ゼロのルイズ
使える魔法がゼロのルイズ
とうとう、使い魔召喚の魔法すらも失敗した
使える魔法がゼロのルイズ
とうとう、使い魔召喚の魔法すらも失敗した
…本当に、失敗したのか?
それは、まだ、誰にも、はっきりと言えない状況
それは、まだ、誰にも、はっきりと言えない状況
「傷の具合は、どうなの?」
「もう大丈夫よ」
ふん!と胸を張って、キュルケに答えるルイズ
もう、包帯もいらないだろう
そう考えて、ルイズは勝手に包帯を解きだした
コルベールと、医務室勤務の水のメイジが慌て出す
「ミ、ミス・ヴァリエール、まだ、包帯を外すにははや…」
い、と言おうとしたのだろう
しかし、言葉は最後まで続かなかった
包帯の下、そこには、傷痕すらも残っておらず、綺麗な肌が覗いていて
水の秘薬を大量に使っても、助かるかどうか、危うい怪我だったはず
…なのに、何故?
コルベールの頭に疑問が浮かぶ
が、当のルイズ本人は、思ったよりも怪我が酷くなかったのだろう、とそう判断した
…大した事ない怪我で、何日も意識不明だっただなんて
何たる無様な事か
そう考え、少し落ち込む
…落ち込むと、同時に
重要な事実を、改めて認識した
「あ、あの…ミスタ・コルベール。使い魔召喚の、儀式についてですが…」
自分は、どうしたらいいのか
全くわからず、泣き出しそうな表情になりながら、コルベールの意見を求めるルイズ
ルイズの傷の治りの早さの異常性について考え込みかけていたコルベールは、はっ、と正気に返った
そうだ、傷の治癒速度も異常だが…それ以前に、もう一つ、彼女の身には、通常であれば考えられない異常が発生しているのだ
「そうだわ。ミス・ヴァリエール、あなた、使い魔を呼べなかった…の、よ、ね?」
…え?と
キュルケも、その事実に気づいてしまった
ルイズの左手の甲
そこには…まるで、使い魔に刻まれるようなルーンが、はっきりと浮かび上がっていたのだ
何故?
使い魔の召喚に失敗したルイズ
使い魔の契約の魔法を、使ってすらいないはずなのに?
何故…彼女の体に、ルーンが刻まれている?
「ミス・ツェルプストー、この事は、どうか内密に」
神妙な面持ちでコルベールにそう言われ、こくり、頷くキュルケ
左手の甲のルーン、花の乙女と思えぬ食欲、異常な程強まっている治癒力
ルイズの体には、今、様々な異変が起きている
これは、もう、コルベール一人の判断では、解決できない問題にまで発展していて
学園長たる、オールド・オスマンの判断を仰がなければならない
コルベールにそう告げられ、小さな体をますます小さくするように落ち込むルイズ
そんなルイズの様子に、キュルケは、どう声をかけたらいいのか、わからなくて
ただ、励ましてやるかのように、その小さな体を、そっと抱き締めてやったのだった
(………あら?)
その時、キュルケはふと、妙な事に気づいた
ずっと寝たきりだったルイズ、その、体から
ふわり、と…どこか、ほのかに甘い香りが立ち上っていた、その事実に
「もう大丈夫よ」
ふん!と胸を張って、キュルケに答えるルイズ
もう、包帯もいらないだろう
そう考えて、ルイズは勝手に包帯を解きだした
コルベールと、医務室勤務の水のメイジが慌て出す
「ミ、ミス・ヴァリエール、まだ、包帯を外すにははや…」
い、と言おうとしたのだろう
しかし、言葉は最後まで続かなかった
包帯の下、そこには、傷痕すらも残っておらず、綺麗な肌が覗いていて
水の秘薬を大量に使っても、助かるかどうか、危うい怪我だったはず
…なのに、何故?
