あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-31


「不確かな"兵器"か・・・・・・」
ルイズは一人ごちた。確かにその通りだ。強力ではあるが不安定。
虚無の系統が使えると言っても、自分が使用可能な魔法は一つだけ。
その唯一使える"エクスプロージョン"は、実際に放ってみない事にはその威力を計り知ることはできない。
己に課せられた陽動の任務の為にも、明日までに新しい呪文を覚えないとまずい。

 ルイズはパラパラと始祖の祈祷書を眺める。
デルフリンガー曰く、必要な時がくれば読めるらしいが・・・・・・。
「何も書いてないじゃない」

 白紙だらけの祈祷書に、ルイズは唇を尖らせる。
どうにも行き詰まり、書を閉じてアーカードの方へと顔を向ける。
「・・・・・・デルフ」
すぐに視線に気付いたアーカードは、ルイズの表情から察してデルフリンガーを呼ぶ。

「ああ?なんだ?」
「・・・・・・敵軍の陽動に使える虚無の魔法、何か覚えてない?」
「覚えてねえなあ」


 ルイズは嘆息をつく。
「はぁ~・・・・・・少しは覚えてなさいよ」
「んなこと言われてもなあ」
ルイズがうんうんと悩んでいると、アーカードが話し出す。

「この世の全ての物質は小さな粒により為り、四系統はそれに干渉・影響・変化させる呪文。
 そしてこの粒はさらに小さな粒により為り、虚無はそれに干渉・影響・変化させる呪文。・・・・・・だったか」

「うん、そう書いてあるわ」
アーカードは少し考える。これ以上なく単純に、ザックリと分けて考えるなら分子と原子。
「ルイズ、書いてあることを読み上げてもらえるか?」

 そう言われ、ルイズは序文を読み始める。
アーカードはそれを聞きながら、さらに考えた。
原子レベルにまで、干渉し、影響を与え、変化させる。
つまるところ『虚無』は、やろうと思えば大抵の事はできるということ。


「――――――ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。
 以下に我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン(爆発)』」

 ルイズが読み終え、本を閉じる。「終わりよ」と言って、アーカードの言葉を待った。
「まっ・・・・・・今この場で、科学講釈をしてもしょうがないしな。要するに、虚無は凄いということだ」
ルイズは半眼でアーカードを見つめる。なんの答えにもなってない。

「だから結局どうすればいいわけ?」
「他力本願だな、我が主。『虚無』に関しては私もなんとも言えん。唯一知っているデルフもこれだからな」
「覚えてねえものはしょうがねえ」

 ルイズの心中に焦りが積もる。このまま思いつかなかったら、作戦どころではない。
アーカードだって、空に展開した軍の陽動なんてできるわけはないし。
「そうだな・・・・・・。エクスプロージョンが初歩の初歩の初歩ならば、次は初歩の初歩を覚えればどうだ?」

 つまるところ順繰りに覚えていけば、いずれ使える呪文に行き当たるのでは?ということだった。
しかしルイズは困惑する。そんな事を言われても読めないものはしょうがない。

「何度も念じて、集中して読めば見えてくるんじゃないか?実力が伴っているのならば、見えてくるかもしれんぞ」
「むむむ・・・・・・」
腑に落ちない気分でルイズは、三度始祖の祈祷書を開く。
精神を集中させて、穴が開くのではないかと言うほど凝視した。

「ぬぐぐ・・・・・・」
歯をギリギリと鳴らす。始祖の祈祷書を握る手に力が入った。
眉間には皺が寄り、その双眸が細まったり、逆に見開かれたりを繰り返す。


「なぁに、いざとなったら私が濃霧を発生させよう。その上で奇襲をかければ、多少の時間稼ぎくらいにはなるだろう」
「・・・・・・」
アーカードの声は、もうルイズの耳には入っていない。
(いい集中力だな・・・・・・)

 最後のページまでいったら最初に戻って読む、を何度も繰り返す。
(今が"必要な時"なの・・・・・・だから読ませなさい。陽動に必要な呪文を・・・・・・お願いだから!!!)
余計な考えを排除し、頭を空っぽにする。タルブでエクスプロージョンを詠唱した時のように。
読むという一念のみで、ルイズは見つめ続ける。暫らくして、一枚のページが光り出す。

