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狂蛇の使い魔-15



第十五話



「ここにいるということは……君たち全員、例の任務を受けていると解釈していいのかな?」

朝もやの中から現れたのは、羽帽子をかぶり、黒いマントに身を包んだ長髪の男であった。
男は口髭を蓄えたその顔に笑みを浮かべながら、こちらに向かって近づいてくる。

「……何だ、お前は?」

見慣れない男の姿を真っ直ぐに捉えながら、浅倉が問う。

「……申し遅れた。私はトリステイン魔法騎士グリフォン隊隊長、ワルド子爵。
アンリエッタ様より君たちの護衛を仰せつかった者だ」

男はそう言いながら、その場にいる五人の顔を順に確認していく。
と、その動きがルイズの所で止まった。

「ルイズ、ルイズじゃないか!」

ワルドと名乗ったその男は、いっそうの笑顔をルイズに向けると彼女に向かって駆け出した。

「ワ、ワルド様……?」
「ああ、会いたかったよルイズ!」

意外な来訪者への緊張と驚きで固まった表情のまま、抱きしめられるルイズ。
周りにいた四人は皆、その光景に唖然としていた。

「ワルド様……でしたよね? いきなり何を……」

キュルケが我を取り戻すと、ワルドに向かって問いかけた。
それに対し、ワルドはルイズを抱きしめたまま顔だけをキュルケに向け、答えた。

「久しぶりに再会した喜びを分かち合っているのさ。婚約者同士の再会を、ね」


ワルドの到着からしばらくの後。

学院を出発したルイズたちは、ワルドの提案により、アルビオン行きの定期船が出るという港町ラ・ロシェールに向けて進んでいた。

その町は、学院から馬に乗っておよそ二日ほどかかる場所にあるという。
そのため、道中には多くの危険がつきものであるというワルドの意見により、万が一に備えて隊列を組むことが決められた。

その配置は、ルイズと共にグリフォンに乗ったワルドが、道案内を兼ねて先頭を歩き、その後ろに馬に乗ったキュルケとギーシュ、
そしてシルフィードに乗ったタバサと浅倉が空を行く、といった具合である。

本来なら浅倉が馬に乗るはずだったのだが、彼が乗馬の仕方を知らなかったため、代わりにキュルケが馬に乗ることになった。
キュルケは不満たらたらであったが、下手に断って浅倉に面倒を起こされても困るため、結局認めざるを得なかったのだった。

それに何より、タバサが浅倉を後押ししたのが意外であった。
普段は傍観に徹する彼女が話に積極的に介入してくるのは極めて稀である。



タバサのことだから何か考えがあるのだろう、と自身を納得させようとするも、どこか釈然としないまま馬を走らせるキュルケであった。



そして、その道中。

ルイズとワルドが思い出話に華を咲かせている頃、上空ではシルフィードに乗ったタバサと浅倉が、お互いに無言で空を飛んでいた。
タバサは片手に杖を持ち、もう片方の手に本を持ってそれを読みながら。
浅倉は彼女の後ろで仰向けに眠りながら。

学院を出てからすでに数時間が経過していたが、二人の姿勢が変わることはなかった。

(この二人、絶対どこかおかしいのね!)

この奇妙な光景に、シルフィードは心の中で呟いた。



「聞きたいことがある」

ふと、タバサが読んでいた本を閉じると、浅倉にむかって背中越しに話しかけた。

「……なんだ」

タバサの後ろで、浅倉が面倒くさそうに応える。

「仮面ライダーの戦いを制した者は、どんな願いでも叶えられる……。これは、本当?」
「さあな」
「……ちゃんと答えてほしい」
「知るか」

直後、タバサが勢いよく浅倉の方を振り向くと、彼に杖を突きつけた。

「もう一度言う。ちゃんと答えて」

タバサが再び問う。
その表情はいつもと変わらないものの、どこか威圧的な雰囲気を醸し出している。
浅倉はそれに怯むことなく、逆に余裕の表情で見つめ返した。


しばらくの沈黙の後、浅倉が口を開いた。

「ふっ……。何を必死になってるのかは知らないが、知らんものは知らん。
第一、主催者がいないんなら話にならんだろう」

浅倉が嘲るようにニヤリと笑う。

「……主催者?」
「神崎とか言ったな。ライダー同士の戦いを取り仕切っている奴だ」

浅倉の言葉に、タバサの目が丸くなる。

……初耳だ。
浅倉に杖を向けたまま、タバサは考える。

彼の言っていることが本当なら、仮に勝ち残ったとしても、主催者不在では願いが叶うことはないかもしれない。
そもそも、ライダー同士の戦いはこの世界とは別の世界で行われていたのだ。ルールが適用されるかどうかも怪しい……。

