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ゼロの使い-14




魔力を辿って行った先にはレコン・キスタの本拠地と思われる建物が建っていた。それが軍港施設ロサイスであることを異界の住人である彼が知る術はなかった。
幸運にも、本陣が攻め込まれるなどとは思ってなかったらしく、守備兵は全てまともな生き物だった。
本陣だけあって、かなり腕の立つものばかり、蟻の様な数で押し寄せたが、古代呪文とマホカンタの前に虚しく散っていくだけだった。

魔力を辿った先にある部屋の前に着くと、トリステインに攻めてきた連中と同じ魔力を漂わせたオーガが突っ込んできた。
その棍棒の一撃を交わしたメディルは、メラゾーマとマヒャドをそれぞれ発動させ胸の前でそれを合成した。
合成された二つの呪文は光の弓となり、第二撃を加えるべく向かってきたオーガはその矢に飲まれ、壁ごと消滅した。
先ほどの連中とは違いそのオーガは再生しなかった。

極大消滅呪文・メドローア。古代の大魔道師が編み出したとされるこの呪文はあらゆる物質を消滅させる最強の魔力を発射する。
メディルはこの術の性質を利用し、死者を操る魔力ごと消滅させたのだ。
今攻め込んでいる連中にも無論有効だが、この術も超高密度魔法言語ほどでないとはいえ、かなり消耗する。
大軍に向けて使うには適さなかった。

「君がメディルの使いかね。噂は聞いているよ。」

部屋の中では、総大将と思しき細い男がこちらを見ていた。
メディルは、ただの男に過ぎない筈の彼に言いようの無いものを感じた。

「貴様がここの・・・」
「いかにも。余がレコン・キスタ総司令官、オリヴァー・クロムウェルだ。」

高らかに自己紹介する彼の指に嵌められたものからは、メディルが追っていた魔力の糸が伸びていた。

「その指輪が不死身の秘密か。」
「いかにも。グレートライドンが呼び出した死者に、このアンドバリの指輪の魔力を与え生前の姿と不死性を与えた。
すべては我らがレコン・キスタの守護神が・・・」

悦に浸って喋り続ける、総大将の台詞をメディルが遮った。

「守護神だと、笑わせる。奴は私の世界にいた『死神貴族』と言う魔物に酷似していた。
貴様の背後にいるのは、異世界から来た私と同様の魔族か魔物。違うか?」

メディルの問いに、彼はクククと笑いながら答えた。

「その通り。あの方は神じゃない。恐ろしく邪悪なオーラを漂わせていたからね。
だが、神にも勝る力を持っておられる。だから余はあの方の下、この組織を興し、この世界を丸ごとあの方に献上しようとしたのだ。
この指輪はあの方が水の精霊から奪った物を改良したと言っていた。」
「そこまで話すということは、覚悟は出来たようだな。」

メディルの右手の指に灯った五つの炎を見たクロムウェルは手にした指輪を飲み込んだ。
改良されたためか、指輪の効果は外しただけでは消えぬらしく、彼の口からはトリステインに向けて魔力の糸が伸びている。

「ああ。余自ら手を汚す覚悟をね。」
「ほざくな。五指爆炎弾!」

放たれた5発のメラゾーマが彼を焼き尽くした――かに思えた。
だが、どういう訳か呪文は彼に命中したと思った瞬間、踵を返し、メディルに向かってきた。
咄嗟にマヒャドで相殺するが、判断が遅れればかなりの痛手を負っていた。
何が起こったのかメディルは把握できなかった。マホカンタがかかっているならば
並みの者はともかく彼ならば一発で見切る事が出来、他の呪文が発動したようにも見えなかった。
やがて、クロムウェルが不敵な笑みを浮かべ、話し始めた。

「どうやって呪文を返したか疑問に思っているようだから教えてあげよう。
余は何の魔法も使っていない。ただそういう体質だっただけの事さ。このような・・・」

突然、目の前の男の肉体がメキメキという音と共に大きくなっていき、見る見るうちに面影一つ残らぬ姿に変わり果てた。
そいつは青白い鱗に全身を覆われ、両手から30サントはある長い爪を生やし、瞳孔の無い血の様な真紅の眼を持つ
3メイル程の身長の蜥蜴と人間を混ぜたような魔物だった。
ここへ来て、ようやくメディルは最初に感じた奇妙な感覚の真実を悟った。

