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第23話 鼓動




 キュルケは見たものが信じられなかった。
 背後からの完璧な奇襲。それを易々と外された。
 それどころか、その男は。

 「よう、お熱いお誘いだな」

 悠然とそう言ってのけたのだった。
 自分の放った必殺の炎は、むなしく男の後ろにあった立木を燃やしている。
 その明かりが、かえって男の姿を見えにくくしていた。闇夜の中、赤々と燃える炎が、ちょうど男の姿を影に変えてしまっているのだ。
 と、その時キュルケは、背後から幾つかの人の気配を感じていた。
 「何事ですか!」
 遠間からそう叫ぶ声に、眼前の男は怒鳴り返す。
 「残りがいただけだ! それよりさっさと戻れ! 取りこぼしがこいつ一人とは限らないぞ! せいぜい一人か二人だろうが、油断するな! それがメイジだろう!」
 「わ、わかりました!」
 同時に遠ざかる気配。どうやら自分は目の前の男を何とかすれば大丈夫そうだと気がついた。
 この男を押さえれば、間違いなく圧倒的に動きやすくなる。思ったより腕の立ちそうなミスタ・コルベールと力を合わせれば、状況をひっくり返すことも出来そうだ。
 ただ問題なのは、目の前の男は明らかに自分より経験豊富な使い手だと言うことだ。
 地力では負けていないだろうが、経験が圧倒的に足りないのは判る。幸い相手の男の取った行動のおかげで、一対一の体勢にはなった。これなら決闘に近いので、何とか捌ける。
 もっとも相手は歴戦の勇士。それにその粗野な雰囲気からすると、卑怯な手もためらわないであろう。
 (タバサでも足りない……なのはを相手にするつもりで行く!)
 杖を片手に小さく詠唱を開始し、同時に周囲の様子にも気を配る。
 今こそキュルケはマルチタスクを教えてもらったことを心から感謝した。
 これを使えなければ、おそらくは瞬殺されていたはずだ。
 現に相手の空気が少し変わった。
 「ほう? 女、少しは出来るようだな。これは燃やしがいがありそうだ」
 燃える立木を背後に余裕を持って言う男。表情は見えなかったが、それが笑いで歪んでいることが容易に推察できた。
 「その余裕、どこまで持つかしら」
 こぶし大の火球を相手に向けて撃ち出す。キュルケの実力からすれば、信じられないくらいヘロヘロの火球だ。速度も遅く、威力もない。
 「なんだこれは。そんなはずあるまい。さっきの一撃はどうした」
 キュルケは答えない。いや、答えられない。
 なぜなら火球を放った直後から次の呪文を詠唱していたから。
 遅いと言っても着弾までは一秒足らず。言葉と共に男が難なく火球を打ち払うのと同時に、次の呪文をキュルケは解き放っていた。
 動いた男の目前で、閃光が広がる。
 火球の動きを見定めようと注視していたところへの閃光。かつてキュルケが故郷で決闘をしていた時に編み出した得意のコンボ攻撃であった。以前は稚拙であった連携も、マルチタスクの恩恵で遙かに精度が上がっている。
 これによって目を潰し、そこに大技をたたき込むのが彼女の必殺パターンであった。たいていはまともに喰らって目が見えなくなるし、目を閉じられてもそこが絶対の隙になる。
 苦し紛れに反撃してきた相手もいたが、目の見えていない状態で攻撃が当たるはずもない。
 だが、閃光を見ないように目をそらしていたキュルケがタイミングを合わせて相手の方を向いた時、そこに見たものは。

