あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ラスボスだった使い魔-02



「ぐっ……!?」
 けっこうな衝撃と共に、『呼ばれた先』の空間へと抜ける。
 ……随分と乱暴な転移であるが、因果地平の彼方からおそらく通常空間へと顕現させるのだ。逆にこれくらいの衝撃があってしかるべきだろう。
 そして周辺を見渡せば、
「……む」
 抜けるような青空。
 豊かな草原。
 遠くには地球で言えば中世ヨーロッパを思わせるような石造りの建築物。
 ついでに自分を物珍しそうに見ている、外見年齢15~18歳ほどの地球人タイプの人間が多数。
「………」
 もっとおどろおどろしいシチュエーションとか、怨念などが渦を巻く異次元空間とか、物凄い力を秘めた超越的な存在とかを考えていたユーゼスにとって、この展開は拍子抜けだった。
 とは言え、現状は確認しなくてはなるまい。
 呼吸―――普通に出来る。特に息苦しいことはないため、大気成分は一般的な居住可能惑星とほぼ同じと思われる。
 重力―――特に重くも軽くもない。約1Gほどだろう。
 ついでに足下に生えている草を一本千切り、大雑把にではあるが観察してみる。
 ……地球の植物とかなり酷似している。という事は、ここは地球の並行世界か何かだろうか? ……いや、そう判断するには材料が少なすぎるか。
「……ふむ」
 そう言えば、ある意味では一番肝心な、自分の状態のチェックをしていなかった。
 とりあえず身体全体をぺたぺたと触ってみる―――特に欠損がある訳でも、痛みが走るわけでもない。
 そして―――
「……仮面が無いな」
 服装は白衣。……地球を含めた数々の惑星の大気を浄化していた際に着込んでいた、バード星の科学者がよく着用するものである。
「……まさか……」
 今度は顔をぺたぺたと触る。
 ……特に傷跡などはないようだが、そうすると……。
「鏡は―――見当たらないな」
 今更『元の顔』に戻られても、それはそれで困る。精神的に。
 機会があれば真っ先に確認しよう、と思いつつ、同時に最も大事なことに思い至る。
(……クロスゲート・パラダイム・システムは……?)
 脳内に極小サイズのものをナノチップとして埋め込んである筈だが、アレが使えると使えないのとでは自分が呼ばれた意味合いが全く違ってくるのだ。
 ユーゼスは目を閉じ、脳内のクロスゲート・パラダイム・システムへとアクセスを開始する。
(……………)
 ――――――――アクセスは可能。
 機能は完璧とは言えない。だが、自分がガイアセイバーズとの最終決戦時において発揮した性能と同等程度の芸当は出来るだろう。
 ……そもそもこのシステムが『完璧』であれば、自分に不可能な事はほとんどなくなってしまうのだが。
 これで限定的ではあるが因果律の把握や、光の巨人の力を満たしたデビルガンダムを呼び出し、超神形態への変身などが可能になるということである。
 ともあれ、余程のことが起きなければ超神形態になどなるつもりはないが。
(……しかし未来予測や時間移動は不可能か)
 クロスゲート・パラダイム・システムの最大の機能である因果律―――事象における『原因』と『結果』の把握と操作。これにより、世界の過去や未来をある程度ではあるが予測でき、そして限定的ではあるが時間の移動すら可能になる。
 しかし時間の移動、と一口に言っても簡単なことではない。
 異なる空間、異なる時間への二種類のゲート。この二種類のゲートはクロスしている。
 そして未来が無限の可能性を秘めているように、異なる時空間へのゲートも無限に存在するのである。
 クロスゲート・パラダイム・システムはこの無限に存在するクロスゲートを『ある程度』ではあるが把握する機能を持っている。
 だが、それでも把握できない、となると……。
(この世界周辺の次元交錯線が極度に不安定なのか……。……あるいは、この世界の未来が全く確定していないのか……。
 ……いや、それを差し引いてもクロスゲート・パラダイム・システムを使用できる時点で、私にとっては至れり尽くせりだな)
 やたらと条件が良すぎることに、逆に疑問を抱く。
 自分を利用して何をさせたいのかは知らないが、これほどの存在を使って何をさせようと言うのだろうか。
 そもそも、クロスゲート・パラダイム・システムの機能は限定的なものであり、決して全能ではないのだが……。

