あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Louise and Little Familiar’s Order-11


ギーシュ以外の叫び声が上がるより早く、タバサが自分の背丈より大きな杖を構えて呪文を唱える。するとゴーレムと同じ高さもある巨大な竜巻が巻き起こり、ゴーレムへと向かっていった。
しかし竜巻が止んだ時、ゴーレムは傷一つ負った様子さえ見せず、そこに変わらぬ様子で仁王立ちになっていた。
次いでキュルケが懐から杖を引き抜き、自身にとって十八番でもある強力な火炎を放ってみる。だがゴーレムは、その場から一歩たりとてたじろぐ事も無くゆっくりとした調子で全員に向かって近付いてくる。
流石に焦ってきたキュルケは隣にいたコルベール氏に助けを求めた。

「先生!先生も何か撃ってみて下さい!!」

コルベール氏はその言葉に対して若干の逡巡を見せたが、直ぐに頭を振り、タバサの物と同じくらい大きな杖を前に掲げ、ゴーレムに向かって青白い炎を勢い良く放つ。
人間ならば恐らく炭化してしまうような高温の炎に、流石のゴーレムも耐え切れないのかどんどんと動きが鈍くなり、遂には表層面に当たる部分が飴細工の様に泡を吹きながらどろどろと見苦しく溶け出す。
これで何とかなったか?その答えは体を徐々に崩しながらも尚も動き続けるゴーレムが身をもって示していた。背丈こそ最初の半分位にはなっていたが、まだまだ自分達にとっては巨躯である事に変わりは無い。
そしてコルベール氏の精神力が切れたのか、杖からは一片の炎も出なくなった。最早枯れ枝一本を燃やすほどの炎も放てないだろう。
残されたギーシュやルイズでは有効な攻撃を与えられないだろう。完全に万事休すといった所だ。

「退却」

タバサが呟き、それに釣られる形で全員が森からの出口に向かって一目散に駆け出した。
しかし直ぐにルイズと使い魔のミー、そしてヒメグマがついて来ていない事に気づき、全員が慌てて空き地まで歩を戻す。
見るとルイズは小屋の残骸の近くでゴーレムと対峙し、杖を構えている。ミーはその近くでヒメグマと『鉄拳の箱』を脇に抱えながらへたりこんでしまっていた。
ゴーレムの対処で注意散漫になっていた事を悔やみながら、コルベール氏はルイズに向かってありったけの大声で怒鳴った。

「ミス・ヴァリエール!そこから皆を連れて早く逃げなさい!」
「出来ません!今ここでこいつを倒しておかないと、何処まで逃げたってまた襲われるじゃないですか!それに……それに……もう誰にもゼロなんて言われたくないんです!!」

言い終わったのを合図に、ルイズは素早く魔法を詠唱してゴーレムに向かって放つ。すると一際大きな爆発音が発生し、ゴーレムの脇腹が粉々に吹き飛んだ。
まるで、本塔の壁を破壊した時の様に凄まじい物であったが、吹き飛ばされた箇所は瞬く間に再生していく。
ルイズの心中で徐々に恐怖心というものが沸き起こってくるが、隣にいる使い魔達を見て未だ手が尽きたわけでは無いと考え、ミーに向かって叫んだ。

「ミー!あんたの小熊、何かわざを使えるって言ってたわよね?!何か出せないの?!!」
「あ、あの……その、何が出せるか……ミー、分からない!!」

ルイズにとっては、予想もしていなかったあまりの回答なのか、視界が一瞬ぐゎらと揺らめく。
本人から詳細を訊いていなかったせいもあるが、これでは全く何にも役に立たない。木偶の坊の方がまだ遥かにマシとも思えてきた。
その間にもゴーレムはルイズ達との距離を詰めていき、力のあるルイズを先に叩き潰さんとばかりに大きく足を上げた。
最早これまでと目を瞑るルイズ。しかし突然、離れた所から素早く駆けつけたコルベール氏によって抱きかかえられ、間一髪のところでクレープの様になるのを免れた。
半瞬呆気に取られた後、ルイズはゴーレムの足元を注視する。見ると足の縁から10サントと離れていない所で、ミーがヒメグマを丸く抱えながら震えていた。
そんなルイズに、コルベール氏は半ば怒鳴りつける形で注意をする。

「ミス・ヴァリエール!いい加減に意地を張るのは止めなさい!!全員が無事なら『鉄拳の箱』を持って撤退するのも作戦の内です!!」
「でも……ここで逃げたら……先生、また私は……!」
「冷やかされるというのですか?見下されるというのですか?ここで死ぬよりはもっとましでしょう!!
さっきも言ったように、我々は奪われた『鉄拳の箱』を誰一人欠ける事無く持ち帰る事が第一義務なのです!学院長には私から幾らでも取り成します!さあ、早く使い魔と共にここを……」