 燃えさかる炎の壁だった。

 一瞬思考の停止するキュルケ。だが即座にそれが、相手の放った火球であることに気がついた。威力は自分のそれと同程度かそれより少し上。だが、相殺は間に合わない。
 そこにあるのは燃える自分。絶対の死。自分には防ぐ術がない。
 「…」
 声を出すことすら出来なかった。硬直した体が動くようになっても間に合わない。と、その視界がいきなり暗くなった。同時にずしんと来る衝撃。巻き起こる閃光。それを遮る黒い影。
 突き飛ばされ、仰向けに倒れたキュルケの視界に、どアップになった使い魔の顔が飛び込んできた。
 「フレイム!」
 そう。偵察に出していたフレイムが間に合ったのだ。自分を突き飛ばした時、背中に火球を受けていたようだが、フレイムはサラマンダーである。この程度の炎はむしろ食事みたいなものだ。
 「使い魔に助けられたか。運も日頃の行いもいい女だ。しかもこの熱さ……炎の幻獣か。どうもこれは、燃えそうにないな」
 その言い方に不審を覚えるキュルケ。仮にも炎を操るメイジにとって、サラマンダーは常識の範囲である。知らないなど考えられない。
 そして起き上がりつつ相手の方を見た時、キュルケはその答えを知った。
 「あなた、目が……」
 位置が変わり、明かりの向きが変わったことではっきりとキュルケにも見えた。
 相手の目は、こちらを見ていなかった。そう、それは義眼だった。
 「そういうことだ。うまい手だったが、相手が悪かったな」
 しゃべり終わると同時に飛んでくる火球。交わすまでもなく素早くフレイムが盾となって受け止めてくれたが、キュルケは心底驚いた。
 しゃべりながら呪文を詠唱することは出来ない。つまりこの男は、しゃべり終わった後のわずかな時間でこれだけの火球を打ち出せるだけの呪文を唱えられるのだ。
 ほとんど無詠唱と言ってもよいくらいの超高速詠唱。
 正面切って戦っていたら、まるで勝ち目はない。
 (撃ち合いをするわけにはいかないわ。いったん仕切り直しよ、フレイム)
 (御意)
 キュルケは起き上がると、脱兎の如く、障害物の多い森の方へと駆け出した。当然背後から攻撃が来るが、フレイムが巧みにそれを防ぐ。
 「ちっ……まるで俺の炎が効いてないとすると……あれは、サラマンダーか。いい使い魔を持ったな」
 とはいっても男と女。サラマンダーもそう足の速い生物ではない。すぐに追いつけると思ったのだが、森の中で突然女の匂いと熱の気配が途切れた。
 疑問に思ってその近くに行って見たメンヌヴィルは、その理由を悟った。
 地面に穴が空いている。しかも結構深く、長そうだ。
 「土メイジがいたのか……やっかいだな」
 メンヌヴィルは対策を練りつつ、女の匂いに集中した。
 程なく、かすかに匂いが風に乗ってくる。派手に火を燃やしたせいか、匂いを運ぶ風が止まることもなかった。
 「思ったより楽しませてくれるな、女。そしてまだ見ぬ相手よ」
 笑みすら浮かべつつ、メンヌヴィルはその後を追った。







 「助かったわ、ギーシュ。あなたも脱出していたなんて」
 「いや、僕は隠れていただけだよ。様子は探っていたけど、僕一人じゃなにも出来なかった」
 結果的にキュルケの窮地を救ったのは、ギーシュと使い魔のヴェルダンデだった。
 キュルケもいったん離れたものの、まともに逃げ切れるとは思っていなかった。そこにヴェルダンデが顔を出したのである。
 ヴェルダンデが広げた穴を通って、キュルケは逃げるのに成功した。もちろん穴はすぐに埋められた。
 「でも大変なことになったね……どうも捕まっていないのは僕たちだけみたいだ」
 「あ、後コルベール先生が無事よ」
 「先生が! それは良かった」
 喜ぶギーシュを、キュルケは押さえた。
 「ギーシュ。今私は盲目の敵に狙われてるわ。目が見えていないのに、まるで見えているかのように動ける炎のメイジなの。たぶん貴族崩れの傭兵ね。真っ当な貴族の雰囲気じゃなかったわ」
 「……強敵だね。でも目が見えないのになんで平気なんだろう」
 「判らないわ。勘か、音か。でもね、たぶん……温度」
 「温度?」
 キュルケは先ほどの戦闘を注意深く思い出す。あいつは言った……フレイムの方を見て、『この熱さ』と。
 だとすると、あいつには人の体温が、目以外の何かで見えているのかも知れない。
 いずれにせよ正面からでは勝てない。ならば。
 「ギーシュ。あなたが力を貸してくれれば何とかなるわ」
 「判った」
 言葉はいらなかった。



 メンヌヴィルは程なく女を見つけた。まわりに建物のある庭らしきところ。作戦前に触れて確認した学院内の地図を思い出す。彼のために同志が練金した学院内の簡易模型のおかげで、地理は頭に入っていた。
 というかそうでもなければ未知の場所を盲目のまま動けるわけがない。
 中庭にいくつか置かれた青銅像の影から、女はこちらの様子をうかがっていた。
 その隣でやたらに熱いものが像に触れていた。
 一つだけ暖まった青銅像は、どうやら女性のシルエットをしているらしい。
 「考えたな」
 メンヌヴィルはにやりと笑う。久しく感じていなかった興奮が体内を駆け巡る。
 どうやらあの短いやり取りだけで、彼が外界を認識する手段が『熱』だと見抜いたらしい。
 こちらの目が見えないことを利用して、青銅像を誤認させようというのだろう。
 おもしろい手だったが、自分の感覚はそんなにいい加減なものではない。
 ただ漠然と熱を『視て』いる訳ではないのだ。
 その感覚は、匂いによるものを併用すれば、相手の感情の動きや肉体の予備動作すら見抜く精度を誇っている。
 盲目でありながら接近戦闘をこなす腕をメンヌヴィルは持っているのだ。
 「おもしろい」
 そうつぶやくと、メンヌヴィルはあえて仕掛けに乗ったかのように、おそらく使い魔が暖めていたと思われる青銅像に向かって、特大の火球を打ち込んだ。



