あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

デモゼロ-13



 ぱからん、ぱからん
 馬車が駆ける
 ぱからん、ぱからん
 空が、ゆっくりと、星空から明け方へと変わっていく時間帯
 馬車は、学院に向かって駆け続ける

 すやすや、すぅすぅ
 馬車の中では、疲れ果てた少女たちが、穏やかに寝息をたてていた
 奥には、布で体を包まれた状態で、かつて化け物の姿となっていた人間たちが転がっていて
 …さて、どうしたらいいものか
 馬車を操るロングビルは、小さくため息をついたのだった


 学院についたのは、夜が完全に明けた頃
 …学院は、大騒ぎとなった
 当たり前だ
 キュルケとロングビルの、二人が負傷
 そして、馬車の中には身元不明の(ほぼ全裸)の人間多数
 何事か、と大騒ぎ
 ルイズたちも、どう説明したらいいものか、わからず
 とにかく、キュルケとロングビルは、医務室で本格的な治療を受け
 タバサは、身元不明の、その気絶したままの人間たちを、
 コルベールと一緒にどこかへと運んでいった
 ルイズは…とにかく、まずは改めて服を着るべく、自分の部屋へ
 その際…じっと、鏡で自分の顔を、見つめる
 間違いなく、私の顔
 …人間の、顔
「デルフ、私…ちゃんと、人間、よね?」
「少なくとも、今はちゃんと人間の姿だぜ、相棒」
 …そうだ 
 私は人間だ
 化け物なんかじゃない
 狼の化け物なんかんじゃない!!
(…けれど)
 けれど、とルイズは悩む
 人狼のような姿となって、戦っていた時
 …自分は、恐怖していたか?
 終わってみれば、自分は恐怖したけれど
 戦っている間は…不思議と、恐怖を感じなかった
 むしろ…不思議な昂揚感すら、感じて
 あれは、一体何だったのか
 まだ、わからない
 ただ、理解できるのは
 これは、自分の中の、使い魔の力だと言うこと
 …それに
 モートソグニル
 ただの、ネズミだと思っていた
 オールド・オスマンの使い魔のネズミ
 …使い魔となったからと言って、人間に変身できるようになるものか?
 それとも、ネズミと言うのは表向きで、本当は珍しい幻獣だったのだろうか?
 ……よく、わからない
「…とにかく、学院長に報告に行かなくちゃ…」
 あぁ、結局、土くれのフーケは捕まえられなかったし
 …悪魔の種は、ルイズの体の中に入ってしまった
 どうすればいいのだろう
 憂鬱を感じながら、ルイズは部屋を後にした
「…え?あれ?俺様置いてけぼり?待ってーお願いおいてかないでー!」
 …そんなデルフの寂しい呼び声を、ルイズはさらりとスルーしたのだった

 ルイズが学院長室についた頃には、キュルケとロングビルも、治療を終えたようで
 きっちりと服を着替えて、到着していた
 タバサも、コルベールと共に、学院長室に入ってくる
 モートソグニルはオールド・オスマンの手の平の上で、ちゅう、と声をあげている
 …オールド・オスマンは、そんな己の使い魔を見つめ、少々、考え込んでいる様子
「オールド・オスマン、その…」
 何と、言ったらいいのか
 ルイズたちが悩んでいると、ロングビルが、口を開こうとして
 …それを、オールド・オスマンは手で制した
「…大体の事は、モートソグニルから聞いたわい…まさか、またあの化け物が出るとはのぅ…」
 『また』?
 またとは、一体どう言う事なのか?
 ルイズたちの疑問の表情に、気付いたのだろう
 オールド・オスマンは、モートソグニルをそっと机の上に降ろし…
 真剣な表情を浮かべてきていた
「……これから話す事は、他言無用じゃ」
 こくり、全員が頷く
 オールド・オスマンは、ゆっくり、話し始めた


