あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ラスボスだった使い魔-27b


 チカは恐怖していた。
「ああ、シュウ、シュウ~!」
 戻って来た主人がマチルダを抱えていて、彼女が眠りから覚醒するや否や、半裸で自分の主人に迫り出したから……ではない。
「下品ですよ、ミス・マチルダ」
 それに対して、相変わらず極めてクールに対処している自分の主人に……でもない。
「やん、そんな『ミス』なんて他人行儀な呼び方はしないで、『マチルダ』って呼び捨てにしておくれよぉ……」
「では今後はマチルダと。
 ……マチルダ。あなたも一応は私と同じ年齢なのですから、いくら惚れ薬で我を見失っているとは言え、もう少し慎みや品性という物を持つべきです」
 『今のシュウとマチルダのやりとりを、ティファニアに報告しなくてはならない』という事実に対する恐怖である。
 取りあえず、いくつかの報告のパターンをざっと脳内でシミュレーションしてみる。


  • ケース1、前回のように『ありのまま起こったことのみ』を報告した場合
「ほう……へえ……ふぅん……マチルダ姉さんが……そうなんだぁ……。
 ……それでチカちゃんは、どうしてそれをただ黙って見てた『だけ』だったの? ウェストウッド村の風紀を守るために、シュウさんの健全な人生のために、命をかけてマチルダ姉さんを阻止するべきだったんじゃないかしら?
 …………仕方ないなあ。今後はこんなことがないように、しっかりチカちゃんの身体に教え込んでおかないと…………」


(い、言えねぇえええええええ~~!!)
 チカの脳裏に、先日行われた『ちょっと強めの確認』の記憶がフラッシュバックする。
 詳しい描写は避けるが、アレ以来、チカはロウソクに対して軽いトラウマを抱くようになってしまったのだ。
 やはり、もっと別の方法で報告するべきだろう。


  • ケース2、嘘を並べ立てた場合
「チカちゃん、今の話は嘘でしょう? え、全部本当ですって? ……それも嘘ね。だってチカちゃん、嘘をつくときはやたらと口が回るんだもの。視線も泳いでるし。
 ―――それで? 本当のところはどうなの?
 ……まあ、マチルダ姉さんが? シュウさんに?
 …………どうしてチカちゃんは、そんな大事なことを嘘をついてまで隠そうとしたのかしら?
 困ったなあ。それじゃチカちゃんがこれから嘘なんてつかないように、ちゃんと躾けておかなきゃ…………」


(駄目だぁあああああああ~~!!)
 ああ見えてティファニアは、なかなか人間に対しての観察眼が鋭いのである。
 ハーフエルフという身の上である以上、周囲を警戒しながら生きていかなくてはならなかったため、ある意味では仕方がないとも言えるのだが……。
 ならば、もう開き直って正直に話すしかないのだろうか。


  • ケース3、『惚れ薬を飲んでしまった』という事実を交えて話した場合
「えっ、姉さんが惚れ薬を!? そ、それで、姉さんは……そう、ちゃんと元に戻ったのね。よかった……。
 ……でも、半裸で? シュウさんに? 迫った? あのマチルダ姉さんが? ……そう言えば『惚れ薬』って、一説によると自分の秘めてる愛情をあらわにする効果があるって話よね……。
 …………それじゃチカちゃん、今後も『監視』をよろしくね♪」


(う、うーむ、これが最も無難と言えば、無難かなぁ……)
 実際にはこのシミュレーション通りに会話が進む保障などは何も無いのであるが、やはり『詳細な背景を交えて話す』のが一番だろう。余計な誤解も生みにくいだろうし。
(まあ、しっかし……)
「……なら、慎みとか品性を持ったら、優しくしてくれるのかい?」
「少なくとも『一人の女性』として扱うことは、お約束しましょう」
(……御主人様は、こういう風に『後で振り返ってみればどうとも取れる表現』ばっかりしてるから、色々と問題を起こすんだろうなぁ……)
 ざっと思い返してみても、そういうやり取りに心当たりが多すぎる。

「何を復活させる気か知らねえが、生けにえが必要なんだったら、まずてめえがそれになれってんだ!!」
「フフフ……それは言い得て妙ですね。その言葉、覚えておきましょう……」