 「かかった」
 キュルケは青銅像に密着しつつ、そうつぶやく。
 「とりあえず第一段階は突破ね」
 自分にそう言い聞かせつつ、キュルケは青銅像に張り付く。
 ひんやりとした感触が、気持ちを引き締める。
 そして男は、ゆっくりと自分が燃やした青銅像の方へと歩み寄っていった。



 中庭に入っていったとたん、突然あちこちで火柱が上がった。どうやら油か何かを撒いて、それに火をつけたらしい。
 「なるほど……囮で誘い込み、まわりを熱して俺の『熱』を封じるか……だが、甘い」
 メンヌヴィルは感心しつつもそれを表に出すことなく、くるりと向きを変えると、ターゲットの女の方にまっすぐ近づいていく。
 雑多な匂いが混じって少し判りづらいが、女が激しく緊張しているのは判る。
 まわりが暖まったので判ったが、ここにある像は皆女性の形をしている。こうやって熱源を混乱させれば、目の見えない彼が誤認すると踏んだのだろう。
 しかもこの女は、そんな像の一つに張り付いて彼が隙を見せるのを伺っている。
 なるほど。俺の『熱』の精度が甘ければ引っかかっただろう。メンヌヴィルはそう思った。
 上出来だ。そう考えつつ、彼は彼女の張り付いている像の前に立った。但し、女の裏側に。
 そしてメンヌヴィルは、今も極上の『匂い』を発散している女のことを考えた。
 女は身動き一つ出来ない。だろうな。この距離で動いたら仕掛けがばれると思っているのだろう。
 緊張と、興奮がほどよく入り交じった匂いが漂っている。恐怖と期待もあるな。
 これなら実にいい--極上の匂いをかげる。
 メンヌヴィルは自分が興奮しているのを感じていた。それもかつて目を失った時、あの隊長との戦い以来の興奮を。
 そして彼は相手に最後のスパイス--『絶望』を振りかけるべく、最終宣告をした。
 「俺の勝ちだぜ、女」
 だが、返ってきたのは。
 「いいえ、私の勝ちだわ、傭兵さん」
 その言葉と同時に、『青銅像』がメンヌヴィルのことを殴り飛ばした。



 危なかった……やはりあいつは、特定の人間の『温度』を追えるくらいの力を持っていた。
 キュルケは内心の恐怖を押しつぶしつつ、一斉に動いた残り六体のワルキューレにタコ殴りにされている男の方を見つめた。
 相手はギーシュのことを、七体のブロンズゴーレム、『ワルキューレ』のことを知らないはず。それだけがキュルケに残された勝機だった。
 まともに戦ったら腕を上げているギーシュといえども勝ち目は薄かっただろう。
 勝つには不意を突くしかない。そしてキュルケが思いついたのが、ギーシュの存在をぎりぎりまで隠すことだった。
 相手が気づく前にワルキューレを出しておき、ただの像の振りをさせる。
 そしてフレイムに像の一つを暖めさせたりとか、周辺に火を放って相手の『温度』を混乱させたりするといった小細工を弄する。
 すべてはただ一つ。この『像』が『ゴーレム』であることをごまかすため。
 普通の相手にはあまり意味がない。だが相手は目が見えない。
 そう、ディテクトマジックが使えない可能性が高いのだ。あの呪文は光で魔法を示すのだから。
 後はキュルケの演技力一つであった。乙女の青銅像を利用して自分をはめようとしている……そう思わせることさえ出来れば、ワルキューレで不意を打てる。
 不意さえ打てればたとえ高位メイジ相手でも、ギーシュは決して引けを取らない。接近戦に持ち込んでしまえばこっちのものだ。
 そしてキュルケは、その賭に勝った。






 賭には勝ったが、勝負には負けていた。






 突如、一方的に攻撃を加えていたワルキューレが、爆音と共にはじき飛ばされた。間合いが空くと同時に炸裂する火球。距離を取られるとワルキューレはもろかった。体勢を立て直す前に次々と溶かされていく。

 「詰めが甘かったな、女、そしてゴーレム使い。特にゴーレム使い、殴る蹴るじゃなく、ためらわずに剣の一つも練金して、さっさと俺を殺すべきだった。そうすればおまえ達の勝ちだったよ」

 そういって見えない目をキュルケに向けるメンヌヴィル。
 その存在しない視線に、ついにキュルケの腰が砕けた。
 駄目だ。さすがにこうなると、もはや自分一人ではどうにもならない。
 なまじ力量が拮抗するだけに、バランスを崩すことが出来ない。
 せめて死す時でも優雅であれと、艶然たる笑みを貼り付けるくらいしかできない。

 「やられている俺を視て気を抜いたんだろうな。そこの影にいる男。さっきのは『自爆』っていてな。自分ごとまわりをぶっ飛ばすための魔法だ。おかげでこっちもただじゃすまねえが、ま、死ぬよりはましになった」

