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毒の爪の使い魔-21


――トリステイン魔法学院:正門前――



「のーっほほほほほほほほ!!!」
幻術を用い、花のような姿へ変身したジョーカーは高らかに笑う。
そして、パチンと右手の指を鳴らす。
途端、ジョーカーの身体が青い光のカーテンのような物に覆われたかと思うと、
身体に付いていた傷が、絵の具で塗りつぶされるように次々と消えていった。
その光景にギーシュ達は目を丸くする。『水』の『治癒』とは到底比べ物にならない回復力だ。
驚く彼等の様子にジョーカーは、左手の人差し指を立てながら笑う。
「のほほほほ、これ位できて当たり前ですよ。あとは…」
もう一度右手の指を鳴らす。
今度はタバサの身体が青い光に覆われる。
「どうですか、シャルロットさん?精神力…大分補充できたはずですが?」
確かに…消費したはずの精神力が戻っているのが解る。
タバサは驚愕の表情でジョーカーを見る。メイジの精神力を自在に出来るなど…聞いた事が無い。
目の前の幻獣の力にただただ驚くばかりだ。

ジョーカーはそんなタバサの様子に、ただ笑うのみ。
「それでは、ちゃっちゃと終わらせるとしましょうか。シャルロットさん、いいですネ?」
「……」
タバサは無言のまま杖を構えなおす。
それに満足したのか、ジョーカーは楽しそうな声を上げる。
「さてさて、それでは行きますよ~~♪」
ジョーカーの目が赤く輝いた瞬間、顔面から巨大な炎球が放たれた。
トライアングルクラス並の炎球はキュルケへと一直線に突き進む。
飛んでくる炎球を寸での所でかわす。
炎球は背後の地面に命中し、生えている草を地面ごと焼き焦がした。
凄まじい火力だ。まともに浴びれば、ひとたまりも無いだろう。

軽く冷や汗を流すキュルケはジョーカーを睨む。
相手は変わらない笑みを浮かべている。
「どうですか?このキュートな『フラワージョーカー』の姿となった、ワタクシのキュートなパワー?
そんじょそこらのメイジなど、束になっても適わない素晴らし~い力とは思いませんか?」
ジョーカーの自慢を、キュルケは鼻で笑い飛ばす。
「何がキュートな力よ?ただ炎を飛ばしているだけじゃないの。
大体、フラワーですって?あなた…一度鏡を見た方がいいんじゃないの?」
「どういう意味ですか?」
僅かに表情を曇らせ、聞き返すジョーカーにキュルケは言った。

「あなたの今の姿……”花”と言うより、どう見ても”蛇”にしか見えないわよ?」

――キュルケのその言葉にジョーカーは彫像のように固まった。


キュルケの意見には、その場に居た者の殆どが同意し、頷いた。
確かにフラワージョーカーとなったジョーカーの頭部は顔の周りが花びらのように変化し、
真正面から見た感じはヒマワリを連想させる。…だが、それはあくまでも”頭部に限った事”である。
実際は頭部の後ろに大小様々な大きさの、ボールのような胴体が連なっており、
全体で見ると、花とは程遠い姿だったりするのだ。
そう、それは彼女の言うとおり”蛇”と言い表すのが相応しいだろう。

…そして、この事は少なからず、ジョーカー自身気にしている事だったりする。

当然、ジョーカー再び大激怒。
「ムッキイイイイィィィィィ~~~!!!、アナタ……言ってはいけない事を言ってしまいましたネ!!?
も~う、容赦しませんよーーー!ギッタンギッタンのメッタメッタのボッコボコにして差し上げましょ~~~う!!!」

ジョーカーの目が真っ赤に染まる。
それは炎を生み出すべく高まった魔力による物か?はたまた怒りによる物か?
どちらなのか定かではないが…、魔力が高まり、炎球が生み出されようとしているのは事実だ。

キュルケは考えた。
あれだけの炎球だ…生半な威力の炎では逆に吸収され、相手の炎を巨大化させる羽目になってしまう。
更に、今し方あいつが見せた系統呪文を上回る『治癒』。
攻撃が当たったとしても、多少のダメージは直ぐに全快され、意味を成さないだろう。
自身の使える最大級の炎の呪文ならば、あるいは押し切れるだろうが…消費する精神力が尋常ではない。
使えば精神力は殆ど限界に来てしまうだろう。
キュルケはギーシュとモンモランシーの方を見る。
ギーシュは見た目にも深手なのが解る。
モンモランシーの方はまだ大丈夫のようだが、直接の戦力としては当てに出来ない。

