あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

凄絶な使い魔‐03


 第三話「ルイズの試練」

 元親はやや怪訝な顔をして、左手に握る蝙蝠髑髏を見た。
 彼の操る三味線はただの楽器にあらず、奏でる音は衝撃となり敵を討つ、また、その衝撃を不可視の音の球にかえて、
宙を漂わせ、衝撃を解放させる事もできる。
 いま、この部屋に解き放ったものがその音の球だが、明らかに大量発生したソレに元親自身が戸惑いを覚えたのだった。
 違う、今までとまるで違う、手のひらに吸いつくような楽器との一体感を元親は感じていた。

「な、なに……、この丸いの……、貴方、魔法を使ったの!」

 部屋を覆い尽くさんばかりに吐き出された音の玉を、目で追うルイズに、元親の方も驚いた顔をする。

 「ほう…、お前も見えるか、音の球が…上等……、だがそっちの二人には見えてないようだがな」

 ルイズは振り返って、オスマンとコルベールの方を見たが、確かに彼らはこの部屋に起こっている事態に
全く気が付いた様子がない。
 すぐ目の前を漂っている球状の物体が目に見えていないようだった。

 「……これは魔法ではない、とはいえ魔法みたいなものだ…、この球一つ一つが、俺の合図で破壊を発生させる、このようにな」

 そう言うと元親が軽く弦をつま弾いた。
 離れた場所を漂っていた球が弾け、空中に激しい衝撃をまき散らした。

 「うおぉっ!!」「きゃぁ!!」「な、なんじゃぁ!!!」

 エアハンマーの衝撃余波を受けたように3人が体勢を崩した。
 元親が、なるたけ衝撃を弱めて、その他の音の球に干渉しないよう、また、3人に被害が出ないように「音」
を弾けさせたのだ。
 以前の彼には、ここまで繊細な操作を要する技術はなかったが、今の自分ならば出来て当然と思えたので、やってみた。
 一歩間違えれば他の音球にも破裂が干渉して、部屋中の球が一斉に爆発していただろう。
 元親は涼しい顔をして、三味線の胴をなでた。

 「今まで、使いこなしているつもりだったが、……どうして奥深い」

 今なら、この最凶の三味線のすべてを引き出せる、感情のままに掻きならしたい衝動に駆られたが、
さすがにこの部屋では無理だった。
 そんな彼の左手は、手にはめた装具の下で淡く光を発していた。


 「いきなりなにをするのよ!」

 まず怒りの声を上げたのはルイズだった。
 元親に詰め寄ろうとするが、その前方に音の球の列が道をふさぎ思わず立ち止まる。
 さきほどの衝撃が元親の仕業であるのを理解しているのは、音の球が見えるルイズだけなのだ、
それだけに目の前に漂うソレは危険以外の何物でもなかった。
 ルイズとしては後ずさりしてしまう。
 コルベールが尻もちを付いたオスマンを起こし、元親の方を見た。

 「チョーソカベ君、君は一体、……一体何をしたのかね」

 コルベールが前に出ようとしたので、ルイズが慌てて止める、目の前には音の球の壁がある。

 「球です、先生たちには見えていないでしょうが、見えない無数の球が浮かんでいて、その一つを彼が破裂させたのです」

 ルイズの表情は真剣そのものだ。

 「むむむ……、なんと、……だが確かに感じる」

 今、彼の皮膚は粟立ち、危険地帯に立った時のような緊張を感じていた。
 何もないように見える空間に、何かがあると感じられたのは元軍人コルベールならではの鋭敏な感覚ゆえか。

 「学院長!何事ですか!!」

 衝撃音に驚いて奥からロングビルが飛び出してくる。
 彼女が見たのは、コルベールが連れてきた平民と、3人の貴族が対峙している様子。
 何が起きたのか分からないが、あの平民が何かをしでかしたと状況を見て判断した。
 疑問に思うのは、何ゆえ、名うての学院教師と、あのオールド・オスマンが平民相手に何の手も打たないのだろう……。
 その理由を知りたいと思ったが、このタイミングで駆けつけてしまった以上は、仕方ない、
手助けして信用を得ていた方がいい。
 ロングビルはそう判断し、懐から杖だし元親に向けようとするが、オスマンの声がそれを制した。