「魔法を弾き返す鱗を持ち合わせた崇高な存在に生まれ変わっていただけの事さ。
我らが守護神であるあの方が授けてくれた『進化の秘法』によってな!!」

言い終わる前に、クロムウェルはその巨体からは想像出来ぬほどの速度でメディルに爪を振り下ろした。
間一髪でかわすが、爪が下ろされた瞬間、散弾銃のように無造作にばら撒かれた無数の三日月形の風の刃の一つが左肩口を掠めた。

「どうだね?我が風刃の爪の味は。避け続けられるなら、やってみろ。」

第2、第3の爪がメディルに襲い掛かる。爪そのものの回避は容易だったが、軌道の予測が不可能な風の刃が少しずつ、だが確実に彼の体を傷つけていた。
だが、敵はあまり気の長いほうではないらしく、爪では簡単に死なぬと判断したのか、口を大きく開け、全身を震わせ冷たく輝く息を吐いた。
咄嗟にフバーハを唱えて身を守るが、そうしなければ銀世界と化した部屋の風景にこの上なく溶け込んでいたであろう。

「どうだね。君は余に傷一つ負わすことが出来ない。唯一、不死の兵を殺せる君がこの場にいて、私を殺せないということはトリステインの敗北が確定したということだ。
だが、君ほどの男をここで殺すのは惜しい。どうだ、余の・・・」
「笑わせるな。」
「そうか・・・残念だ。」
「何を勘違いしている?まだトリステインの敗北は二つの理由で決まっていない。」
「何・・・!?む・・・!?」

クロムウェルは体内のアンドバリの指輪を通じて異変を感じ取った。
死なないはずの兵の数が減っている。
化け物がメディルを睨み付けて言い放った。

「何をした・・・?」
「私は何もしてない。やったのは・・・私の主だ。」



「いっそ死んだ方がマシだわ・・・」

何本目か数えるのも止めた魔法薬を飲み干し、ルイズがぼやいた。
彼女は虚無の爆発を連発して辛うじて意識を保っている状態だった。それでもなお、海の中からは続々と敵軍が出てきたが。

「命を司るという虚無の力なら不浄の命である彼らを滅ぼせるかもしれない。」と敵陣に赴く前、使い魔が言っていた。

その言葉通り、爆発を僅かでも受けた敵兵は人も亜人も竜も、音も無くその場に崩れ落ちていった。
威力も想像以上で、一発撃てば数え切れぬほどの兵を滅ぼすことが出来た。
虚無特有の長い詠唱時間はこの期に及んでも逃げ出さぬ真の軍人達とメディルに化けた10体のモシャスナイトがその身を擲って時間を稼ぎ、
本来なら一発目で尽きたであろう精神力は気絶する前に使い魔から分け与えられた魔法薬で回復させる。
回復中はルイズに化けた残り90のモシャスナイトが一体ずつ爆発を唱え、魔力が尽きれば本来の姿に戻って軍人達と共に詠唱時間を稼いだ。
正直彼女の身体的・肉体的疲労は当の昔に限界を遥かに超えていた。
それでもなお、立って呪文を唱えられるのは貴族としての誇り、
ゼロと呼ばれ続けた自分が初めて本物の貴族らしく働いている事への喜び等もあるが、
最大の理由は自軍の兵と共に詠唱の時間を稼ぐ無二の親友とここまで導いてくれた使い魔に報いるためであった。

「こんな大仕事私に押し付けて・・・なんて言ってる場合じゃないわね。」

使い魔への愚痴を止めて、ルイズは再び詠唱に入った。


「と言うわけだ。」
「ぐ・・・」

クロムウェルが奥歯を噛み締めた。
レコン・キスタの兵はグレートライドンが呼び寄せた亡者を除けば全員、虚無と偽ってきたアンドバリの指輪の力で集めたものだ。
偽りの虚無が本物の虚無に滅ぼされるという皮肉な状況に、さしもの彼も不快感を顔に出さずにいられなかった。

「そして、もう一つの理由。それは―」

メディルは言った。まっすぐ、目の前の魔法を跳ね返す化け物に向かって。

「貴様を殺す算段が今ついたからだ。」





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