翌日。ルイズにパソコンを爆破され鬱状態のこなたはダラダラと通学路を歩いていた。
内心、学校どころではなかったが父は仕事上常に家にいるのでサボるわけにもいかず、
こうしてどんよりとした空気を纏い登校している。
内心、学校どころではなかったが父は仕事上常に家にいるのでサボるわけにもいかず、
こうしてどんよりとした空気を纏い登校している。
「おーっす」
「こなちゃんおはよー」
「こなちゃんおはよー」
のろのろと振り返ると友達の柊かがみとその妹、柊つかさがいた。
「…ふたりとも、おはこんばんちはー…」
「あ、朝から暗いわね。つか何よその挨拶」
「こなちゃんどうしたの?」
「実は昨夜、かくかくしかじかでさぁ…」
「いや、わかんねーよ。漫画じゃないんだから」
「あ、朝から暗いわね。つか何よその挨拶」
「こなちゃんどうしたの?」
「実は昨夜、かくかくしかじかでさぁ…」
「いや、わかんねーよ。漫画じゃないんだから」
ツッコミを入れるかがみ。呆れる姉に代わり、つかさが問いただす。
「ほんとにどうしたの?」
「どうせ深夜番組の録画に失敗したとか、そんなんでしょ?」
「…昨日の夜にパソコンが爆発してね、木っ端微塵になったんだよ…」
「そ、それはたいへんだね…」
「どうせ深夜番組の録画に失敗したとか、そんなんでしょ?」
「…昨日の夜にパソコンが爆発してね、木っ端微塵になったんだよ…」
「そ、それはたいへんだね…」
気の毒そうにするつかさ。だが、かがみは違った。
「あのな、アニメじゃないんだから今時の家電が粉々になるほど爆発なんてするわけな
いでしょ。大方、ちょっと火を吹いたくらいだろ」
いでしょ。大方、ちょっと火を吹いたくらいだろ」
アンタは大げさすぎ、とひらひらと手を振ってこなたの言葉を否定する。かがみは現
実的な小女だった。いつもなら反論するこなただったが、今はその気力もない。
実的な小女だった。いつもなら反論するこなただったが、今はその気力もない。
「…そのことも含めてみんなに相談したいことがあるんだ。みゆきさんにも協力して欲
しいし、教室に着いたら話すよー…」
しいし、教室に着いたら話すよー…」
それだけ告げて、鬱の空気を撒きながら黙々と歩くこなた。かがみとつかさは顔を見
合わせた。
合わせた。
「どうしようお姉ちゃん…?」
「とにかく、アイツのクラスに行くわよ。みゆきも交えて話があるみたいだし、そのと
きになればわかるでしょ」
「とにかく、アイツのクラスに行くわよ。みゆきも交えて話があるみたいだし、そのと
きになればわかるでしょ」
そして何事もなく稜桜学園にたどり着き、三人はこなたの教室に集まった。まばらな
クラスメイト達の中から目当ての一人を見つけ出す。
クラスメイト達の中から目当ての一人を見つけ出す。
「みゆき、おはよう」
「ゆきちゃんおはよー」
「おはようみゆきさーん…」
「ゆきちゃんおはよー」
「おはようみゆきさーん…」
最後の一人である高良みゆきはすでに着席していた。品行方正を地で行く生徒だけあ
って登校も一足早い。
って登校も一足早い。
「おはようございます、みなさん。泉さんは元気がないようですが、大丈夫ですか?」
「あー、なんか私達に相談があるらしいわよ。コイツのコレにも関係あるみたい」
「まぁ…わかりました。微力ながら力になりますよ」
「さ、こなちゃん。みんな揃ったし、話してみて」
「うん…」
「あー、なんか私達に相談があるらしいわよ。コイツのコレにも関係あるみたい」
「まぁ…わかりました。微力ながら力になりますよ」
「さ、こなちゃん。みんな揃ったし、話してみて」
「うん…」
こなたは昨夜の出来事を包み隠さず話した。異世界の少女ルイズが自分の家に現れ、
帰還のあてもないので無期限の滞在をしていること。彼女はメイジで、その魔法でこな
たのパソコンが爆破されてしまったこと。パソコンは買い直す目処が立ったが、そうじ
ろうに借金してしまい、しばらくは懐が寒いこと。
帰還のあてもないので無期限の滞在をしていること。彼女はメイジで、その魔法でこな
たのパソコンが爆破されてしまったこと。パソコンは買い直す目処が立ったが、そうじ
ろうに借金してしまい、しばらくは懐が寒いこと。
「とまぁ、こんなコトがあったんだよ」
『………』
『………』
経緯はどうあれパソコンは新しくなるという事実に気づき、メンタルがほぼ復調した
こなたの説明を聞き終えた三人だが、かがみは嘘付けと切って捨て、つかさとみゆきは