 …それは、どれほど昔の事であったろうか
 オールド・オスマンは、オーク鬼が出ると噂の森にやってきていた
 だが、そこで現れたのは、オーク鬼とは似ても似つかぬ化け物たち
 魔法で応戦するも、化け物たちはなかなか倒れず
 戦いのさなか、使い魔のモートソグニルが戦闘に巻き込まれて怪我をする事態となってしまった
 ……もう、駄目か
 死を覚悟した、その時

 奇跡が、起こった

 オールド・オスマンに喰らいつこうとしてきた化け物が、光によって薙ぎ払われた
 天から、翼を生やした何者かが、ゆっくりと降りてくる
 …オールド・オスマンには、それが天使として視界に映った
 美しい、耳が尖った…一見、エルフのような外見をしした、翼を生やした天使
 それは、化け物たちを次々と薙ぎ払い、倒していく

 …化け物たちを、粗方片付けて
 天使はゆっくりと、オールド・オスマンに
 そして、傷ついたモートソグニルに、近づいてきた
『…大丈夫ですか?怪我は、ありませんか?』
 酷く、優しい声だった
 天使は、オールド・オスマンとモートソグニルの傷を癒し…その時、
 モートソグニルを見て、一瞬、難しそうな顔をして
 そして…化け物たちの上に、手を当てる
 すると、再び奇跡が起きた
 化け物たちは、人間へと姿を変えていき
 ころり、ころり
 代わりに、あの小さな悪魔の種が、転がり出たのだ
 その悪魔の種を手に…天使は、再び、オールド・オスマンに声をかけた
『あなたが、人間としても地位ある者であると見込んで、お願いします。
 どうかこれを、誰の手にも渡らぬよう、封印してください。
 これは、悪魔の種。
 人間を悪魔に変えかねない、悪魔の種。
 どうか、これらを封印して。
 誰の手にも、わたらないように』
 …そして
 気を失ったままの、モートソグニルを見て、こう続けてきた
『……しかし。
 もしかしたら、この悪魔の種の力が、必要となる日が来るかもしれません。
 その時は、どうか、心正しき者に使わせてください。
 これを、悪魔には渡さないで。
 悪魔の手に渡れば、それは悲劇にしかならないから』
 命の恩人の願いを、オールド・オスマンは承諾した
 …魔法学院の学院長として、これを宝物庫に封印する、と
 オールド・オスマンの言葉に、天使はほっとしたように、笑ってきて
 そして…ゆっくりと、天へと戻っていったのだと言う

「…天使…」
「少なくとも、ワシの目にはそう見えた。光で化け物を薙ぎ払い、ワシらの傷を癒したあの姿は…天使、そのものじゃった」
 話を終えた、オールド・オスマン
 …ルイズたちが遭遇した、化け物は
 その時の化け物によく似ていた、とそう呟く
 オールド・オスマンの話が終わると…ぴょん、と
 モートソグニルが、学院長の机から飛び降りる
 その姿が…ルイズたちも見た、青年の姿に、変わる
「…ここから先は、僕がお話しまちゅ」
 驚くコルベールを前に、モートソグニルはゆっくり、話し始めた


 …モートソグニルの体に変化が起きたのは、彼らが化け物と遭遇し、天使に助けられたすぐ後
 モートソグニルは突然、自分が人間の言葉を話せるようになった事を理解した
 人間の姿に変身するなど、通常ネズミが得るはずも無い力を手に入れた事を、確かに理解した
 ……自分は、あの天使と似たような存在になったのだ
 不思議と、そう理解できた
 知性が冴えている、人間と同じくらいの知力が、自分に身についた
 そして…同時に、理解する
 あの時の化け物ような存在は、今の自分と同じような力を得ながら、
 人の心を失ってしまった存在だと
 化け物と成り果てた人々を、何とかしなければ
 …そして
 化け物を人間へと戻す事で手に入る、悪魔の種
 それが欲しい、と
 そう、強く願うようになった
 しかし、主人であるオールド・オスマンから、そう離れる訳にはいかない
 モートソグニルは、自分の状況をオールド・オスマンに話してもいいものかどうか、
 なかなか決断できなかった
 主人の事は信頼している
 しかし、自分がこんな存在となった事で、
 オールド・オスマンに迷惑がかかるのではと思うと、言い出せなかった
 だから、こっそりと…学院の傍に化け物が現れた時などに、
 それらと戦い、悪魔の種を得るようになった
 悪魔の種を摂取する事により、自分がもっと強くなると、そう理解できていた
 化け物の気配は、本能でわかる
 誰にも秘密のまま、モートソグニルは一匹で戦い続けていたのだ