 ううむ、とアゴに手を当てて思考に没頭しようとすると、
「ちょっと、アンタ!」
「?」
 いきなり甲高い声によって思考を遮られてしまった。
 声のした方に振り向いてみると、そこには何か怒ったような顔をした少女がいる。
 外見年齢は周辺から遠巻きにこちらを見物している人間たちと、そう変わらない。
 桃色がかったブロンドの髪と、鳶色の瞳。
 美少女と形容して差し支えない顔立ちをしているが、ともあれそんなことはどうでもいい。
 ユーゼスは少女へと歩いていき、まじまじと観察を始めた。
「………」
「……な、何よ?」
「一つ尋ねるが。私を呼んだのはお前か?」
 その言葉を聞くや否や、少女はキッとユーゼスを睨みつけ、少し離れた位置にいる頭の禿げ上がった外見年齢40歳ほどの男に抗議のようなものを始めた。
「ミスタ・コルベール! もう一回召喚させてください!」
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
(………)
 聞き間違いでなければ、今確かにこの少女は『召喚』と口にした。
 つまり自分はこの少女に呼び出された、ということである。
 見たところ大がかりな装置を使った様子も、多人数で事を成した様子もない。ということは、
(……個人の力で私を呼んだ、だと?)
 どんな力だというのか、それは。
 確率はゼロではないが、しかしこの少女がそこまで強力な存在であるとも思えない。
 ……どうでもいいが、遠くからこちらに嘲笑のような笑いと共に投げかけられる『平民』、『ゼロのルイズ』などの言葉は、一体何なのだろうか。
 クロスゲート・パラダイム・システムを造る際、『お前ごときに時空間を超えられるわけがない』と異星人連合ETFのメンバーから散々言われてきたため、あざ笑われることには慣れているが、あまり良い気分はしない。
 まあ、ああいう手合いは無視するに限る。
「これは何かの間違いです! 第一、平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」

(……間違い、か)
 有り得る話だ。
 自分もまた、自分にとっての都合の良い世界を創造する際、それなりに取り込む世界を厳選したつもりだった。
 その結果として敵になったのは、ウルトラ兄弟、宇宙刑事、人造人間、ガンダムファイター、ガンダムパイロットの少年たち、SRX、快傑ズバット。
 ウルトラ兄弟と宇宙刑事、そしてガンダムファイター―――まあ、これは良い。自分の野望の始発点はそもそもウルトラマンとデビルガンダムであるし、宇宙刑事は元々自分が存在していた世界のものである。
 人造人間たち―――おそらくイングラム・プリスケンが自分の支配から脱するためのキーとして用意されたのだろう。善と悪の狭間で苦しんだキカイダーや、友情を結んだメタルダーたちの助けがなければ、イングラムは自分に操られていたはずだ。
 ガンダムパイロットの少年たち―――これは彼ら自身と言うよりも、ウルトラ兄弟などのいた世界と、そこから40年後のテクノロジーで造られたデビルガンダムを繋ぐためのクッションのようなものだろう。
 実際、地球防衛軍TDFは40年の時を超えて存在していたし、OZもその中にあった。
 SRX―――自分の『運命共同体』であるラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォは彼らと戦っていたらしい。ならば世界を構成する要素として彼らがいても不思議はない。イングラムが駆るアールガン……R-GUNもまた、彼らの世界の産物であるらしいから。
 しかし、快傑ズバットこと早川健。これは完全なイレギュラーである。
 何しろ自分に対しても、イングラムに対しても、世界に対してもほとんど何の影響も及ぼしていない。極端な話、彼がいなくても自分は負けていた公算が高かった。
 だと言うのに、その存在感。その戦闘力。その万能ぶり。
 無視をするにはあまりにも異質であり強力。しかし、いなくても特に問題はない。
 少なくとも、自分はあのような存在を取り込むつもりはなかった。
 ……もしかすると、自分もまたそのような存在であるのかもしれない。
(……いかんな、今の段階では判断材料が少なすぎる)
 『これはこのようなものである』という固定観念は、時として取り返しのつかない過ちを生む。
 これで地球の環境問題は全て解決する……そう確信していた大気浄化弾が、結果として地球のレーダー網を全滅させてしまったように。