苦笑した。つまり三人とも信じなかった。こなたもそれは予想していたので特にめげた
りはしない。
こなたの説明を聞き終えた三人だが、かがみは嘘付けと切って捨て、つかさとみゆきは
苦笑した。つまり三人とも信じなかった。こなたもそれは予想していたので特にめげた
りはしない。
「まー、とにかくウチに外国からホームステイが来たと思ってくれればいいよ、今は」
「最初からそう言え。で、あたし達になにを手伝って欲しいの?」
「ルイズさん、日本語喋れるけど字は読めないから、かがみ達で教えてあげて欲しいん
だよ」
「それは大変ですね。私でよろしければお手伝いしますよ」
「私もいいわよ。どんな人なのかちょっと興味あるし。ヒマなときに少しずつでいい?」
「わたしもがんばるよ」
「最初からそう言え。で、あたし達になにを手伝って欲しいの?」
「ルイズさん、日本語喋れるけど字は読めないから、かがみ達で教えてあげて欲しいん
だよ」
「それは大変ですね。私でよろしければお手伝いしますよ」
「私もいいわよ。どんな人なのかちょっと興味あるし。ヒマなときに少しずつでいい?」
「わたしもがんばるよ」
三人とも快諾した。こなたはつかさには期待してないんだけどなー、などと考えてい
たが自重した。
たが自重した。
「じゃあ放課後、あんたの家行っていい? 会わないと始まらないし」
「OK。みゆきさんは大丈夫?」
「はい、今日は予定もありませんし」
「じゃあみんなでこなちゃん家に集合だね。どんな人なんだろうー?」
「んー、あたしとかがみとみゆきさんを足して3で割った感じ、かな?」
「どんな人間だよ」
「OK。みゆきさんは大丈夫?」
「はい、今日は予定もありませんし」
「じゃあみんなでこなちゃん家に集合だね。どんな人なんだろうー?」
「んー、あたしとかがみとみゆきさんを足して3で割った感じ、かな?」
「どんな人間だよ」
かがみがツッコミを入れた直後、ホームルームのチャイムが鳴った。
放課後。四人は泉家宅に到着した。
「ただいまー」
『おじゃましまーす』
「おう、おかえり。そっちのお友達もゆっくりしてって」
『おじゃましまーす』
「おう、おかえり。そっちのお友達もゆっくりしてって」
玄関でそうじろうが出迎えた。嬉しいことでもあったのか、顔が緩んでいる。
「ミスタ・イズミ。このキカイはどう使えばいいのかしら?」
ひょっこりとルイズが顔を覗かせた。取り合えずの措置として、こなたから借りた服
に身を包んでいる。
に身を包んでいる。
「ああ、ちょっと待ってて。すぐ行くよ」
緩んだ相好をさらに崩してルイズに向き直る父にこなたが待ったをかける。
「お父さん、ルイズさんと何してるの?」
「ん? ルイズちゃんが『ただ世話になるなんて申し訳ないから、家の仕事を手伝う』
と言ってくれてな。こうして使い方を教えているというわけだ」
「ん? ルイズちゃんが『ただ世話になるなんて申し訳ないから、家の仕事を手伝う』
と言ってくれてな。こうして使い方を教えているというわけだ」
いい娘さんだなぁ、と一人ごちるそうじろう。ルイズにしても世話になりっ放しでは
自身のプライドに関わるし、魔法以上に便利なこちらの世界の機械にはおおいに興味が
あり、内心楽しんで家事をしていた。そうじろうは見目麗しい少女が自分を頼ってくれ
るという状況を非常に堪能していたのであった。
自身のプライドに関わるし、魔法以上に便利なこちらの世界の機械にはおおいに興味が
あり、内心楽しんで家事をしていた。そうじろうは見目麗しい少女が自分を頼ってくれ
るという状況を非常に堪能していたのであった。
「お父さん、仕事は?」
「こっちのほうが大事だ。お前もそう思うだろう!」
「こっちのほうが大事だ。お前もそう思うだろう!」
ぶっちゃけ、こなたも同意だったが後ろの三人の視線が痛いので中断を言い渡し、ル
イズ達を連れて自室に行く。そうじろうは滂沱の涙を流した。
イズ達を連れて自室に行く。そうじろうは滂沱の涙を流した。
「はじめまして、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「はじめまして、こなたの友達の柊かがみです。こっちは妹のつかさ」
「ひ、柊つかさです。こなちゃんの友達です。よろしくおねがいします」
「高良みゆきと申します。よろしくお願いします」
「えーと、それで…」
「はじめまして、こなたの友達の柊かがみです。こっちは妹のつかさ」
