あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-32


「「ジャンガァァァァァーーーーー!!!?」」
叫びながら、ルイズとタバサは同時に飛び起きた。
荒い呼吸を繰り返しながら、周囲を見回す。
ルイズの部屋だった…、あの血の海は影も形も無い。
だが、目の前のベッドの上には眠ったジャンガの姿が在った。
ルイズとタバサは顔を見合わせる。
ルイズが、見た? とタバサに訊ねると、彼女は頷く。
そう、とルイズは呟き、眠っているジャンガに視線を向ける。
「目が覚めたみたいだな、お二人さん。にしても…随分とまた派手に相棒の名前を叫んでたな?」
突然声を掛けられ、ルイズとタバサは顔を上げる。
辺りを見回すと、ベッドの脇に立て掛けられた鞘からデルフリンガーが顔(?)を覗かせていた。
二人は今の叫び声を聞かれた事に顔を真っ赤にする。
「あ、ああ、あんた……い、今の事…誰かに言ってみなさい…、ただじゃすまさないからね!?」
ルイズはデルフリンガーを睨み付けながら、震える声で言った。
「解ってる、解ってるって…、そう睨み付けるんじゃねぇよ」
デルフリンガーのその言葉を聞き、ルイズは視線をジャンガに戻した。
目を閉じ、静かに眠っているジャンガの全身には治療の痕である包帯が巻かれており、
ワルドによって切断された左腕も、水の秘薬を用いた王宮の水メイジの治癒で何とか繋げられている。
そんな彼の痛々しい姿を見つめていたルイズは、ふと窓の外へと目をやった。

窓の外に広がる青空を見つめながら、ルイズはあの日の事を思い返した。



――アルビオンから命からがら帰還した日。
ルイズ達は重傷のジャンガとウェールズの治療の為、急ぎトリステインの王宮へと向かった。
王宮に着くや魔法衛士隊の一隊であるマンティコア隊に囲まれてしまったが、
その場に現れたアンリエッタのおかげで事無きをえた。
アンリエッタはウェールズとジャンガの治療を王宮の水メイジに任せ、ルイズから任務についての報告を聞いた。
ワルドが裏切り者だった事…、そのワルドは死んだが結果的に手紙は奪われてしまった事…、
死んだとばかり思っていたウェールズをジャンガが連れ出してきた事…等など。
アンリエッタはそれらの報告を聞き終えるとルイズ達に礼を述べた。
――結局、治療の甲斐無く…ウェールズは帰らぬ人となってしまった。
だが、ジャンガの方は奇跡的に一命は取り留める事が出来た。
最愛の人を失ったアンリエッタは嘆き悲しむかと思われたが…以外にも取り乱さず、王女として気丈に振舞った。
そしてアンリエッタはタバサの母を王宮で預かる旨を伝えた。
手紙は奪われたと言うのに何故? と疑問を浮かべるルイズ達にアンリエッタは言った。
ボロボロの身体になってまで自分との約束を果たそうとしてくれたジャンガに報いる為…と。
そしてルイズ達は治療されたジャンガを連れ、魔法学院へと戻ったのだった。



そこまで思い返したルイズは思考を戻し、再度ジャンガを見つめる。
静かな寝顔であった…、静か過ぎるほどに…。
既に死んでいるのではないかと錯覚してしまうくらい、彼は静かに眠っている。
寝息の音も殆ど聞こえないのだ。
しかし、生きている証拠に呼吸音も心音も聞こえる。
ただ…目を覚まさないのだ。…もう、一週間になるだろうか?
前に召喚した際は三日三晩で起きたが、今回は既に倍の日数が経過している。
なのにまるで目を覚ます気配が無い。――そろそろ本気で心配だ。
「ねぇ…デルフ?」
「あんだね、娘っ子?」
声を掛けたルイズにデルフリンガーは返事を返す。
「こいつ…どうして目を覚まさないのかな? それにルーンも戻らないし…」
言いながらルイズは彼の左手を取った。その甲には何も無く、綺麗だった。



