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蒼い使い魔外伝-02


サビエラ村での任務を終え、タバサとバージルは
その報告のため、ガリアの首都、リュティスにあるヴェルサルテイル宮殿の一角にあるプチ・トロワへと降り立つ。
「ここで待ってて」
タバサはその言葉とともに着替えのために一度別室へと移動してゆく
バージルはシルフィードとともに広場の一角でタバサの帰りを待つことにした。
やがて着替え終わったのかタバサが戻ってくる、なぜかコートに袖を通したままだ。
「報告に行ってくる、もう少しこの子と待ってて」
タバサがそれだけ言うと再び踵を返し歩きだそうとする、それをバージルが呼びとめた。
「待て、コートを返せ」
「…………」
タバサは渋々戻ってくると、名残惜しそうにコートを返却した。

「聞いたよ、人形娘」
プチ・トロワの幾重にも緞子が垂れ下った広大な部屋の中で
イザベラがニヤニヤと笑いながらタバサを見ながら口を開いた。
「サビエラ村の任務に同行者がいたんだってねぇ? しかも男だって? 
お前みたいな人形娘が一体どうやって男なんてひっかけたんだか…」
イザベラはそう言いながら、なにやら考えごとをするように手を顎に当てる、
やがてなにかをおもいついた、といった表情になると再びタバサを見た。
「その男を呼びな、どんな奴なのか見てみたいわ」
「………」
タバサは小さく首を横に振る、
「なんだい、聞けないってのかい?」
「大変なことになる」
バージルをこの従姉姫に合わすなどとんでもない、
もしイザベラが彼の逆鱗を削るようなマネをした日にはプチ・トロワに血の雨が降りかねない。
「いいから呼びな! 命令だよ!?」
だがそんなことは知らないイザベラは頑としてタバサに呼ぶように命じる。
ついに折れたのかタバサが小さく呟く
「約束してほしい」
「あん? 何をだい?」
「どうなっても知らない、彼の行動に関して私は一切関知しない、自分の行動には責任を持つ事」
「…??? 何だってんだい?」
意味が分からない、といった感じにイザベラが首をかしげる、だがそれにかまわずタバサは続けた。
「約束して」
「ふん、わかったよ、いいからさっさと呼んできな」
イザベラはあまり深く考えずに手を振る、タバサは一度だけ振り返ると
「警告はした」
と小さく呟きバージルを呼ぶため部屋を後にした。
タバサが部屋を後にすると、イザベラは薄く笑い侍女を呼ぶと、
「アレを一個、急いで持ってきな」
そう短く命じ侍女を走らせた。
―数分後、呼び出しの衛士が再びタバサの到着を告げる。
「人形七号様、お着きになられました」
扉が開かれるとタバサと共にスラリとした長身に、
細身の長剣を持ち、フォーマルな蒼いコートを着た銀髪の青年が姿を現した。
その出で立ちに青年を見た侍女たちは頬を赤く染めため息を漏らす、
だがイザベラはそれとは別に、新しいおもちゃを見つけた、といった凶悪な笑みを浮かべながらタバサをみた。
「へぇ、それがお前の騎士サマってやつかい…」
「…………」
バージルが無言で顔をあげイザベラを見る、目があった、
「(シャルロットよりもはるかに冷たい目…気に入らないね…)」
イザベラはバージルを見てそう思いながら口を開いた。
「あんた、名前は?」
「…………」
バージルはイザベラの問いには答えず、先ほど目を合わせたのを最後に
興味を失ったといわんばかりに腕を組み目をつむると静かに口を開く。
「そんなことはどうでもいい、…何の用だ」
一国の王女を前にしてもこの不遜な態度を崩さないあたり流石である。
バージルの隣にいたタバサも素知らぬ顔をしている、バージルの言動に一切の責任を取らないという意思が見て取れた。
思わずイザベラも言葉を失う、がすぐに我にかえると、顔を怒りで歪ませた。
「なっ!? なんて口の―」
「聞こえなかったのか? 何の用だ? と俺は聞いたんだ、用もなしにここに呼びつけたのではあるまい」
イザベラの文句をさえぎりバージルは続ける、睨みつけてくるその眼に怖気づいたのかイザベラはもごもごと口を開いた。
「ふ、ふん…シャルロットが男を連れてきたと聞いてね、一体どんなやつか見たくなったのよ」
―シャルロット? 聞いたことがない名前にバージルはタバサへと視線を向ける、
その視線に気が付いているのかいないのか、タバサは無表情に前だけを見ていた。
「それだけか? …くだらん時間を過ごした」
再びイザベラへ視線を戻したバージルはそう言い残すと、くるりと背を向ける、がそれをイザベラが後ろから呼び止めた
「待ちな、もちろんあんたに用があって呼んだのよ、あのシャルロットが信頼を置く男がどれだけ強いのか興味があるのさ」
そういうとイザベラが何やら取り出すと、ポイとバージルの前に放り投げる。
「………?」
バージルが振り返りそれへ視線を落とす、それは大きさが二十サント程の小さな人形だった。
そんなバージルにニヤニヤとうす笑いを浮かべながらイザベラはそれを指差した。
「ちょっとその人形にあんたの血をかけな、言っとくけど、拒否権はないよ」
そう言うといつの間に潜んでいたのか緞子の影から数人の騎士が現れた。
どうやらバージルが逃げ出さぬように監視するため潜んでいたようだった。