「…まったく。ついさっき話してもらうまで、まったくわからんかったわい…主人失格じゃのう」
「……御免なさいでちゅ」
 しょんぼりしているモートソグニル
 彼なりに、悩んだ結果なのだろう
 …ルイズも
 その悩みを、理解できる気がした
 自分が、あんな姿になる事を…本当なら、誰にも知られたくなかった
 あんな姿、人間を超えた力 
 それを手にした事が知られたら…恐れられるのではないか、化け物として罵られるのではないか
 考えただけで、恐ろしい
 幸い、キュルケたちは、自分を受け入れてくれたけれど
 …それは、稀な例なのだ
 通常ならば、化け物として、一緒に駆逐されてしまうだろう
「…私、も…モートソグニルと、同じ…状況、なのね」
 ぽつり
 ルイズは、力なく呟いた
 あぁ、きっと、そうなのだ
 自分も、悪魔の種を『欲しい』と思った
 あれを手にする事で、自分がもっと強くなるのだと…本能で、理解できる
 俯くルイズの体を、キュルケがそっと、支えてきた
 支えられた事で…ルイズは、自分の体が震えていたことを、自覚する
「…ルイズ、大丈夫?」
「……大丈夫、よ」
 大丈夫
 自分は、大丈夫だ
 …自分は、人間の心を失ったりなんか、してない
 化け物に成り果ててなんかない!!
 必死に、必死に、自分に言い聞かせ続ける
 そうでもしないと…心が、壊れてしまいそうだ
「…ルイズちゃん」
 じ、と
 モートソグニルが、こちらを見つめてくる
「今なら、まだ、間に合いまちゅ…その、力。捨てる事も、できまちゅ」
 え、と
 ルイズは顔を上げ、モートソグニルを見つめる
「ルイズちゃんは、その力を手に入れてから、あんまり日にちが経っていないでちゅ。
 今なら、ルイズちゃんの中のその力を取り出すことができまちゅ。
 そうすれば…ルイズちゃんは、その力から、逃れる事ができまちゅ」
 …捨てる?
 この、力を?
「それは……使い魔を捨てる、と言う事?」
 ルイズのその言葉に、キュルケが、タバサが、ロングビルが
 コルベールも、オールド・オスマンも…ルイズとモートソグニルを、交互に見つめる
 …そうだ
 この力は、ルイズの使い魔の力
 力を捨てる、ということは
 己の中の使い魔を…捨てる、ということだ
「そう言う事になってしまいまちゅ。でも…その力が、ルイズちゃんにとって重荷となるのなら
 それを、捨てる事も、できまちゅ。
 …今はまだ、人の心を保っていられるけれど、力を使いすぎたら…
 ルイズちゃんも、人の心を失ってしまうかも、しれないでちゅ」

「-------っ!!」
 ぶるるっ、と体が震える
 人の心を失う?
 …私も
 あの化け物たちと、同じような存在に、なってしまう?
「ルイズちゃん次第でちゅ。しっかりと、強い意思をもって、力を抑えていれば
 …力の使い方がちゃんとわかれば、そんな事にはなりまちぇん」
「私…次第…」
 選択を、突きつけられる
 力を、使い魔を捨てる?
 それとも、化け物に成り果てるかもしれない、そんな恐怖を抱え続ける?
 ルイズは、ぎゅう、と自分の体を抱き締めた
 そうでもないと…体の振るえが、いつまでたっても、止まらない
 キュルケも、心配そうにルイズを見つめ、その体を支え続けてくれていた

 どうすれば
 どうすれば、いいのか
 ルイズは、おのれの体の中にいる使い魔の存在を感じながら、悩み続けるのだった



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