 「ミス・ロングビル、すまんが下手なことをせんでくれんか、今のわしらの安否は彼の掌にのっかっとるんでな」

 その言葉にロングビルは動きを止め、杖をおろす。
 やはり、何かが起きている、オスマンにそこまで言わせるとは……。

 「……はい、わかりました学院長」

 しおらしくそう答えると、彼女の眼は元親へと、注がれ、
 それは彼が持つ楽器へと移り、そして妖しく光った。
 ……あれが、どうやら……、原因みたいだねぇ………


 「先住魔法…、いや、そのマジックアイテムの仕業だの」

 オスマンは長く伸びた髭をなでながら元親の蝙蝠髑髏を見た。

 「そうだな、半分は正解……、と言っておこう」
 「で、これからどうするつもりかの?」
 「無論、その少女が俺を従える器があるか、証明してもらう」

 元親が再度、撥を振るうと新たな音の球が吹き出す、それを見せつけるようにしてルイスに語りかける。

 「……今、俺が握っているのは三味線の撥ではない、……お前たちの命運に等しい。
……俺が気を変えれば、一斉に音は破壊をまき散らし、……凄絶に、その命を散らす事となる」

 ルイズは周りを囲む音の球を見た。
 チョーソカベの言う通り、確かに、一つがエアハンマーと同じ程の威力がある、それがざっと数えても30はあるのだ、
同時に炸裂したら命はないだろう。
 ならば、そうされる前に手を打たないと!、そう思い杖を抜いたルイズに元親は言った。

 「言っておくが、軽はずみな事はしない方がいい、……死ぬのはお前一人ではなく、後ろの2人の命も道連れになると
心得ることだ、みす・ばりえーるよ」

 その言葉でルイズの手は固まるしかなかった。
 軽はずみどころか、何もできるはずがない。
 周囲の音の球はじわじわと範囲を狭めて来ているように思えるだが、その爆破を目の前の男が
意のままにできるなら、何も打つ手がないじゃない!

 「さて、本題に戻るぞ…、みす・ばりえーる。
お前が俺を仕える条件は、唯一つ……、この状況をお前の力だけで切り抜ける、それだけだ」

 ルイズの心臓は早鐘のように鼓動を打ち、目の前が暗くなるような錯覚を覚えた。


 コルベールはどう対処するか迷っていた。
 確かに手詰まりの状況でもあるが、我々を殺害すると言うのは、明らかにブラフとしか考えられなかった。
 実際に彼がその気になれば我々の命を奪う事も出来るのだろうが、それは彼にとっての何も利益がない、
むしろ百害、見も知らぬ土地で、ただお尋ね者になるだけだ。
 その時、オスマンの方をちらりと見ると、指で手まねきを送ってきたので、コルベールはルイズの側からソッと離れ、
小声で話しかける。

 (学院長…)
 (わかっとる、唯の脅しじゃろ、……問題はワシらが手をだしたら、あの使い魔の事じゃから、
ヘソ曲げるかもしれんという事じゃ)

 要するに元親の目的はルイズにプレッシャーを与えるためと、同時に我々に下手な手出しを
させない様にする為で、それはとりあえず成功しているのである。

 (ともかく、これはミス・ヴァリエールが使い魔の信頼を得るの試練じゃ、
すべては彼女自身にかかっておる、……ワシらが出来る事はあまり多くはないぞ)

 オスマンの言葉にコルベールは頷いて答えた。


 ルイズは座り込みそうになるのを必死に耐えていた。
 しかし、意思とは無関係に彼女の足は震え、口の中は緊張で乾き、噛みしめようとした歯はカチカチと音を立てていた。
 16年間の人生の中で、生き死にの立場に追い込まれた事などない、まして、教師と学院長を
学生である自分が守らなければならないのだ。
 自分たちを包囲する音の球がゆら、と揺らめく度に心臓が痛んだ。