「だめ」
その様子に嫌な予感がしたのかタバサがバージルを止める、
だがバージルはタバサを振り払い部屋の中心へと歩みを進め…
言われるがまま閻魔刀を抜き放ち自身の掌を切り裂く、
おびただしい程の血が人形へと吸い込まれてゆく、
「あぁ、言い忘れていたわ」
その様子を見ていたイザベラはわざとらしく声を上げる。
「それね、古代のマジックアイテム、"スキルニル"っていう人形よ、
それに血をかけるとその血をかけたものに化けることができるの、能力も全部複写するわ…
それでね、私思ったの、同じ強さのものが殺しあったらどっちが勝つのかしら? ってね……」
ニヤニヤと笑いながら言うイザベラを短く睨みつけると、すぐにバージルはスキルニルへと視線を戻す。
その人形はスルスルと膨れ上がり、やがてバージルと寸分たがわぬ姿になった。
そしてバージルと目があった瞬間。
―ギィン!! という刀と刀が斬り合う凄まじい音、侍女たちが驚き恐る恐る目をあけると…

部屋の中央で蒼いコートを羽織った二人の男が鍔迫り合っていた。
「ははっ! どっちがどっちだかわからないね!」
その様子を見てイザベラが笑う、それとは逆にタバサは恐怖した。
双方のバージルから恐ろしい怒気があふれている。
それはまっすぐ自分自身と同じ姿をしている人形を睨みつけていた。
おそらく彼が自分と同じ存在と戦うのは、これが初めてではないのだろう。
自分と同じ存在に対する嫌悪感、そしてそれと戦わなければならない哀しみ。
熾烈を極める鍔迫り合いにぎりぎりと悲鳴をあげ、煙さえ上げる二本の剣を間に、二人は暫し睨みあっていたが、
突然弾けるように距離を取るとバージルは居合いの構えを取る、
―――次元斬、超高速の抜刀術により空間ごと叩き斬る絶技。
空間が歪み、固定化が掛っているはずの大理石の壁がいとも簡単に削り取られてゆく
イザベラが座っていたすぐ横の空間が削り取られる。
床にはまるでそこだけがごっそり無くなってしまったかのようなきれいな穴が開いていた。
「ハァッ!!」
次元斬を回避し、上空に飛んだスキルニルを迎撃すべく、バージルが剣撃を飛ばす、
スキルニルはトリックダウンで瞬時にバージルの目の前へ降り立つと閻魔刀を抜き放ちバージルを斬る、
だがバージルもそれを予見していたのか閻魔刀を勢いよく斬り下げその斬撃を撃ち落とした。
斬撃は天井をたやすくブチ抜き、空が露わになる、空は重たく雲がのしかかり稲光が走る、嵐の予兆だった。