ルイズはこのベッドに彼を寝かせると、直ぐに『コントラクト・サーヴァント』を行った。
最初に召喚した時は口付けた後、直ぐにルーンが刻まれたのだが…、今回は違った。
何故かルーンは刻まれなかったのだ。いや、刻まれないどころか…何の変化もおきなかったのだ。
勿論、ルーンが刻まれる際の淡い輝きも無い。
どういう事だ? とルイズは悩み、もう一度コントラクト・サーヴァントを行った。
しかし、結果は同じで、やはり何も起きなかった。
原因も解らず、とりあえずはジャンガが目を覚ますのを待つ事にしたのだった。



デルフリンガーは暫く考えるように黙り、やがて口を開いた。
「正直な所…俺にも解らねぇな。何しろ相棒の…特にルーンについての事は何もかもが前代未聞だからよ。
何故コントラクト・サーヴァントが上手く行かないのか…、何故相棒が目を覚まさないのか…、何も解らないね」
ただ、とデルフリンガーは呟く。
「相棒自身が目覚める事を拒んでいる……って事も考えられるかもな」
そのデルフリンガーの言葉にルイズとタバサは呆然となった。
脳裏に今しがた夢で見た光景――血の海に沈み行くジャンガの姿がフラッシュバックする。
血の海に沈みながら自分達に礼を言う前……あいつは何と言っていた?

――…まァ…どうでもいいか…。…どの道…これで終わりだしよ…――

…確かそう言っていた。
”ジャンガが目覚める事を拒んでいる”と言うデルフリンガーの言葉に信憑性を持たせるには十分すぎた。
ルイズは唇を噛み締めた。自然と目に涙が浮かび、視界が歪む。
――こいつがあんなに辛い過去を抱えていたなど知らなかった。
知る機会が無かったと言えばそれまでだが……それでもやはり悲しかった。
自分の使い魔なのに、何も知らなかった事が、とても悲しかった。
ルイズは手にしている始祖の祈祷書を握り締めた。
本来ならば結婚式の場で選ばれた巫女は、それを手に詔を読み上げるべきであり、
その巫女にアンリエッタはルイズを指名するはずであった。
だから、アンリエッタは手紙を奪われたとは言え、ルイズへと始祖の祈祷書を手渡したのだった。
「ジャンガ……あんた、それでいいの? このまま…ずっと寝てるつもり?
悲しくて…、辛いからって…、それじゃ逃げてるような物じゃない?
あんたがいなかったら…寂しいじゃないの。わたしもタバサも……あんたの事待ってるのよ?
早く目を覚ましなさいよ…。…シェリーさんだって、悲しむじゃない…」
そう呟くルイズの目から涙が数滴零れた。



ルイズが呟いている間、タバサもまたジャンガを静かに見つめ続けた。
最初は嫌な相手だった…、いや…事実優しさなどは無かったかもしれない。
だけど、それもある意味では仕方ない事かもしれない。…自分だって似たようなものだから、余計に解ってしまう。
それに……良く似ているのだ…、彼は”彼女”に…。
そんな彼はいつも自分を気遣かってくれていた…。

――実家では自分の為に涙を流してくれた。

――親友と対峙した時は自分の背中を押してくれた。

――エルフに捕まった時は傷だらけになって自分を助けてくれた。

――そして……アルビオンでは身を挺して自分を庇ってくれた。

テーブルの方へと目をやる。
椅子にはジャンガのコートや帽子が掛けられており、テーブルの上には大きな銃や古ぼけた小箱が乗っていた。
その古ぼけた小箱の中には無駄な装飾の無い、簡素な指輪が入っていた。
…その指輪が何か最初は解らなかったが、あの夢を見た今となっては嫌というほど良く解った。
そして、この小箱と銃が彼の命を助けた。
ワルドの『エア・ニードル』で貫かれた際、これらが急所を僅かに逸らしたようだ。
その証拠に小箱には穴が開き、銃には僅かな損傷が見られた。
それは夢の中で見たジャンガを案じていた二人の亜人が、彼を庇ったかのようにタバサには思えた。

「結局……私は足を引っ張っただけ……」
自然と涙が零れた。
ジャンガの助けになりたい……その一心で自分は彼の後を追ったのだ。
だが、結果はどうだ? 自分のミスで彼は傷を負い、こうして眠り続けている。
自分は彼の騎士になったつもりだったが……そうじゃなかった。
――自分は彼の”お荷物”なのだ。

