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谷まゼロ-04


学院のとある一角には、生徒たちの憩いの場があった。
そこには丸いテーブルがいくつも設置されており、
昼食を終えた生徒たちが、そのテーブルで席を囲み、歓談をして楽しむためのものであった。

失意の谷は、その場所のテーブルにぐったりと頭を乗せ、力なく座っていた。
周りから見れば、まるでボロ雑巾が椅子に引っかかっているように見えるほど、覇気が失せていた。

谷の胸中は複雑であった。

認めたくない。どう考えても認めたくない。
だが、地球上にないものをいくつも見てきた。
谷であっても、元の場所に簡単に戻れると考えられるほど楽観的ではない。
それに加えて、こちら側の人間に帰ることができないと言われた日にはもうどうすればいいか分からなかった。

島さんが居ない世界。それは、谷とってどんな地獄よりも過酷なものである。
正直に言って生きていることすら無意味になってしまう。

島さんっ……オレっ!オレどうしたらいいんッスか?島さん……。
っそ、そんな、そんなの耐えれないです、島さん!!!島さんに会えなくなるなんて……。

島さあああああああああぁあああああああぁぁぁぁぁん!!!!!

谷の中で何かが決壊しそうになっていた。
そこに谷のことは勿論のこと、谷が今深刻な状況に陥っていることを知らない男がやってきた。

「まっ、待ってくれモンモランシー!!!誤解なんだ!!
 ケティとはラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで、やましいことなんてこれっぽちも!!
 本当だっ!信じておくれモンモランシー!と、とりあえず話だけでもしようじゃないか!」

金髪の巻き髪で、フリルがついたシャツを来ているいかにも気障っぽい格好をしたメイジの男であった。
その名は男はギーシュといった。
ギーシュは、憤慨の色を露わにして前方を歩いているクルクルロール髪の女性を、
なんとか引きとめようとしているようであった。
谷とは違った意味で深刻な状況だった。
色恋沙汰の修羅場。それが簡潔にギーシュの今現在のありさまを表す答えであった。

ギーシュはケティという下級生と、モンモランシーという同級生に二股をかけていたことが露見したのだった。
それによって、ケティには完全に見放され、モンモランシーからも、別れを告げられていた。

だが、なんとか誤解を……、というよりもモンモランシーとよりを戻そうとギーシュは必死になっていた。

「とりあえず、落ち着こうモンモランシー。君の可愛い顔が勿体ないよ。
 さあ、丁度ここに席が空いている。ここに座っておくれ、そして僕がどんなに君のことを愛してるか聞いておくれ!」

歩を止め、ギーシュの言葉をジトリとした目で睨みながら聞いたモンモランシーは言った。

「あら。そこの席、空席じゃないわよ?根性だけじゃなくて目まで腐ったんじゃないかしら?ほら、どうするのギーシュ」

その言葉には凄まじいほどの冷酷さがあふれ出ていた。
ギーシュは女性を怒らせるのがこれほどまでに怖くて、そして厄介なのだと思い知った。
女性は褒めて喜ばすのも怒らせるのも簡単だが、
一度損ねた機嫌をなおすは物凄く難しいとギーシュは知っていた。

そして、彼女が言う通りにギーシュが座るように勧めた席には男が一人座っていた。
あまりにも存在感がなかったので、ギーシュは気づいていなかったのだった。
他に空席はなかった。この男に言ってどいてもらうのが一番であると考えた。
だが、彼女の手前、横暴なマネはできない。それがたとえ平民であっても。
ギーシュは、親しげに谷に話しかけた。

「済まないが、そこに座っている君。本来そこは平民が座ってはいけないのだよ。席を譲ってはくれないか」

谷はギーシュの言葉に応えないどころか、完全に無視した。ピクリとも動かない。
ギーシュは焦った。後ろでは、モンモランシーが腕を組んでこちらを睨んでいる。
早くしなければならなかった。
ギーシュは谷の肩に手をやって、揺さぶりながら大きな声で言った。