 とにかく、もっと詳しい話を聞くべきだ―――と、もう一度少女へと話しかけようとした時、
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
 逆に少女の方から話しかけてきた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
「?」
 よく分からないが長い口上を述べた後、少女が持つ杖がユーゼスの額に置かれる。
 そして、
「ん……」
「む、……ぐ」
 唇を重ねられた。
 ユーゼスが呆気に取られていると、やがて少女が唇を離す。
「終わりました」
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来たね」
 少女が禿げた中年に報告する。
 『平民だから契約できた』、『高位の幻獣だったら契約できない』などと野次が飛び、その野次に少女が『バカにしないで!』と噛み付いた。
 まあ、それはどうでもいい。
 『貴族』や『平民』などのキーワードから察するに、どうやらこの世界には随分と厳然な階級制度があるようだが、それもどうでもいい。
 問題なのは、先の話に出た『契約』という単語―――
「ぐっ!?」
 再び思考に没頭しようとした時、唐突に身体が熱くなった。
 しかも、異変は身体が熱くなるだけではない。
(これは……!? 私の存在を呪縛する……!?)
 脳内のクロスゲート・パラダイム・システムが、自分に因果の鎖が絡みついてくることを警告する。
 不明な点だらけであるが、このまま存在を束縛されてはクロスゲート・パラダイム・システムの機能を十分に発揮できない危険性が高い。
(何だ……? 先程の行為に一体何の意味がある……!?)
 キーワードはおそらく『契約』。
 しかし、口腔粘膜同士の接触に自分を束縛する効果があるとして、『契約』とは解せない表現である。
 このような一方的なものを『契約』とは言えまい。双方にとって何らかのメリットがあるからこその『契約』なのだ。
 少女の方は自分を使役、ないし隷属させるようなメリットがあるのは当然だろうが、自分の方には何のメリットがあると言うのか。
(……この世界に私を固定するために必要なのか?)
 そうすると、因果律を操作してこの現象を消してしまうのも躊躇われる。
 だが。
(……私の精神を操作しようというのは認められないな……)
 今まで多くの人間を利用してきた自分がこういう考えをするとは傲慢もいいところだが、思考を捻じ曲げられるのは断固として抵抗したい。
 因果律を操作する存在であるとか、光の巨人の力を手に入れたとか、そういう問題以前……一人の人間ユーゼス・ゴッツォとしての尊厳に関わるのだ。
(……フ、まさか私がこのように考えるとはな)
 自分とてイングラム・プリスケンを意のままに操ろうとした。
 しかしその行為は―――


 ―――かつての戦いが、脳裏をよぎる。

 ……自らが創造した空間において対峙する、仮面を被った自分と、自分の複製。そしてその仲間である、自分を打ち破る為に集った戦士たち―――ガイアセイバーズ。
 自分はガイアセイバーズを始末するために、複製の意志を捻じ曲げ、ガイアセイバーズにぶつけようとした。
「さあ……回れ! 運命の歯車よ!!」
「ぐ……ぐあああああ!!」
 もがき苦しむ自分の複製―――イングラム・プリスケン。
「イングラム!!」
「さあ……どうするのだ? ガイアセイバーズよ」
「そんな……ここまで来て……最後の敵が……イングラムだなんて!!」
「イングラムを攻撃出来まい。その甘さが……お前たち人間の愚かな所だ!」
 下らない情に流され、時には自らの使命を遂行することすら躊躇する。
 故に、人間は不完全で、不安定で、脆弱である。
 だが、そこに異議を挟む者がいた。
「うるせえ! お前だって元はその愚かな人間じゃねえか! それが嫌だったからこんなことをしているんだろうが!!」
 驚異的な力を秘めたサイコドライバー、リュウセイ・ダテ。
「……何?」
「てめえこそ……弱くて愚かな人間そのものだ! その事実から……てめえは逃げてるだけだ!!」
 彼の言葉が突き刺さる。
 愚かな人間である、彼の言葉が。
「貴様……何を言うか!!」
 頭に血が上り、思わずリュウセイ・ダテに攻撃を加えてしまった。
 ……感情的に否定してしまった。
 まるで彼が嫌悪した人間のように。
「へっ……どうやら図星だったらしいな……」
「おのれ! イングラム、奴らを始末するのだ!」
「う、ううう……!!」
 ……そのように彼らの存在を否定すること自体、自分もまた『愚かな人間』である、という事実の肯定となる―――薄々気付きながらも、しかし自分はもう止まれない。
 呪縛を断ち切らせるため、複製に過ぎない存在に彼の仲間たちが叱咤激励の声をかける。
「自分を取り戻せ、イングラム!! 良心回路が不安定な俺は……君や、みんなのおかげでギルの笛の呪縛から逃れることが出来た!!」
「そうだ。人造人間の俺たちに出来て、お前に出来ないはずがない!!」
 善悪の狭間で揺れ動きながら、それでも正義の道を歩む人造人間。だからこそ、その言葉には誰よりも重みがある。
「う、うう……」
「自分を取り戻すんだ、イングラム! 君はそんなに弱い人間か!?」
「立て、イングラム!! 貴様もガイアセイバーズの一員なら、立ってユーゼスの呪縛を断ち切れぇぇぇっ!!」