…となれば、やはり無駄撃ちは出来ない。
相手はあの幻獣だけではない…、タバサもいるのだ。
両方を相手にしながら”あれ”を当てるのは、至難の業だ。
今はまだ使えない。一撃で決められる…確実に当てられる状況でなければ…。


「お喰らいなさ~~い!」
叫びながらジョーカーは顔面から炎球を放つ。
先程と違い、三つの炎球がキュルケに向かう。
避けるべく、その場を飛び退く。
と、風を切る音が聞こえ、彼女の顔の傍を氷の槍が通り過ぎる。
振り返ると、タバサが杖を振り、自分へと氷の矢<ウィンディ・アイシクル>を放つのが見えた。
咄嗟に『ファイヤー・ウォール』を詠唱する。
幾筋もの炎が立ち上り、文字通りの壁となる。
氷の矢は次々と溶けるが、溶け切れなかった何本かが飛んで来た。
「くっ!?」
咄嗟に身を翻すが、避けきれない。腕や脇腹を氷の矢が掠める。
服が破れ、覗いた肌に赤い線が浮かぶ。
タバサは相変わらずの無表情だ。無表情のまま、再び杖を振る。
巨大な氷の槍が生み出され、キュルケへと飛ぶ。
身を引き、寸でのところでかわす。――突然、身体が吹き飛ばされた。

「あぐっ!?」
地面に叩きつけられ、激痛に全身が蝕まれる。
自分を吹き飛ばした物の正体を確かめるべく、首を動かす。
そこに在ったのはデコピンをする様な仕草で、人差し指を突き出している巨大な左手。
「のほほ、油断大敵ですネ~♪」
後ろから、あの幻獣の声がした。
痛みを堪え、キュルケは立ち上がり、周囲を見回す。

後ろの少し離れた所にジョーカー。――いつでも攻撃できると言わんばかりに余裕――

その傍らに右手。――治癒担当といったところか?――

目の前には左手。――こちらは攻撃担当のようだ――

右前方にはタバサ。――既に呪文の詠唱が終わっているらしく、無数の氷の矢が周囲を踊っている――

…状況は正直悪い。
二対一でも厄介だが、あの幻獣の手が独自に動けるのでは、四対一と何ら変わり無い。
これでは隙を見つける以前に、ルーンを唱える暇すらない。
キュルケに焦りが生まれる。

唐突にタバサが杖を振った。無数の氷の矢がキュルケを襲う。
その場を飛び退き、地面を転がった。無様な姿だが、四の五の言ってはいられない。
氷の矢が次々と地面に突き刺さる。
氷の矢が尽きた事を確認し、キュルケは立ち上がる。
と、休む間も無く、ジョーカーの放った火球が迫る。
咄嗟にその場を飛び退く。――その背中に衝撃。
吹き飛ばされ、地面に倒れる。
確認するまでも無い……あの左手だろう。

(やっぱり……キツイわね)
キュルケは立ち上がりながら、状況が最悪な事を再確認する。
タバサとジョーカーと両手……どれかを何とかすれば、まだ勝機も有るのだろうが…。
ジョーカーは”あれ”以外は効果は薄そうだし、タバサは論外。

ならば――

「その手よ!」
キュルケは『ファイヤーボール』を左手に向かって放つ。
左手は一瞬で炎に包まれ、燃え尽きた。
(いけるわ)
間髪居れずキュルケは素早く呪文を唱え、もう一発今度は右手に向かって放った。
右手も左手同様、一瞬で燃え尽きた。
「どう?これで『治癒』は使えないわよ」
キュルケはジョーカーに言い放つ。
しかし、当の本人は平然としている。
と、ジョーカーの周囲に異変が起こる。
子供が描くような、小さな星や欠けた月が何も無い空間に現れ、一点に集まるようにして消える。
現れては集まって消え、集まって消え。
暫くそれが繰り返されると、白い手袋のような右手が現れた。
キュルケが驚く間も無く、同じようにして左手も現れた。

「のほほ、どんどん壊してくださって結構ですよ~?幾らでも直せますのでネ」
ジョーカーは、さも可笑しいといった表情で笑う。
対してキュルケは唖然とするしかなかった。
――こうもアッサリと再生されるとは思ってもいなかったのだ。
(非常識にもほどがあるでしょ…)
そう思うのも無理は無い。破壊された手を簡単に元に戻すなど、誰が想像できようか?
しかし、現実は無情だ。…これで手を壊す方法も無駄と解った。

「さてさて…万策尽きちゃいましたか~?それではそろそろ、お終いにしましょうかネ」
ジョーカーの目が赤く輝く。
向こうではタバサもまた、巨大な氷の槍を作り出している。
いい加減、体力も限界だ。これ以上避け続けるのは無理だ。
かと言って、これ以上の精神力の消費も痛い。
まさに絶体絶命……さて、どうするべきか?キュルケは悩む。
しかし、悠長に悩んでもいられない。

