あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ42


色とりどりのドレス、煌びやかな飾り付け、かぐわしい香りの花、舌をとろかす料理。
ニューカッスル城のホールにはパーティに必要なものが全て揃っていた。
それなのにルイズはそこに華やかさよりも寂しさを感じていた。
「私と一曲躍っていただけませんか」
壁の花となっていたルイズの前にワルドが跪き、ダンスを求める。
「はい、ワルド様。お受けいたします」
受けはしたものの、それは貴族としての礼儀よりも、ワルドの慕う心よりも、体の芯に寒さを感じるような寂しさを紛らわすためだったかも知れない。
ホールの真ん中に出ると楽団が曲をダンスのためにものに変える。
ルイズはワルドの手を取ると習い覚えたステップを踏んだ。
──ああ、そうか。
そうやってワルドにリードを任せているとルイズはだんだんと寂しさの理由がわかってきた。
──寂しい、はずよね。
ここでパーティを楽しんでいる人の多くは、明日戦いに出る。
わずか数百で万を超えるレコン・キスタの軍と戦うのだ。
そして、いなくなってしまう。生きては帰れない。
そう思うと、このホールに居る人が突然少なくなったように思えた。
「うまくなったね。ルイズ」
寂しさに怯えるルイズはワルドのの手を握る手に力を込めた。


闇の中には光を灯す金の三角形がある。
それはフェイトの持つインテリジェンスデバイス、バルディッシュのもう一つの形である。
バルディッシュより放たれる光は、やがてその上に像を結びつつあった。
四角い像の中に、文字や図形を描き出すそれが何かを知るものは本来ハルケギニアにはいない。
だが、当然と言うべきかその持ち主のフェイトはそれが空間モニターと呼ばれる様々な情報を表示するためのものだと知っているし、その情報を加工も術すら身につけている。
フェイトの手が空間モニターの上を動き、そこに表示された文字列を組み替え、新たな数字に変えていく。
時にバルディッシュ自身もフェイトの指示に従い新たにプログラムを作っていく。
それを繰り返すうち、空間モニターに表示されていた歪な図形は形を整え、ぎこちなかった動きも滑らかさを獲得していった。
ごそり、と音がする。
フェイトは手のひらを閉じ、その中にバルディッシュを隠した。


「ん、ん……ん」
何か予感でもあったのだろうか。
まだ星と月が空にある時間だというのにキュルケは目を覚ました。
横にあるタバサを寝かせたベッドの上をを見る。
そこでタバサは上半身を起こし、いつもと同じ眼鏡をかけた目でキュルケを見ていた。
「元気になった?」
キュルケの友人は言葉を返すことなく、ただ頷くだけで答える。
「そう」
キュルケにはそれで口数の少ないこの少女が体力をわずかでも取り戻したことを理解した。
「ねえ、タバサ。もう、トリステインに帰る?」
タバサは沈黙でキュルケに先を促す。
「そりゃ、ルイズのことは心配よ。私も絶対に助けるつもりでいたわ。でもね、あなたが倒れてしまうなんて考えてなかったのよ。そんなに無理はしなくていいのよ」
「やめない」
それはタバサがこの夜に初めて口にした言葉だった。
「ルイズを助けに行く。私なら平気」
その短い言葉の中にキュルケは決心を感じた。それだけのつきあいはしてきたつもりだ。
「そう……なら」
キュルケはタバサの肩に手を当てベッドに身を横たえさせ、毛布を肩まで引き上げた。
「朝まで寝ましょう。そうでないとまた倒れちゃうわよ」
それだけ言うとキュルケも自分の布団の中に潜り込み、目を閉じてしまう。
そのまま目を閉じるタバサも体に残っていた疲れですぐに眠りに落ちていった。


ギーシュもまた夜中に目を覚ましていた。
正確には眠れないでいた。
レコン・キスタから逃れるためにした曲芸飛行のおかげで目が冴えてしまってしかたがない。
目を閉じると体が浮いてぐるぐる回るような気分になってしまうのだ。
どうやっても眠れないとギーシュはしょうがないと少し散歩をすることにした。