 とか。

「シュウ! ようやく本性を現しやがったな!」
「本性……? いったいあなたは私の何を知っているというのです?」
「何……!?」
「本当の私は、あなたが知っている私ではないかも知れませんよ」

 とか。

「ゼロは俺に貴様の死を見せてくれている……」
「フッ……、未来というものは自らの手で変えるために存在しているのですよ」

 とか、ダカールでロンド・ベル隊と戦った時だけでもこれだけあるのだ。
 ……もっとも、あの時はバリバリにヴォルクルスの支配下にあった頃なのだから、意図的にそういう傾向の発言をしていた節があるのだが……。
「じゃあシュウ様ぁ、私と一緒に寝てくださいぃ。何でしたらそのまま朝までぇ……」
「……言葉遣いだけを丁寧にすれば良いという物ではないのですが……。それと、最低でもそのはだけた服は直すようにしてください」
「うふふ、やだ、シュウ様ったら脱がせるのがお好みなんですねぇ? 分かりましたぁ~」
「…………怒りますよ、マチルダ?」
「あうっ……、その射抜くような眼光もステキですぅ……」
(ま、今のマチルダ様とか、サフィーネ様やモニカ様みたいな相手には、そういうのも通じないか)
 やっぱりこういう回りくどいミステリアスなキャラには、ストレートな単純キャラや天然キャラの方が攻略には向いてるのかもなぁ……などと思うチカであった。