タバサは己の無力を心の中で嘆いた。



唐突に扉がノックされた。
その音にルイズもタバサも、ハッ! となり慌てて涙を袖で拭う。
ルイズは、誰? と扉に向かって声を掛ける。
「あたしよ。入ってもいいかしら?」
聞こえてきたのはキュルケの声だった。
「鍵は開いてるわ」
そう答えると、ガチャリ、と音がして扉が開き、キュルケが部屋に入ってきた。
後ろにはギーシュとモンモランシーの姿が在った。
「どう? 彼の様子は」
「…見ての通りよ」
キュルケはベッドに横たわるジャンガを見て、ため息を漏らした。
「そう…まだ起きないのね」
ギーシュとモンモランシーも寂しげな表情を浮かべる。
キュルケはルイズとタバサの肩に両手を乗せた。
二人が顔を上げるとキュルケが優しく微笑んでいた。
「心配しなくても大丈夫よ。こいつがそう簡単にどうにかなるわけ無いでしょ?
そのうち何事も無く目を覚まして、また”バァーカ!”とか言うに決まってるわよ。
…だから、あなた達も元気を出しなさい」
その言葉に二人は笑みを浮かべると揃って頷いた。

と、再び扉がノックされた。扉が開き、中に入ってきたのはシエスタだった。
シエスタは、いつものメイド服ではない。木綿のシャツに茶色のロングスカートの私服姿だ。
その服装と手にした大き目の鞄を見て、ルイズはシエスタに尋ねた。
「あなた、何処かへ出かけるの?」
「はい、休暇を頂いたので…実家の在るタルブの村に帰ろうとしていたところで。
それで……もし、ジャンガさんが目を覚ましていたら、是非来てほしいと思ってたんですが……」
そこまで言って、シエスタはベッドの上のジャンガの姿を認め、悲しそうな表情をする。
「…まだ目を覚ましていないようですね」
「残念だったわね…」
ルイズが気の毒そうな声で答えた。
暫く意気消沈していたシエスタだったが、やがて軽く首を振るとルイズに向き直る。
「あの、ミス・ヴァリエール? もし宜しかったら…タルブの村までお越し頂けませんか? ミス・タバサも」
ルイズとタバサは目を丸くする。
「え? な、なんで?」
シエスタはルイズに歩み寄り顔を覗き込む。
「だって、ここのところお二人は、ずっと看病でジャンガさんに付き添っていたじゃないですか?
流石に疲れも溜まっていると思いましたから」
「…いいわよ、気を使わなくたって」
「わたしも遠慮する…」
ルイズとタバサは揃って申し出を断った。
そんな二人にキュルケ達が声を掛ける。
「そう言わないで行って来なさいよ。この娘の言うとおり、一週間も付きっ切りだったじゃない。
ここらで休んでおかないと身体が持たないわよ?」
「そうさ。気を張り詰めてばかりは美貌にもよくない。君達も立派なレディだからね」
「ま、細かい説明は抜きね。わたし達が代わりに彼を見ていて上げるから、二人は息抜きをしてきなさい…って事よ」
ギーシュとモンモランシーにも促され、ルイズはため息を吐いた。
「もう…あんた達もお節介ね」
そう言いながらもルイズは嬉しそうに顔を綻ばせた。
そして、それはタバサも同様だった。



そんな訳で、キュルケ達のご好意に甘えたルイズとタバサはシエスタの案内で、彼女の故郷であるタルブの村へとやって来た。
村は活気に溢れ、緑に囲まれたそこはとてものどかな印象を受けた。
ルイズとタバサはそんな村の雰囲気を気に入った。
もっとも…村までの移動にシルフィードを使ったため、一時村中が大騒ぎになったりしたが…。