コルベールの頭に疑問が浮かぶ
が、当のルイズ本人は、思ったよりも怪我が酷くなかったのだろう、とそう判断した
…大した事ない怪我で、何日も意識不明だっただなんて
何たる無様な事か
そう考え、少し落ち込む
…落ち込むと、同時に
重要な事実を、改めて認識した
「あ、あの…ミスタ・コルベール。使い魔召喚の、儀式についてですが…」
自分は、どうしたらいいのか
全くわからず、泣き出しそうな表情になりながら、コルベールの意見を求めるルイズ
ルイズの傷の治りの早さの異常性について考え込みかけていたコルベールは、はっ、と正気に返った
そうだ、傷の治癒速度も異常だが…それ以前に、もう一つ、彼女の身には、通常であれば考えられない異常が発生しているのだ
「そうだわ。ミス・ヴァリエール、あなた、使い魔を呼べなかった…の、よ、ね?」
…え?と
キュルケも、その事実に気づいてしまった
ルイズの左手の甲
そこには…まるで、使い魔に刻まれるようなルーンが、はっきりと浮かび上がっていたのだ
何故?
使い魔の召喚に失敗したルイズ
使い魔の契約の魔法を、使ってすらいないはずなのに?
何故…彼女の体に、ルーンが刻まれている?
「ミス・ツェルプストー、この事は、どうか内密に」
神妙な面持ちでコルベールにそう言われ、こくり、頷くキュルケ
左手の甲のルーン、花の乙女と思えぬ食欲、異常な程強まっている治癒力
ルイズの体には、今、様々な異変が起きている
これは、もう、コルベール一人の判断では、解決できない問題にまで発展していて
学園長たる、オールド・オスマンの判断を仰がなければならない
コルベールにそう告げられ、小さな体をますます小さくするように落ち込むルイズ
そんなルイズの様子に、キュルケは、どう声をかけたらいいのか、わからなくて
ただ、励ましてやるかのように、その小さな体を、そっと抱き締めてやったのだった
(………あら?)
その時、キュルケはふと、妙な事に気づいた
ずっと寝たきりだったルイズ、その、体から
ふわり、と…どこか、ほのかに甘い香りが立ち上っていた、その事実に
前代未聞、の事である
人間に、それも、メイジの体に、使い魔のルーンが刻まれてしまうだなんて
偉大なるメイジであり、長い時を生きてきたオスマンにとっても、それははじめてみる現象だった
とにかく、ディレクト・マジックの魔法を使い、原因を探ろうとする
ルイズは、体を小さくしながら、とにかく、結果が出るのを待つ
「……ううむ」
困ったような声を出すオスマン
…い、いいいいい、一体、どんな結果が!?
ばくばくばく、ルイズの鼓動は、嫌な意味で高鳴ってしまう
「どうにも、奇妙な事が起きておるのぅ…」
「あ、あの、どういう事でしょう」
「…ミス・ヴァリエール。君の体の中に…何か、全く別の生き物が存在している。そんな感じがするのじゃ」
別の生き物が?
体の中に?
それは、一体どう言う事なのか?
しかし、それはオールド・オスマンにも、漠然としかわからない結果で
どうにも…ルイズの体の中に、何故か、非常に、非常に、恐らく、肉眼では確認できないであろう、小さな生物が住み着いていて
恐らく、ルイズの左手に現れたルーンは、その生物に刻まれるべきはずのルーンが、何故か、ルイズの体に浮かび上がった結果ではないか、という事だった
だがしかし、ルイズには、そんな生物に契約の口付けを交わした記憶は…
………
「あ」
「何か、覚えがあるのですか?」
はい、とコルベールに答えるルイズ
確信はないのだが…もしかしたら、あの夢の中での出来事
それが、関係しているのではないだろうか?
そう考え、ルイズは、オールド・オスマンとコルベールに、意識不明になっていた間、見た夢に付いて話した
桃色の毛並みの獣人に、契約の口付けを交わしたという、その夢を
ルイズが話したその内容に、二人はそろって考え込む
「…恐らく、その時に、契約が成立されたようですね」
「し、しかし、何故、私の体にルーンが…」
「これは、推測でしかないのですが」
失敗に思われた、使い魔の召喚
だが、本当は成功していたのではないか?
その生物は、極小の…それも、人に寄生するような生物、もしくは、人間にとり憑くような生物で
あの爆発で大怪我を負ってしまったルイズの、その傷口から生物は入り込むか何かして
夢の中で、獣人という姿をとって、ルイズと契約を交わしたのでは?