「ひ、柊つかさです。こなちゃんの友達です。よろしくおねがいします」
「高良みゆきと申します。よろしくお願いします」
「えーと、それで…」
かがみはルイズの長い名前に戸惑う。姓名の区別がつかないのでどう呼んだものか決
めかねていると、察したルイズが口を開く。
めかねていると、察したルイズが口を開く。
「ルイズでいいわ。こっちじゃ長い名前に馴染みがないみたいだし、ここまで来て肩肘
張るつもりもないし。カガミ、ツカサ、ミユキ…だっけ? よろしくね」
張るつもりもないし。カガミ、ツカサ、ミユキ…だっけ? よろしくね」
「あ、そうなんだ。じゃあ…こちらこそよろしく、ルイズ」
「とても風格のある名前ですね。素敵な名だと思います」
「うん。ホントに外国の人なんだねー」
「そうそう、こなたが外国の居候がいるって言ったときは半信半疑だったけど。ところ
で、ルイズはどこの国出身なの? 凄く日本語上手じゃない」
「とても風格のある名前ですね。素敵な名だと思います」
「うん。ホントに外国の人なんだねー」
「そうそう、こなたが外国の居候がいるって言ったときは半信半疑だったけど。ところ
で、ルイズはどこの国出身なの? 凄く日本語上手じゃない」
当然と言えば当然のかがみの質問に、ルイズとこなたは顔を見合わせる。
「まぁ、信じてもらえなかったよ」
「あんたの言った通りなわけね…。いいわ、みんな少し付き合ってくれるかしら?」
「あんたの言った通りなわけね…。いいわ、みんな少し付き合ってくれるかしら?」
嘆息したルイズの先導で庭に出る。ルイズとこなた以外の三人は庭に置かれた物に眉
をひそめた。破砕し、焼け焦げたパソコンが放置されていたからである。
をひそめた。破砕し、焼け焦げたパソコンが放置されていたからである。
「あの…?」
「悪いけど、質問はこれが終わったらまとめて受け付けるわ」
「悪いけど、質問はこれが終わったらまとめて受け付けるわ」
ぴしゃりと言い放ち、ルイズは懐から杖を取り出す。短く詠唱し、威力を絞って魔法
をパソコンの残骸に向けて放つ。
ぼん、と小さな爆発が起こり、パソコンの残骸が飛び散った。
驚きのあまり声も出ない三人に、こなたがにやけて言った。
をパソコンの残骸に向けて放つ。
ぼん、と小さな爆発が起こり、パソコンの残骸が飛び散った。
驚きのあまり声も出ない三人に、こなたがにやけて言った。
「言ったでしょ? ルイズさんはメイジっていう魔法使いなんだよ」
「…今日は今まで生きてて一番驚いたわ」
「本当ですね。泉さんには悪いことをしてしまいました」
「でも凄いよねー。別の世界があって、魔法使いがいるなんて」
「本当ですね。泉さんには悪いことをしてしまいました」
「でも凄いよねー。別の世界があって、魔法使いがいるなんて」
ルイズの魔法を目の当たりにし、立ち直った三人が質問責めをして、一定の理解を得た
後、こなたの家からの岐路。三人は興奮気味に語り合っていた。
後、こなたの家からの岐路。三人は興奮気味に語り合っていた。
「わたしも魔法、使ってみたいなぁ~」
「面白そうだけど、ルイズも向こうの学生らしいし、教わるのは難しいんじゃない?」
「ですね。憧れるのは確かですけど」
「でも、このことは秘密よ。バレたら色々大変だからね」
「そうですね。泉さんやルイズさんに迷惑になってしまいますし」
「うん。いい人だよねルイちゃん」
「そーね。なんか親近感沸くというか、他人の気がしないのよね」
「面白そうだけど、ルイズも向こうの学生らしいし、教わるのは難しいんじゃない?」
「ですね。憧れるのは確かですけど」
「でも、このことは秘密よ。バレたら色々大変だからね」
「そうですね。泉さんやルイズさんに迷惑になってしまいますし」
「うん。いい人だよねルイちゃん」
「そーね。なんか親近感沸くというか、他人の気がしないのよね」
あれから決めたことは、ルイズの魔法は秘密にすることと、家庭教師の真似事を引き受
けることくらいである。ともかく、かがみ達はルイズという友人が増えたことを純粋に嬉
しく思っていた。大変だけど、頑張っていこう。強くそう思うことができた。
けることくらいである。ともかく、かがみ達はルイズという友人が増えたことを純粋に嬉
しく思っていた。大変だけど、頑張っていこう。強くそう思うことができた。
「あ、でもこなたとおじさんに染め上げられてオタクになったら嫌だな」
「お、お姉ちゃん…」
「お、お姉ちゃん…」