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ゼロのしもべ第3部-2

 トリステインの城下町。ブルドンネ街では派手に戦勝記念のパレードが行われていた。
 女王戴冠が決定しているアンリエッタの乗る馬車を、狭い街路いっぱいに詰め掛けた観衆が歓声で迎える。いまやアンリエッタは、
強国アルビオンを打ち破った聖女としてあがめられ、人気はとどまるところを知らない。
 隣国ゲルマニアの皇帝との婚約も解消された。ゲルマニアでさえその勢いに恐れるアルビオンを打ち破ったトリステインに、意義を
唱えることなどできようはずもなく、婚約なしで対等の同盟締結と相成った。
 そんな賑々しい凱旋の一行を、宿の2階から眺める2人の男がいた。
 名はない。
 誰に問われようとも、今まで「名はない」という一言で済ませてきたこの2人を、いつしか皆「名無し」と呼ぶようになっていた。
「戦勝パレードか。人間というものはなぜ命をいたずらに奪うことを、これほど賞賛するのか。」
 窓の外に背を向けた老人。ロマンスグレーという言葉がこれほどしっくり来る男は滅多にいないだろう。どっしりとした貫禄のある
声だ。
「おまけに『聖女』と来たか。戦争の命令を下した生き物を、聖女呼ばわりとは。なんともおろかなことではないか。」
 ハートマークに似た髪形をした、モノクルの中年が馬車に冷めた視線を送る。
 不思議なことにこの2人からは生きている気配がしない。
 普通、どんな部屋でも人間が1日いるだけで独特の空気を持つようになるものだ。この2人が宿を借りてすでに3日経つ。にもかかわ
らず、部屋からは生き物の匂いが一切しない。例えるならばロボットやなにかがそこにいるだけのようであった。
 モノクルを嵌めた男が視線を観衆に移す。何人も見知った顔がそこにはいる。アルビオンの貴族だ。彼らは移動の自由こそ保障
されているようであったが、メイジの象徴たる杖を取り上げられ、主を失った老犬のようにパレードを見守っている。
「まったく。おろかな連中だ。」
 理解し難いといった感じの声。
「自分たちの部下を殺した人間を、勝者だと言うだけでたたえているぞ、連中は。たかだか殺戮闘争に勝利しただけでこの有様か。
戦争に勝つことを美しいと感じるような遺伝子でも、人間には備えられているのだろうか。」
「少ししゃべりすぎだぞ。」
 老人が男を戒める。あの戦争以来、男はなにかに焦るように口数が増えた。それは自分で自分に何かを言い聞かせているようで
あった。
「貴様は逆にしゃべりなさすぎだ。」
 モノクル男が逆に老人に言う。老人は老人で、戦争以来何かを耐えているように口数が減った。まるで湧き上がる衝動を押さえ込
んでいるようであった。
 2人は黙ってお互いの顔を見つめる。しばらくの沈黙の後、
「――お互い、同じことを感じているようじゃな。」
 と老人が呟く。中年が小さく頷く。
「その通りだ、No.1よ。わしは、今、あのパレードに軽い嫉妬を覚えているのだ。自分が戦争に参加をしたということ。それに敗北した
ということに対して、理解不能の感情を抱いているのだ。」
「No.3よ。それ以上言うでない。」
 唇をかみ締め、No.1と呼ばれた男が、中年をしかりつける。
「それ以上言えば、わしはおぬしを処分せざるをえなくなる。」
「わかっている。だが、No.1も感じているのだろう。いったいこの感情は何なのだ!?」
 脂汗を流し、うめき声をあげるNo.1.
