あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

滅殺の使い魔-10


その頃、ウェストウッド。

小屋の中で、テファとルガールが顔を見合わせていた。
ルガールの手には、手紙が握られていた。
ルガールが、困ったように言う。

「ふむ……いや、如何すれば良いものか……」
「ええ、うん……、だ、大丈夫だよ、ルガールさん! こんなの、姉さんの冗談に決まって……」
「いや、まさか『ルガールに会ってみたいから、トリステインの此処に来て欲しい』とはな」

ルガールが地図のマークが付いた場所を指差す。

「『小屋があるからわかりやすい』か……」

ルガールは、テファに微笑みかけた。

「いいさ。 行ってみるよ」
「えっ!?」

テファはあたふたとし始め、ルガールを止めようとした。

「む、無理ですよ! 此処は浮遊大陸ですよ? 船だって乗ることは出来ないし……」

ルガールは少しも動揺せず、表情も崩さない。

「確か今日は、アルビオンがハルケギニアに接近している筈だったな」
「それでも、一人じゃどうしようもない距離ですよ……。 落ちたら死んじゃいます……」

不安な表情を浮かべるテファに、ルガールは更に不気味な笑みを返した。
ルガールが、小屋の扉に向かう。

「少し、間に受けすぎたかな。 そう、本気な訳が無いな。 ……ちょっと散歩してくるよ。 なに、朝には戻るさ」
「は、はい。 じゃあ」

ルガールは、テファに見送られ、小屋を後にする。

「マチルダ、か……。 信用ならんのだろう? 私のことが。 ……良かろう。 思い出させて貰うよ。 私の大切な物を。 君のその命と引き換えに、な」

◆◇◆◇



ルイズ達が買い物から帰って来てから数十分後。
ルイズの部屋では、ちょっとした騒動が起きていた。
ルイズとキュルケが睨み合う。 タバサは椅子に座り、本に没頭している。
ルイズが、憤怒の形相でキュルケを怒鳴りつける。

「ちょっとキュルケ! あんたついて来てたんだからわかるでしょ!」

キュルケは両手を目の前でバタバタと激しく交差させた。

「ちょ、いや、待ちなさいよ! あたしは知らないわよ!」

何故、こんなことになっているかと言うと……。

「じゃあなんだって言うのよ……。 ちょっと目を離した隙に、豪鬼が居なくなるなんて……」

そう、豪鬼が消えていたのだ。
買い物から帰り、ルイズが少し部屋を空け、やがて部屋に戻った時に、既に。
今までなんだかんだで部屋の前に居た豪鬼が突然居なくなったことに、ルイズの頭は混乱していた。

「少しは落ち着きなさいよ! 大体、ちょっと散歩に行っただけとか、用を足しに行ったとか、それくらいの時間しか経ってないじゃないの!」
「だけどっ……」

確かに、豪鬼がいなくなってからまだ十分も経っていない。
だが、その僅かな時間さえ、ルイズには不安に感じられた。
薄々感じていたからだ。
豪鬼は、自分達とは住む世界が違う、違いすぎるのだと。
形こそヒトではあるけれど、その中身はヒトでは無いような。
幻獣や虫ならば、そんな事にならなかっただろう。

だが、違うのだ。 豪鬼なのだ。 幻獣でも、恐らくはヒトですらない、『豪鬼』なのだ。
いや、豪鬼がヒトでない、人間でない筈は無いのだが、ルイズはそれをわかっていながらも、心のどこかで、豪鬼を人外にカテゴライズしていたのだ。

自分の中でのその気持ちに、ルイズはどこか戸惑っていた。





中庭。

豪鬼は、地面にデルフを突き刺し、その傍らで一人瞑想に耽っていた。
いつも通りの稽古もせず、まだ一度もデルフを振ってはいない。
豪鬼が、こんなにも瞑想に使う時間が多くしたのには、大きな理由があった。

ひたすら無心に、自らの力を感じる。
自らの奥底にある力。
豪鬼は今まで、その力を引き出して戦ってきた。
その名は『殺意の波動』。
豪鬼はその力を操り、幾多の格闘家を屠ってきた。

だが、今は違う。
それとは違う『異物』が、その隣に鎮座している。 

豪鬼は以前、ある男と『死合い』、勝利した。
その男は、豪鬼とは異なる力を使って豪鬼に対抗し、豪鬼と互角に戦い、存分に追い詰めた。
激闘を制したのは豪鬼だったが、その男は豪鬼に確実に異変を残した。
あろうことか、その男は自らの邪悪な力を豪鬼に送り込んだのだ。