「ちょっと困るんだよ君!いいかい、もう一度だけ言……」
「ウルセェ!!!」

話の途中で、集るハエを払うかのように、谷がテーブルの上に拳を振りおろした。
テーブル足が盛大な音をたてて折れ、テーブルに置かれていた花瓶が割れて四散した。

ギーシュは、とっさに瓶の破片や飛び散った水から、モンモランシーを庇った。
自分の体を盾にし、モンモランシー肩に手をやり、抱きかかえるようにして。
自然と、ギーシュの顔がモンモランシーの目の前にあった。
モンモランシーの頬に赤みがさした。

ギーシュは真剣な顔をしていた。
愛しのモンモランシーが危険にさらされたのを怒っている……というのとは少し違っていた。
心の中では、物凄いハイテンションでガッツポーズを3回していた。

来た!!!よし!よし!これは来たぞ!!!こんなに都合のいい展開はおいしすぎる!!
こんなシチュエーション、一生に一回あるかないかだぞ!!
おいしすぎる!……おいしすぎるよ!!!これってもしかして僕のために誰かが仕組んでくれたのか!?

確かに、ギーシュはモンモランシーが怪我をしなかったことを喜んではいた。
だがそれ以上に、今までの失態が全て清算できるイベントが発生したことに強い喜びを感じていた。
誰もが一度は夢見たことがあるであろう、乙女を窮地から救う自分。今それが、訪れたのだから。
ギーシュは心配そうな顔してモンモランシーに言った。

「大丈夫かい、モンモランシー?どこも怪我はしていないかい?」
「え?……え、ええ。その、あの……お陰様で。あ、ありがと。ギーシュ」

赤く染まった顔でいじらしくそう言うモンモランシーの唇に優しく人差し指で触れ、
ギーシュは、目をつぶって首を横に振った。

「礼は言わないでおくれ、僕は当然のことをしたまでさ。
 もちろん、さっきのことの償いになるなんてことは……これっぽっちも考えていないよ。
 僕は……君が無事ならそれでいいんだ……愛しのモンモランシー」

「ああ!ギーシュ……!!もうさっきことなんていいのよ……」

イヤッハァーーーーーーーーー!!!

ギーシュの心の中は喜びの咆哮で満たされていた。
完全に成功したと確信したギーシュであった。
もう駄目かもしれないと思っていた矢先であるから、喜びもひとしおである。

ギーシュは、ゆっくりと優しくモンモランシーの肩を離し、笑みを一度投げかけた後、立ちあがった。
このあと、ギーシュがモンモランシーとイチャイチャしながら、乳繰り合いながら、この場を去っていれば、
未来は間違いなく幸せなものであっただろう。しかし、悪魔の誘惑に勝てなかった。
ギーシュは欲を出し過ぎたのだった。
ギーシュは向きなおり、今もボロ雑巾のように椅子に座っている谷に詰め寄った。

「さてと……幸いにもモンモランシーは怪我をせずに済んだわけだが……。
 君が危険にさらしたのは事実だ……そして平民が貴族に手を上げたことも……。
 それが、どういうことかわかるかい?仮面をつけた男」

谷は、顔だけギーシュに向けた。未だに何かをする気力は湧いていなかった。
そんな谷をお構いなしにギーシュはまるで芝居のようにたち振る舞った。
周囲の人間が何事かと、ギーシュに注目した。

「だが!平民の君が貴族に手を上げたことは、僕が遺憾とする大事の前には小事である!」

いいぞ、ぼく。最高に目立ってる。

「僕は愛しのモンモランシーを守ることができた。だが、もしかしたならば守れていなかったかもしれなかった!!
 そのことは考えるだけでもおぞましい!もしも、彼女の透き通るような柔肌に傷でもついたら!
 もしそんなことになっていれば、僕は到底耐えることができなかっただろう!つまりはだ!」

