あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの最初の人-02


 通常、人は他人と会話を行う際、意識的にそれを行うか否かの違いはあれど、次の相手の発言をある程度"予測"するものだろうと、作者は考えている。
 予測ができれば、自身の次の発言を考えておくことができ、スムーズに会話することができる。さらに予測のうまい人なら、自身の発言に対して相手がどのように返してくるか。までも予測し会話をコントロールすることができるのかもしれない。
 逆に会話が苦手な人は、次の発言を予測できないため、相手が何を発言してくるかわからない。日常風景に例えるなら、常に先のわからない曲がり角を連続して続く道を移動するようなものであろう。
 閑話休題、今のルイズの精神状態はその"予測"ができる状態になかった。

 唱えたはずの呪文は、使い魔を召喚する呪文。なぜか呪文で召喚されたのは人。
 その「使い魔召喚の儀式で人を召喚した」という事実が、ルイズの心を平時の状態にさせなかった原因のすべてである。

 魔法が成功したということに"喜び"
 人を召喚したことを野次る者へ"怒り"
 召喚したのが人ということが"哀しい"
 そして、成功しうるかも知れない、まだ見ぬ魔法達が"楽しみ"

 その異なる感情たちが一度に心に同居してしまったため、混乱していしまい、非常に不安定な状態にあった。
 そんなところに、その原因である"召喚してしまった"使い魔が話しかけたのだ。
 「使い魔に話しかけられる」なんてことを一切考えなかったルイズは、間の抜けた顔をしながらも何とか答えようとするが、返答はうまく言葉になるはずもなかった。
「へ?な、ななに」
 なおも言葉を紡ぐことのできないルイズを見て青年は微笑を浮かべながら答えた。
「そんなに焦らずともよい、深呼吸でもして、少し落ち着いたほうがいいのぅ」
 いつものルイズなら、身元の分からない人間の言葉に従うようなことはなかっただろうが、なにせ今の状態のルイズは"普通"ではないため、素直に従い深呼吸することにした。
 青年とルイズがやり取りをしてるとき、その現場に一番近くに居た人間。コルベールが近づいてきた。
 彼はルイズに比べると"普通"の精神状態にあったため、彼の持つ"杖"の意味を考えることができた。そして自分の中で出た結論を心に置きながら青年との会話に臨む。
「ちょっとよろしいですかな」
「おお、おぬしでもかまわぬ。すまぬが、何故わしがここにおるかしっているかのぅ?」
「すみませんが、その前にあなたの名前を聞かせてもらえませんでしょうか、ずっと"あなた"では呼びにくいもので」
「ん?そういえば名乗ってなかったかの。わしは」
 ここまで言って言葉に詰まる。自分には1つの大きな記憶と2つの小さな記憶があり、それに伴い名乗るべき名前も複数ある。どうしたものかと考えようとしたが、自然に、ある名前が口をついた。
「――太公望というものだ」


 なぜ、この名前を選んだのだろうか。
 断言することはできないが、きっと彼がこの名前で得たものが一番多いから
 この名前で得た友が一番多いからであろう。
 コルベールが不思議そうに尋ねてきた。
「ミスタ、タイコーボーですかな……?」
 メイジ、強いては貴族の象徴であるともいえる、杖を見たとき、コルベールは彼のことをどこか小国の貴族だと考えたのだ。
 しかし、その名前に家名らしきものはなかった。しかも、聞いたこともないイントネーションである。
 あまりに"予測"と違うその答えに聞き返さずにはいられなかったのだ。
「ああ、たぶんそうだのぅ。で、おぬしの名前は何だ?わしにだけ名乗らせておくというのはこの国では無礼にならないのかの?」
 普通なら"たぶん"という部分に引っ掛かったろうが、自身の名前を聞かれたため、貴族という身分のものとしては名乗らざるを得ない。
「ああ、申しわけありません。私はこのトリステイン魔法学校の教員をしております。ジャン・コルベールと申すものです」
「…………は?……すまぬちょっと待ってくれ」
 そう言って、目を閉じ頭に手をやり考え込むポーズを見せる太公望。数秒後すぐに口を開いた。
「この国の隣国の名前は?」
「え?はぁ、ゲルマニアなどがありますが」
「んじゃ、ここの通貨は?」
「ドニエ、スゥ、エキュー。ですね。ええと、それぞれの価値は必要ですか?」
「いやかまわん……なら、殷、周、崑崙山脈、金鰲列島、この中に聞き覚えのある単語はあるかの?」
「……いえ、どれも聞いたことがありません」
 苦笑しながら頭を掻く太公望。どうやらまたややこしいことになったらしい。
「はぁ……ちょっと質問攻めするが構わんかのぅ?」
 コルベールが答えようとしたとき、ルイズが割り込んできた。太公望に言われた深呼吸のおかげか、まだ少し息は荒いが、頭は冷えているらしく、思考を練ることはできるようになるまでに回復していた。しかし、落ち着きを取り戻すには、まだ少し足りなかった。
「あ、あんた、貴族でしょ?なんでそんなことも聞いてるのよ!っていうかどこの貴族よ?!国は?家名は?!」
 どうやら、太公望の名乗りの少しあとに復活したらしい。いちいち説明するのも面倒なので、太公望は軽く答える。
「うるさいのぅ、一息にそういくつも質問せんでくれ。
 というかわしは、おぬしの言うところの"貴族"の意味すら分からぬ。だからこそ、こうして質問してるんだろうが」
「へ?き、貴族じゃないってじゃあ何なのよ!」
「だから、それはあとで話すから、こっちの話を進めさせてくれんかの」
 コルベールが太公望につつける。
「ミス・ヴァリエール、すこし落ち着いて彼の話を聞いてあげなさい。一方的にまくしたてることが貴族のすべきことですか?」
 ルイズが少しだけ口をとがらせながら、頷いた。
 それを見た太公望は、コルベールに顔を向け、質問を開始した。