――その力の名は『暗黒パワー』……即ち『オロチの力』――

異なる二つの力は交わりあう事無く、豪鬼の正気を奪った。
あの時豪鬼は、今までの求道者としての『豪鬼』を奪い去られ、只の『悪鬼』と化したのだ。

豪鬼程の強者をも狂わせてしまう力。

その力が、こちらの世界に来てからと言うもの、活性化してきていた。
流石に一度経験したからか、何とかその力に支配されてはいないが、これではいつ、豪鬼を飲み込んでもおかしくは無い。

その懸念こそが、今、豪鬼をここに留まらせている理由。

そして、その更に奥深くに意識を集中させる。

すると、他の二つの力とは本質の違う、小さく、弱々しい力……こちらの世界に飛ばされた際に生まれた力が見えてくる。

この力は一体何なのか――

誰かに植え付けられた記憶は無い。
自分で手に入れた力でも無い。
『殺意の波動』とも『オロチの力』とも違う。
ただ、大きな力ではない。 ないのだが――



豪鬼は立ち上がり、地面に突き刺してあったデルフを掴む。

その瞬間、豪鬼に異変が起きる。

謎の『力』が、急激に膨れ上がったのだ。

街の武器店で初めて武器を手にした時、感じた異変と同じ現象。

膨れ上がった『力』は、それでも『殺意の波動』にも、『オロチの力』にも及ぶものではない。
しかし、この程度の力であっても、今の豪鬼にとっては救世主のようなものなのだ。
いつ暴走してもおかしくはない『オロチの力』。
その力は、このままでは『殺意の波動』すらも飲み込んでしまうだろう。
豪鬼はそれに対し、一度、死合いを求め彷徨う事をやめ、ひたすら修行することを選んだ。
そうすることで、『オロチの力』を克服し、コントロールしようとしたのだ。
だが、それでは明らかに時間が足りない。
このままでは、暴走も時間の問題か。

半ば諦めかけていたその時、その『力』は自己主張を始めた。
豪鬼が感じるに、この『力』は『殺意の波動』とは本質からして違うし、『オロチの力』とも決して同質のものではない。
ならば、この『力』を取り敢えず利用する、コントロールすることにより、『オロチの力』に対抗し、やがて全ての力を使いこなす。
幸い、この『力』は、豪鬼を支配しようとはしていないし、そこまで急激な変化を豪鬼にもたらすような物ではない。
せいぜい少し鍛えた程度の人間千人程度の力だろう。


「……この程度の力、扱うに容易いわ」

豪鬼はそう呟くと、剣の素振りを始めた。



「なあ相棒、おめえさんはなんで俺を使おうと思ったんだい?」

ふと、デルフが豪鬼に問いかける。
豪鬼はそれを完全に無視し、ひたすらにデルフを振り続けている。
デルフはそれを大して気にする事無く、喋り続けた。

「ま、答えてくれるたぁ初めっから思っていなかったけどよ……。 まあいいや、本題に入るぜ。 相棒は聞いてるだけで良い」

相変わらず豪鬼は答えない。
ただ無心に、豪鬼は『力』の本質を見極めようと、デルフを振り続ける。

「俺が思うに、相棒、あんたは人を殺し慣れてるね。 俺も昔の事はあんまし覚えちゃいねーが、これだけは分かる。 あんたは修羅の部類の人間だ」
豪鬼は一向に話を聞こうとはしていない。

「そんなあんたが、今は何の因果か俺を使ってる。 あんたにゃそんなの必要無いのに、だ。 ……これがどういう事だかわかるか?」

豪鬼の眉がぴく、と動いた。
実際それが何に対する反応かは分からないが。
デルフはいっそう声色を真面目にし、豪鬼に語りかけた。

「単刀直入に言うぜ。 ……相棒、あんた……」

デルフが一番重要な事を言おうとした瞬間、その声は甲高い女声に遮られた。

「ゴウキっ!」

その声の主は、息を切らせ、肩で呼吸をするルイズであった。
ルイズは、息を整えようとすることも無く、豪鬼の元へ向かう。
豪鬼はそれに構う事無く、まだデルフを振り続けていた。

「ご、ゴウキ……! かっ……てに、いなく、ならないで、よ!」

何故か涙目になり、声も途切れ途切れのルイズは、豪鬼に話しかける。
豪鬼は、そんなルイズに対しても微塵も反応を見せない。
ただ無心に、デルフを振っているだけだ。

「ち、ちょっと! 主人を、無視、する、なんて、この……」

依然ルイズが眼中に入っていない豪鬼のもとに、更なる客人が現れた。
赤髪の女、キュルケと、小さなタバサだった。
キュルケは、未だぜーぜーと息を切らしているルイズを尻目に、豪鬼に話しかける。