その先はゴーレムによる容赦無い攻撃によって遮られてしまった。しかしこれで、相手はただ蹲っているだけのミーから注意を逸らしただろう。
コルベール氏と、改めてミーの方を向いて呼ぼうとしたルイズはその瞬間、ある不思議な事が起こっているのに気付いた。
ヒメグマに触れているミーの右手。そこにあるルーンが、今までの物とは比べ物にならないほど強く光り輝いていたのである。
そしてミーは、段々明瞭さと力強さが増していくような声でルイズに話しかけた。

「御主人様……ミーのヒメグマは‘ひっかく’を覚えています!!」

Louise&Little Familiar's Order「The box of irony fist」

その言葉の意味を理解するのに、咄嗟の判断にしてはかなりの時間を食ったが、ルイズはミーに対して矢継ぎ早に命令した。

「いいわ!なら、ゴーレムに向かってひっかくをやってみなさい!!」
「……はい!!ヒメグマっ、ひっかく攻撃!!」

その命令を受けてヒメグマはミーの手から離れ、自分の何倍もの大きさを持つゴーレムへ何の迷いも無く勇敢に向かって行く。
そして持ち前の鋭い爪を使い、ゴーレムに向かって大振り気味のひっかき攻撃を繰り出したが、ゴーレムの表層は全く傷つく事も無く、また体自体も微々として傾がない。
あまりの無反応振りだったが、ヒメグマもある程度それを予想していたのか、慌てる気配は露程も見せない。
両者が睨み合いを続ける中、コルベール氏は大声でミーに向かって叫んだ。

「駄目だ、使い魔君!!その小熊を連れて早くそこから逃げるんだ!!わざがあるといっても、それだけ効果が無いのではとてもじゃないがまともに戦って勝てるはずが無い!!」

しかしミーは自分の元に「ヒメグマ、戻って来て!」と言っただけで、そこから動くような素振りは毛ほども見せない。ひっかくという攻撃以外にも何かわざがあるのだろうか?
その時、ミーは近くに転がっていた『鉄拳の箱』を急いで手にし、側面に付いていた突起に触れる。
すると、箱は両側に向かってきらきらと輝く粒子をふんだんに放ちながらすうっと割れるように開いた。
そして、例えるなら「ピンポーン」という聞き慣れぬ音と共に、奇妙な抑揚だが割りと涼やかな声が、周囲に向けて穏やかに響き渡った。

『わざマシンを起動します。中には『ばくれつパンチ』が記録されています。『ばくれつパンチ』をポケモンに覚えさせます。よろしければ再度記録ボタンを、キャンセルの場合はキャンセルボタンを押して下さい。』

これを聞いたミーの心臓は、忽ちにして大きな鼓動を打ち始める。
自分が思った通り、これは『鉄拳の箱』なんて物じゃなかった。これは自分の元いた世界でわざマシンと呼ばれているポケモン用の道具だったのだ。
しかも『ばくれつパンチ』がどれ程の威力は自分自身よく知っている。ここに来る前……ミーにとってはわりとつい最近の出来事なのだが、全く同じわざで相手が持っているポケモンを吹っ飛ばした事があるのだ。
ただ……それは相手も同じくらいの大きさのポケモンだったからこそ起きた出来事なのだ。体格が何倍も違う相手に、多少の誤差はあるとしても同じような効果が出るかどうかははっきり言って怪しいものだ。
それに『ばくれつパンチ』は命中確率がかなり低いという事と、使える回数が普通のわざに比べてかなり限られているという事もマイナス条件としてはある。だがミーはそんな条件なぞよくは知らない。
そんなに深く考える事も無く、わざマシンの記録ボタンを押した。すると箱から噴き出していた光の粒子が、傍らにいたヒメグマに向かって降りかかり始める。
上手くいったのか気になったミーは、ヒメグマに向かって命令を出す。

「ヒメグマ、ばくれつパンチ!!」

新たな命令を受けたヒメグマは軽く助走を付け、ゴーレムの胸元辺りにジャンプした直後、光り輝く鉄拳を繰り出す。
その時、その場にいた全員は信じられない光景を目にした。
ばくれつパンチが炸裂した瞬間、凄まじい勢い、そして音と共にゴーレムの上半身が幾つもの岩塊になりそして吹っ飛んだのだ。
下半身だけになった姿を晒しているゴーレムを見て、ルイズ達は歓声をあげる。
しかしその喜びも束の間、ゴーレムは足元にある土を取り込んでいき、再び元の体を形成させる。
ゴーレムを操っている術者―十中八九フーケと思われる―がそれだけ強い精神力を持っているのだ。同じわざを再び繰り出して同じ様な結果になるかもしれない。
諦めたルイズがミーを呼び出そうとした時、コルベール氏が離れた所にいたキュルケ達に向かって呼びかける。