「我らにあってはならない感情だ。」
「だが、その感情を生み出したかも知れぬアンリエッタを見ても、その感情が何であるか説明がつかぬではないか。」
「いや。わしらはすでにその感情の正体を知っている。違うか、No.3よ。」
 ギリッと奥歯をNo.3が噛みしめる。拳を握り締め、不機嫌そうに床を靴で叩き鳴らす。
「知っているからこそ、我々は怯えているのだ。これではまるで忌むべき人間のようではないか、と…。」

「ったく。わたしの使い魔はどこへ行ったのよ?」
 火の塔、風の塔、水の塔、そして土の塔と一回り見て回った挙句、再び火の塔を覗いてルイズが呟く。
「あの変態仮面がメイドのところにいたのを見ただけで、どこを探してもわたしの使い魔軍団が見つからないってのはどういうわけ?」
 いつのまにか個人所有の使い魔軍団にされているバビル一行。ロプロスとポセイドンを含んでいるのだとしたら、おそるべき戦力
を一メイジが抱え込んでいることになる。超能力少年、3つのしもべ、コンピューター、亡国の王子…。
 世界征服をしてもお釣りが来そうだ。
「わたしは伝説の『虚無』の系統使いかもしれなくって、人知れず悩んでいて、しかたないから誰でもいいから相談に乗って欲しい
のに、どこを探しても影一つ見えないってどういうことよ。このさい豹でも鳥でもゴーレムでも構わないって言うのに!」
 残月はそれ以下というのが悲しい。まあ、おっぱいマニアは敵扱いなのだろう、ルイズにとっては。
「おれっちがいるじゃねーか?/」
「黙れ、オルファ製。」
「オ……オルファ……/」
 引きずる剣が返答に絶句する。デルフリンガーだ。ルイズの背丈では、背中に背負っても剣が地面を擦ってしまう。ならばということ
で鞘に紐を通して引きずっているのだ。
「オルファはないんじゃねーのか、オルファは/オレはカッターナイフかっつーの!/こう見えても伝説の剣だっての!/」
「カッターナイフなんて、そんないいものか!」
 伝説の剣の意識を挫く強烈無比な一撃。刀身がハンマーで殴られたような衝撃をデルフは感じた。
「あんたせっかく買ったのになにも役立ってないじゃないの。伝説の剣って言うぐらいだから、人探しにぐらいは使えるんじゃないか
って持ってきたのに、重いばっかりで役立たず。」
「オレをダウジングに使う時点で間違ってるっての!/」
「つまり曲げた針金以下ね。」
「ゲフウ!」
 煮えた鉛に漬けられたような感覚を受け、剣のくせに血を吐くデルフリンガー。やめて!デルフのLPはもう0よ!
「ん?あれって……孔明?」
 真っ白に燃え尽きたデルフの柄先、校門からフラリと学園へ入ってくる優男の姿があった。
 策士・孔明であった。あいかわらず今日も怪しい。でももう誰も騒がないのはなんというか…。
「そうだ……孔明なら、ブリミル様の使い魔だし、相談にはもってこいね。」
 ナイスアイディアとばかりに指を鳴らすルイズ。それにせっかくならブリミル様のことも聞いてみたい。どんな魔法使いだったのか、
数々の伝説は本当か……。
「げぇっ!なあ、貴族の娘っ子よ、あれに相談するのか?」
 剣のくせに怯えて言うデルフ。
「そうよ?最高の相談相手じゃないの。まさに適材適所って感じだわ。」
 廊下を駆け出すルイズ。フライが使えないものだから階段を駆け下りていくしかない。だが、今はそんなことなど気にならない。なぜ
ならば、自分は伝説の虚無の系統に属する人間かもしれないからだ。
「おや、ルイズ様。これはご機嫌麗しゅう…。」
 ルイズの姿を認めると、優雅に一礼する孔明。あわてて礼を返すルイズ。さすがに始祖に仕えていたともなれば、礼儀を払わざるを
えない。
「なにか、御用ですかな?」
 涼しげな笑みを浮かべる孔明。この格好さえしていなければ一流会社の重役と言っても通りそうだ。
「ちょっとお聞きしたことがあります。お時間はよろしいでしょうか。」
 孔明が頷くと、ルイズは一気に不安と疑問を並べ立てる。安心させるように孔明が目を細めた。
「ご心配はもっともです。まさか虚無の魔法が失われていたとは、この孔明、迂闊でした。ですが、ご安心ください。すでにあなたは
虚無の系統を身につける術を手に入れているのですから。そう!」
 扇を天にかざし、宣言する。
「すなわち始祖の祈祷書こそが、虚無を支配する鍵なり。」
 扇から炎があがった。
「や、やっぱりあの本が重要なのね。」
 ド迫力に思わず後ずさるルイズ。怖い。なにより恥ずかしい。なんでこんなにオーバーアクションなのだ。
「でも、あれは結婚式のための借り物で、姫…王女陛下が婚約を破棄された以上、王室に返還すべきでは…?」
