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僕らは、恋をして生きていく-03



第2話「アイさんざんと」

さて、そうこうした後に、ヴェルダンテと親睦を深めていたら昼休みのチャイムがなった。
ああ、ヴェルダンテ、君と居ると、つい楽しくて時がたつのを忘れてしまうね。
再会を硬く約束しつつ、アルヴィースの食堂に向かう。
やけに早くから混んでいると思ったら錬金の授業は、
途中で事故があって取りやめになったので早くから人が集まったらしい。
……なんか、微妙に損をした気分だ。
ここは、美味しい物を食べて気を取り直そう。
今日のメニューは、っと、ああ、パインサラダがある。
そういえば幼い頃、モンモランシーが初めて僕につくってくれた手料理がやっぱりパインサラダだった。
……はしばみ草が混じっていて、美味しそうに食べるのが大変だったけどね。

「なあ、ギーシュ! お前、今は誰とつきあっているんだよ!」
「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」
「いっつも、薔薇だ薔薇だって言ってるもんなぁ! モテモテなんだろ!?」
恋愛談議をしていた友人達が、僕の周りに集まってくる。
まあ、確かにこのメンツで、実際に女の子と付き合っているのは僕だけだろうけど。
やれやれ、現実は非情なものだね。
しかし、事実をそのまま話して、美少女二人と付き合っていて、その他、
教師・秘書・先輩・後輩・同級生にメイドたちから熱い視線で見られて困ってしまうなんてこと、
正直に言ったら彼らが可哀想だね。照れ屋さんなモンモランシーには、
「恥ずかしいから、付き合っているのは絶対に内緒にして!」って言われている事だし、
ここはオブラートにくるんで置こう。

「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。
薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
ふふふ、ああ、決まった。僕は今、確実に……格好良い!

「い、愛しのギーシュ様!」

あれ、まさかこの声は、……いや、使い魔のヒカリがアルヴィーズの食堂にいるわけ無いし気のせいだ。
そうに決まっている幻聴だ。幻覚だ。
そんな僕の願いも虚しく、ヒカリは息を弾ませて僕の傍に駆け寄ってくる。
手には、可愛らしいナプキンに包まれた小さな荷物を大切そうに持っている。

「い、愛しのギーシュ様! 私、マルトーさんにお願いして材料を分けてもらって、
お弁当を作ってきたんです! い、一緒に食べませんか? あ、あの……やっぱり駄目ですか? 
そ、そうですよね、私が作ったお弁当なんて食べられませんよね。
腐った生ゴミみたいな味がしますもんね、そんなものを毎日食べている私はきっと生ゴミにたかる蝿以下の下等生命体なんですええきっとそうですこんなもの捨ててやる! 飛んでけ私の人生ごと!」

「うわー待つんだヒカリ! 食べる食べるから! ぜひ一緒に食べようじゃないかそのお弁当を! たとえ生ゴミみたいな味がしようとも僕は君の作ったものなら食べられる!
それはもう美味しくいただくから!」
世界が終わったかのような表情で飛び出そうとするヒカリを慌てて止める。
まずい、まずいよ、これはまずい、まずすぎる。

「おや? その娘は、もしやゼロのルイズが召喚した使い魔じゃないか?」
「さすがだギーシュ、昨日の今日でもう口説いたのかよ!」
「使い魔で平民をって、お前どんだけ守備範囲広いんだよ!」
外野が何か言っているけど聞こえない気にしない気にならない。

「ほ、本当ですか、愛しのギーシュ様? 飼いならされた豚のようにガツガツと、
生ゴミのような私のお弁当を本能のままに貪っていただけるんですか!?」
僕は、うんうんと頷いて見せる。この場に長く居るのは、まずい。

「ほんとほんと、いやあ楽しみだな生ゴミ――じゃなくてヒカリの手作り弁当!
というわけでどこか人目につかないところまで行こうかきわめて迅速かつ極秘裏に」
とにかく、モンモランシーに気づかれる前になんとかしないと!