バージルの閻魔刀がスキルニルの刀を弾き落とす、だがスキルニルはすかさずそれを取り直し、逆に柄でバージルを吹っ飛ばす。
「ぐぅっ!?」
吹っ飛ばされ、恐ろしい勢いで壁に叩きつけられる、大理石の壁が衝撃に耐えきれず崩れ落ちた。
崩れ落ちた壁に向かいスキルニルがニヤリと笑い挑発する。
「...Too easy(弱すぎる…)」
「Don't get so cocky!(舐めるな!)」
その声とともに瓦礫を突き破り、手に幻影剣を握ったバージルが勢いよくスティンガーを放つ。
攻城鎚のような凄まじい威力で迫るそれをスキルニルはトリックアップでバージルの上空へ躍り上がると
自らも幻影剣を生成し、ヘルムブレイカーを叩き込むべくバージルに向け急降下する、
だがバージルもすぐさま反転、ベオウルフを装着し日輪脚で迎撃する、
二つが激突した瞬間、日輪脚によりスキルニルの幻影剣が砕けその衝撃でスキルニルの体が大きく宙を舞う、
がすぐさま体勢を立て直すと、トリックダウンで地上へ降りバージルへと視線を戻した。
その瞬間、日輪脚で空中に跳んだバージルが地上へ降りたスキルニル目がけ流星脚を放つ、
隕石が落下したのではないかと疑いたくなるような惨たらしいクレーターがプチ・トロワの石畳に穿かれる。
「…外したか」
クレーターの中心に立っていたバージルはゆらりと立ち上がると、閻魔刀を構え、数メイル先のスキルニルを睨みつける。
スキルニルも薄ら笑いを浮かべながら閻魔刀を抜き放つ、刹那、二つの蒼い影は再び激突した。
「ォオオォオオオッ!!」
「ァアアアアアアッ!!」
裂帛の気合とともに二人の斬撃が凄まじい速度で打ちあわされる、
その度に恐ろしい程の力の奔流が部屋の中で渦を巻く、
刀を叩きつけ、受け流し、見切り、鋭い突きを放つ。それを避け、斬り払い、そして再び二つの閻魔刀が激突する。
残像が現れる程の素早い斬撃が次々繰り出される、まさに剣の暴風である。
その時、天井の一部が崩れ落ち切り結ぶ二人に降り注ぐ、だがその大理石の塊は二人の頭上に降り注ぐことを許されず
二人の繰り出す斬撃の応酬に巻き込まれ一瞬で砂と化した。
お互い一歩も引かぬ攻防、鉄と鉄がぶつかり合う轟音が響き、火花が飛び散る。

「ね…ねぇ、と…止めなさいよアイツを! シャルロット! あんたの連れでしょ!? 早く止めな!」
自分が蒔いた種にも関わらず、イザベラが半狂乱になって叫ぶ、このまま戦いを続けさせればプチ・トロワは全壊、
ヘタすると崩落の前に戦いに巻き込まれて死にかねない。
すでに宮殿の天井の一部は崩壊し、雨が部屋の中へ降り注いでいる。
だがタバサはもちろん、騒ぎを聞きつけ駆け付けた騎士達ですらその場を動けないでいた。
眼の前で行われている戦いは人間の入る領分など一切ない、魔人同士の戦い……
そんな中に飛び込んでいけるものなど存在しなかった。
その戦いを見ている騎士たちはそれを美しいとまで感じてしまう、
魔法を至上のものとし、剣技など野蛮で下賤なものとしている彼らにも関わらず、だ
かつて偉大なる始祖、ブリミルをも薙ぎ払ったスパーダの剣技、
それが目の前で繰り広げられているなどと、彼らには想像もできまい。

切り結ぶうちに双方の髪は垂れていた。
「「Dante!!!!」」
互いの姿にダンテとの戦いを垣間見たのだろうか、
二人のバージルが同時に己が弟の名を叫ぶ。
幾筋もの剣閃が火花を散らしながら空を疾ったのちにがっきりと二人の剣が噛み合う、するとそれまで彼らに弾かれ続け、
地面に落ちる事を許されず宙を遊び続けていた雨粒が、豪雨と化して辺りに一斉に降り注いだ。
この戦いに決着をつけることができるのはただ一つ、どちらかの死のみである。

―ボロッ…ボロボロッ…
信じられないことに、一方のバージルの身体が崩れ始めている、
度重なるダメージ、そして基の身体能力と内包する魔力の凄まじさにスキルニル本体が付いていけなくなったのである。
ぐらりとスキルニルがよろめいた瞬間バージルが疾走居合いを放つ、
自らの突き進む道を空間ごと斬り刻みながらバージルが駆け抜ける。無数の太刀筋は、すれ違う瞬間スキルニルに襲い掛かる。
エア・カッターとは比べ物にならない凄まじい刃の風。人間には到底たどり着けぬ、昇華せし魔の一撃。
一陣の暴風となり駆け抜けたバージルは閻魔刀を振り、ゆっくりと納刀する、
「Leave me...(失せろ)」
―キンッ! と完全に納刀する音とともにスキルニルが真っ二つになり崩れ去った。

