あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔(るい)は友を呼ぶ

 この宇宙の全てを動かしているような、そんな大いなる意志はあるのだろうかと、私、ルイズは考えることがある。そもそも宇宙が一つだなんて、誰が決めたの?ひょっとしたら、無数の宇宙が泡のように生じ、滅びているのではないだろうか。
 じゃあ、その無数の宇宙が浮かんでいる永遠の絶対時間を支配できたら、凡そ森羅万象を支配できるのかもしれない。
 さらにとりとめもない思いは続く。この世界の最初には何があったのだろうか。光だろうか?闇だろうか?「はじめに闇ありき」ふとそんな言葉が浮かぶ。
 ブリミルの教えが唯一絶対だなんて、本当なのかと、不遜で冒涜的なことを考える。いや、唯一絶対の真理などあるのかしら?全ては相対的で、混沌の渦の中で争っているだけじゃないの?それとも、それすら何か大いなるものの予定通りなの?
 あの使い魔が現れてから、私は変わり始めている。自分で認めたくはないが、ちょっと(ちょっとだけよ?)怒りっぽいということに変わりはない。キュルケと口喧嘩するのは日常茶飯事で、マルコメ他の冷やかしに青筋を立てるのもこれまた日課のようなものだ。
 腹立たしいことに、魔法も失敗し続けている。
 でも、寝る前に少し考えるようになった。無駄にスケールの大きなことを。
 たとえば、世界がどうなっているのかなんて、ついこの前まで考えたこともなかった。
 今の私には、このハルケギニア全体までもが変わろうと、脈打っているように感じる。アルビオンではレコンキスタなる輩が反乱を起こし、もはや王家は風前の灯。他にも、暴動や国同士の小競り合いがあちこちで起こっているという噂話を聞く。
 噂話?そう。はっきりとした声明などが出されたわけじゃない。表向きはいつもどおり、でも暗がりに入ると、貴族も、平民も、誰もが声を潜めてささやき合う。噂は噂を呼び、お話と現実の区別もあやふやになっている。そのうち、噂が現実にならないとも限らない。
 この世界が、何かを孕みつつあるようにさえ感じられるのだ。
 眩暈がする。もしかすると、本当の危機が影で動いているのではないか。
 もし、普通の少年でも使い魔として呼び出していたら?私は相変わらずヒステリックに突っ走っていたのだろうか?生意気で言うことを聞かない駄犬とののしって鞭打つとか?そういえば、あの男を鞭打つとか、考えられないし。
 もしこうなったら・・・・・・?あの時ああだったなら・・・・・・?
 可能性が無数の世界を分岐させていくような気がする。
 全ては、あの、金髪の男が現れてからだと思う。悪魔が来たりて笛を吹き始めた、なんて。でも、その笛の音が人間に聞こえるとは限らない。何しろ、今まで知られていない怪物たちが現れたという噂もあるのだから。
 本当に、何が”きっかけ”になるかなんて分かったもんじゃない。

 それにしても、さっきからハエの羽音が耳障りね。ん?こんな時間にノック?誰かしら・・・・・・


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 少なくともあの日、あの使い魔召喚の儀式が執り行われた日ほど、私が自分の全てを賭けて何かを望んだときはない。
 メイジの実力を見るなら使い魔を見よ。この言葉はハルケギニアの貴族たちにとって疑う者のない大前提である。ここで呼び出されたものはメイジの実力を示す看板となるのだから、進級を予定する生徒たちにとって最も重要な日となることは言うまでもない。
 強ければ強いほど良い。賢ければ賢いほど良い。そうでなくても、何か呼び出せれば、ゼロではない。
 だから、なんでも良いから呼び出したいと、強く願った。どんな生き物でもいいの、と。この際、大嫌いなカエルでもいい!爪のあるものでも、翼のあるものでも、鱗のあるものでもいい!

 ヘビでもいいから!


