さすがゼロのルイズ!!」
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
ルイズは周りから浴びせられる野次に、よく通る声で怒鳴り返した。
「いや、何か召喚できたようですよ、ミス・ヴァリエール」
ルイズと生徒達が騒いでいると、進級試験を兼ねたこの使い魔召喚の儀式を監督していた、ハゲ頭の教師、コルベールがそう言った。
慌ててコルベールの指すほうを見ると、確かに土煙の向こうに何かの影があった。
それも結構大きい。
(ドラゴン? グリフォン? もしかして誰も見たこと無いような幻獣とか!)
期待に胸を膨らませ、その影をみつめるルイズ。
しかし、土煙が晴れ、そこに現れたのはドラゴンでもグリフォンでもなく――一人の少年だった。

彼は地面に両脚を投げ出して、不思議そうに辺りを見回していた。
歳はルイズたちと同じくらいに見える。
ルイズよりも濃いピンク色の、背中まで伸びた長い髪。
顔や体に刻まれた刺青のような模様が目を引いたが、どうにも全身が小汚い。
上から下まで埃まみれで、着ているものといったら腰に巻いたボロ布一枚。
どう見ても裕福な者には見えない。
いや、それどころか――
「平民だ! ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「それになんだあの格好。乞食じゃないのか?」
一瞬静まり返った生徒達だったが、召喚された少年を見て、またすぐに大騒ぎを始めた。
中には腹を抱えて笑っている者もいる。
「ココは…?」
ここは、地獄界ではないのだろうか。
アノンは周りの風景に、違和感を感じた。
ロベルトと神、取り込んでいた二人の天界人を解放した以上、待っているのは地獄界への強制送還のみ。
だが、ここは自分の知っている地獄界とは、似ても似つかない。
少し離れた場所に、数十人の人間達が人垣を作っていた。
歳は全員、自分と同じくらいに見える。
皆、同じような制服にマントと杖を身につけ、こちらを見て可笑しそうに笑っていた。
加えて、馬鹿にしたような野次も飛び交っている。
「…?」
アノンが状況を飲み込めずに、きょろきょろしていると、眩しい頭に向かって何かを訴える一人の少女が目に付いた。
「ミスタ・コルベール! もう一回召喚させてください!」
少女はずいぶん必死な様子だったが、ハゲ頭が横に振られるとがっくりと肩を落とし、アノンのほうに顔を向けた。
桃色掛かったブロンドの髪を揺らし、整った眉を不機嫌そうに歪めて、コルベールと呼ばれたハゲ頭の男と一緒に近づいてくる。
少女は目の前まで来ると、アノンを見下ろしながら、
「あんた誰?」
と言った。

「ボクは…アノン」
「どこの平民?」
「ヘイミン?」
耳慣れない言葉に、思わず聞き返すアノン。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
そんな声が聞こえ、笑い声が一層大きくなった。
「だ、だからちょっと間違っただけだってば!」
目の前の少女――ルイズというらしい――が怒鳴った。
「ミス・ヴァリエール。早く儀式を続けなさい」
ハゲ頭の男がルイズを急かした。
「か、彼と?」
急に顔を赤らめて、しり込みするルイズ。
「そうだ。早く。次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだね? いいから早く契約したまえ」
コルベールに急かされて、ルイズはう~、と小さく唸り、アノンに向き直った。
「あ、あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
(キゾク?)
またも、耳慣れない言葉。
だが、アノンがそれを聞き返す前に、ルイズは、手に持った小さな杖振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ぎゅっと目をつむって、ルイズの顔が近づいてくる。
アノンは思わず身を引いたが、杖を持っていないほうの手で、がっしりと頭を掴まれた。
唇が、重ねられる。
(!?)
混乱しながらも、アノンは身動きできずに、横たわっていた。
唇が、離れた。