滅多なことでは崩れないタバサの表情に、珍しく焦りの色が見えた。

(……それでも)

しかし、すぐに元の固い表情に戻る。

(それでもやらなければ。例え、どんなに確率が低くても……)

「やらなければ……」
「何がだ?」
「……何でもない。ありがとう」

タバサは礼を言うと前を向き、本を開いて再び読書に没頭し始めた。
浅倉も目を閉じて眠りにつく。


そして、何事もなかったかのように再び無言の時間が続いていくのであった。


すっかり日も落ち、辺りが真っ暗になった頃。
ルイズたち一行は、ようやくラ・ロシェールの町にたどり着いた。
本来ならば学院から二日ほどかかる場所であるが、依頼を果たすには陥落寸前と言われているアルビオンに向かわなければならない。
そのためルイズたちは途中で馬を潰しながらも全速力で駆けてきたのである。
当然、その顔には疲労の色がうかがえた。



「部屋の割り振りを決めて、早く休むとしよう。皆疲れているだろうからね」
そう言って、ワルドが笑顔を向ける。

町でその日の宿を見つけることはできたものの、部屋は三つしかとることができなかったため、二人で一つの部屋に泊まることになった。

彼が提案した部屋割りは、ワルドとルイズ、キュルケとタバサ、浅倉とギーシュでそれぞれ一部屋ずつというものであった。
念のため皆に確認をとったが、その意見に対して異議を唱える者はいなかった。
早くその身を休ませたい、と取り決めにわざわざ反論する者はいなかったのである。



最後にワルドから明日は一日自由であることが伝えられると、それぞれが割り当てられた部屋に向かっていった。



「ねえ、アサクラ」

浅倉が部屋の奥にあるバルコニーで夜風に当たっていると、後ろから彼の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
振り向くと、バルコニーの入り口に顔を赤らめたルイズが立っていた。

お前か、と呟くようにして言うと、浅倉は目の前にある町の夜景に再び視線を向けた。

「……何の用だ」
「き、聞いてもらいたいことがあって……。じ、実はさっき、ワルド様に……ワルド様に、プ、プロポーズされたの」

だんだんと小さくなる声でルイズが言った。顔がますます赤くなる。

「自分としては、その、とても嬉しい、っていうか……。ワルド様が私を必要としてくれているのだから、結婚もいいかなって思ってるんだけど……。
アサクラはどう思うか、聞いておこうかなって思って。一応私の使い魔だし」

気恥ずかしさからかうつ向けていた顔を上げて、ルイズは浅倉の背中を見つめた。
浅倉はフンと鼻で笑い、ルイズの方を振り返る。

「これから行く場所は戦争の真っ只中だと聞いたんだが、ずいぶんと余裕なもんだな?
……今のままだと死ぬぜ、お前」

期待の眼差しを送るルイズをよそに、浅倉が返したのは非情な言葉であった。


「えっ……?」

ルイズの顔から急に熱が冷め、喜びで満ちていた表情が驚きで塗り潰されていった。

「それってどういう……」
「甘いんだよ、お前は。置かれている環境も、世間への認識も……何もかもがな。
貴族だか何だか知らないが、毎日毎日生ぬるい生活ばかり……。いざというとき一人で何もできないお前は、戦場なら死ぬだけだ」

そう言い捨てると、浅倉は部屋に向かって歩き出した。
ルイズは茫然と立ち尽くすしかできないでいる。

「お前に」

バルコニーから部屋に入った浅倉が、ふと立ち止まると、ルイズにむかって背中越しに語りかけた。

「泥を食らい、地べたを這いずり回ってまで生きたいと思う奴の気持ちが分かるか?
……分からんだろうな」

ルイズの返事を待つこともなく、浅倉は部屋にあるベッドの前まで歩いていくと、その上で眠っていたギーシュを蹴落とし、横になった。



(アサクラの言う通りね……)

自室に戻ったルイズは、ベッドの中で彼の言った言葉を考えていた。
自分は魔法が使えない。武器だって録に扱えない……。
自分のことは自分がよく知っているつもりだ。
ならせめて、他人の足を引っ張らないように振る舞わなければ……。

そう決意を新たにしながら、ルイズは眠りについたのだった。



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