「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 」

 何度となく繰り返される爆発。私がいる周りだけ、地面が浅くえぐられていた。巻き起こる砂埃が肌に髪にまとわり付く。服の中までザラザラしていた。でも、それがどうした。何度失敗しても、私は呪文を唱えるのを止めなかった。 

「私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

 いや、竜だのグリフォンだのと贅沢を言わなくても、何か出てきてくれればそれでよかった。それだけで、私はメイジとしての自負を満足させることが出来る。何かが呼び出せれば。自分がゼロでないとさえ証明できれば。

「応えなさい!」

 それは呪文だったのだろうか。もはや型に沿った召喚の言葉ではなかったと思う。青い髪の少女が風竜を呼び出したことで、一同が大いに盛り上がっていたのは何時間前のことだっただろうか。
「応えなさい!」
 ゼロのルイズ、と冷やかす声が何度となく浴びせられていた。足元から這い寄るような不安を無理やり押し殺して、詠唱、爆発を繰り返した。私を見る視線には、もはや嘲りの情さえ含まれてはいなかった。
 誰が石を石と、樹を樹と呼ぶことにいちいち感情を込めるだろうか?自分がゼロであることを証明し続けている者に、いちいちお前はゼロだと感情を込めて告げる必要があるだろうか?
「応えなさい!」
 私に注がれる視線はどこまでも冷たい。眼。眼。眼。私は獣の眼、竜の眼に囲まれている。
 応えるもののない呼びかけを繰り返しては地面に穴を掘り続ける愚かな少女よ。王国でも一、二を争う名家に生まれながら、魔法を使えない無能な娘よ。そろそろ現実を知るがいい。半日爆発を繰り返し、無意味な徒労を続けるゼロのルイズ。
 お前はどこまでいってもゼロなのだ。
「・・・・・・ミス・ヴァリエール、残念ですが・・・・・・続きはまた、明日にしましょう。」
 ついにそう告げたのは、担当教師のコルベールだった。明日?冗談じゃない。それは事実上、留年するということ、引いては自分がゼロであるということを自ら認めることに等しいのだ。絶対に受け入れられなかった。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 」
 私は無視した。そして再びの爆発。
「ミス・ヴァリエール!」
 今度も無視した。だが、これ以上失敗を続ければ、力ずくで止めさせられることにもなりかねない。
 私は、これが最後という覚悟を込め、呪文を唱えた。

「永遠なる始祖ブリミルの名において、ガンダールブ、ヴィンダールヴ、ミョズニトニルン、聖なる位階の名において、さらに口にできぬものの名において!オ・チオス、イクトロス、アタナトスにおいて、秘密の名アグラの名において、アーメン!」

 あとで聞いた話だと、私はそんな呪文を唱えていたという。髪を振り乱し、眼を血走らせ、突きつけるように杖を向け、狂ったように叫んでいたそうだ。アタナトス?アーメン?どういう意味だったのだろう?
 叫びつつ、私は始祖も、魔法学院も、この世界も、何もかもを呪うように叫んだ。私にゼロを突きつけてくる者一切を、今私に向けられる残酷な罵倒に倍する悪意と敵意、いやそれ以上の想いを以って。自分自身の全て、魂を込めて。

 世界一切に反逆するような、傲慢なる意志を込めて、最後の一言を絶叫した。

「万人の父の名の下に行う、わが要求に応えよ!」


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 私の使い魔は、一言で言えばよく分からない男だ。ぱっと見、それほどおかしな相手ではない。いや、むしろ上等と言って良いだろう。礼儀、身なり、振る舞い、全てに気品がある。温厚で、知的で、いくらかの皮肉と微笑を絶やさない。
半端な貴族よりはるかに貴族的であり、一方で、平民やメイジを差別することもない。何よりその・・・・・・ハンサムだし。
 だが、時にとてつもなく偉大な存在に感じられた。とてつもなく邪悪な化け物にも思えた。これ以上賢い者はいないと思われるほど賢く感じられたし、これほど愚かな行いをした者はいないという気がすることもあった。
 無限のプラスと無限のマイナスが打ち消しあって、辛うじて普通の人間に見えている。そんな男だ。
 良く言えば優雅、悪く言えば暇人。
 ああ、そうそう、弱いと感じることだけはない。
 しばしば、彼は姿を消した。そんなときは、どんなに探しても、彼を見たものはいなかった。
 気がついたら傍にいて、驚かされるなんていつものことだ。いるはずがない場所にいることなどしょっちゅうだった。
 そういえば、ヴェールを被った喪服の女性を学園内で見た、という噂を聞くようになったのは、彼を呼んだあとからだったか。その女性は、金髪の男の子を連れていることもある。噂にはなっているが、それ以上誰も気にしていないのが、不思議といえば不思議な話だ。