「これでフィナーレですよ~!」
叫び、ジョーカーは顔面から炎球を放とうとする。
「あたっ!?」
短い悲鳴を上げ、ジョーカーの顔が明後日の方を向く。
一拍置き、放たれた炎球が地面を砕き、焼き払う。
ジョーカーは頬に感じた痛みに顔を顰めつつ、振り返る。
そこには青銅のゴーレムが浮かんでいた。
「あなた……まだゴーレムを作れたんですか?」
「…誰も”十体で全部”…とは、言っていないだろ…?」
忌々しそうな表情のジョーカーに、苦しそうにしながらも、ギーシュは笑みを作って答えた。
モンモランシーの『治癒』で全快とまでは行かずとも、
”何とか我慢できる”位にまで怪我が塞がったギーシュは残っている精神力でワルキューレを作ったのだ。
ワルキューレを突き飛ばそうと左手が飛ぶが、ワルキューレは素早く飛び退き、攻撃をかわす。
ジョーカーは目を赤く輝かせながら、ギーシュへ顔を向ける。
半死人であろうと、ほおっておいたのは間違いだった。
「キッチリ、片付けておくべきですネ!」
叫びながら炎球を放つ。
それをモンモランシーが精神力をありったけ使った、分厚い水の壁で押し止める。
大量の水が一瞬で水蒸気に変わり、煙幕のように立ち込める。
間髪居れずモンモランシーは一抱えほどもある水球を作りだし、水蒸気の向こうのジョーカーめがけて飛ばした。

凝縮されていない水球は命中と同時に破裂し、ジョーカーの顔面を濡らす。
「うわっぷ!?何ですか!?」
突然水をかけられ、ジョーカーはうろたえる。
ギーシュはその一瞬の隙を見逃さない。更に三体のワルキューレを作りだす。
全部で十四体…それが今のギーシュが作り出せるワルキューレの総数だ。
四体のワルキューレは瞬く間にジョーカーとの距離を詰める。
ここまでは先程と同じだ。だが、その先が違った。

一体が顔面に拳を叩き込んだ。

怯んだジョーカーに別の一体が真下からアッパーを繰り出し、真上へ打ち上げる。

打ち上げられたジョーカーを残る二体が全力で殴り付けた。

悲鳴を上げる間も無く、ジョーカーは地面に叩き付けられた。

反動で大量の土砂が宙に巻き上げられる。


「はは……どんなもんだい…」
ギーシュは土埃を見据えながら言い、力尽きたように地面に突っ伏す。
それに呼応するようにワルキューレも消滅した。

「やるじゃない…」
キュルケは気絶したギーシュと寄り添うモンモランシーを見つめながら、小さく微笑んだ。
戦力外と考えていた二人の活躍に素直に賞賛する。
「私も…彼女を止めなきゃね」
そう呟き、キュルケはタバサに向き直る。
タバサは既に二本の氷の槍を作り出していた。どちらも大きさから威力は容易に想像できる。
表情を伺う。変わらない無表情…、その目にやはり迷いは無い。

キュルケは小さく深呼吸をし、杖を構えた。
タバサも杖を掲げる。氷の槍が絡みつくように、杖の先端を回る。
杖を振り下ろせば、氷の槍はキュルケを貫かんと襲い掛かるだろう。
キュルケは無駄と知りつつ、タバサに向かって口を開いた。
「タバサ…最後に聞くわ。…どうしてもやるの?」
タバサは答えない。それが何よりの答えだった。
杖を振り下ろし、氷の槍を飛ばす。
キュルケは素早く呪文を唱えた。火球が杖の先端に現れ、氷の槍に向かって飛ぶ。
火球が氷の槍を飲み込み、溶かし尽くす。

と、立ち込める水蒸気を突き破り、もう一本の氷の槍が飛んだ。

「キュルケ!?」
ルイズの悲鳴のような声が上がった。
「…くっ…」
脇腹が熱い。見れば、そこに氷の槍は突き刺さっていた。
急所は辛うじて守ったが…避け切れなかった。血が傷口と口から溢れる。
地面に方膝をつき、荒く息を吐く。と、目の前に人の両足が見えた。
顔を上げると、親友の顔がそこにあった。

「…流石ね…。大した威力だわ…」
額に汗を浮かべながらも、軽口をたたく友人をタバサは静かに見下ろす。
その目を見て彼女は静かに唇を噛む。
――友人は少しも自分を恨んでいないのだ。
自分の勝手な都合で殺されようとしているのにも拘らずだ。
こんな目で見られては、自分の中のある種の決意も揺らいでしまいそうだ。
”何をしているの?早く止めを刺しなさいよ”
ガーゴイルを通じてミョズニトニルンの声が響く。
タバサは目を閉じた。
瞼の裏に浮かぶのは、友人との日々…、そして…母の笑顔。