「あら、ミスタ・ゴウキ。 お一人で稽古だなんて、精が出ますわね」

豪鬼は全く相手にしていない。
ルイズは、そんな豪鬼に溜息を一つつくと、近くのベンチへ向かう。

「ちょっと、ルイズ? いいの? あんなにヒス起こしてまで探したのに」

キュルケがルイズへ疑問をぶつける。
ルイズは、諦めたように笑いながら、答えた。
「いいわよ。 どうせ、しばらくそうやっているんだろうし、それに、使い魔が強くなるのをどうして止めなくちゃいけないの?」

ルイズがベンチに腰掛ける。 見ると、タバサも同じベンチに座っていた。 ただ、いつもとは違い、その目は本ではなく豪鬼へと向いていたが。





フーケは、中庭の様子を見ながら、舌打ちをした。

「……くっそ、あの化け物がいやがるよ……!」

先程宝物庫を下見した時、僅かな亀裂を見つけていたフーケは、今日中に行動を開始する予定であった。

「ふん……! まあいいさ。 ゴーレムで一捻りにしてやればいい」

フーケはニヤリと笑うと、詠唱を始める。
長い詠唱を終えると、その効果によって巨大なゴーレムが生成された。
フーケは更に笑みを深くしながら、ゴーレムの肩に飛び乗った。





「……は?」

キュルケが呆けたような声を上げる。
その理由は、たった今、巨大なゴーレムが背後に突然現れたからだ。
横を見る。
タバサはもう居ない。 先にあの風竜を呼びに行ったのだろう。
ルイズは……。

居ない。 まさか。

「っきゃああああああああ!」

キュルケは叫び声を上げながら逃げて行った。

ルイズはというと、既にある程度ゴーレムから離れた所に退避していた。
「なんなのよ一体っ!」

ゴーレムを見たときは驚いたが、何故かそこまで混乱することは無かった。
ただ、今そんなことを考えている暇はルイズには無かった。
必死で豪鬼を探す。 そして目に飛び込んできた風景に、我が目を疑う。
なんと豪鬼は、ゴーレムにさえ全く動じず、素振りを続けていのだ。

「ゴウキー! 後ろ後ろー!」

声を張り上げる。 聞こえているのか分からない。





フーケが、ゴーレムの腕を宝物庫に振り下ろさせる。
元々亀裂が入っていた壁はいとも簡単に崩れ去り、大きな穴を作った。
フーケがその中に入り込む。 狙いは一つ、『悪夢の書』。
辺りを見渡す。
すると、様々な宝物の中に、一際大事そうに置いてある巻物を発見した。
巻物には古びた紙切れが一枚掛けられていて、それに『悪夢の書。持ち出し不可』と書いてある。
フーケは笑みをこぼしながら書を手に取り、急いでゴーレムの肩へと戻った。
仕上げに壁に文字を刻む。
『悪夢の書、確かに領収いたしました。 土くれのフーケ』
フーケは邪悪な笑みを浮かべた。
――注意書に書かれた『Nightmare』の文字に、気付くことも無く。


ゴーレムが歩き出す。 歩くとは言っても、その歩幅のため、ある程度の速度がある。

ゴーレムの肩から警戒をし続ける。


不意に、ゴーレムの歩みが止まる。

「くっ……ここで出てきたかい…!」

ゴーレムの前方には、デルフを持った豪鬼が立っていた。
「まあいいさ。 そこからどかなけりゃ、ぺしゃんこにしてやるだけだよ」

ゴーレムが再び歩き出す。
どんどん豪鬼に近づいていき、遂にその足が豪鬼の目の前についた瞬間。

豪鬼が飛んだ。

「な、なにを……」

フーケが驚きの声を上げる。 一瞬の出来事に、ゴーレムは棒立ちになっていた。

豪鬼がデルフを振り上げ、叫び声と共に振り下ろす。

「ぬぅおりゃあ!」




豪鬼が着地すると、ゴーレムは、頭部から一刀両断、真っ二つになり、崩れ去った。

崩れ去るゴーレムから間一髪着地したフーケは、必死の形相で辺りを見回す。
しかし、豪鬼は既にそこから消え去っていた。


「くそっ!」

フーケは怒りと苛立ちに顔を歪めながらも、その場から走り去った。


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