薔薇の造花を胸ポケットから抜き放ち、ビシリと谷に向って突きつけた。

「僕は、僕個人として、ギーシュ・ド・グラモンとして君を許すことができないというわけだ!」

手に持った薔薇を天高々に上に向け持ち上げた。

「薔薇である僕は、女性を、いやモンモランシーを耳で楽しませ、心楽します義務がある!
 だからこそだ!ここに杖を掲げ、その障害である君に一対一の決闘を申し込む!!!」

おおお!!という歓声が沸き、拍手を送る者まで現れていた。
ギーシュコールが辺りに響く。

ぼく、今輝いてる……最高にカッコイイ!!!
ああ、モンモランシーの、あのとろけそうな目。あんな目でボクを見てくれるなんて!
父上、母上!ぼくぁ今幸せですっ。産んでくれてありがとう!本当にありがとうございます!
今ギーシュは蝶になります!!!

「ケンカか?」

谷が力なく、そう呟いた。

ギーシュはニヤリと笑った。
本当はこの目の前の仮面の男に感謝したい気持ちであったのだ。
しかし、いまさら決闘をしないわけにもいかない。ここで勝利を挙げ、有終の美を飾るのだと意気込んでいた。

「民草の言葉で言えばその通りだ。ケンカだ。どうだい、受けてくれるかい?」
「わかった。やってやる」

ギーシュは満足そうな顔した。
そして、周囲の人間に宣伝するかのように喋った。

「同意も得た!しでかした行為こそは許されざるものではある。
 だがしかし!この男が、勇敢であることは賞賛しなければならない!
 さあ、諸君。決闘だ!!ヴェストリの広場にて雌雄を決するのだ!」

歓声が一層大きくなった。いつの間にか大量のギャラリーが沸いている。
その一団は、谷を従えてヴェストリの広場に悠然と向うギーシュに続いた。
もはや、後戻りはできない状況になっている。


谷を追ってきたルイズと偶然居合わせたキュルケは、ギーシュと谷のやり取りの一部始終を見ていた。

「あ―――はっはっはっは!!!ちょ、っちょっと、やめてよギーシュ!ぷくくっ!っくはは!オカシすぎて
 笑いが止まらないわっ!!!ダメっもーだめ!あっはっは!ぶはっぷッ、さ、酸欠になっちゃう!!」

キュルケが周囲の目を憚らず、スカートの中身を晒しながら地面を転がり、大笑いしていた。
だが、一方のルイズは浮かない顔したままであった。
それを見たキュルケは、未だにこみ上げてくる笑いをこらえて立ち上がり、ルイズの肩に手をまわして言った。

「ち、ちょっとなんでそんな暗い顔してんのよっぷっくくく。あなたも笑いなさいよ!
 だってギーシュったら、あれだけ気障っぽく派手に観劇演じといて、
 これからタニに、なす術もなくボッコンボコンのベッコンベッコンにされちゃうのよ?
 オカシクってオカシクって仕方ないわ!!あっははは!あなた面白い使い魔呼んだわね!」

ルイズは何も答えない。キュルケも自分との温度差に気がついた。
手をヒラヒラさせ、キュルケはルイズに言った。

「ねえ、もしかしてタニが負けちゃうかもとか思ってるの?その心配ないわよ、
 学院の壁を素手でぶち破るのよ?それにあたしのフレイムまであっさり倒したのよ?
 メイジとはいえ、あのギーシュが勝てるはずがないじゃない。ぷっくくっ、ああ!カワイソーなギーシュ!」

多分、キュルケの言ってることは間違ってない。
普通にやれば、タニが負けることはないことは確か。

ルイズはそう思っていた。
だが、谷のあの今にも消えいってしまいそうな後姿が、頭の中にこびりついて離れない。
ルイズには谷が本当に消えてしまうのでないかいう不安で一杯であった。

だが、決闘を止めることはできない。
止める資格なんてない、とルイズは考えていた。
崖から絶望の淵に突き落としたのは自分なのだからと。

様々な思いが交錯する中、決闘は今行われる。


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