 ギーシュも気づかれた。もはや手札はない。

 「逃げるなら今のうちに逃げな。まずはこっちの女を焼く方が先だ。これだけの女だ。さぞいい匂いをかがせてくれそうだからな」

 そう言うと詠唱と共に今までとは桁違いに強力な火球を練りはじめる。
 キュルケはそれを聞いて、自分の敗因を悟った。この男の感覚には、温度だけでなく『匂い』もあったのだ。
 なら最後まで突っ張り通そう。たとえ匂いフェチの変態が相手でも、最後は笑うのがツェルプストーの心意気。
 (ルイズ、タバサ、なのは……ごめんなさい。先に逝くことになるわ)
 そう、キュルケが覚悟を決めた時だった。
 目の前の男は、自分を焼き尽くすために練り上げたと思われる炎を、突然明後日の方向に打ち込んだ。
 突然のことに逃げることすら忘れてしまった。
 そして撃ち出された炎は、向かってきた炎--まるで炎で出来た蛇のように軌道を読ませない動きで彼に向かっていたそれにぶち当たり、激しい爆発を引き起こした。

 それと同時に上がる歓喜の声。

 「この熱。匂い……まさか、隊長殿、あんたか! そうか、この女はあんたの弟子だったのか! 道理で焼きごたえがあるわけだ」
 「ミス・ツェルプストーはただの教え子だ。私の弟子などではない、メンヌヴィル」

 キュルケの前に現れたのは、偵察に出ていたコルベールであった。






 一転して命を救われたこの状況に、キュルケは少し混乱していた。
 「ミス・ツェルプストー」
 「は、はいっ!」
 そこに突然名を呼ばれ、声が少し裏返る。
 「ミスタ・グラモンと一緒に、この場を離れなさい。この男は、私が相手をします」
 「でも」
 勝てるのだろうか……と思った疑問に対し、コルベールはキュルケが信じられないような言葉を返してきた。
 「足手まといです。幸い敵は彼以外全員、食堂で人質となったみんなの見張りをしています。二人はここを脱出して、王宮に連絡を」
 「でも……」
 「行きなさい」
 そのあまりの語気の強さに、キュルケは引いた。とりあえずギーシュと合流し、校舎の陰まで下がる。
 フレイムとヴェルダンデもこちらによってきた。
 「ごめん……キュルケ。あいつのいうとおりだった」
 そう言って頭を下げるギーシュ。
 「いいわよ。助かった以上は。それにあなたに人殺しをしろって言うわけにも行かないし」
 キュルケも責めるようなことは言わなかった。
 「で、行くの?」
 「そんなわけないでしょ」
 一転してからかうようなギーシュの問いに、不敵に笑って答えるキュルケ。
 「まさかミスタにあんな顔が出来るなんて思わなかったわ。ただの変人じゃなかったのね」
 「同感だ」
 ギーシュも頷く。
 「こうして遠間からみていても判る……ミスタ、かなりの使い手だ。ちょっと動きが鈍いけど、この間練習したミスタ・ワルド並に強いと思う」
 「現役の風のスクウェアより速かったら化け物よ」
 相づちを打ちつつも、キュルケの目はコルベールに注がれていた。
 そんな彼女らの元に、コルベールとメンヌヴィルの語り合う声が聞こえてきた。







 「くっくっくっ、隊長殿、二十年経っても鈍っちゃいないようだな」
 「……なにが言いたいのですか」
 「おっと、ちょっとは丸くなったようで……でも、百人あっさり殺した上でその台詞が言えるとは、さすが隊長殿だ」
 「!……」
 メンヌヴィルの言った言葉に、コルベールもさすがに固まった。
 物陰のキュルケとギーシュも。
 メンヌヴィルは、そんな彼らの見せた隙を気にもせず言葉を繋げた。
 「ごまかしても無駄ですぜ隊長殿、別働隊、たった一人で殲滅してきたんでしょうに」
 「……何故、それを」
 さすがに驚愕するコルベールに、メンヌヴィルは自慢げに言う。
 「一つはさっきの態度。あんたなら今の状況が判っているはずだ。周辺に警戒が出ているっていうこともな。そんな状況で、大切な教え子に外に行けなんて言うはずがない」
 コルベールは無言のまま歯を食いしばっていた。
 「そうでなくても俺には『判った』けどな。でもまあ、そんなことは些細なことだ」
 メンヌヴィルは大きく手を広げて言う。
 「あんたに会えた。しかも歳こそ喰っているものの、腕も、心も、全然鈍ってねえ」
 対するコルベールの顔は、苦悩と不満に満ちていた。
 「だからこそ、焼いてみてえ。あんたの肉の焼ける香りを嗅いでみてえ」
 そして感極まったかのように、メンヌヴィルは言った。
 「仕事なんかどうでもいい! 二十年分の修練、たっぷり味わってくれ!」
 同時に、いくつもの火球がコルベールに襲いかかった。