 初めて使い魔をつれて教室に入った日。授業初日ということもあり、皆が自分の使い魔を連れていて、騒々しいことこの上なかった。だが、最後に私が彼と部屋に入った瞬間、別に示し合わせていたわけでもないのに、誰もが沈黙した。
 私のことなど、誰も気にしていなかったというのに。人ならぬ、使い魔たちさえ。

 ギーシュ、あの気障な優男が、私の使い魔に決闘を申し込んだことがあった。二股をかけていたことがばれたらしい。私は、そんなしょうもないことで使い魔の身を危険にさらしたくはなかったのだが、彼はあっさりと受け入れた。
 決闘はヴェストリの広場で行われた。仰々しく口上をまくしたてるギーシュに対して、彼は微笑を崩すことがなかった。
”王の中の王”を思わせるような、けれど何の力みもない余裕を見せ付ける使い魔にぶち切れて、彼は魔法を使おうとした。ご自慢の青銅人形ワルキューレたちを呼び出し、袋叩きにしようとした。
 私は、残酷な私刑が始まる予感に、メイドの少女が手で顔を覆ったのを見た。
 何も、起きなかった。
 どんなに杖を振り、花びらを落としても、何も起きなかった。
 ギーシュは慌て、焦り、やがて呆然と立ちすくんだ。
 僕は混乱している。頭の上にそんな看板が立っているような間抜けさ。
 使い魔はやれやれとばかり肩をすくめ、ゆうゆうと歩み寄り、空ろな表情のギーシュにデコピン一発。どんな力が込められていたのかは知らないが、それだけでギーシュは失神し、使い魔の勝利となった。
 最初は下卑た盛り上がりを見せていた野次馬たちが、ぽかんと見ているだけだったのは無理もない。
 よく分からないのはこの後のことだ。公衆の面前で平民に貴族のプライドを傷つけられたギーシュは、目を覚ました後、当然ながら激怒した。逆恨みもいいところなのだが、気持ちが理解できないとは言わない。共感はしないけど。
 詰め寄る彼に対して、使い魔は穏やかな口調で語りかけ、少し話がしたいと、二人で誰もいない部屋に入った。私やキュルケ、タバサはその部屋の前にいたのだが、何も物音がしなかったし、中で何かあったとは思えない。
 まあ、部屋に入る使い魔の目に”悪しき輝き”を見たような気はしないでもない。
 だが、再び二人で出てきたとき、ギーシュは使い魔と、そして私に誠意を込めて謝った。正直、さっきまで荒れ狂っていたのに、何があったのかと驚いてしまった。
 それどころか、ギーシュは彼を「閣下」と呼び始めた。今では、何人かの生徒や教師もそう呼んでいる。当の使い魔はといえば、別に喜ぶでもなく、嫌がるでもなく、面白そうに微笑を浮かべているだけだ。
 モンモランシーによれば、その後、ギーシュの性格にいくらかの変化があったらしい。賢くなったように感じられる一方、何か外してはならない枷が外れたような気もするという。さしあたり、何かしでかしたりしていないのは、幸いといっていいのだろうか。


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 昼過ぎから始められた召喚の儀は、本来ならもっと早くに終わるはずだった。日が傾き始めても続けられたのは、つまるところ私が失敗し続けていたからに他ならない。既に夕方を過ぎようとしていたのは間違いないから、誰も気づかなかったのかもしれない。
 あの季節、あの時刻はこれほど暗かっただろうか?
 冬至の真夜中でさえ、闇はあれほど重く、ひたひたと迫ってくるものだろうか?
 今となっては、そんなことを考えてもしょうがない。
 はっきりしていることは唯一つ。
 ひときわ大きな爆発が光をもたらした後、砂埃の中に何かがいるのを感じた。
 そのとき私は、目が眩んで倒れそうになっていた。爆発のショックか、疲労が限界に達していたのかは分からない。
 だから、その何かが空に、とてつもなく巨大な影、窮極の凶々しさと神々しさを兼ね備えた影を映したような気がしたのは、ただの幻覚だったのだろう。あとで聞いても、誰もそんなものを見ていなかったのだから。
 巨大な六枚の翼を持つ何かなど。
 そして、ふらつきながらも何とか立ち直った私は、ひどく涼やかで優しげな声を聞いた。
「やあ、こんにちは」
 目の前に、一人の若い男が立っていた。