バージルは垂れた髪の毛をかきあげるとまっすぐイザベラを睨みつける。
その眼は恐ろしい程の怒りに満ちていた。
「ひっ………」
イザベラが短い悲鳴を上げた瞬間、バージルは即座に閻魔刀を抜刀、
彼女の足もとに深い縦溝が穿かれる。
そして彼女の頭にあったミスリル銀製の豪奢な王冠が真っ二つに断ち切られカラン…と乾いた音を立てながら床を転がる。
斬撃はそれだけに留まらずすぐ後ろの壁が空間ごと断ち切られ崩れ落ちた。
「あ…あ…」
「クズめ…」
完全に腰を抜かし床に座り込み失禁しているイザベラを見るや
流れるように閻魔刀を納刀する。
フンと鼻を鳴らすとバージルは出口へ向け歩きだした。
タバサもしばしの間呆然としていたが、ふと我に返ると、小走りでバージルの後ろを追いかけた。

「あ、あ、あ、あいつを捕えな! し、し、し死刑だ! 死刑にしてやる!」
だが誰もバージルを取り押さえようとしない、出来るわけがないのだ、
あれだけ目の前で始祖も真っ青な戦いを繰り広げた男をどうやって捕えろと?
一個師団を投入しても止められる気がしない。
その場にいた騎士達はただ黙って目の前の魔剣士を見送ることしかできなかった。

「きゅいきゅい! おにいさまはすごいのね! あの従姉姫の顔は傑作だったの!」
逃げるようにガリアを立ち、言葉数少ない二人とは裏腹にシルフィードが興奮した口調で話しかける。
それを咎めるようにタバサが杖でこつんとシルフィードの頭を叩いた。
「きゅい! 痛いのね! おにいさまはおねえさまの代わりに一発かましてくれたのね!」
興奮気味に話すシルフィードを無視しつつタバサはバージルを見た。
腕を組み、むすっとした表情で目をつむっている。
「ごめんなさい」
タバサがそんなバージルに謝罪する。
「何故謝る」
「私の責任」
「…………」
あの時、無理にでもイザベラのわがままを断っていれば、自分が折れなければこんなことにはならなかった。
結果バージルに不快な思いをさせてしまった、そう考えタバサは謝罪を口にした。
「気にしてはいない」
バージルは短くそう言うと続けて一つの名前を口にする。
「シャルロット」
不意にそう呼ばれたタバサがピクと反応する、
「それがお前の名か」
「…………」
バージルに言われ無言でタバサが頷く。
「偽名ではないかとは思っていた。貴族、というからには名の他に姓もあるのだろう。
だがお前は今まで名乗らなかった、社交場でフルネームで名乗らないのは非礼に当たる。偽名の可能性が高い。」
バージルはそう言いながらタバサを見る、タバサももう隠すことはできないと判断したのか静かに口を開いた。
「私の本当の名前は…シャルロット・エレーヌ・オルレアン」
「…王族の血筋か」
「でも、まだ私は…その名前を名乗ることはできない」
そう言うと淡々とタバサは自身の過去について語り始めた。
ガリアの王、ジョセフに父を殺され、その上エルフの毒により母の心を壊されてしまった。
母は、昔買い与えてくれた名付けた人形をシャルロットだと思い込んでしまっている、
それ故、自身は人形、タバサとして復讐を果たすためにガリア北花壇騎士団として危険な任務につき
力を蓄えているのだという。
「私は、復讐を果たすまで、かあ様を元に戻すまで、その名前を名乗ることはできない」
俯きながら悲痛な声でタバサが呟く、するとバージルが静かに口を開いた。

「ギルバ」

「……?」
不意に聞こえてきた言葉にタバサがバージルを見る、
「…俺が昔使っていた偽名だ」
バージルが目をつむりながら続ける。
「悪魔どもから身を隠すための名、今はもう使わん」
タバサが意外と言った表情でバージルを見る、彼はただ淡々と言葉を続けた。
「バージル…この名を名乗る時、魂に、そして父の名に誓った、
力を、父の持つ純粋な力を手に入れると、力無き己との決別のためにな」
そこで一旦言葉を切ると自分の右手を見つめ強く握りしめる
「そして俺は今も力を求めている。何よりも強い力を。全てを打ち倒す力を」
「………」
「お前も、何れはその名から決別する時が来るだろう。その時に改めて名乗ればいい」
バージルはそう言うとシルフィードの背の上で横になった。
「…少し寝る、着いたら起こせ」
そう言うと、先の戦闘の影響かバージルは静かな寝息を立て始めた。
「…速度を落として、出来る限り」
それを見たタバサはシルフィードにそう命じると、
バージルの横にころんと横になると彼女も静かに寝息を立て始めた。


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