 仲間。
 自分とは最も遠い存在。
 それが、自分の複製の力となっていく。
 そして、
「イングラム……」
「ううう……」
 帝王と相打ちになり、その身を散らしてしまった超人機。
「君は、僕や仲間たちに人間の素晴らしさを教えてくれた……」
「………」
 その魂もまた、自分の複製と強い絆で結ばれている。
「君は、ユーゼスの複製という呪縛を背負いながらも自分の人格を持ち、仲間や地球を守って来た……」
 自分も……あの青く美しい惑星を守りたかった。
「僕は君の姿を見て、人間とは、強く温かな存在であることを知った」
 だが、その惑星で見た光の巨人の存在。それによって人間の―――自分の卑小さと愚かさを知ってしまった。
「そして、僕は君を見て人間に憧れたんだ……」
 そして、自分は……地球人を、何よりも自分自身を見て人間に絶望したのだ……。
「だから……君は強い。君は負けない」
 自分は弱かった……。だから自分自身に負けた……。
「必ずユーゼスの呪縛を断ち切ることが出来る……」
 自分自身の呪縛すら、断ち切ることも出来ずに。
「!!」
 呪縛が断ち切られる。
 自分の手を離れ、自らの存在を確立した自分の複製は、自分と対峙する。
「俺は、もう……お前の操り人形ではない!」
「馬鹿な……複製人間のお前が、私の命令に逆らうというのか!?」
「俺は、お前にとって……唯一ままならない存在なのだろう? 今までも……そして、これからも!!」
「!!」
「それに……ユーゼス! お前が言うほど……人間は愚かでもなければ、弱くもない!!
 俺はガイアセイバーズのみんなと出会って、それを知った!」
「貴様……」
 自分が手に入れることの出来なかった物。それを、自分の複製は持っていた。
「この世界に超絶的な力を持つ存在など必要ない! そんな者がいなくても、俺たちは今まで生きて来た。そして、これからもそうだ!
 絶対的な力の支配者が不必要なことを、地球人類はこれから……証明しようとしている!」
 だが、自分とて今更、後には引けない。
 故に、それを否定する。
「私が地球人にどのような仕打ちを受けてきたか、忘れたか!? 身勝手で凶暴なあの種族は地球だけでなく、宇宙をも滅ぼすぞ!!」
「もう一度言う! お前が言うほど……人間は愚かでもなければ、弱くもない!!」
「ふ……ふははは! やはり、貴様だけはこの手で始末しなければならないようだな!」
 その後の結果は…………ここで語るまでもないだろう。