 この目の前の平民は知らないだろう、自分がゼロと蔑まれ、嘲笑される名ばかりのメイジである事を…。
 こんな無理難題を押し付け、切り抜けられないと使い魔にはならないなんて脅しも良いところ、いや正真正銘の脅迫だ。
 言うなれば喉元にナイフ当てられた状態で、逃げてみろと言ってるようなもの、一体どうしろというの?
 この状況を切り抜ける方法など何も思い浮かばなかった。
 必死に考えを巡らそうとするほど、混乱しはじめ、頭の中が真っ白になっていくのだ。
 次第に彼女には過去の苦い思い出だけがぐるぐると思いだされる。

 「ゼロのルイズ」という二つ名。

 これまでの数々の失敗魔法と、その度に聞こえてきた失望のため息。

 サモンサーヴァントが成功した瞬間、これまでの人生が、これから変わると思った。
 でも、召喚できたのは平民で、契約を終えた後だと言うのに私に従おうとしない。
 いや、これだけ強力なマジックアイテムを持っているなら傭兵としても生活していける、
 私に雇われる必要なんてないのも冷静に考えれば当然のことだと思う。

 でも、なぜ私の場合は…、努力が…、実を…、結ばないのだろうか……。

 どんなにクラスメイトから迷惑がられようと、常に気丈に振る舞ってきた。
 泣くのは誰にも見られない部屋のベッドの中だけ。
 そんな決して人前では見せなかった弱さが、今日は彼女の小さな胸を押しつぶし、頬へと流れ落ちようとしていた。

 私は所詮ゼロ、魔法が使えず…、そして、使い魔もいなくなる……。


 「のう、ミス・ヴァリエール」

 オスマンの声がルイズを思考からスッと掬いあげた。
 ルイズはハッとして目に溜まった涙を急いで手の甲で拭いた。

 「あの使い魔は一筋縄ではいかんな」
 「す、すいません、私が召喚した使い魔がこんな事をしでかして」

 思考に沈んでいる場合ではなかった、今の状況はオスマンやコルベールも巻き込んでいる状況なのだ、
なんとかして切り抜ける方法を考えなければいけない。
 あわてて謝るルイズにオスマンは目を細めて笑いかけた。

 「いやいや、さすがに名門ヴァリエールの子女、凡庸なメイジではとてもこれ程の大物は召還出来やせん、
それにな……あとはお主次第じゃよ?」

 そういうと老メイジは少女にウインクをして見せた。

 「え?」
 「君はあの尊大で大物ぶった色男をどうしたいのじゃ?、……みすみす手放すのはもったいないのぉ」

 手放す?もったいない?

 命がかかってる状況下で、全く緊張した面持ちのないオスマンの言葉に、ルイズの中から次第に
不安や緊張が薄れていくのが分かった。
 そんなルイズにオスマンは考える仕草を見せながら

 「そうじゃな、わしがお主の立場なら、使い魔にした暁には毎日下着を洗わせたり、
着替えをさせたり……、まぁ、いろいろこき使ってやるがのぉ」

 わざと元親に聞こえるように言うオスマンに、ルイズはハラハラしつつも、思わず吹き出さずにはいられなかった。
 そんなルイズを見てオスマンも笑う。

 「そうですぞ、ミス・ヴァリエール、私と学院長の心配は無用ですぞ、ここは貴方の思うようになさい」

 そう、コルベールもルイズに笑いかけた。

 そうだ、私は何を考えているんだろう。
 今までにどんな魔法を失敗してきても、これだけは言える。
 このサモンサーヴァントは紛れもない成功、そしてコントラクトサーバントも成功、
 二つの魔法をすでに成功している私はけしてゼロじゃない。

 あとはこのチョーソカベに私を認めさせる、唯それだけの事なのだ。
 サモンサーヴァントは術者に最もふさわしいものを召喚すると言われてる。
 ならば、あの傲然と立つ男にふさわしい私でなければならないと言う事。

 こんな不安におびえている私じゃ、釣り合わない。

 そう…、私は知っている、それがどういう自分なのか、それはいつも私の心の中にこそあった。


 ルイズは、一瞬、オスマンとコルベールの顔を見る。
 何か決意を決めたように表情を引き締めて、元親の前へと進み出た。


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