「ミスタ・グラモン!ミス・ツェルプストー!ミス・タバサ!考えがある!早くこっちに来るんだ!!」

呼びかけに答える様に、キュルケ達は隠れていた茂みから飛び出し、脱兎の如く反対側へ走り出す。
すると、術者はゴーレムに全員を効率良く潰してしまえと指令を出したのか、三人がミーの影に重なった瞬間に巨大な拳を振り回す。
落ち着いてみれば決して早くないその動き。キュルケ達は鮮やかにかわすが、ミーは突然の事にパニックを起こしたのか、ヒメグマに向かって再度命令を出す。

「ひ……ヒメグマ!もう一度ばくれつパンチ!!」

命令を受けたヒメグマは、自分に向けられた岩の拳に対して渾身の力を込めた拳で応える。
するとゴーレムの右腕は腕の付け根の辺りまで、またも勢い良くただの岩塊となって周囲に吹き飛ぶ。
力の逃げ場が無くなった為にバランスを失ったゴーレムは、後方に向かって派手に尻餅をついた。
その間にギーシュがミーの腕を引っ張り、コルベール氏のいる安全圏まで引き離す。
ここまでくると、流石に相手側もそれなりに疲弊してきたのか、ゴーレムは腕が再生する様子も、再び立ち上がる様子も見せない。それを見ながらコルベール氏は全員に小さく早口に囁く。

「これから皆である作戦を実行する。先ずミスタ・グラモン、君はあのゴーレムに向かって薔薇の花弁を出来るだけ沢山吹き付けたまえ。
その直後に錬金を唱えて花弁を油に変えた後、私とミス・ツェルプストーが出来得る限りで強力な炎攻撃を出す。
その攻撃が終わったら今度は再度ミス・タバサが氷雪魔法でゴーレムの全体を出来るだけ急速に冷やしていく。
最後はミス・ヴァリエールの使い魔の小熊だ。先程繰り出した攻撃をもう一度出させる。そうすれば……ゴーレムは粉々になるはずだ。」
「上手くいく保証はあるんですか?」

数に入れられていないルイズが不安そうに訊ねる。だがコルベール氏は至って真剣な表情で答えた。

「私がこれまで行ってきた実験で導き出した考えが確かなら、これ程に有効な手は無いと考えられる。乾坤一擲ともいえる手だが今は迷っている時間は無い。さあ、直ぐに実行に移すぞ!」

その言葉を合図に、腕を再生し立ち上がろうとしているゴーレムに向かって全員が杖を向ける。
先ずギーシュが造花の薔薇を一振りすると、大量の花弁が空中に舞う。次にタバサが風魔法でそれをゴーレムに向かって勢い良く吹き付けた。
そして全体が満遍なく真っ赤になったのを確認した後、再びギーシュが錬金の魔法を唱えて花弁を油に変えた。
間髪入れずにキュルケとコルベール氏が、持てる全ての精神力を動員して強力な炎を放つ。
一瞬にしてゴーレムは青白く輝く劫火に包まれ、成す術も無く前のめりに倒れた。
それから二人の精神力が尽きかけた頃、再びタバサが強力な『アイス・ストーム』をゴーレムに放つ。
体が大きい事から全体が氷結する事は無かったが、全てを立案したコルベール氏にとってはそれでも十分なものであった。
何とか動こうとするゴーレムを見ながら、コルベール氏はミーに言った。

「今だ使い魔君!!さっき小熊が出した技をもう一度出すんだ!!」

ぼうっとその場に突っ立っていたミーは、はっとしてヒメグマに命令を出す。

「ヒメグマ!ばくれつパンチ!!!」

ヒメグマは待ってましたとばかりに、拳を振り回しながらゴーレムへ向かっていく。
そしてそれが丁度腹の辺りに衝突した瞬間、ゴーレムの体は無数の細かい土くれとなり四散した。
金属物質の凝結した破片と水分の凝結した箇所の見られるそれは、空き地へ広範囲に広がった後、二度とゴーレムの体として復活する事はなかった。
事態を見守っていたコルベール氏はほっとした様に息を吐く。


「金属を含む物質は急激に加熱した直後、逆に急激に冷やしてやるととても脆くなる。まさかとは思っていたが……成功して良かった。」

だがそれを聞いている者など誰一人としていない。皆、互いの手を取り合って作戦の成功を喜んでいた。
ただ、ルイズだけは素直に喜べずにいた。戦力に関しても作戦に関しても何一つとして欠けてはならない要素足りえなかったからだ。
そんな時、別の方向にある茂みから、偵察に行っていたミス・ロングビルが姿を現す。