「やたっ・・・・・・やった!!読めた、読めたわ!!」
ルイズは嬉しさから、小さい子供のようにはしゃいだ。
「それはなにより。・・・・・・して?」
「へっ?」
「どんな呪文なんだ?」

 ルイズは「え~と・・・・・・」と言って、読み始めた。
「初歩の初歩。"イリュージョン"。描きたい光景を強く心に思い描くべし。なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すであろう」
「なるほど、幻影を創り出すわけか。おあつらえ向きじゃあないか」
「そんなもんもあったなあ・・・・・・、今思い出したよ」

 グッと拳を握ったルイズは、溢れ出す笑みを抑えることができなかった。




 竜騎士ルネ・フォンクの風竜に乗り、ルイズとアーカードはダータルネスを目指していた。
第二竜騎士中隊が護衛となり、トリステイン・ゲルマニア連合艦隊が、ダータルネスに上陸するよう見せかける。
敵軍を陽動した後、連合軍はロサイスへと上陸し奇襲を加える。それが作戦の大まかな概要である。


 そしてたった今、ルイズとアーカードらは十以上の竜騎士に追われていた。
アルビオンの哨戒に引っ掛かり、敵竜騎士が迎撃の為に出てきたのである。

「さて・・・・・・」
アーカードがゴキゴキと指の関節を鳴らす。
次いで大きく腕を振りかぶると、いつの間にかその手には少女の拳よりも遥かに大きい"黒い球"が握られていた。
そして投げ飛ばされた球は、驚異的な速度で真っ直ぐ敵竜騎士の一体に命中し――――――爆砕した。
周囲を巻き込み、直撃した竜騎士は爆裂四散する。

 ジャッカルは無い。カスール改造銃は弾切れ。トミーガンでは威力に欠ける。
なればこその戦法。レキシントン号を奪った時に、なんとはなしにストックしておいた"砲弾"。
"それ"を投擲する。ただ、それだけである。

 ルイズは相変わらず出鱈目だなとその光景を見つめ、竜騎士達は敵味方問わず滅茶苦茶な攻撃に思わず呆けた。
   メテオ
「拳骨隕石!!!」
大砲で撃ち出されるよりも、遥かに上回る速度。
そして驚くべき命中精度で、次々と敵竜騎士を爆散させていく。
投げるたびに風竜がブレるものの、その投擲はまるで揺らぐ様子はない。
瞬く間に追撃の敵竜騎士を殲滅し、アーカードはドカッと座り込んだ。


「す・・・・・・凄いですね」
ルネが口を開く。凄い以外に形容する言葉が見つからなかった。
この際、少女が何者なのかなどどうでもいい。
今はとにかく頼もしい味方がいるということが、竜騎士達を安堵させた。

 しかしそれも束の間。前方に新たな敵の竜騎士が散見される。
数にして・・・・・・軽く見積もっても、ざっと百はいそうであった。
「うそ・・・・・・」
「これは・・・・・・ちょっと無理かもな」
さすがのアーカードも眉を顰める。
先程のように殲滅するには、残砲弾数が明らかに足りない。
まだ遠目に見えるものの、接敵までそう時間もなく、素早い判断が求められた。

 するとルネは、ハンドシグナルで護衛の竜騎士達に合図を送る。
「掴まっていて下さい。一気に突破します」
「まさか、死ぬ気・・・・・・?」
覚悟を決めたその声色に、ルイズは問うた。
「貴方をダータルネスまで連れて行くことが・・・・・・我々の任務ですから、皆覚悟はできています」
ルネは、敵竜騎士群を見据えながら言う。

「"任務は遂行する"。"主は守る"。両方やんなきゃならんのが、従僕のつらいところだな」
アーカードは腕を組んだまま立ち上がる。
黒髪が風に靡き、紅く鋭い眼光が敵を睨めつけていた。


