あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと黒蛇-01


春の使い魔召喚

それは、ここトリステイン王国トリステイン魔法学院にて行われる神聖な儀式である。
それを行うのは2年生への進級を控えた魔法学院に通う生徒であり、この儀式によって己の使い魔を召喚し、専門課程へと進むのである。
そして、今一人の少女が使い魔召喚に挑んでいた。

トリステイン魔法学院近くの草原、ここで春の使い魔召喚は行われている。
すでに多くの学生が召喚を終え、使い魔との契約―コントラクト・サーヴァントも済ませていた。
そして、まだ召喚の終わらぬ生徒の周りに、半円を描くように立ち、全員が終えるのを待っている。
昼過ぎから始まった使い魔召喚の儀式であるが、日が傾く頃になっても、召喚を終えていない生徒が一人いた。
生徒達に囲まれているのは、桃色がかった髪と、透き通るような肌を持つ少女である。
彼女の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
通称、「ゼロのルイズ」
全く魔法が使えない彼女は、現在22回目の召喚を失敗したところであった。


「……ケホッ」


ルイズは、自分の魔法の失敗によって起こった爆発の煙で咳き込んだ。
「また失敗かよ、ルイズ!」
「何度失敗したら、気が済むんだよ!」
周りの生徒達から野次が飛ぶ。
言い返してやりたいが、実際に召喚に失敗している以上何も言えない。
自分が彼らを待たせているのは確かなのだから…
そんな悔しさから、ルイズは唇をかみ締めた。
「ミスタ・コルベール!ルイズは放っておいて、授業を終わりましょう!」
そんな声が生徒の中からあがった。
それは困る、とルイズは焦った。
なぜなら、この儀式は必修であり、これを無事に終えられなければ2年生に進級できないのだ。
もしも、留年ということになってしまえば、名門たる自分の実家から、何を言われるかわからない。
何か言われるだけならばまだいい。
おそらくそれだけでは済まず、恐ろしい母と姉にお仕置きされてしまうだろう。それだけはなんとしても避けたい事態であった。
ルイズは慌ててコルベールと呼ばれた男に振り返った。

コルベールは黒のローブをまとった、髪が薄い中年の男である。この場で唯一の教師であり、召喚の儀式を監督している身であった。
コルベールの判断によっては、ルイズの使い魔召喚は打ち切られ、留年ということになってしまう。
だからこそ、ルイズは不安と焦りが混じった目でコルベールに訴える。
だが、ルイズの心配は杞憂であった。
コルベールは芯から教師であり、自分から儀式を打ち切って生徒を留年などさせるつもりはなかった。
また、彼は、魔法が使えない分誰よりも努力しているルイズを高く評価している一人でもあった。
「ミス・ヴァリエール」
コルベールは不安を与えないように、なるべく優しい声で語りかける。
「心配することはない。納得するまで続けなさい。仮に時間がかかっても、生徒達を帰して、最後まで私が見ていよう」
その答えにルイズは安心する。
そして、そこまで言ってくれたコルベールのためにも、早く召喚を成功しなければならないと、改めて決意をした。

(次があると思っちゃだめよ……これで最後だと思ってやらなきゃ……)
召喚される使い魔とは、自分に最もふさわしい者が召喚に応じるという。
では、召喚できない自分はなんなのだろうか?
どんな動物も幻獣も虫でさえも、自分の使い魔になんてなりたくないというのか?
(そんなことない!きっと私にふさわしい使い魔がいるはず!)
ルイズは願う。
(お願い!絶対大事にする!あなたにふさわしい主人になってみせる!だから応えて!)
そして、自分の全精神力を費やすつもりで呪文を唱える。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ!わが導きに答えなさい!」

ドン!!

と、いつもと同じ爆発が起こる。
また、失敗か…と落ち込むルイズ。
しかし、今回の爆発は今までと違っていた。
爆発がおきたところには、いつものように抉られた地面ではなく、代わりに人が倒れていた。