騒ぎが静まり、貴族の客と言う事で挨拶に出てきた村長との会話もそこそこに、二人はシエスタの実家へと案内された。
簡素な家だった、外だけでなく中身も。少なくとも貴族の住む屋敷などとは雲泥の差だ。
しかし、何故だか心が落ち着く。素朴な感じがそう感じさせるのかもしれない。
ルイズはきょろきょろと物珍しげに辺りを見回す。
思えば平民の…こんな田舎の村の家に入る事など無かったのだから、珍しいのは当然だ。
と、キョロキョロと見回していたルイズの視界に思いもよらない物が飛び込んできた。
そして、ゆっくりと棚に歩み寄ると”それ”を手に取る。
ポケットから自分が持っている物を取り出して”それ”と見比べる。
”それ”は自分が手にしている物と寸分違わぬ物だった。
「なんで……こんな所に有るの”これ”が?」

間違い無く、それは”ヒーローメダル”だった。



「それは、わたしのひいおじいちゃんの遺品なんです。でも、まさか王家に伝わる物と同じ物だったなんて…驚きました」
お茶を持ってきてくれたシエスタが、飾られていたヒーローメダルを見つめるルイズとタバサに説明する。
なんでも、彼女の曽祖父にあたる人物は、ある日ふらりと唐突にこの村に現れた。
何処から来たかのかは愚か…自分の名前すら覚えていないと言う記憶喪失の状態だった。
しかも、人間かと思われたその男は実は亜人だったらしい。
最初は村中の人から警戒の目で見られていたそうだったが、無理も無い事かもしれない。
だが、そんな彼も一人の女性…シエスタの曾祖母とその家族に暖かく迎えられた。
「話してみれば、ひいおじいちゃんはとても優しく明るい人だったそうです。
働き者で面倒見も良かったそうで、村の皆とも徐々に打ち解けていけたそうで。
…わたしは直接会う事は出来なかったんですけどね」
言いながらシエスタは手に持った帽子を見つめた。
それに気付いたルイズが尋ねる。
「その帽子も?」
「はい、ひいおじいちゃんのです。変わった形ですよね」
緑色の帽子は確かに見慣れないデザインではあった。
触ってみて解ったが、その素材も一般に出回っている物とは違っている。
…最早疑う余地も無い。その亜人の男はジャンガと同じ世界から来たのだろう。
改めてヒーローメダルを見つめた。
自分がアンリエッタから手渡されたそれと同じ青色をしていた。
ジャンガが言ったとおりなら、持ち主が無くなったから色も元に戻ってしまったのだろう。
ふと、ルイズは気になってシエスタに尋ねた。
「ねぇ、一つ聞いていい? あなたのひいおじいさんのこれは、最初からこの色だった?」
それを聞いたシエスタは少し考え、首を振った。
「いえ、最初は金色だったそうです、父や母も見ていたそうですし。今は何故か青色になっちゃったんですけどね」
そう、と答えルイズはため息を漏らした。
こんな田舎に金色のメダルの持ち主が居た……それが少し悔しかった。
自分が尊敬する姫さまは青色だったのに…。
そんな風に気落ちするルイズの気持ちを知ってか知らずか、シエスタが徐にルイズの手を取った。
「あの、ミス・ヴァリエール? 是非見せたい物があるんです」
「見せたい物…? …いいわ、案内して頂戴」
「ありがとうございます。…ミス・タバサもご一緒にどうですか?」
「…行く」
短くそう答えると席を立った。

シエスタに案内された二人が辿り着いたのは、村の外に何処までも広がる広い草原だった。
所々に花が咲き、山の向こうに沈み行く夕日に照らされ、とても幻想的である。
目の前に広がる光景の素晴らしさに二人は暫し言葉を失った。
こんなに綺麗なのはまだ見た事が無い。
「気に入っていただけました?」
シエスタの言葉に二人は頷いた。
それにシエスタは顔を綻ばせ……寂しげな表情で草原を見た。
「この草原とっても綺麗でしょう? …本当はこの光景、ジャンガさんに見せたかったんです」
「そう…」
「……目を覚ましますよね、ジャンガさん?」
「当然よ」
即答だった。その言葉には迷いも何も感じられない。
「あいつはわたしの使い魔なんだから、ずっと眠ったままなんて許さないんだから。
今は連日のハードなスケジュールで疲れているだろうから、特別に寝かせてあげているのよ。
目を覚ましたら溜まりに溜まった洗濯物を嫌でも押し付けてやるわ、押し付けてやるんだから!」
プンプンと起こったような調子でそう捲し立てたルイズを見て、シエスタはクスリと笑った。
「そうですね」
タバサは何も言わなかった。