 「大変です! メンヴィルヌ隊長が、メイジと戦いを!」
 人質を保護している食堂にも、この騒ぎは伝わっていた。
 だが、動けない。今動いたら、人質を押さえきることは出来ない。
 彼らを押さえていることが、自分の身を守ることになるのだ。
 幸い、彼らの戦っている場所は、食堂の窓からかろうじて見て取ることが出来た。
 だが援護をするには遠い場所だった。
 彼らに出来たのは、固唾を呑んで成り行きを見守ることだけであった。



 戦いは攻めるメンヌヴィルに避けるコルベールという構図になった。それを見ていたギーシュがつぶやくように言う。
 「ミスタ、なにを狙っているんだ?」
 「どういうこと、ギーシュ」
 キュルケの問いに、ギーシュは答えた。
 「僕の見た感じだと、力量は互角に近い。地力はあいつで、経験はミスタが上に見える」
 キュルケの目にもそう見えた。
 「そしてミスタに不利なのが、この闇だ。もう少ししないと夜が明けない。あいつは暗がりを利用してミスタの間合いを外している」
 「そっか、ミスタは相手を視認しないと攻撃を当てられないけど、あいつには関係ないのよね」
 「でも」
 そこでギーシュはぐっと前を見る。
 「ミスタの動きは、それすらも計算しているみたいなんだ。仮想訓練でさんざんしごかれた僕が断言する」
 「ああ、ワルキューレの」
 キュルケもギーシュがマルチタスクの練習と並行して、ワルキューレの運用訓練をなのは(正確にはレイジングハート)相手にやっていたのを思い出す。
 「ミスタはあえて彼を闇の中、相手が有利な位置に誘導している。しかもそれを悟らせないように」
 「どういうことかしら」
 ギーシュは何かを思い出しながら答える。
 「たぶん、必殺の何かがあるんだと思う。あいつは現役の分、持久力が違う。現に君とあれだけのことをしているのに、全然弱った様子がない」
 「そういえば」
 キュルケは相手の底なしの精神力に思わず震えていた。
 「対してミスタは腕はともかくあいつの言い方からすると、二十年近いブランクがあると言うことになる。教師をしながら軍人並みの力は維持できないと思う。特に持久力は」
 技はともかく、スタミナは地道な訓練がものを言う世界だ。
 「そうね。つまりミスタは、一気に勝負を決めようとしているって言うわけね」
 「たぶん」
 「だとすると……そうだギーシュ、あのね……」
 キュルケはあることに思い至り、それをギーシュ伝えた。
 「確かに。任せてくれたまえ」
 彼がそう答えた時、状況が動いた。闇の中に閃光が炸裂する。風が巻き起こり、視界が閉ざされる。そしてそれが晴れた時、一人の男は立ち、一人の男は倒れていた。
 倒れていたのは……コルベールであった。

 「ミスタ!」







 「降参してほしい」
 闇の中、コルベールの声が響く。
 「ん? 隊長殿」
 返ってくるのは不思議そうな様子の言葉。
 「ついさっきもあんだけ殺っちまっている隊長殿が、今更俺を殺すのをためらうともおもえんしな」
 「ああ。やむを得ないとはいえ、もう後へは引けない。殺したくはないが、ためらうつもりはない。その方が危険である以上」
 「ならば、何故」
 心底不思議そうな声が闇に響く。
 「おまえを殺してしまって楽にするのはな。出来れば裁きを受け、罪を自覚してほしい」
 「そんなわけないだろうに。第一俺は、自分が悪いことをしているなんて思っていないぜ」
 「やはりか……やむを得ん。死んでもらう。いや、あのときにとどめを刺しておくべきだった」
 「来い隊長殿。隊長殿の全力、受けさせてもらう。それと、後悔役にたたずだぜ」
 「それは後悔先に立たずです」
 その言葉が終わると同時に、必殺の魔法は発動した。
 コルベールの爆炎には、一つだけ問題がある。水蒸気を油に練金した後、少し待たないと十分に拡散せず、効果にムラが出来て取りこぼす場合があるのだ。
 先ほどの会話は、その時間稼ぎを兼ねていた。
 最大速度で燃焼する油。急速に食い尽くされていく酸素。
 が。
 その瞬間、メンヌヴィルの足下で巨大な爆発が炸裂した。
 それに見とれた隙を逃さず、打ち込まれる火球。
 コルベールは全身に軽くはないやけどを負っていた。その上、彼の体は、今もなおかすかな炎に包み込まれている。
 軽くはない、というところがポイントであった。決して即死するほどひどくはない、しかし身動きできるほど軽くもないという、絶妙な深度の火傷。
 すぐに治療すれば、少なくとも冷やせば後遺症もなく直る程度だ。だが放置すれば命に関わる。
 見事なまでに芸術的な『焼き加減』であった。
 「惜しかったな、隊長殿」
 メンヌヴィルが大きく鼻をふくらませつつ言う。
 「やはり……実にいい香りだ。今隊長を焼いているのは、俺が研鑽に研鑽を重ねた、もっとも人を長く焼き続ける火力の炎だ。人の体内の油に食いつき、じっくりと焼き上げるために調整された炎……ああ、至福だ」
 「……何……故」
 全身を苛む苦痛に耐えつつも、コルベールは問うた。
 「一見だったらさすがに俺でも死んでいたよ、隊長殿」
 メンヌヴィルはすべて判っているかのように答える。
 「だけど隊長、別働隊をその魔法で殺ったのは失敗だったな……風が運んでくれたぜ。かすかな油臭と、死の薫り……焼死じゃねえ、窒息死した奴の胸くそ悪い臭いをな」
 返事はない。かすかなうめきが返って来るのみ。
 「だから油臭がした時、ヤバいと思った。とっさにこっちからも爆発で迎え撃って、風を呼び込んだ。何とかうまくいったみたいだったぜ」
 そしてメンヌヴィルは、伸びをすると視線を別の方に向けた。
 「さて、前菜かと思っていたが、デザートになっちまったな、女」
 視線の先には、もはや立ち上がることすら出来なくなったキュルケがいた。