「その生物は、人に寄生する事により生き長らえる生物で…もしかしたら、寄生した人間に、活力を与えるような、そんな生物なのかもしれません」
寄生生物と言うと聞こえは悪いが、その生物にとっても、宿主が死んでしまえば、自分も死んでしまう
だからこそ、寄生した相手に活力を与える、そんな生物がいてもおかしくないだろう…多分
ルイズの傷の治りが早かったのも、恐らく、それで説明がつく
「…その、食欲…に、ついてですが」
「それも、何かに寄生されている、と考えると、ある程度説明がつきます」
…つまり、は
体の中に、生物が住み着いているが為に
その生物の分まで、栄養を取る必要がある、そう言う事らしい
え?という事は、私このまま一生大食い?
花の乙女ルイズ、少々どころか結構なショックである
…で、でも、いくら食べても太らないのなら…いやいや、でも…
ううむ、悩むルイズだが、悩んだところでどうにかなる問題ではない
ともかく、ルイズは召喚に成功しており、その生物との契約が成り立ってしまっている
それは、動かしようのない事実なのだ
だとしても、だ
寄生生物を召喚して、それに寄生されている、だなんて、少々聞こえが悪い
表向きは、秘密にしておくべきだろう
ルイズが、名家の生まれであるからこそ、そう言った点には、充分に注意して配慮しなければ
「召喚と契約の成功、おめでとうございます…と、言っていいものかどうか、この状況ではわかりませんが。ともかく、ミス・ヴァリエール。あなたも、無事、進級する事ができますよ」
「あ……!」
…あぁ
自分は、この学園を、去らずにすむのだ
まだ、自分はメイジとして生きていっていいのだ
…今は、ただ、その事実が嬉しくて
ルイズはほっと、笑みを浮かべたのだった
人間に、それも、メイジの体に、使い魔のルーンが刻まれてしまうだなんて
偉大なるメイジであり、長い時を生きてきたオスマンにとっても、それははじめてみる現象だった
とにかく、ディレクト・マジックの魔法を使い、原因を探ろうとする
ルイズは、体を小さくしながら、とにかく、結果が出るのを待つ
「……ううむ」
困ったような声を出すオスマン
…い、いいいいい、一体、どんな結果が!?
ばくばくばく、ルイズの鼓動は、嫌な意味で高鳴ってしまう
「どうにも、奇妙な事が起きておるのぅ…」
「あ、あの、どういう事でしょう」
「…ミス・ヴァリエール。君の体の中に…何か、全く別の生き物が存在している。そんな感じがするのじゃ」
別の生き物が?
体の中に?
それは、一体どう言う事なのか?
しかし、それはオールド・オスマンにも、漠然としかわからない結果で
どうにも…ルイズの体の中に、何故か、非常に、非常に、恐らく、肉眼では確認できないであろう、小さな生物が住み着いていて
恐らく、ルイズの左手に現れたルーンは、その生物に刻まれるべきはずのルーンが、何故か、ルイズの体に浮かび上がった結果ではないか、という事だった
だがしかし、ルイズには、そんな生物に契約の口付けを交わした記憶は…
………
「あ」
「何か、覚えがあるのですか?」
はい、とコルベールに答えるルイズ
確信はないのだが…もしかしたら、あの夢の中での出来事
それが、関係しているのではないだろうか?
そう考え、ルイズは、オールド・オスマンとコルベールに、意識不明になっていた間、見た夢に付いて話した
桃色の毛並みの獣人に、契約の口付けを交わしたという、その夢を
ルイズが話したその内容に、二人はそろって考え込む
「…恐らく、その時に、契約が成立されたようですね」
「し、しかし、何故、私の体にルーンが…」
「これは、推測でしかないのですが」
失敗に思われた、使い魔の召喚
だが、本当は成功していたのではないか?
その生物は、極小の…それも、人に寄生するような生物、もしくは、人間にとり憑くような生物で
あの爆発で大怪我を負ってしまったルイズの、その傷口から生物は入り込むか何かして
夢の中で、獣人という姿をとって、ルイズと契約を交わしたのでは?
「その生物は、人に寄生する事により生き長らえる生物で…もしかしたら、寄生した人間に、活力を与えるような、そんな生物なのかもしれません」
寄生生物と言うと聞こえは悪いが、その生物にとっても、宿主が死んでしまえば、自分も死んでしまう
だからこそ、寄生した相手に活力を与える、そんな生物がいてもおかしくないだろう…多分
ルイズの傷の治りが早かったのも、恐らく、それで説明がつく
「…その、食欲…に、ついてですが」
「それも、何かに寄生されている、と考えると、ある程度説明がつきます」
…つまり、は
体の中に、生物が住み着いているが為に
その生物の分まで、栄養を取る必要がある、そう言う事らしい
え?という事は、私このまま一生大食い?