翌朝。
二人は結局、シエスタの実家に一泊したのだった。
そしてタバサはルイズを学院へ送り届けた後、思い出の場所へと降り立っていた。
そこは自分が一人で最初に訪れた外の世界。
そして、自分が生きるための力を教えられた場所。
「お姉さま、こんな所に何のようなのね? ここはあんまり良くない雰囲気がするのね、きゅい」
後ろからヒョコヒョコと付いてくるシルフィードの言葉に答えず、タバサは歩を進める。
やがて、目の前に目的の物が見えてきた。
僅かに盛り上がった土の上に弓が立てられている。
弓は立派な物だったようだが、雨風に晒されて痛んでいる。
それでも元々丈夫に作られていたらしく、未だ原型を留めていた。
それが何なのかシルフィードは一瞬理解できなかった。
「お姉さま、これはなんなのね?」
「お墓」
ただそれだけ言うとタバサは片膝を付き、手を合わせる。
そして目を閉じると祈りをささげた。

墓の下に眠るのは自分にとって掛け替えの無い友人であり、恩人であり、…師でもあった。
戦いも知らずただ泣き叫ぶしかなかった無力な少女…、それを変えてくれたのが彼女だった。
生きる事の大切さ、意味、その手段、色々な事を彼女から学んだ。
今でも思う…、彼女に遇っていなかったら…今の自分はなかったはずだ。それに――

――母さんはどうすんのさ。心を奪われてたって、まだ生きてるんだろ?――

――母さんをほっといて死にたいだって? 親不孝もいいところじゃないか――

彼女に言われた言葉が脳裏によみがえり、タバサは思わず笑ってしまった。
「この前…実家であなたと同じ事を言われた」

そう言って思い返されるのは実家に帰ったあの日の事。
母の部屋でジャンガに今の自分を非難された。
あの時は許せなかった…、彼女に言われた時のように…自分の領域にずかずかと踏み込んでくる彼が。
でも、その考えは直ぐに改めた。…彼は決して、自分を嘲り笑うつもりで非難した訳ではなかったからだ。

――それによ……テメェには、まだ親が……母ちゃんがいるじゃねェか――

――くだらねェ…、くだらねェ…、本当にくだらねェ…。テメェはバカだ、救いようの無いバカだ! 俺以上にな!!
…もしかすれば、元に戻るかもしれない親が居るだけ…テメェは幸せなんじゃないのかよ!!?――

意味合い的には全く変わらない二人の言葉にタバサはふと気が付いた。
「そういえば…似ているかな?」
思えば共通点が多いような気がした。
その生き様や性格など、似通っている所は結構思いつく。
そんな二人がもし出会ったら…、きっと気があったかもしれない…とタバサは思った。
根拠は無いが確信が持てた。

そうして暫く思い出に浸っていたタバサは、背後に広がる森を振り返る。
『ファンガスの森』…昔、貴族が建てた塔で作られた合成獣<キメラ>が徘徊する危険極まりない森。
ここで自分は彼女…ジルと出会い、そして変われた。
その森にタバサは今一度踏み入ろうとしている。
その理由は”強くなる”ただそれだけ。
もう足手纏いにはなりたくないから…、誰も傷付けたくないから…、そして…今度こそ彼の力になりたいから。
キメラドラゴンほどの個体はもういないだろうが、それでも並の幻獣よりも歯応えのある相手はいるだろう。武者修行には丁度いい。
…まさか、その場凌ぎの嘘であったのが、こうして本当に来る事になろうとは思いもよらなかったが。
タバサはシルフィードの頭を撫でながら言った。
「用が済んだら呼ぶ」
そして再び墓を振り返る。
「…強くなって戻ってくる。だから…見守っていて」
それだけを言うと、タバサは森へと歩き去っていった。



――数週間後。
それはルイズ達がアルビオンから帰還してから約一ヵ月後の事だった。


突如としてアルビオンが新国家『レコン・キスタ』と名を変えてトリステインへと宣戦布告をしたのは…。


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