──まるであの時みたいだ。
ユーノは初めてルイズと出会った時のことを思いだしていた。
窓から射し込んでくる二つの月も、フェレットに変身したまま寝かされている藁を詰めた箱もあの時と同じように思えた。
だが箱の前にいるのはルイズではない。
金髪のとがった耳を持つ少女が淡く光る指輪を手にして静かに祈っていた。
「君は……だれ?」
「きゃっ!」
少女は小さく悲鳴を上げる。
思わず息をのんだ少女は、目を丸くしてユーノをしげしげと見つめた。
「話せる……の?」
「うん。話せるよ。君は誰?ここはどこ?」
少女はすぐに落ち着きを取り戻し、ユーノの質問に答えた。
「私はティファニア。ここはアルビオンのウェストウッド村よ」
「アルビオン?そうだ、ルイズを追わないと!」
ユーノは箱を飛び出し床に降りる。
「あ、待って」
ティファニアがユーノを止めようとすると、フェレットの体は光に包まれその姿を剣を背負った人間の少年の姿に変えた。
「え?ええっ!」
驚くティファニアの前で少年は立ち上がろうとするが、すぐに膝を崩してしまう。
床にうずくまったユーノは体のあちこちから感じる痛みで自分の傷がまだ癒えてないことを思いだした。
「だめよ。まだ治ってないもの」
「でもルイズを助けに行かないと!」
焦りをあらわにするユーノにティファニアはわがままな弟を諭す姉のように顔を近づけた。
「この指輪であなたを治していたの。だから、もうちょっと待って」
「その指輪で?」
「ええ」
ティファニアが指輪をそっと撫でると光が再び灯る。
その光がユーノを照らすと、痛みがすっと消えていった。
「あ……。ありがとう」
「いいのよ。今度は背中ね」
ティファニアの温かい手が背中に当たる。
すると、ろくに力が入らなかった背中にもすぐに力が戻って来た。
「あなたの名前も教えて欲しいな」
「うん。僕はね──」
その時、扉がが音もなく開いた。
誰かが開いたというわけではない。そよいだ風の手がわずかに悪戯をしただけだ。
だからそれを止めようとする者は誰もいなかったし、そこにいた誰もがごく自然に動く扉を見ていた。
扉のすぐ外に呆然とギーシュが立っていた。
顔を引きつらせたギーシュの足は震えている。
そんな足なのに、ギーシュは
「ひぃっ」
と怯えた声を出して逃げだそうとした。
「どうしよう」
怯えたのはティファニアも同じだった。
「見られちゃった」
すっかり慌ててしまったのだろう。
ティファニアは立ち上がったもののおろおろして足踏みをするばかりだ。
「待って!」
慌てたのはユーノも一緒だった。
もしティファニアが先に「見られちゃった」と言わなかったらそれはユーノが口にしていた言葉だ。
「チェーン・バインド」
だから、ユーノは魔法でギーシュをその場に縛り付ける。
「き、き、き、きみは!」
「あのね、ギーシュさん。落ち着いて」
と言ってみたが、ギーシュは全く落ち着く様子がない。
光の鎖に縛られて床に座り込んだままティファニアを見上げて奥歯をかちかちと鳴らしていた。
「君はユーノ?なんで……こんな所に?まさか……だったら……」
「落ち着いてよ。ギーシュさん。僕の話を聞いて。みんなにばれちゃうから」
「だが、だが、エルフが、エルフと……何をしているんだ?まさか……君もエルフ?エルフが何を?」
青ざめているのであろうギーシュの顔は青い月に照らされていっそう青く見える。
同時に月の光と夜の闇はギーシュの恐怖を煽っていた。
「ごめんなさい」
呟くように謝るティファニアの目は沈んでいた。
そして、手には小さな杖が握られていた。
「怖がらせてしまって……すぐに怖くないようにするから」

ナウシド・イサ・エイワーズ

ティファニアの口から歌が漏れる

ハガラズ・ユル・ペオグ

だが、それは歌ではない。

ニード・イス・アルジーズ

ギーシュに怯えを一時、忘れさせるような美しい調べを持つそれは呪文だ

ベルカナ・マン・ラグー

ティファニアが杖を振り下ろす。
すると、ギーシュは首をかくんと落とし、すぐに虚ろな目で首を起こした。
「あれ?僕は何を?」
ティファニアがユーノを見て頷く。
その意味するところを理解したユーノは魔法で作った光の鎖を消した。
「ギーシュさん。寝室はあちらですよ」
「そうだったね。これは失礼した」
ふらふらと、それでも怯えていた時よりはずっとしっかりした足取りでギーシュは自分にあてがわれた小屋の方に歩いていった。
「なにをしたの?」
「ギーシュさんの記憶を奪ったの」
「記憶……」
「私とあなたをここで見た記憶よ。それから、私がエルフだって記憶。エルフは嫌われているから」
そう言うティファニアはどこか悲しげだった。
「僕はいいの?」
「あ……でも、あなたは私を怖がらなかったから。でも、どうして?」
「どうしてって、怖くなかったから」
ユーノもエルフのことは知らないわけではない。
魔法学院で読んだ資料の中にはエルフに関して書かれていた物も多い。
いずれの本もエルフの恐ろしさについて書かれており、中には悪魔とすら書いていた物もあった。
だがユーノはその記述を鵜呑みにはしなかった。
というのも敵対している種族を悪魔として記述するというのは決して珍しいことではなく、ユーノは考古学的な資料でそのような物を読む機会も多かったからだ。
「それに怪我を治してくれたし」
「そっか、そうよね」
月明かりだけではティファニアの顔はよく見えなかったが、彼女の目にあった陰りが少しだけ晴れていた。
「そうだ、あなたのことも秘密でいいのよね。ギーシュさんの記憶から消しちゃったんだけど」
「うん。ありがとう。誰にも知られたくないんだ」
「よかった。だったら、続きね。ちゃんと治さないと」
再び指輪の光が強くなる。
ティファニアはユーノの体の傷の一つ一つを指輪を嵌めた手さわっていく。
「私、あなたの名前聞いてなかった」
「僕の名前はユーノ・スクライアって言うんだ」
「いい名前ね」
その手はまるで春のお日様のように温かくて、ユーノは次第にうつらうつらと眠気を覚えていった。
だからティファニアのつぶやきには気付かなかった。
「ユーノくん。韻竜みたいに言葉を話すフェレット、か」


新着情報

取得中です。