「……じゃあ、私たちもルイズを寝かせましょうか」
「そうだな」
 エレオノールとユーゼスも、ユーゼスの背中に張り付かせたままで隣のルイズの部屋に移動してルイズを寝かせようとしたのだが、やはりそこでも悶着が起きた。
 まず魔法学院の制服を脱がせて寝具のネグリジェに着替える時点で、
「ユーゼスぅ、着替えさせてぇ~♪」
 と、猫なで声でルイズが言ってきたのである。
 ユーゼスはその要請を特に躊躇も疑問もなく行おうとしたら、いきなりエレオノールに頬をつねられた。
「いきなり何をしようとしてるの、あなたは!」
「……ここ最近はしていなかったが、召喚されてからしばらくの間は御主人様の着替えは私が行っていたぞ」
「…………金輪際、絶対に、二度とやらないでちょうだい」
 かくして、ルイズの着替えはエレオノールが強引に行うことで何とかなった。
 そして次に就寝時。
「一緒に寝て♪」
 少し眠そうな瞳で、ルイズはユーゼスに『お願い』する。
「……それは断る、と前々から言っていたはずだが」
「イヤぁ! ユーゼスが一緒に寝てくれなきゃ、わたし、絶対寝ないんだからぁ~!」
 さすがにゲンナリし始めるユーゼスだったが、やはりここでもエレオノールがルイズを叱りつけた。
「ああもう、ルイズ! 仮にも結婚もしていないレディが、男と一緒のベッドで寝て良いわけがないでしょうっ!!」
「……わたし、ユーゼスと結婚するからいいんだもん」
「なっ……!!」
 いきなり妹の口から爆弾発言が飛び出したので、絶句するエレオノール。
 だが『これは惚れ薬のせい、惚れ薬のせい、ルイズはそれほど悪くないわ』と自分にムリヤリ言い聞かせて冷静さを保とうとする。
「何にせよ、ユーゼスと一緒に寝るなんて駄目よ、駄目! 絶対!!」
「ふんだ。いいもん、姉さまが何と言おうと、わたしはユーゼスと一緒に寝るんだもん」
 ルイズはグイッとユーゼスの右腕を引き、エレオノールは負けじとグイッとユーゼスの左腕を引いた。
「……人の腕を、両側から引き合わないで欲しいのだが……」
 ユーゼスが漏らした呟きは、ヴァリエール姉妹には届かない。
 そのままグイグイとユーゼスの腕を引っ張り合うこと、しばし。
 ラチが明かないと判断したエレオノールは、パッとユーゼスの腕を離す。
「うふふ、エレオノール姉さまがユーゼスの腕を離したわ。そしてわたしは掴んだまま。……じゃあユーゼスはもう、わたしだけのモノってことで良いんですよね?」
「……勝手にそんなことを決めないでちょうだい」
 そう言うと、エレオノールは目を閉じて黙考し、逡巡し始めた。
「……うぅ、でも……この場合は、仕方なく……」
 やがて意を決したのか、カッと目を見開き、顔を真っ赤にして言葉を震わせながら宣言する。
「わ、わわ、わわわわわ私も一緒に寝るわ!!」
「ええっ!?」
「何?」
 これにはルイズだけでなく、ユーゼスも驚いた。
「一応、『何故』と聞いておこう」
 当然の質問を放つユーゼス。それにエレオノールはぎこちない口調で答える。
「ど、どうせ、ルイズをムリヤリ寝かせて、あなたを隣の研究室で寝かせても、夜中に忍び込む可能性が高いだろうし、だ、だったら……始めから私が、あ、間に入って、監視しておけば、安心でしょう!」
「むう……」
 まあ確かに、今のルイズと二人きりになるのは身の危険を感じる。
 ここはエレオノールに防波堤になってもらうのがベターな方法だろう。
「むぅ~、邪魔しないでください、姉さま!」
「……私はあなたのためにやってるのよ、このちびルイズ!」
 ぎゅううぅ~、とルイズの頬をつねり上げるエレオノール。
 その後もルイズは盛大に不満をアピールしていたが、モンモランシーが作った睡眠導入用ポーションを大量に使用して強引に眠らせることで対処した。
 なお、このポーションはあくまで『睡眠導入用』であり、バッチリ覚醒している人間に対して使っても『少し眠くなる』程度の効果しか望めない。
 だが、今のルイズのように『既にある程度眠くなっている』人間に対して一定以上の量を使用すれば、ほとんど即効性の睡眠薬と変わらない効果が見込めるのである。
「では、眠るか」
「そ、そうね。……着替えてくるから、少し待っていてくれるかしら」
「分かった。その間に御主人様はベッドに寝かせておこう」
「……変なことしてたら、殺すわよ?」
「するつもりなど無いよ」
 ユーゼスの言葉に納得したのか、エレオノールは素早く自分の部屋に戻っていく。
 そしてルイズを部屋のベッドに横たえさせて、待つこと30分。
(……この部屋からミス・ヴァリエールが間借りしている部屋までは、往復しても10分もかからないはずなのだが……。いくら何でも遅すぎるな……)
 彼女は一体、20分以上も何をしているのだろうか。
 やることが無いのでルイズが何かしでかさないよう、予備のシーツでグルグル巻きにしてもまだエレオノールが来ず、いい加減にユーゼスが待ちくたびれた頃……。
 薄いピンク色のネグリジェを着込み、枕を持参したエレオノールはやって来た。
「ま、ま、待たせたわね……」
「ああ、待たされたな」
 エレオノールはギクシャクとぎこちない動作でルイズの隣に横になり、更にぎこちない口調でユーゼスを自分の隣に促す。
「さっさささ、さあ、とととっとっととっとっ……とっとと、横になりなさいっ」
「……緊張しすぎではないか?」
「んなっ、そんなっ、ききき緊張なんて、してるワケ、ないでしょうっ!!」
「……まあ、睡眠さえ取れれば私は別に構わないが……」
 ガチガチのエレオノールを横目に、ユーゼスは割とスムーズにルイズのベッドに入る。
「そ、それじゃ……お、おお、お休みなさい」
「慌ただしい一日だったからな。……睡眠は十分に取れ、ミス・ヴァリエール」
 かくして、この夜はルイズ:エレオノール:ユーゼスという並びで眠りについた。
 ……なお、あらためて『ユーゼスと同じベッドで一緒に寝ている』という現在のシチュエーションを意識しまくったエレオノールは、緊張やら興奮やらで、睡眠導入剤を使ってもほとんど効果がなく、この夜を眠れずに過ごすことになる。
 ちなみに、密かにユーゼスも少しだけ寝つきが悪かったりしたのだが……。
 ……それが久し振りにベッドで睡眠を取ったからなのか、隣にエレオノールがいたからなのかは、定かではない。


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