 ミスタ・コルベールが負けた。
 その瞬間、キュルケの中で何かが折れてしまったような気がした。
 だが、不思議と恐怖は感じなかった。心が麻痺してしまったのだろうか。
 目の前に浮かぶのはほんの数刻の思い出。
 わずかの時間に見た、まるで別人のような姿。
 ぶつかり合う炎と炎。
 自分が想いもしなかった、その荒々しい本質。
 どっくん、どっくん、どっくん。
 聞こえるのは、自分の鼓動だろうか。
 一歩一歩、男が近づいてくる。
 その手に炎を浮かべつつ。
 どっくん、どっくん、ドックン、ドックンドックン。
 鼓動が乱れる。不協和音が鳴り響く。
 どくんドックンどくドクんどク
 鼓動は乱雑な音を刻み続ける。気がつけばまわり中にその音が満ちている。
 ドクドクドクドクドクドクドクドク
 ドクドクどくドクドクどくどくドクドクドクドクどくどく

 とっくん……とっくん……とっくん……

 そんな中、一つだけ、奇妙に落ち着く音があった。
 そちらに注意を向けた瞬間、キュルケの意識が現実に戻ってきた。


 「焼け……うおっ!」
 「やらせは……しません」
 キュルケの眼前に映っていたのは、あの男にしがみついているコルベールの姿だった。
 今、自分は、コロサレルところだった。
 ミスタが、それを、じゃましてくれた。
 とびかけていた意識の中で、それが急速に認識された。
 どっくんどっくんどっくん。
 二重写しの意識に、先ほどの鼓動が響いている。
 その中でも特に不快なリズムが、恩人を責めさいなんでいる。
 キュルケの心の中に、むかつくようないらだちがわき上がってきた。
 鼓動は至る所で鳴り響いている。乱雑に響いていたそのリズムは、気がついてみれば至る所でその存在を主張するかのように鳴り響いていた。
 鼓動そのものは、母親の心音を聞いているかのようになじみ深い、安心できる音だった。なのにその音は気にくわない響きをがなり立てている。
 あの音が。あのリズムが。あの鼓動が。
 そして焦点を結ぶキュルケの視界。全身を熾火のような炎に包まれながら、苦痛に顔を歪めながら、それでも。

 生徒のことを想って身を挺する、教師の……男の姿が。

 その姿は、激しくキュルケの心を揺さぶった。
 ドックンドックンどくんどくんどくどくどくどく……
 彼を責めるものとは違う、心地よい鼓動が激しくビートを刻む。
 (ああ、これは)
 唐突に理解が及んだ。これは心臓ではない、魂の鼓動。
 情熱の鼓動。
 どくどくどくどく
 どくどくどくどく
 どくどくどくどく
 ど く ど く……
 それが激しくうなりを上げている。心臓が破れんばかりに激しく揺れている。
 だけど、何かが足りない。何かが流れを止めている。

 「はなせ、こら」
 「うっ!」

 視界の中で、男が打たれた。その瞬間。







 「やめなさいっっっっ!!」







 どっくん!