 まず何よりも、オールバックにした長い金髪が目を引いた。本物の金よりも金らしく輝いていた。すらりと背が高く、貴族のものとは違うが、ひと目で高級なものと分かるような、仕立ての良い服を着ていた。
「こんな世界だったとはね。しかも・・・・・・フフ。」
 軽く驚いていたように見えたのは一瞬のことで、面白そうに独り言を呟いた。その微笑みに、私は否応無しに惹きつけられた。一方、完全に魅了されることもなかった。キュルケをはじめ、ずいぶんのぼせている女の子たちもいるけど。
 多分、心の底の底で途轍もない危機感を感じたからだろう。それは、呼び出したモノとメイジを結び付けている因果の糸だけを伝ってきたに違いない。誰一人として、この男にそんな不安を感じた者が(少なくともこのときは)いなかったのだから。
「ゼロのルイズが平民を呼び出したぞ!」
「どっかから連れてきたんじゃねーの?」
「あ・・・・・・でもカッコいいかも。いや、すっごいイイ男じゃない!?」
 ザワザワと騒ぎ立てる生徒たちを他所に、ミスタ・コルベールがやってきた。
「驚きましたなミス・ヴァリエール・・・・・・まさか人間を呼び出すとは。」
 私が呼び出したの?
「そうですよ!サモン・サーヴァント、成功ですよ!」
 なんだか頭がくらくらする。焦点が定まっていない私に代わって、先生が事情を説明していた。

「ふむ、使い魔ですか・・・・・・いいでしょう。」
「え、い、いや、そんなにあっさりと・・・・・・本当によろしいのですかな?」
「ええ。帰る手段がないのでしょう?それに、これはまた運命でもあり、つまりは・・・”きっかけ”ですよ。・・・・・・魔法世界とは、大いなる意志も、なかなか面白い玩具を用意していたものだ。」
「は?」
「いえ、何でもありませんよ。それで、使い魔になるには、どうすれば?」
 そうして、半ば朦朧とした意識の中、私は彼とコントラクト・サーヴァントのキスをした。初めてのキスだったのだが、不思議と気にならなかった。自分が引き寄せられているようにさえ感じていた。
 契約の印は、彼の右手の甲に現れた。どのルーンとも異なるそれを見て、コルベール先生がいたく興奮していた。
 余談ながら、そのルーンは確かに未知のものだった。

 後日判明したところによると、右手のルーンは始祖の使い魔、ヴィンダールヴのものだという。伝説に言う、あらゆる幻獣を操る使い魔。獣の王。地獄の四王子。恐怖の三首領。11番目のクリフォト・・・・・・何それ?
 本人が言うには、「なるほど、私にはそういう側面もあるのだろうね。」とのこと。

 時々、考えるのだ。考えてしまうのだ。
 そもそも、私があの男を呼んだのだろうか?
 あの男が来るために、私が使われたのではないだろうか?と。
 ともあれ、私は、彼と契約したのだ。他ならぬ、あの金髪の男と。


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 ついこの前、学院の秘宝を、怪盗フーケが盗み出したという事件が起きた。”破戒の篭手”と呼ばれていたそれを取り戻すため、捜索隊が結成された。教師たちがフーケを恐れたので、立候補したのは私たち、つまり私とキュルケ、タバサ、そして使い魔なのだけど。
 ミス・ロングビルの導きにより、とある小屋の中で破戒の篭手はあっさり見つかった。使い魔は、この”はんどへるどこんぴゅーた”は、この時空には必要のないものだと言った。後で、本来の持ち主の下に返しておきたいと。
 はんどへるど何ちゃら、というのが何なのかは分からない。問い詰めても、微笑を浮かべながらはぐらかされるだけだし。抽象的で曖昧な言葉で煙に巻かれるのもいつものことだ。
 で、そこをゴーレムに襲われた。30メイルにもならんというゴーレムだから、当然危機も危機。でも、私は引き下がりたくなかった。絶対に譲らないと、貴族の誇りにかけて立ち向かおうとした。
 おかげで踏み潰されそうになったのだが、次の瞬間には、数十メイル離れたところで使い魔に抱きかかえられていた。目をつぶってしまったので何が起こったのかは分からない。いろんな意味で自分がドキドキしていることだけは分かったけど。
 タバサの竜、シルフィードに乗って空から見ていたキュルケたちにも、そのとき何が起こったのか分からなかったらしい。
 その後、ゴーレムは凍りついたように動きを止めた。これまた何があったのかわからないが、超高温の炎で焼かれて消し炭にでもなったかのように、生気が消え、見た目は変わらないが、スカスカになった。
 そして、使い魔のデコピンをきっかけに崩れ落ちた。
 実はフーケだったミス・ロングビルもあっさり取り押さえられた。彼女も何だかんだの挙句、デコピンで失神した。クリティカルですね分かります。
 破戒の篭手はオールド・オスマンに返された。後のことは、知らされていない。行方不明になったなんて噂もあるけど、まあ、いつものことよね。
 それにしても、デコピン・・・・・・なんという万能攻撃。