 ルイズはほんの少しだけ考えた後、アーカードに聞いた。
「一番確実な方法は?」
「はっきり言えば、追撃をかわし続けるのは難しい」

 地上戦ならいざ知らず、空中戦は基本的にアーカードの領分ではない。
全速を保ちながら、あの数の敵の追撃をかわすのは至難。
適度にあしらいつつダータルネスに到着しても、追撃がある以上その場に留まるわけにはいかない。
であるならば、ダータルネスで悠長に魔法を唱えている時間も当然ない。
既に味方の艦隊は戦闘を始めており、時間を掛けて敵を殲滅してから詠唱することもかなわない。

「私が敵を引き付ける。すぐに霧を出すから、我が主にはそのまま突っ切ってもらう」

 アーカードの能力の一つに"霧"がある。濃霧を発生させ、自身を霧と化すこともできる。
だが飽くまでアーカードの周囲に発生させるものであるので、一緒に行くことは無理だ。

 アーカードが共に行き、その間を霧で攪乱すれば、もちろん霧中の進軍となる。
追撃をかわすまでどの程度の時間を浪費するか不明であるし、なによりもダータルネスの位置もわからなくなってしまう。
下手をすればさらなる哨戒網に引っ掛かり、今よりも状況を悪化させてしまう危険性もある。

 だがアーカードをこの場に残していくのであれば、敵の竜騎士を撒く上でそれらのリスクがなくなる。
ここを抜けて最短距離を行くならば、ダータルネスまで敵竜騎士が駐屯できる場所はない。
風竜の速度ならば、後は目的地までほぼ一直線で行ける筈である。

 敵竜騎士の大編隊とすれ違い、敵は追撃態勢に入ろうとしている。悩んでいる暇はない。
そう、任務を遂行するのであれば――――――選択肢は無いに等しいのだ。

「わかったわ。それでいきましょう」
護衛の竜騎士達は散開し、それぞれ迎撃態勢をとる。
ルイズは大きく息を吸って、叫んだ。


 オーダー
「命令よ、アーカード。敵竜騎士編隊をこの場にて足止めしなさい!」
       マイマスター
「了解した、我が主」
と、同時に魔法が一斉に飛んでくる。
アーカードは自分達に目掛けて放たれた魔法のみを正確に選んで、デルフリンガーで吸収する。
第一波を吸収し終えるとその場から跳躍し、その瞬間に霧が発生し始めた。

 ルイズは竜にしっかりと掴まり、風竜はすぐさま最高速で飛んだ。
次いで背後に爆発音が聞こえるが、濃霧により既に見えなくなっていた。


 しばらくして霧を抜け、ルイズは後ろを振り向いた。
霧は尚も広がり続けているが、風竜は少しずつ距離をあけていく。

(大丈夫・・・・・・みたいね)
後は任務をこなすのみ。
(必ず成功させる)
その一念を胸に、ルイズは一路ダータルネスへと向かった。


 跳躍したアーカードは、敵竜騎士の一体にライダーキックを放った。
竜騎士は原型を留めることなく体が吹き飛び、アーカードはそのまま竜に乗って敵を見極める。
いきなりのことに竜は嘶き、自分の背に乗った正体不明の者を振り落とそうと暴れようとした。

 しかしそれもすぐに止まる。アーカードから噴出する殺意に、竜は鋭敏に反応したのである。
この者に逆らえば、その邪魔をすれば・・・・・・死ぬ。否、死ぬよりも惨い事になるのではと感じ取った。
アーカードはまず、ルイズ達に攻撃しようとする竜騎士を、砲弾投擲で真っ先に撃破した。

 護衛の竜騎士達は速度を保ち、ルイズの乗る風竜に危害を加えようとする敵を優先的に攻撃し、守る。
魔法で迎撃し、時には体を張って止める。しかし十倍以上に及ぶ敵竜騎士群を相手にして大した時間が保つ筈もなし。
次々と護衛の竜騎士達は倒れ、地に堕ちていった。時間にすれば、本当に僅かな時間。