 完璧に調和した、四重のリズムが全身を駆け巡った。
 どっくん。どっくん。どっくん。どっくん。
 どっくんどくん。どっくんどくん。
 どくどくどくどくどくどくどくどく。
 どんどんどくん。どんどんどくん。



 全身に力があふれる。ぶれていた意識が結合される。混乱していた精神と視界が、急速に正常になる。
 鼓動の音は相変わらず鳴り響いている。だが今それは、ごく当たり前のように自然に存在している、風景の一部でしかない。
 だが、それを乱している存在がある。暴れるそれが、大事な人を苛めている。
 それを見たキュルケの脳裏に、自然に一つの言葉が浮かんでいた。

 「スリザ……ナウーシュ……ダ・イーサ!」

 それは短いが、間違いなく『詠唱』であった。言葉は命令となり、現実を揺るがした。



 それは雪のように見えた。
 倒れ伏すコルベールの周囲に、どこからともなく白い雪が出現する。
 それと同時に彼を責めさいなんでいた淡い炎が、白い氷に取って代わられる。
 徐々に、徐々に、彼の体が薄い氷に包まれていく。



 「氷結の呪文だと! 女、貴様、水も使えたのか!」
 「いいえ」
 キュルケは答える。
 「私は『微熱』のキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー 。情熱に燃える、炎のメイジよ」
 先ほどまでの恐れは微塵も感じさせずに、キュルケは男を睨み付ける。
 「なにがあった……先ほどまでとは別人だな」
 「ようやく判ったのよ。親友がたどり着いた境地が」
 そう。あの瞬間、キュルケは理解していた。混乱の中鳴り響いていた鼓動。激しいあのリズムこそが、炎の精霊の声だと。
 タバサが『歌』と呼んでいた、精霊の力の流れ。炎のそれは、万物の鼓動。
 炎は実体がない。なのははあらゆるものに魔力が宿り、それが魔法になると言った。
 だが他の三つ、地、風、水と違い、火にはその宿る基盤がない。ものを燃やせば炎が生じるが、逆に言えば『燃やす』という行動がない限り自然の炎は存在しない。
 唯一の例外としてあるのは、フレイムの尾に灯っている炎くらいだ。
 だが、今はっきりとキュルケには判った。
 炎は万物を暖める。その暖かさこそ、炎の根源。そしてそれは、普通は聞こえない、精霊の鼓動。精霊の情熱。
 自分をかばって打たれるコルベールの姿を見た時、キュルケの心の中に、今までの恋とは違う何かが灯った。そしてそれが、自分を押しとどめていた最後の関を打ち砕いた。
 情熱を燃やし尽くすこと。それを自覚すること。
 それが自分の殻を打ち破る、最後の鍵だったのだ。
 今の彼女には、自分たちを取り巻く炎の力が感じられる。地や、水や、風と並んで、自然に存在する『炎』の力が。
 (タバサ……あなたはこんな世界を見ていたのね)
 親友の魔法に対する感覚が激変した理由が、今こそ理解できた。現に自分にも出来たのだ。
 師を苦しめる炎の精霊に『止まれ』と命ずることが。



 「先ほどまでとは違うようだな。ツェルプストーと言ったか。おまえ、隊長殿に惚れてでもいたのか?」
 揶揄するようでも隙のない言葉。メンヌヴィルの言葉に、キュルケは艶然とした笑みを浮かべつつ答える。
 「ええ、ついさっき、惚れたかも知れないわ」
 そう言いつつ、メンヌヴィルに杖を向ける。
 「だからあなた、燃え尽きなさい」
 同時に唱えられる詠唱。飛び出す火球。
 その速度は、メンヌヴィルをも上回る速さだった。
 「! なんだそれは、いきなり速くなりやがって!」
 必死に相殺しつつ叫ぶメンヌヴィル。余裕を持ったままキュルケは答える。
 「ついさっき、四つめに目覚めたみたいなのよ。詠唱の無駄も省けるみたいで」
 といいつつ再び襲ってくる火球。メンヌヴィルは慌てて闇に隠れた。
 (どういうことだ。さっきまで震えていた小娘が……だがここで負けるわけにはいけねぇ)
 闇の中で時間を稼ぎ、とびきりの一撃を放つ。
 だが、

 「……イーサ……イレイズファイア!」

 先ほど唱えたのと似た呪文と共に、必殺の一撃はあっさりと霧散していた。
 「ばかな!」
 さすがに唖然となるメンヌヴィル。
 「なにをしやがった!」
 「止めただけよ、炎の精霊を」
 平然と答えるキュルケ。
 「あの人を助けようとして浮かんだ魔法。精霊を止め、熱を奪い、あらゆる炎を消し止める『消炎』の呪文」
 「なん、だと……」
 まずい。さすがにメンヌヴィルも悟った。
 もしその魔法があらゆる炎を消し止めるというなら。
 自分には勝ち目がなくなる。
 実際に無限と言うことはないだろうが、先ほどこの女は「四つめに目覚めた」と言っていた。つまりスクウェアに届いた、ということなのだろう。
 彼は戦場などの極限下でいきなり爆発的に力を伸ばすメイジがいることを知っていた。
 こいつもそのタイプだったと言うことだろう。
 ならば正面切ってではまずい。
 メンヌヴィルは直ちに意識を切り替えた。コルベールと対峙した時のように、闇に紛れて優位を伺う。
 こちらが姿を隠したと見ると、彼女は詠唱に入っていた。
 巨大な熱量が出現する。だがどんなに威力があっても、当たらねば意味はない。
 (カウンターを決める……あれを放った時が勝負だ)
 今不用意に姿を見せれば、あれの直撃を受ける羽目になる。熱と臭いで周辺を感知できるとはいえ、視覚のない自分はとっさの動きに問題がある。
 相手に大きな隙を作らねば逃走は難しいのだ。
 と、その熱が何故か凝集をはじめたのを、彼の感覚は捉えていた。