「……人?」

自分の目が信じられず、ルイズは思わずつぶやいた。
使い魔召喚とは、基本的には動物や幻獣等が召喚されるものであり、他の生徒達の使い魔も例外なくそれらであった。
しかも、ルイズが召喚した人間は、ローブもマントも身につけていない―現代で言うところの、カットソーとジーンズを着ていた。
どう見ても平民の格好である。
爆発の衝撃で気絶しているのか、ピクリとも動かないが、背格好をみるとどうやら女性のようである。
ルイズが予想外の事態に立ち尽くしていると、周りから再度野次が飛んだ。
「おいおい!平民を召喚してどうするんだよ!」
「失敗するからって、金で雇ったんじゃないか!」
静かに、と野次を注意して、コルベールはルイズに歩み寄った。
「おめでとう、ミス・ヴァリエール。使い魔召喚は成功だ」
やっと努力が報われた生徒を慈しむように、ルイズに声をかける。
「で、でも!ミスタ・コルベール!あれはたぶん平民です!しかも、女性ですよ!」
「そのようだ。しかし、君は彼女と契約をしなくてはならない」
「平民が使い魔なんて聞いたことがありません!もう一回やり直させてください!」
しかし、その頼みにコルベールは残念そうに首を振った。
「それはできない。この召喚の儀式は神聖なものだ。例え何を召喚しようとも、やり直すことは認められない」
「そんな……」
「安心しなさい、ミス・ヴァリエール。使い魔は貴女に最もふさわしい者が召喚されます。今思うことは色々とあるかもしれませんが、きっとこの事を後悔はしないはずです」
「さぁ、コントラクト・サーヴァントを」とコルベールが促す。
コルベールにそこまで言われると、ルイズとしては反論ができない。
やり直しが認められない以上は、彼女と契約をしなければ留年となるため、ルイズに選択肢は無かった。
ルイズは、己が召喚した使い魔に歩み寄り、顔を覗き込んだ。
(うわ……この人、すごい美人)
呼び出された女性は、年は20代前半であろうか、黒く艶やかな長い髪を持つ、どこか冷たい雰囲気が感じられる美人であった。
目が閉じられているため瞳の色は見えないが、例え何色であったとしてもこの美貌を引き立てはしても、損なうことは無いだろう。
そんなことを考えているうちに、ルイズは気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
あまりに、予想外の使い魔を召喚してしまったため取り乱してしまったが、今では自分が召喚した使い魔に納得していた。
なにしろ、生まれてから今まで魔法に成功したことがないのである。
「ゼロ」とさえ揶揄されている自分の召喚に応じてくれた使い魔に、感謝の気持ちさえ抱いていた。
例え平民だろうが、自分の召喚に応えてくれたのだから……
しかし、それでも、こう思わずにはいられなかった。
(私のファーストキスが女の人となんて……)
せめて美人でよかった……などとよくわからないことを考えながら、杖を振りコントラクト・サーヴァントの呪文を唱える。
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
そして、杖を額の上に置き、口づけをした。
(さよなら、私の初めて……)
などと、内心落ち込んでいると、ルイズの成功を喜んでいるのか、コルベールがうれしそうに話しかけてきた。
「おめでとう。ミス・ヴァリエール。コントラクト・サーヴァントは上手くいった様だね」
「はい」と、ルイズは答えた。
今になって、召喚に成功した喜びと、安心感が湧いてきていた。何はともあれ、これで進級はできるし、平民とはいえ、使い魔を持つことができるのだ。
「ルーンが刻まれたら、この人を起こさなければならないね」と、コルベールが、女性の顔を見ながら言った。
「特に外傷も無いから、そのうちに目が覚めるだろう」
「ミスタ・コルベール、使い魔のルーンはまだ刻まれないのですか?」ルイズが尋ねた。
「すぐに刻まれるはずだが……ほら、刻まれ始めた」と、コルベールは女性の左手の甲を指差した。
確かに、左手の甲にルーンが刻まれている。これで、後は女性が目を覚ませば全て解決となる。
すると……女性から「うっ」と声が上がり、うっすらと目を開けた。意外と切れ長の、翠の瞳をしている。
使い魔のルーンが刻まれるときには痛みを伴う。おそらく、そのショックで目が覚めたのであろう。
女性は、上半身を起こすと辺りを見回した。自分がどうしてここにいるのかわかっていない様子である。
そして、立ち上がり、最も近くにいたルイズに話しかける。
女性はだいぶ長身のため、自然とルイズを見下ろすような感じになった。
女性が何かを尋ねるように口を開こうとするが、
「はじめまして、ミス」
と、ルイズがそれより先に声をかける。
相手はおそらく平民である。
しかし、それでも、初対面の身分もわからぬ明らかに年上の同姓に、乱暴な態度を取るような教育をルイズは受けていなかった。
「私は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。どうぞお見知りおき下さい」と、スカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。
自分の召喚に応じてくれた使い魔に感謝をこめて、せめて礼だけでも尽くしたいと思ったのだ。
それに対して、女性はあっけに取られたようであった。
しかし、それも一瞬。すぐに口元を手で隠し、フフフと妖艶に微笑んだ。
そして、表情を改め、ルイズに向かって言った。
「丁寧な挨拶痛み入る。聞きたいこと、言いたいことはいろいろあるが、名乗られたからには、こちらも名乗らなければならないだろう」
そして、姿勢をただし、まるで執事のように右手を胸に当てて礼をした

「はじめまして、人の子よ。私の名は、カサンドラ・ジル・ウォーロック。以後、見知りおきを願う」



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