 だがその僅かな時間のおかげで、アーカードは霧を十分に形成することが出来た。
閉ざされた霧が視界を悪くし、ルイズの乗った風竜を肉眼で捕捉することは最早不可能。

 アーカードはルイズの乗った風竜が霧を抜けたことを肌で感じると、すぐさま霧の中を転移し殲滅行動に入る。
半刻ほどで敵竜騎士編隊はその悉くを喰われ、全滅した。


「さて・・・・・・」
一段落してアーカードは首を捻る。ルイズ達に追いつくことはもう無理である。
霧を晴らし、ぼーっとダータルネスの方向に目を向ける。

 暫くして、アーカードの瞳は遠く空に描かれる連合艦隊の姿を見た。
(ほほォ・・・・・・見事なものだ)
ルイズが無事任務を遂行した証。虚無魔法"イリュージョン"が使われたということ。
遠目であるが、かなりのリアリティ。あれならば陽動作戦はほぼ成功したも同然だろう。
トリステイン・ゲルマニア連合艦隊は、被害軽微でロサイスへ上陸できる筈だ。

(・・・・・・のんびりと、ロサイスに行くか)
ちょっと疲れているし、地上からゆっくり歩いていきたい。
丁度良く、街道から少しはずれたところに森林がある。
そこを通っていけば日光を遮ってくれるに、・・・・・・違いない。




(まだ戻ってきていない・・・・・・?)
無事任務を終えてロサイスに到着したルイズは、アーカードが戻っていないことを知った。
まさか死ぬわけはないだろうが、戻ってこないというのもおかしな話。

 ルイズは迷った。迎えに行こうにもルネは報告の為にいない。
流石に一人で敵地アルビオンを、歩いて探すわけにもいかない。

「何かお困り?」
突然かけられた声に、ルイズは振り向く。
少女・・・・・・?いや、少年だろうか。頭に妙なアクセサリーをつけている。
それにしても・・・・・・全く気配を感じなかった。

「あっ!もしかして君、ミス・ゼロ?」
人懐っこそうな笑顔で、少年は聞いてきた。
「そうだけど・・・・・・」

 ルイズの視線が少し後ろへ向く。その先は音も立てずに立っている男。
スラッと伸びた背だが、それでいて体格もいい。帽子を目深に被り、間から鋭い眼光が見える。
ただ静かにそこにいるだけで、とてつもない威圧感である。

「やっぱり!へぇ~、君がダータルネスで陽動作戦をしたんでしょ?」
「うん・・・・・・」
それにしても二人とも変わった格好をしている。
トリステイン、ゲルマニア、アルビオン、ガリア、ロマリア、どれにも該当しない。
服の質もなんだか違う感じ。そう、まるでアーカードのような――――――。

「そっかぁ~、人は見た目によらないねー」
屈託のない笑みを浮かべたまま少年は言う。
皮肉のつもりはないのだろうが、ルイズはちょっとだけムッときた。
「・・・・・・ごめんなさい、私急いでいるの。さよなら」


 ルイズは踵を返して歩き出す。悪いがこういう手合いに、いちいち付き合っていられない。
単なる珍しいもの見たさで、近づいてきたのであるならば尚更である。

「あらら、他意はないよ。僕らに出来る事があるなら手伝うけど?」
「あなた方に手伝ってもらえるような事ではありませんので」
「僕ら今暇してるんだよね~。これでも第三竜騎士中隊の隊長だし、割と自由に動ける権限もあるんだけど?」

 "竜騎士"、その言葉を聞いてルイズの足が止まる。
「例えば・・・・・・今から竜を駆って、私に行きたいところまで連れて行ってくれたりするわけ?」
「お安い御用」
少年はフフンッと鼻を鳴らし答える。

 ルイズは逡巡する。探しに行くべきか、どうするべきか。
もしかしたら、何人か生きている竜騎士がいるのかも知れない。
敵は節操なく喰うアーカードだが、生きている味方は喰うことはない・・・・・・だろう。

 怪我を負っている者がいるのであれば、戻ってくるのが遅いのも頷ける。
ゴタゴタしていて、今暫くは出撃命令もないだろう。
竜騎士達は命をかけて自分をダータルネスへと導いたのだ。見殺しにしては、寝覚めも悪い。
ルイズは決心すをる。
(うん・・・・・・探しに行こう)


 捜索を頼む為にルイズは振り向く。少年は相も変わらず笑顔を浮かべている。
ルイズには、少年の屈託ない笑顔の裏に隠された含みを・・・・・・窺い知ることはできなかった。 


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