目を見開き、タバサは杖を掲げて呪文を唱える。
何本もの氷の矢が現れる。杖を振り下ろせば、氷の矢は目の前の友人を串刺しにするだろう。
しかし…振り下ろせない。
何故振り下ろせない?もう、自分は覚悟を決めたのだ。今更、友人に情けをかけてどうなる?
そもそも、もう自分は友人などと呼ぶ資格は無いのに…。
「…っ!」
より一層強く唇を噛みしめる。
…自分は失いたくないのだろうか?この友人を?


「のほほほほーーー!!!チャンスです!!!」
突然聞こえてきたその声に、タバサとキュルケは同時に顔を向ける。
土煙を払い除け、ギーシュがノックダウンしたとばかり思っていたジョーカーが姿を現す。
瞬く間も無く、ジョーカーの目が赤く輝き、炎球が飛んだ。
凄まじい速さで飛ぶ炎球に、タバサは対応しきれなかった。

視界一杯に炎球が広がった、次の瞬間――

「危ない、タバサ!」

叫びながらキュルケが彼女に飛びつく。
炎球が着弾し、爆発が巻き起こった。

爆発により生じた爆風に煽られ、タバサは目を閉じた。
爆風が収まり目を開けると、自分を庇うように覆い被さっている友人が目に入った。
友人がゆっくりと身体を持ち上げ、自分を見つめる。
「大丈夫…?」
タバサは静かに頷いた。
そう、とキュルケは呟き――呻き声を上げ、顔を顰めた。
どうしたのかと思い、タバサは僅かに身体を起こし――目を見開いた。

友人のマントと制服の背中の部分、ブーツは無残にも焼け焦げており、
剥き出しの背中と両足に酷い火傷を負っていた。
「どうして…?」
友人を見つめながら、タバサは呆然と呟く。
解らなかった……何故自分を、こんな傷を負ってまで助けたのか。
タバサの呟きにキュルケは笑みを浮かべる。

「そんなの……あなたが私の大切な…親友だからに決まっているでしょ…」

タバサの目が大きく見開かれ、次いで涙を溢れさせた。
自分は彼女を切捨て、本気で殺そうとしたのに…、その彼女は身を挺して自分を庇ったのだ…。
その理由は”親友だから”……彼女は最後まで自分を切り捨てなかったのだ。
タバサは泣いた…、泣くしかなかった…。


”どうしたの?泣いたりなんかして。まだお前の仕事は終わってないよ?”
「そうそう、早く済ませちゃいましょうネ」
ミョズニトニルンとジョーカーの声が聞こえる。
キュルケはジョーカーを睨み付ける。
「あなた……仮にも…この子は味方…じゃないのよ…。なんで…あんな……」
キュルケの言葉にジョーカーは不思議そうな表情をする。
「はて?どう言う意味で?」
その様子に一層怒りを掻き立てられる。
「味方を巻き込むような攻撃を……なんでしたのよ…?この子…死んだかもしれないじゃ…ない…」
キュルケの言葉に顎(?)に手を沿え、ジョーカーは考え込む。
そして、目の形を変えてニヤリとした表情を作る。
「別にいいじゃないですか?」
ジョーカーは特に悩むでもなく、そう言った。
「なん…ですって…?」
キュルケは呆然とする。

ジョーカーは続けた。
「事情を知っておられるのであれば、ご理解いただけるはずですがネ?
そもそもシャルロットさんは、任務中の死亡を望まれてこうして使われているのですよ?
ですから、こちらとしてはあまりシャルロットさんの生死は関係ないんですよネ。
今のように任務成功が確実ならば、一緒に吹き飛ばしても何ら問題はありません。何しろ…」
そこで一拍置き、ジョーカーは口を開く。

「――駒の替えなんて幾らでも有りますしネ……のほほほほほほ♪」

キュルケは脳が沸騰するかと思った。それほどの怒りを目の前の幻獣とガーゴイルの操る者に感じたのだ。
――こいつらはタバサをただの消耗品としか見ていない。こんな奴等に…この子は今まで苦しめられたのか?
今直ぐにでも焼き尽くしてやりたい……激しい怒りが彼女に身体の痛みを忘れさせる。

タバサもジョーカーの言葉に再度唇を噛み締めた…。
その時だった。



「なんだ…?もう終わってんじゃねェか…」



その場の全員の視線が一斉に向く。

そこにはジャンガが立っていた。



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