 太公望は現時点でコルベールから、すべての質問に対して満足いく答えを得ることができていた。

 ここは、ハルケギニア大陸の西側に位置するトリステイン王国という国であること。
 この世界の、トリステインを含むほとんどの国は王政で、政治を行うのが"貴族"とよばれるものであること。
 貴族は全員、魔法を使うことができ、メイジと呼ばれること。
 魔法は生活に密着しており、貴族は魔法を使うことで平民を統治していること。

 これらの話から察するに、どうやらここは地球とは別の星であるか、異なる世界であるといえるだろう。向こうに居たころは"魔法"なんてものは一度も聞いたことがなかったし、説明に使われる地名などに一切の聞き覚えがない。
 しかし、もう地球でやることなんてあるはずがなく、自堕落な生活を送っていた太公望にとっては、まぁなったものはしかたない。と割り切ることができることであった。
 そのことをコルベールに話すと少しホッとするような笑みを浮かべた。
 ちなみに、太公望とコルベールが会話している間、ルイズは太公望をにらみながらも、話に横やりを入れてくることはなく、ちゃんと黙って聞いていたことを伝えておく。
 そして、太公望の質問の内容はここの"場所"に関するものから、自分がここに居る"理由"に変わる。
「で、結局、わしはなぜここに居るのかのぅ?」
 すこしだけ、コルベールが言い淀む。そのときずっと黙っていたルイズが話に割り込んできた。ようやく落ち着けたようで、先ほどのように怒鳴ってくるようなことはなかった。
「コルベール先生、このことは召喚した私に責任があります。彼には私から説明してもよろしいですか?」
「あ、ああ、そうですねお願いします」
 コルベールが一歩下がりルイズに場を譲る。

 ルイズの目を見て太公望が言った。
「ここからはおぬしが説明してくれるのか?」
「ええ、タイコーボーでよかったわよね?
 まず結論だけを述べるとあなたはサモン・サーヴァントで、私の使い魔として召喚されたってわけ」
 太公望が少し嫌な顔をしながら答えた。
「使い魔?……ハァ。また聞き覚えのない言葉が出てきおったのぅ」
「メイジは何者かは聞いたでしょ?で、使い魔はそのメイジと一生をともにするパートナー。サモン・サーヴァントは使い魔を召喚する呪文で、主に相応しい使い魔を召喚するらしいの」
「らしいって……また適当だのう」
 呆れたように言う太公望に、ルイズが溜息を吐きながら返す。
「ほんとよ……なんでアンタみたいなのが……ハァ……
 で、ここからが本題だけど、タイコーボーには私の使い魔になって欲しいの。というより召喚された以上なってもらわなくちゃだめなのよ」
 コルベールはルイズの言葉に一人息を呑んだ。「使い魔になれ」そう言われたら普通の人間なら怒るだろう。しかも、相手は異世界から来たという得体のしれない人物である。こっそりと杖を抜き、何が起こっても対応できるように用意した。
 そして、太公望が答える。

「まぁ……別にかまわんかの」

 誰かに仕えるのはもしかすると初めてかもしれない。
 元始天尊の弟子ではあったが「師匠のため」と行動を起こしたことは一度もなかった。封神計画を依頼されはしたが、仙道の居ない人間界を作るというのは当時の"太公望"の悲願でもあった。だからこそ、あのようにがむしゃらになれた。
 もし自分が「成し遂げたいと思えること」以外を依頼されたとしても、あのように一心に取り組むことはなかっただろう。
 結局のところ自分はエゴイストなのだ。それはきっと直ることはなく、この少女に仕えたとしても変わらない。
 が、大した思い入れのないこの世界には、自分にとって、他者を押し退けてでもやりたいことなんてものはない。ならば目の前の小さな少女の願いを叶えるくらいいじゃないか。
 彼らしい思考で、太公望はその答えを返した。

 ルイズはそれを聞いて、うれしいながらも哀しくなる。使い魔召喚の儀式の成功が半ば確定した喜びと、使い魔が人であることの哀しみで素直に喜ぶことはできなかった。
 コルベールは心底ホッとし、杖をしまった。教え子が無事だったことと、杖を使うことがなかったこと、使い魔召喚の儀式がきちんと終了しそうなこと。その全てに安堵した。
 太公望はそんな二人を見て少し首を傾げたが、ふとあることが頭をよぎった。このことを確かめないことには、自分はここに居ることができない。
 そして、ゆっくりと口を開いた。

「最後にひとつ聞いていいかの?返答によるが、わしは使い魔になることができないかもしれぬ」

 一息ついたところにすぐ訪れた衝撃の一言。
 「使い魔になれないかもしれない」
 その一言の持つ重要性は相当なもので、またそれを言った太公望の声にもそれだけの重みが感じられた。
 次にくる言葉はなにか? どんな提案がなされるのか? それは可能なことだろうか?
 ルイズとコルベールは双方異なるものだが、確かな"緊張"をしていた。
 太公望の言葉を待つ。そして、太公望の言葉を"予想"する。
 そして口が開かれる。


「桃は貰えるのかの?」


 "予想"し得なかったと、二人はズッコケた。


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