 また、これはかなり後に聞いたのだが、タバサと一緒に吸血鬼退治に行ったことがあるらしい。正体を現した吸血鬼は小さな女の子の姿をしていた。だが、いくら可愛らしくても吸血鬼は吸血鬼。先住魔法で二人を殺そうとした。
 何も起きなかった。
 タバサが言うには、というかその吸血鬼の言葉によると、なんでも、精霊たちが恐れて言うことを聞かなかったそうだ。吸血鬼の幼女もやがて異常に怯え始めた。速やかに滅ぼそうとしたのだが、使い魔に止められた。
 この娘については、私に任せてほしいと。そんなこと、普通なら聞くはずもないのに、なぜか彼女はうなずいていたという。例のあの口調のせいだろう。言いたいことはハッキリ言いなさいよね!こう、具体的に!
 その後、その吸血鬼がどうなったか定かではないが、少なくとも被害は完全に治まったらしい。

 さらにさらに、シエスタ、例のメイドの少女によると、最近、マントと帽子を身につけた黒尽くめの若者をたまに見るという。モミアゲが特徴的な美形だそうだ。視界の端に捉える程度なので、見間違いかもしれないですねと笑う。
 黒猫を連れているというから、メイジなのだろう。でも、この学院にそんなやついたっけ?


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 気が付いたら、私は自分のベッドの上で横になっており、傍の椅子には彼が座っていた。どうやってここまで来たのだろう?誰かに聞いたのだろうか?
「・・・・・・使い魔の仕事は以上よ。でもあなた、感覚も繋がってないし、秘薬の知識もないわね。」
「そうだね。まあ、この世界の知識はおいおい身に付くだろうな。」
「大丈夫なの?」
「知識を伝えたりするのは得意なのでね。」
「?あと、私の護衛だけど・・・あなた、普通の平民みたいだし、無理・・・ね?」
 なんで疑問形にしたのだろう?
「殴り合いはしたくないな・・・まあ、デコピンくらいで済むような相手ばかりだといいんだけどね。」
「んなわけないでしょ・・・まあいいわ。それより、本当にいいの?メイジじゃないみたいだけど・・・人間が呼び出されるなんて初めてのことだから。あなた、どこから来たの?」
「遠いところ、さ。とても、遠い。敢えて言うなら・・・・・・ふむ、コキュートス?」
「何よそれ。」
「まあ、気にしないことだ。それに、人に使われるのも初めてではないのだよ。」
「あなた、何者?」
「ただの暇人さ。大丈夫、必要なとき、君のとなりにいることを約束しよう。」
 そう言って、ニヤリと笑う。私は、まあいいわ、と思いながら再びベッドに身を横たえた。
 今にして考えれば、男を自分の部屋に入れていることを恥じらいもしなかったし、ご主人様に対してどことなく偉そうな口調を咎めようという気にもならなかったのが不思議だ。
 なんで人間なんか・・・!とさえ思わなかったなんて。後で生徒たちにからかわれて、初めて人間なんだ、と思い直したくらいだ・・・・・・あれ、人間って、なに?え?・・・・・・・悪魔?

「今日はまだ、寝具の用意が出来てないの・・・そこの椅子か、床で寝てもらうしかないんだけど。毛布はあるから。」
「別に構わないよ。」
 眠い。どうしようもなく眠い。だが、いちばん大事なことをまだ聞いていなかった。
「そういえば・・・あなた、名前は?」
「名前かい、私は・・・」
 そうして、彼は名乗ったのだ。ルイ・サイファーと。




真・女神転生シリーズから、ルイ・サイファーを召喚。



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