花の乙女ルイズ、少々どころか結構なショックである
…で、でも、いくら食べても太らないのなら…いやいや、でも…
ううむ、悩むルイズだが、悩んだところでどうにかなる問題ではない
ともかく、ルイズは召喚に成功しており、その生物との契約が成り立ってしまっている
それは、動かしようのない事実なのだ
だとしても、だ
寄生生物を召喚して、それに寄生されている、だなんて、少々聞こえが悪い
表向きは、秘密にしておくべきだろう
ルイズが、名家の生まれであるからこそ、そう言った点には、充分に注意して配慮しなければ
「召喚と契約の成功、おめでとうございます…と、言っていいものかどうか、この状況ではわかりませんが。ともかく、ミス・ヴァリエール。あなたも、無事、進級する事ができますよ」
「あ……!」
…あぁ
自分は、この学園を、去らずにすむのだ
まだ、自分はメイジとして生きていっていいのだ
…今は、ただ、その事実が嬉しくて
ルイズはほっと、笑みを浮かべたのだった
とりあえず、一旦、女子寮の自室へと戻ったルイズ
久々の自分のベッドの上にぽすん、と倒れこみ…己の左手に刻まれたルーンを見つめた
…使い魔を呼ぼうとして、自分の体にルーンが刻まれるなんて、考えた事もなかった
けれど、これは紛れもない現実
自分の体に、使い魔のルーンが刻まれたのは事実なのだ
「…私の、中に」
自分の体の中に、別の生命が住み着いている
それも、どうやら事実であるらしい
一応、害はないようだが…増大した食欲は、害であるかどうか判断が微妙だが、少々、不思議な感覚だ
「成功…したの、よね」
微妙ではあるけれど、召喚できたらしい事は事実、契約できたらしい事は事実
一応、進級はできたものの…なにやら、先行き不安でもある
何せ、使い魔の姿が見えないのも、また事実なのだ
クラスメイトに、何と言われてからかわれるやら
憂鬱な気持ちを抱えながら、ルイズはそろそろ就寝しようと、寝間着に着替えようとして
久々の自分のベッドの上にぽすん、と倒れこみ…己の左手に刻まれたルーンを見つめた
…使い魔を呼ぼうとして、自分の体にルーンが刻まれるなんて、考えた事もなかった
けれど、これは紛れもない現実
自分の体に、使い魔のルーンが刻まれたのは事実なのだ
「…私の、中に」
自分の体の中に、別の生命が住み着いている
それも、どうやら事実であるらしい
一応、害はないようだが…増大した食欲は、害であるかどうか判断が微妙だが、少々、不思議な感覚だ
「成功…したの、よね」
微妙ではあるけれど、召喚できたらしい事は事実、契約できたらしい事は事実
一応、進級はできたものの…なにやら、先行き不安でもある
何せ、使い魔の姿が見えないのも、また事実なのだ
クラスメイトに、何と言われてからかわれるやら
憂鬱な気持ちを抱えながら、ルイズはそろそろ就寝しようと、寝間着に着替えようとして
ぐうきゅるるるるるるるるるる
「………」
静かな部屋の中に響く、盛大な腹の音
無視しようとしたけれど、きゅるきゅる、きゅるるるる
まるで、何かの鳴き声のように、腹の音は鳴り響いて
「…あぁ、もう!」
おなかがすきすぎて、眠れそうにない!!
ちょっと恥ずかしいけれどはしたないけれど、そうも言っていられない
ルイズは、他の生徒の姿が見えないのを確認して、夜食を手に入れるべく、食堂へと向かっていったのだった
静かな部屋の中に響く、盛大な腹の音
無視しようとしたけれど、きゅるきゅる、きゅるるるる
まるで、何かの鳴き声のように、腹の音は鳴り響いて
「…あぁ、もう!」
おなかがすきすぎて、眠れそうにない!!
ちょっと恥ずかしいけれどはしたないけれど、そうも言っていられない
ルイズは、他の生徒の姿が見えないのを確認して、夜食を手に入れるべく、食堂へと向かっていったのだった