「終わりました」
顔を真っ赤にして、ルイズがコルベールに言った。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」
コルベールが、祝福してくれたが、ルイズは、まったくもって喜ぶ気にはなれなかった。
アノンはわけが分からず、顔を真っ赤にした少女と、ニコニコするハゲ頭を交互に眺める。
不意に、左手の甲に異様な熱を感じた。
「! これは…?」
「『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ。すぐ終わるわ」
確かに、左手の熱はすぐに収まり、体は平静を取り戻した。
「『ツカイマノルーン』って、なに? いや、その前にココはどこ? キミ誰?」
「あのね?」
「うん」
「アンタ、それが貴族にものを尋ねる時の口の利き方?」
「はあ」
気の抜けた返事をするアノンに、ハゲ頭が近寄ってきて、アノンの左手を確かめる。
そこには、見たことも無い、文字のようなものが刻まれていた。
「なんだこれ?」
「ふむ……珍しいルーンだな」
そう言って、ハゲ頭はすばやくその文字を紙に模写すると、改めてアノンの体を観察した。
「ほう……いや、全身に刺青とは珍しい。君は一体どこから来たんだね?」
「その前に、こっちの質問に答えてくれないかな。ここはドコ? キミ達は何者なんだい?」
興味深げに、尋ねてくるハゲ頭に、アノンは質問を返したが、
「先生。早く行かないと、次の授業が始まりまーす」
後ろから、そんな声が聞こえ、
「おお、そうだった。君の話は、また今度聞かせてくれ」
そう言ってハゲ頭は、質問に答えないまま、文字を描き写した紙を懐にしまってきびすを返すと、宙に浮かんだ。

「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
それに続いて、他の生徒らしい者達も、一斉に宙に浮いた。
神器を使ってる様子はない。
アノンは目を見張った。
浮かんだ全員はすうっと、城のような石造りの建物へ向かって飛んでいった。
(天界人でないなら……まさか能力者?)
アノンは浮かんだ考えを、すぐに打ち消した。
三次選考に残ったメンバー以外の能力者たちは、すでにバトルをリタイアし、能力を失っているはず。
そうでなくても、これだけの能力者が一箇所に集まるなど…。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」
空から、そんな言葉が投げつけられた。
残ったのは、ルイズとアノンだけ。
とりあえず、アノンは地面から腰を上げた。
ルイズは、服に――と言っても腰のボロ布だが――に付いた泥をはらうアノンに、向かって大声で怒鳴った。
「あんた、なんなのよ!」
「それはこっちのセリフだよ。ココはどこ? キミ達は能力者なのかい? この『ツカイマノルーン』って言うのは何? まだ何も答えてもらっていないよ」
「能力者って何よ、メイジって言いなさい。ったく、どこの田舎から来たかしらないけど、説明してあげる」
「あ、その前に」
「なに?」
「ココは地獄界じゃないの?」
「地獄? 何馬鹿なこと言ってるのよ。ここはトリステイン! そしてかの高名なトリステイン魔法学院よ!」
「まほーがくいん?」
「わたしは二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあんたのご主人様よ。覚えておきなさい!」
「ふーん。ルイズくん、か」
「私はあんたの主よ? ルイズ“様”、もしくはご主人様と呼びなさい!」
「ルイズ。とりあえず、あの皆が入ってった建物まで、連れて行ってくれないかい? そこでいろいろ聞かせてもらうよ」
「ちょっと、なんで呼び捨てになってるのよ!?」
キーキー怒るルイズを無視して、アノンは建物に向かって歩き出した。
が、
「あれ?」
一歩踏み出したところで膝が折れ、そのまま地面に倒れこんでしまった。
「ちょ、ちょっと、あんた!? どうしたのよ一体!」
倒れたアノンに、駆け寄るルイズ。
突然の事態に忘れていたが、アノンはついさっき、大地を削る自分の“魔王”を砕いた、植木の“魔王”の直撃を食らったのだ。
まともに動けるはずがない。
まるで動かない自分の体に、戦った者の強さを思う。
(植木くん、強かったなあ……)
幼い頃から修行を重ね、ロベルトと神、二人の十ツ星天界人を取り込んで、誰よりも強くなったはずの自分を倒した男――植木耕介。
彼の顔を思い浮かべながら、アノンは、意識を失った。


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