「は、はい、愛しのギーシュ様!」
僕はヒカリの手を引き、そそくさとこの場を離れようと、

「どういうことなのかしら?」

うああああああっ、終わりだ今日でハルケギニアは滅亡する。つーかいますぐアルビオンが降って来てくれ、畜生僕が何をしたんだ始祖ブリミルよあんまりじゃありませんか、世界のどこかにいる勇者よお願い助けて。
モンモランシーが、魔王のようなどす黒い瘴気を発しながら、そばにやってくる。

「や、やあ、モンモランシー。君は今日も美しいね」
はは……目が怖いよ。

「……えー、この娘はヒカリ・キシモト。昨日モンモランシーも会ったよね? ほらルイズが召喚した平民の娘。……ヒカリ、彼女はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。僕と同じこの学院の二年生なんだ」
平静を装って僕は二人に互いを簡潔に紹介した。

「あ、はい、ルイズ様の使い魔になったヒカリです。こ、このたび、愛しのギーシュ様と……お、お付き合いさせていただくことになりましたっ! よろしくお願いしますっ!」
ノォオオオオオオオオオ。なんて、余計なことを。

「愛しの? お付き合い?」
「もちろん友達としてだよ」と僕がフォローするより早く、
「は、はいっ! 今朝を持ちまして、私は愛しのギーシュ様のか、かかかか、カノジョになりました! キ、キスもしました! ギーシュ様が望むなら、そ、その……ア、アレだって……あ、でも避妊はちゃんとしてくださいね」


……………………。
……………………。
……………………。
一瞬、広いアルヴィーズの食堂のざわめきが完全に止まった。
モンモランシーは石化した!
ギャラリーは沈黙した!
僕は混乱している!

「ぅをいっ!? どうしてそんな致命的な発言をさらりと連発するんだ君は!? そんなに僕が憎いのか!?」
「え? なんですか愛しのギーシュ様」
ヒカリは不思議そうに首をかしげた。可愛いけど、空気読め。

「ふ、ふ~ん、そうなの……カノジョなの」
「はいっ!」
世にも恐ろしい微笑を浮かべる浮かべるモンモランシーと、
頬を染めて可愛らしくはにかむヒカリ。

「ギーシュ」
モンモランシーが相変わらず穏やかな笑みを貼り付けたまま僕に視線を向けた。
この顔を見るのは、モンモランシーの誕生日にプレゼントを用意するのをすっかり忘れていて、
兄さん達がペンダントや、ネックレスをプレゼントした後に、
「君へのプレゼントは、僕の笑顔さ」と言って以来だ。
いや、あの時よりも怖いかもしれない。

「……ななななな、なんだい?」
「可愛い子ね」
「ああ。見た目だけなら申し分ないと思う。まったく惜しいね」
「やだもう、ギーシュ様ったら」
ヒカリ、悪いけど褒めてないよ。

「ルイズの使い魔なんかに、手を出していたのね?」
「モンモランシー、誤解なんだ。人命救助というかボランティアというか……不幸な偶然の組み合わせが引き起こした不可避の出来事でだね」
なるべく、平静を装うけど、冷や汗が流れ出ているのがわかる。

「ギーシュ!!」
いきなり怒気をむき出しにしてモンモランシーが至近距離で怒鳴る。


エアハンマーの直撃を食らったような圧力を感じて僕は、

「つ――ッ!」
思わず、耳を押さえてうずくまると。

「このうそつきィ―――――!!」

「うわぁああ」
モンモランシーは、テーブルに置かれたワインの壜を掴むと、中身をどぼどぼと僕に掛けてきた。
衣服に染み込むワインの感触に顔をしかめ、僕は呻いた。
そんな僕に凶悪極まりない視線を向けた後、モンモランシーは大股歩きで去っていった。

「……ふう、まったく困ったもんだね。ねえ、ヒカリ――」
ヒカリは無表情だった。

「……人命救助、ですか」
ぽつりと。淡々と。

「う」
「……ボランティア、ですか」
「ヒ、ヒカリ? もしかして怒っているかい?」
「ギーシュ様」
「ん?」
無表情な目にじわりと涙を浮かべて、ただ一言だけヒカリはいった。

「…………ギーシュ様のばか」

うおっ! 効く! これは効く! 僕の心の柔らかい場所を万力のようにギリギリと締め付ける!
てっきり朝のような自虐系台詞がくると思って構えていたのに、こんな愛らしいストレートな罵倒でくるとは。

「ばか――ッ!」
ヒカリはもう一度、今度は感情全開に叫んで、ついでにその右手は僕の頬を痛打した。ぐーで。

「ばかばかばか――!」
ヒカリは、ばかと連呼しながらそのまま走り去って行った。
周りの好奇の視線が痛い。名門グラモン家の男子として恥ずかしくないように振舞わねば。
父上いわく「男の本領は窮地に陥ったときにこそ発揮される」そうだし。
ハンカチを取り出すと、顔についたワインを拭いて、
皆に聞こえるように大きな声で独り言をしよう。

「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
……なぜだろう、周囲の視線がもっと冷たくなった気がするよ。




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