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エデンの林檎 二話

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二話 『蛇は林檎をアダムに勧める』


 ルイズはコルベールの前にギーシュと共に並ばされていた。
 呼ばれた理由は先日の決闘である。
 貴族間での決闘はここトリステインでは禁止されており、学生同士の決闘など言わずもがな、であった。

「では二人は三日間の謹慎処分とする。寮から出ないように。あとこれ課題」

 どっさりと課題を渡され、二人そろってげんなりとする。
 一礼してそろって部屋から退出した。

「あ~、んん、ん、ミス・ヴァリエール?」
「何かしら?」

 かしこまるギーシュに疑問符を浮かべ、ルイズは問いかける。

「昨日は本当に申し訳なかった、いや本当に」
「へえ、ちゃんと謝ることはできるわけだ」
「……いくらなんでもそれは悲しいよ」
「冗談よ。昨日のことなら気にしてないわ。勝ったし」
「ぐっ」


 痛いところをつかれ、ギーシュは思わずうめく。

「それよりもギーシュ? グラモン家の男なら他にすることがあるんじゃない?」
「ああそうだね、忘れるところだったよ」

 そう言うと早足で自室へ向かう。

「三人のレディに謝らなくては、ね」


 朝食を取りに食堂へ。うれしそうに近寄ってくるシエスタとその少し向こうでぼろぼろになっているギーシュが目に留まる。
 ギーシュのボロボロっぷりはすごかった。その姿まさにフルボッコ。
 わざわざ朝食をよそいに来たシエスタに、ギーシュについてを問いかけた。

「ああ、あれですか。あれはさっきですねぇ」

 要約すれば以下の通りである。

 ギーシュケティに謝罪→ビンタ→影からジロリ
 モンモランシーに謝罪→ビンタ→復縁
 シエスタに謝罪→お詫びに昼食を僕の部屋で→モンモランシーの素敵な笑顔→フルボッコ

「あれはもう、一生治らないわね」
「ですねぇ」


 本日は授業がない。虚無の曜日だからだ。

「だから今日から三日謹慎ってわけね、あーのコッパゲがぁ」
「まあまあルイズ様、それはそっちですよ」


 ルイズは課題をさっさと終わらせ、悪魔の実を植えた場所に来ていた。
 ルイズはいろいろ抜けているところがあるが、基本的に優秀である。
 実技ができないということは、実技以外をする余裕が他のものよりも多いということであるのだから。

 悪魔の実は芽を出していた。既に子葉が開いている。成長が早い。

「ルイズ様、普通植物ってこんなに早く芽を出したりしませんよね?」
「これは特別よ。それにこの方法以外で芽を出すことはないわ。専用の肥料を与えなかったら枯れもせずにずっとこのまま」
「それは植物じゃないんじゃぁ……」
「ええ、どうも一種の寄生生物らしいのよね。触っちゃ駄目よ? 生き物だけじゃなくて物にも寄生できるから」

 ルイズは手に持った小さなじょうろから赤い色の液体を注いでいる。あれがその肥料だろうか?

「あのルイズ様、つかぬ事を伺いますけど、それ原料は何ですか?」

 シエスタがそれをたずねたのは、その肥料を与えた瞬間メキメキ音をたてて芽が伸びたから。
 驚いた様子のシエスタに苦笑をこぼし、ルイズは左手をまくる。
 そこには秘薬で治したのだろう、何本もの手首の傷。

「能力者の血液よ」


 コルベールは優秀なメイジである。そして同時に優秀な科学者でもあるのだ。
 何せ魔法があるこの世界で必要などないはずの内燃機関の基本理念を自作してしまうのだから。
 その頭脳は図抜けて秀でているといっていいだろう。

 ところで魔法の必要ない技術は平民に力を与えるものだと思うのだが、そこんところはどうなんだろう?

 コルベールはルイズに頼まれた依頼を無料で受けていた。
 それは彼の知的好奇心を満たすものであったから。


「ミスタ・コルベール、燃料をくべるだけで延々と雷を吐き続ける装置を作ることは可能ですか?」

 己の作っている石炭を利用した内燃機関、その目的と一致するものをただの生徒に過ぎないルイズに問われ、コルベールは小さな感動を思えていた。

「理論上は可能かな。燃料をくべて駆動し続ける装置というのは既に想定としてあるのだけれど……」
「何か問題が?」
「雷のほうだね。これを発生させる原理がわからないんだ」
「なるほど……ああ、これ先日の課題です」

 トリステインに足りないものは好奇心である。
 貴族主義を貫くこの国にとって、貴族は絶対であり平民はその付属物でしかない。
 だから技術力が進歩しない。
 それとは違い、ゲルマニアという国家は身分の差をあまり重視しない。
 優秀であれば昇進させる、という実に効率のいいシステムをとっている。
 政治など魔法に関係ない力を必要とする職に、平民も等しく就いている。

 電気発生装置というものが発明されれば、それはまさに人類の進化といえるのだろう。
 ルイズは考える、雷とはそもそも何であるのか、それをコルベールと相談する。
 ルイズは初め光と考えていた。だがコルベールの話でその意見が変わる。

「雷といえば友人が一度打たれたことがあってね、すごい火傷を負っていたよ。よく生きていたものだ」
「そういえばそのままなくなられる方が多いですね」
「うん、そうだね。彼はひどくしびれて動けなくなったと言ってたなぁ」
「しびれた?」

 火傷なら光とて負わすことはできるだろう。だがしびれるとは?
 ルイズはふと、長時間触っていなかったドアノブに触れたときを思い出した。


「あの、ミスタ・コルベール、つたない意見かもしれませんが雷とはもしや電気では?」
「……なんだって?」
「いえ、自然現象でしびれるといえば静電気くらいしか思いつかなくて……」
「電気? いや待てよ、そういえば『ライトニング・クラウド』も直撃すればひどい火傷を起こす! そうか、電気か!」

 我天啓を得たり! とばかりに飛び上がるコルベール。

「そうです、電気ですよ! それなら何とかなるかもしれません!」
「本当ですか!?」
「ええ! 規模は小さいですがそれでも?」

 コルベールはその日から数日、自分の研究室にこもり続けた。
 周りが心配しだしたころ、彼はげっそりやせ細った姿で食堂に顔を出した。

「ミス・ヴァリエール! できましたよ! これはもう革命というしか!」

 コルベールは空腹でぶっ倒れた。


 獣のように食事をむさぼるコルベールの横で、ルイズはその装置の取っ手をくるくると回す。
 上に突き出た二本の端子の間に青色に輝くスパークがほとばしる。
 彼らは知らないことだが、それは二本の江戸の終期に平賀源内によって広まった装置、『えれきてる』と同じものであった。
 ルイズはそれの試作二号機を受け取り笑みを浮かべた。

 材料はそろった。



 余談ではあるが、この日コルベールは偉大な一歩を生み出した。
 それは未来において『コルベール電気』という世界のエネルギー産業を席巻する財閥の出発地点であったのだが、それはまた別のお話。
 だがコルベールにはそれよりも、何よりも喜ぶべき即時的な恩恵があった。
 かつてエレキテルは治療に使われた。電気刺激により体のコリを和らげたり血行を良くしたりできるためだ。
 そう、血行を良くして細胞を活性化させてくれる、それがエレキテル。

 コルベールは毎朝鏡の前で幸せいっぱいの顔で鼻歌を歌う。
 頭に生えた、細いが確かに根付く黒い毛髪。
 彼の特長とも言うべきバーコードは、もう、無い。


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