 相手が闇に隠れたのを見て、キュルケは力を溜めることにした。今、自分の内側では、本来のものの他に四つの心臓の鼓動が聞こえる。
 キュルケはそれを太鼓に置き換えて意識した。タバサが楽器にたとえたのに倣ったのだ。
 四つのリズムを一つに合わせ、まわりのリズムと同期させる。
 自分の前に大きなリズムが刻まれる。だが、今ひとつキュルケには気にくわなかった。
 なんというか、百人の子供が遊んでいるような感じを受けたのだ。集まっているもののてんでんばらばら。このまま相手に放っても、まさに子供の喧嘩のような気がした。
 (どうせなら隊列を組んだ兵隊みたいに、きちんと整列している方がかっこいいし、威力もありそうね)
 そんなことを考えて、詠唱を変化させ、隊列を整える。
 それはタバサがフライの呪文を調整した時と同じ行為であった。
 一つの音がリズムを生み、二つの音で縦と横に整列をさせる。そして残る一つのリズムで相手に撃ち出す。
 そしてリズムがそろった時、目の前の巨大な火球は、人の頭ほどの、妙に実体感のない光の球になっていた。
 それは何か見覚えのある球だった。
 (あ……なのはの魔法、あの光の球)
 この大きさだと、ゴーレムを打ち倒した時に見たあの魔法くらいだろうか。
 その瞬間、最後のイメージが形になった。
 キュルケは、じっとある一点を見つめていた。

 メンヌヴィルの不覚は、彼女が使い魔を連れていたのを忘れたことだろう。
 闇に潜む彼の姿は、炎の蜥蜴によってその位置を把握されていた。
 そしてキュルケがためらわずに闇に潜む自分に杖を向けたのを、目の見えないメンヌヴィルは察知できなかった。
 それに気がついた時は遅かった。背後に感じる小さい熱源……それが燃えていた森ではなく、あの火蜥蜴のものだと気がついた時には、キュルケの口から最後の一言が放たれるところだった。



 キュルケが放とうとしていた魔法。
 それは熱を整列させて放つもの。
 さて、少し考えてみよう。
 熱は分子の振動である。同時に熱は電磁波の一種でもある。
 熱を持つ物質は、赤外線のような形で電磁波を放出している。
 本来ランダムなそういうものを、きちんと整列させるというのはどういうことだろうか。
 また『火』の属性は、その特性上『光』を内包している。



 結論……電磁波の位相をそろえて一方向に打ち出す。



 キュルケは、初めてそれを見た時から、内心あこがれを持っていた。
 虚無の使い魔、なのはの魔法。ミッドチルダ式と名付けられた異界の魔法。
 自在に誘導される光球、ディバインシューターとアクセルシューター。
 巨大ゴーレムすら粉砕する光の魔砲、ディバインバスター。
 そして周辺のすべてを滅ぼす滅びの魔法、スターライトブレイカー。
 そして今自分が放つ魔法にも、それが反映された。
 キュルケにも具体的にはともかく、ここから自分の放つ『炎』が、常のものとは違うことは感じられていた。
 故に、その解放の言葉は。



 『フレイム・バスタアァァァァッ!』



 その言葉と同時に、光球は一条の光線となって、闇に潜んでいた男を打ち据えた。







 メンヌヴィルは痛みを感じる暇すらなかった。見えないはずの目が、かすかな光を感じたかのような錯覚を覚えた瞬間、胴体の半分が消滅していた。そこからはあまりの高熱で瞬時に焼かれたため、肉の匂いすらろくに漂ってこない。
 「驚いた……な……」
 その言葉と共に、盲目の戦士は絶命した。







 「な、なんだ、ありゃあ」
 窓から外の様子をのぞいていた六人の男達は、最後にキュルケの放った魔法を見て仰天していた。
 わずかな閃光のみを放ち、相手を倒す謎の魔法。
 それに見とれたのが命取りになった。
 気配を感じた時は遅かった。突然出現した気配に気がついた時には、すでに首を絞められていた。
 人間ではなかった。突然出現した女性型のゴーレムが、仲間の首を絞め、同時にこちらの身を拘束していた。
 意識が落ちる瞬間に見えたのは、金髪の少年が女生徒の拘束をほどき、同時に縦ロールの女性に飛びかかられて倒れるところだった。







 こうして、魔法学院を襲った謎の一団は、一人の教師と二人の生徒の活躍によって無事に収束したのであった。
 さえない禿頭の教師が、学園で一、二を争う美女に惚れられるというオチを残しつつ。



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