あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

五系の使い魔-01


「はあ……はあ……」
荒い息を繰り返しながら、必死に大棺の蓋を彼は押す。
石でできた棺とその蓋がこすれあい、重苦しい音を立てながらも着実に棺はしまっていく。
魔神を収めた棺に封印がかけられ、徐々に棺の内部は闇が濃くなっていった。
終わった。  終わったんだ。
完全に蓋が閉まるのを確認した瞬間、緊張が切れ、体から力が抜けるのを彼は感じていた。
いや、実際に力が抜けていた。
なぜなら……それまでつけていた濃紫の鎧と剣は消え失せ、彼はただの青年の姿に戻っているのだ。
今まで軽かった体が、ほとんどただの人間に戻った上、極度の疲労で彼は地面に思わず突っ伏した。
それでも、外に行かねばと棺を納めた洞穴から、体を引きずるようにして外に出る。
陽光に照らされ、そこに広がるのは……この洞穴に入ったときと同じ滅び去った集落の姿だった。
邪悪な部族グロンギは滅びた。グロンギ最強の魔神ン・ダグバ・ゼバは、棺の中に封印した。
もう彼らを――リントを脅かすものはいない。けれど、リントももういない。
彼は、リクは一人滅びた故郷の中、たった一人の少女を探し始めた。
「ミオ……どこだ……ミオ……」
ふらつく体を強引に起こす。
グロンギと自分の戦いで崩れ去った岩や石をひっくり返し、倒れた木の幹を返したり……
麻で出来た自分の服が破れるのも気にせず、彼は一心不乱に探し続けた。
一刻ほど経ったときだろうか。大切な妹の姿が見つかった。
ン・ダグバ・ゼバの力で……無残にも黒焦げになった姿で。
「あ……ああ……あ……」
喉の奥からわけのわからない声がこぼれるのを彼はとめることはできなかった。



妹をグロンギから守るため、身に着けたはずの力を、これほど呪ったことはなかった。
村長(むらおさ)と呪術師から霊石アマダムを受け取り、化け物の姿に成り果ててまで戦ったのは……妹のためだ。
だというのに、自分がグロンギの中枢に向かっている間にグロンギの戦力の中核はリントの集落に向かっていたのだ。
山々を一日で駆ける今の彼でも、リントの集落についたのは……グロンギが町を襲って七日後のことだった。
人間を超えたグロンギがただの人間であるリントを刈り殺すのにそれは十分な時間だった。
村に戻ったときには……すべてが遅かった。

今こうして戦いに勝った。だが、それがなんになるのか。
まったくリクには理解できなかった。もういい、ここでこのまま倒れ、狼などに身を任せようか……
そう、考えたときだった。
「……! ま、眩しい――!」
突然、目の前に強い光があふれ出し、自分の前に光る何かが現れたのだ。
混乱した後、何も起こらないのを知る。身構えても、光はただそこにあるだけで何も起こさなかった。
はじめてみる謎の光をリクはぼんやりと眺め――その見たこともないような美しさに思わず手を伸ばした。
そして――
「あ、ああああああ!?」
吸い込まれる! 本能的にそう直感した直後、光は爆発したかのように広がり……逆に彼の意識は闇に落ちていった。


リントに伝わりし碑文。
火――邪悪なる者あらば希望の霊石を身に付け炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり。
水――邪悪なる者あらばその技を無に帰し流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり。
風――邪悪なる者あらばその姿を彼方より知りて疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり。
地――邪悪なる者あらば鋼の鎧を身に付け地割れの如く邪悪を斬り払う戦士あり。
虚無――聖なる泉涸れ果てし時、凄まじき戦士雷の如く出で、太陽は闇に葬られん。

名は――クウガ。



リクの意識が戻ってきたとき……そこは見たこともない場所だった。
自分が横になっているのはわかる。つまり、自分は空を見ているはずだ。
だというのに、空が見えない。家の中かとも思えば、木も藁も見えない。石だ。
天井が石でできている。身を起こそうと、地面に手を付く。
そして、その感触に驚いて思わず引っ込めた。触った地面は、驚くほど柔らかい手触りだった。
何かが敷いてあるのはわかったが……麻のざらざらした感触とはまるで違う。
顔を左右に振り、周囲を伺い、息を呑む。何もかもが始めてみるものばかりだった。
見たこともないような形に切り出された木。炎のようにぼんやり光る宙からぶら下がるもの。
壁も天井も全部石でできた部屋。そして、そこらに普通に使われている鉄(クロガネ)。
触ってみても、自分たちが使っていた青銅とはまるで違う。
キィ……と何かがきしむ音を聞き、そこへ顔を振る。
「おきたの?」
縦に平たい木をずらし、そこから桃色に近い髪の色のを少女が入ってくる。
手には、また光るカネで出来た平たいものに、水が入った透き通る器とパン……のようなものが乗っていた。
少女は警戒する自分を見て、明らかに怪訝な顔をしている。
彼女は何だ? 自分の触った光はなんだったんだ?
わからないことは山ほどある。だが、警戒する自分をよそに、少女は手に持ったカネをやたらとつるりとした木の上におくと、腕を組んでふてぶてしく言い放った。

「使い魔が、主人にそんなに怯えてどうするのよ。……なんで平民どころか土人が私の……」

尻すぼみに聞こえなくなる言葉。『ツカイマ』? なんだそれは。
疑問ばかりで顔をゆがめるリクに、少女は言う。

「多分魔法も貴族もないところの生まれだろうから、説明してあげるわ」

リクは、ここが自分のいた世界よりはるかに文明が進んだクニと知った。


新着情報

取得中です。