「おお、ミス・ロングビル。どうでしたかな?フーケはいましたかな?」

コルベール氏の質問にミス・ロングビルは、分からないといった様に軽く首を振って答えた。
ともかくこれで一件落着。開きっ放しになっていた『鉄拳の箱』をミーが抱えようとする。すると、代わりにミス・ロングビルの手が伸び、すっとそれを自分の手の中に収めた。
それを見ていたコルベール氏は表情を瞬時に変え、厳しい目つきでミス・ロングビルを見つめる。

「ミス・ロングビル……やはりあなたが……」
「そうよ。私が『土くれ』のフーケよ。」

そこにいるのは最早ミス・ロングビルという名前の女性ではない。数多の貴族を手玉にしてきた、猛禽類の様な目を持つ女怪盗フーケであった。

「やはり、って呟いたって事は随分と察しが良いのね。あの人の良さそうな耄碌爺なら騙くらかせるかと思ったんだけど、とんだ計算違いだったみたいね。
あんたもあんたよ。金属を含む土の特性を利用したあんな即席の作戦を立てるだなんて、伊達に研究室に篭もって火の研究をしていないだけはあったようね。あたし御自慢のゴーレムが粉々じゃないのよ!!」

そう言ってフーケは自分の杖を全員に向ける。だが、コルベール氏はその脅しに屈する事は無く、自分も杖を掲げて冷静に答えた。

「抵抗するのは止したまえ。君はあれだけのゴーレムを作り、あれだけの攻撃に耐えた。もう精神力は微々として残ってまい。小さな土人形を作るので精一杯だろう。降参したまえ。」
「偉そうな口利くんじゃないよ!!それはお互い様じゃないか!!それに降参?死ぬほど嫌いな貴族共に情けをかけられるなんざ御免だね。そんな目に会うなら、あたしゃどんな事をしてでも生き抜いてみせるよ!!
……さてと、あまりおしゃべりしている時間はないんだよ、あんた達と違ってね。どっかに逃げた後にでかい力を生むこいつをとっとと金に換えたいんだよ……」

フーケはそこまで言って小さく笑う。だがそれを聞いていたミーはふっとある事を口にした。

「おねえさん……それもう使えないよ。」

その言葉にルイズ達はえっ?という表情を浮かべる。使えないとはどういう事なのか?フーケも一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、直ぐに小馬鹿にした様な薄ら笑いを浮かべる。

「お嬢ちゃん、面白い事を言うんだねえ。お姉さんにその理由教えてくれないかしら?」
「だって、わざマシンを使えるのは一回だけだもん。それに人間には使えないもん。」


ミーの言を最初から疑っていたフーケは、ミーが先程やったように『鉄拳の箱』もとい、わざマシンの箱の側面にある記録ボタンを押してみる。
しかし何の反応も返っては来なかった。焦ったように何度も押してみるが、何度やっても結果は同じだった。
その段になって、フーケは初めてミーの言っている事は本当なのだと分かった。最早何の役にも立ちはしない物を自分の手に収めたって意味が無い。
そしてフーケはその時ミスを犯していた。自分の周囲に対して注意が散漫になっていたのである。
端的に言えば、先程の戦いで比較的精神力をあまり消費していなかったギーシュが、ごく小さく杖を振り、自分の背後に青銅のワルキューレを一体立たせた事にも気づかなかったのだ。
フーケが気付いた時には時既に遅し。ワルキューレはかなりの速さで彼女に近付き、首元に強力な肘鉄を喰らわせた。
瞬間フーケの体はびくりと痙攣し、それからゆっくりと地面に崩れ落ちる。
そして上手く気絶したのだろうか、起き上がる気配は全く無くなった。
キュルケ達は再びゴーレムを倒した時の様に互いに顔を見つめあい、そして自分達の勝利を喜んだ。
そして、ギーシュがフーケの杖を取り青銅の手錠をはめる中で、やはりルイズはミーの側に寄り、とある疑問を口にした。

「ねえ、あんた……どうしてこの熊が覚えているわざを最初は知らなかったのに、後で知ってるなんて答えたの?」
「よく、分からないです。いきなり、あっ、知ってるっていう風になったから……」

なんともはっきりしない答えだ。だが、その出来事がもしヴィンダールブのルーンに因るものであったのなら……考える価値のある考察ではある。
抜けるような青空の下、ルイズは改めて自分の使い魔が如何なる力を持っているのかを不思議に思うのだった。



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