 いえいえ、と首を振る孔明。
「斧は木を切るために。竿は魚を釣るために。本は読むためにあるもの。それを一番役立てる人間が持つべきであり、書庫の隅に
埃をかぶせておくべきではありませぬ。願い出れば、必ずお譲りいただけるでしょう。」
「ゆ、譲ってもらうなどとんでもありません!」
 ルイズが慌てて首を振る。
「いえ、むしろ譲っていただくべきなのです。始祖の祈祷書は虚無を導くためのもの。王家にとってはそれこそが、まさに望むべき
ことなのですから。少なくとも……」
 チラッとデルフリンガーへ視線を向ける。
「その剣を持つよりは、始祖の祈祷書のほうがよほど貢献できるはず。違いますかな?」
 そしてデルフリンガーをひょいと持ち上げた。
「この剣は私が預かっておきましょう。バビル2世さまへお渡ししておきます。」
 ひぃ、とデルフが小さく叫び声をあげた。
「そうそう。そのビッグ・ファイアのことなんだけど。どこ探しても見つからないのよね…。」
「バビル2世様なら、コルベール様の研究室にいらっしゃるはずです。」
 あ、と口を掌で押さえるルイズ。
「……あそこを覗くのを忘れていたわ。臭いのよね、なんだか…」
 眉をひそめるルイズ。研究室に篭る異様な空気を思い出し、辟易しているのだろう。
 「ま、いいわ。ちょっと覗いてくるわ。」と駆け出していくルイズ。その後姿へ孔明は手を振る。
 姿が消えると、デルフがこわごわ声を上げた。
「……おい、コウメイ/何考えてるんだ、オメー/あの娘を虚無使いにしてどうするつもりなんだ?/」
「言わずともわかるのではないですか?」
 にぃ、と孔明が先ほどとは打って変わって、冷酷な笑みを浮かべる。聞くんじゃなかったというように、デルフが縮こまる。
「ったく/なんでこんなやつが4人目の使い魔なんだ/ブリミルのヤローももうちょっと考えて召喚しろっての/」
「おや、どういう意味ですかな?」
「どういう意味って、そのままの意味じゃねーか/おまえは4人目だろ、4人目!/」
 バカにするのかと顔を真っ赤にして怒るデルフ。いや、顔なんてないけど。
「おやおや。何か勘違いをなさってはいませんかな。」
 ずいっとデルフに顔を寄せる孔明。人間で言うなら息が当たる距離だろう。
「わたしは、4人目の使い魔などではございませぬぞ。」
「……はぁ?/」
「これまでに、私が一度でも『4人目の使い魔だ』と申し上げたことがございましたかな?」
「な……/そ、それはだな……/」
 デルフはバビル2世の手元に渡って以来の全ての記憶の糸を手繰り寄せる。過去の記憶はおぼろげになっているが、最近の記憶は
鮮明に残っている。徹底的に洗いなおす。検索する。捜し求める。だが……。
「……言って、ねぇ/」
「左様。私は使い魔だった、とは言いましたが4人目とは言っておりませぬ。そもそも、バビル2世のためにだけ働くコンピューターが、
なぜ赤の他人に協力するなどと思うのですかな?」
 デルフはうなり声一つ上げずにそれを聞いている。人の背丈ほどもある刀身が、縮こまって小さく見る。
「お忘れですかな。虚無の魔法には…」
「……記憶を自由にできる魔法がある/」
「その通り。デルフ様、あなたには考えがあって、4人目の記憶を曖昧にさせていただいています。あなたに植え付けられた恐怖も、
記憶を操作してのもの……。かもしれませんし、そうでないかもしれません。」
 鞘に収まっているくせにずっこけるデルフ。というか、お前は剣だろうが。
「じゃ、じゃあよ/オメーは何者なんだ?/胸にルーンがあったじゃねーか!」
「あのようなもの、いくらでも偽造できるではありませぬか。あれが4人目のルーンの印だなどという証拠はないのですから。」
「じゃあ、オメーは誰なんだ!?話が急展開過ぎてわけわかんねーぞ!/」
「私ですかな?わたしは孔明。機体識別コードK0:Me1。バビルの塔の端末に過ぎませぬ。」
 剣相手に古式正しい作法にのっとったお辞儀をする孔明。その姿にデルフリンガーは言いようのない不安を感じる。
「……オレに、それを今言うのは、何を企んでるんだ、孔明……/」
 剣であるために逃げ出すこともできず、絶望に打ち震えるデルフリンガー。
「企むだなど、とんでもない。私はただ、デルフ様に頼みごとが一つあるだけなのです。そう、」
 デルフリンガーの鯉口を切り、鞘から引き抜いた。
「あなたの最初の主を見つけ出し、世界の姿を戻すために協力して欲しいだけなのです!これ全て、バビル2世のためなり!」
 孔明の唇の端が、大きく吊りあがった。

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