(……そうだな。人間は愚かでもなければ……弱くもない)
 自分の複製として造られたはずの存在は、創造主である自分の呪縛を破った。
 ならば―――その創造主である自分が、正体不明とは言え、呪縛を破れない道理はないはずだ。
(私に『仲間』はいないが……。……しかし私にも意地がある)
 複製が苦労して成し遂げたことが出来ない、などとなれば、さすがに立つ瀬がない。
(……何かを私という存在に刻み込もうとしているな。
 その最中であれば、あるいはその行為に干渉できるかも知れん……)
 クロスゲート・パラダイム・システムを使い、自分に起きている事象の因果を分析する。
 時間があれば細部に渡って把握する所だが、そんなことをしている余裕はない。
 丸ごと消去してもいいのだが、この行為に重要な意味があった場合、取り返しのつかない事態になりかねない。
 精神干渉に関わる部分のみを迅速に抽出し、その部分のみを封印、あるいは消去する必要がある。
(……これか)
 数式や図式では表せない、概念的なものではあるが、抽出に成功する。
 この部分を消去することにより、全体に与える影響を―――計測や予測をしている暇などない。
 しかしその影響は未知数だ。
(……下手に消去や遮断、封印を行えば、この事象全体が変異するかもしれん……。……私自身にもどのような影響が起こるのか分からない……)
 全体を残しつつ、しかし精神干渉は防ぐ。
(……これしかないな)
 精神干渉を司る部分。それが発揮する力を、可能な限りゼロに近く薄める―――つまり、無力化する。
 これにより、事象全体への影響を最小限に収めつつ、自分への精神干渉のみをカット出来るはずだ。
「……………」
 事象が終了する。身体の熱は消えた。
 自分の精神への影響は―――ほぼゼロだ。完全にゼロには出来ないが、なかなか上出来と言えるだろう。
「どれ」
「……む?」
 大きく息を吐き出すユーゼスに、禿げた中年が近寄ってくる。
 そして一通りユーゼスの身体を眺めた後、
「おお、あったあった」
「?」
 ユーゼスの左手を取り、いつの間にかそこに刻まれていた図形……と言うか、記号の羅列ようなものを確認した。
「ふむ、珍しいルーンだな」
「ルーン?」
 何だろうか、それは。
 察するに、この記号の羅列のことを指しているのだろうが……。
「一応、念のため……」
 禿げた中年は自分の左手の甲にあるルーンとやらをペンを使ってスケッチする。
(……これはこの世界にとっても希少なものなのか)
 どうにも不明な点や不確定要素が多すぎて、判断のしようがない。

 ユーゼスもいい加減に辟易しかけていると、
「さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ」
 禿げた中年がきびすを返し、宙に浮く。続いて周辺にいた他の少年少女たちも、宙に浮いた。
(……ほう、この世界の人間は飛べるのか)
 自分にとっては飛行する存在など、別に珍しくもない。
 ウルトラマンも、バルタン星人も、ものによっては宇宙犯罪組織マクーのダブルモンスターも、自分だって『反則』を使えば飛べる。
(……ここは超能力者が当然に存在する世界なのか?)
 時空を超えて因果地平の彼方にまで手を伸ばして自分を呼んだことも、先程の精神操作にしても、そういう能力であると解釈すれば一応の辻褄は合う。
 考えてもラチが明かないので、一旦思考を打ち切る。
 とりあえずこれから自分はどうすれば良いのだろう、と誰もいなくなった草原をぐるりと見回してみると、
「………」
 自分を呼び出したらしい少女が、悔しげに空を飛んでいった者たちを眺めていた。
 不審に思い、少女に近付いて声をかけてみる。
「……なぜ飛ばないのだ?」
「うるさいわね! 別に飛ばなくたって歩いていけばいいのよ!!」
 やたらとムキになって反論してくる少女。どうもこの言動から察するに、
「……飛べないのか」
「っ!!」
 怒りどころか軽い憎しみすらこもった目で睨まれた。……どうやら図星だったらしい。
 先程からこの少女が『ゼロのルイズ』などと呼ばれていたが、ルイズというのが少女の名前だとすると、ゼロと言うのは0、つまり何も出来ないからゼロなのだろうか。
(……そんな存在が私を呼んだだと?)
 ますます解せない。
 それこそ本当に間違いやイレギュラーであるのかも知れないが……。
「とにかく、行くわよ!」
 自分の意向など聞こうともせず、ズンズンと少女は空を飛んでいった者たちと同じ方向―――石造りの建築物へと歩いていく。
 軽い混乱を覚えつつも、ユーゼスは少女に随伴して同じ建築物へと入っていった。
 そして『こんな使い魔なんか、恥ずかしくって見せられないわ!』と少女のものと思しき部屋の中へと入れられ、『私が戻ってくるまで大人しくしてること、いいわね!?』と言い含められ、放置される。
 いい機会だから思考に没頭するか―――などと考えるが、それよりも部屋の中にあった鏡が気になった。
 ユーゼスは恐る恐るその鏡を覗き込み……、
 そこに映された髪の色が元々の自分のものである銀髪なのは良いとして、何よりも問題である『顔』が、イングラム・プリスケンと同じものであることに、複雑な感情を抱くのであった。
 ……もっとも、こちらがオリジナルであって、イングラムにはこの顔を複製したのであるが。



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