あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと波動 第5話




「な?眠りの鐘などいらんかったじゃろ?」
魔法学院学院長室にいた二人の男は自分たちの身長ほどもある鏡の前に立っていた。
鏡には先ほどまで決闘が行われていたヴェストリの広場が映っている。
”遠見の鏡”
遥か遠い場所までをも映し出すことのできるマジックアイテムである。

「だいたい、子供のケンカなんぞに宝物庫の品を使おうという発想がそもそも嘆かわしいわい」
「面目次第もありません」
頭をかく頭髪の少々寂しい男。
男はコルベールだった。
そしてもう一人はこの学院の最高権力者、学院長であるオールド・オスマン。

「で、彼の左手にあるルーンは確かに”ガンダールヴ”のものなんじゃな?」
自身の使い魔であるハツカネズミのモートソグニルにナッツを与えながらコルベールに問う。

「はい。間違いありません。図書館の資料で確認しました。あれは間違いなく始祖ブリミルの使い魔であった”ガンダールヴ”のルーンです」

「あらゆる武器を使いこなす伝説の使い魔・・・か・・・その割には彼は素手だったようにみえるがのう」
長く伸ばした真っ白な顎鬚をしごきながらコルベールに語りかける。

「学院の生徒を相手する程度なら武器など必要なかったのではないかと。
きっと武器を持ったらそれどころではなく強くなるのではないでしょうか」

「なるほどのう・・・あれより強くのう・・・。ところで、素手の彼に勝てると思うかね?」

「正直言って、自信はありません。特に最後に一瞬だけ見せたあの力。
鏡越しでも解りました。あの禍々しい殺気は只事ではありません。
それに、間近で見たワケではないので確信はありませんが、あれが全力だったとも思えません。
あからさまに手加減していたようには見受けられませんが、
それでも全体的にかなり力をセーブしながら戦っていたような印象は受けます。
もし彼が本当に力をセーブしていたのだとしたら、本気を出されたら私じゃ手に負えないでしょう」
コルベールが率直な感想を告げる。

「なるほどのう。かつて”炎蛇”と恐れられた君がそこまで評価するんじゃ。相当な使い手なんじゃろうのう」

コルベールの顔に陰が落ちる。
「・・・昔の話です・・・では、早速王宮に報告しなければ・・・」

「それには及ばんよ」
コルベールを制するオスマン。
「しかし、ガンダールヴの出現などという、これほどの一大事、報告しないわけには・・・」

「まだ彼がガンダールヴであるという確たる証拠はないじゃろ。
それに、もし彼が本当にガンダールヴだったとしたら、
王宮のアホどもは間違いなく彼を戦争の道具にするに決まっとるわい。君なら分かるじゃろ」
やれやれと肩をすくめるオスマン。

「確かに・・・そうかも知れませんね。あんな地獄を再び作ってはいけない・・・」
鎮痛な面持ちで同意するコルベール。

「さて、そろそろ授業の時間じゃろ?君も教室へ行きたまえ」
空気を変えるように、オスマンが告げた。








ルイズに連れられて入った教室は、アルヴィーズの食堂ほどではないが、それでも十分に大きな部屋だった。
すり鉢状になっており、一番低い場所に向かって椅子と机が並んでいる。

大半の椅子には既に生徒が座っており、ルイズとリュウが教室に入るなり、一斉に二人に視線が集まる。

「あれがゼロのルイズに召喚された平民だろ?」
「平民のクセに青銅のギーシュに勝ったらしいぜ」
「ああ、僕は決闘を見たぜ。ありゃあ、とんでもないヤツだ」
「そうかな?ギーシュが不甲斐ないだけなんじゃないのかい?彼、ドットだし」

口々に好き勝手言う生徒たち。
それらを全て無視して教室内を進む。

いつもは侮蔑の眼差しを受けながら教室を進むルイズだが、今日に限っては自分よりも使い魔の方が注目を浴びている。

ルイズは適当に空いている席を見つけてさっさと座った。
「俺はどこにいればいい?」
教室の机に生徒以外が座るのは流石にまずかろうとルイズに問うリュウ。

「本当は使い魔は足元か教室の後ろにいることになってるんだけど、アンタ人間だし隣に座ってていいわよ」
使い魔なんだから床に座ってなさいと言いたいところだったが、今朝の二の舞は二度と御免なので素直に隣に座らせる。
なんか、もうご主人様と使い魔の関係にはなれそうもないなぁ・・・などと半ば諦めることにした。



「ゼロのルイズ!魔法が使えないからって平民の物乞いを連れてきて使い魔にするなんて面白過ぎることするなよ!」
数メイルほど離れた席に座っていた小太りの少年から一際大きな野次が飛ぶ。

彼は決闘の現場にいなかったので、リュウの恐ろしいほどの強さを知らない。
仮に見たところで、理解できるかどうかは怪しかったが。

「違うわ!本当に召喚したのよ!黙ってなさいよ!”風邪っぴき”のマリコルヌ!!」
ルイズも負けじと言い返す。
自分のことなら言われ慣れているが(それでも言い返す)、リュウのことを馬鹿にされると我慢がならない。

「僕は”風邪っぴき”なんかじゃない!!”風上”のマリコルヌだ!!」


などとやっているうちに教師と思しき中年女性が教室に入ってきた。

「静かにしなさい」
パンパンと手を叩きながら生徒に注意を促す。

「ミス・シュヴルーズ!ヴァリエールが僕のことを”風邪っぴき”だなんて言うんです!!」
マリコルヌが教師に抗議の声をあげる。

ルイズが「言い出したのはそっちでしょ」と反論しようとしたところ、隣に座っているリュウに諌められた。
「授業が始まるんだろう?言いたいヤツには言わせておけばいい」
「でも!」
「相手に合わせて自分まで貶めることはない」

リュウに諭されておとなしく黙るルイズ。
しかし握り締めた両手はプルプルと怒りに震えている。

「くだらない言葉で貶め合うよりも、魔法の実力で見せ付けてやればいい。それだけのことだ」
ルイズが魔法を使えないことを知らないリュウは怒りを収めてやろうと思い言葉をかけてやったが、
それはルイズを一際傷つける言葉に他ならなかった。

握り締められていた手からは力が抜けた。
溢れそうになる悔し涙をリュウに見られぬよう、そっぽを向く。
リュウはルイズが怒りを堪える為に顔を逸らしたのだろうと解釈した。

ちなみにその頃、延々とルイズの悪口をまくしたてていたマリコルヌは
「友達を悪く言うものではありません。少し反省してなさい」
というシュヴルーズの言葉と共に錬金された赤土の粘土によって口を塞がれ、モガモガ言っていた。



「私はこの授業が一番楽しみなんです。なんといっても、皆さんの召喚した使い魔を見ることができますから」
満面の笑みを浮かべて教室内を見回す。

「まぁ、サラマンダーに風竜までいるなんて、今年は優秀ですね。素晴らしいですわ皆さん。」

シュヴルーズの目がリュウで留まる。
「あら、あなたはミス・ヴァリエールの使い魔ですね。これは珍しい」

別に馬鹿にした風でもなく、単に学術的に珍しいものを見た感想を述べただけだったが、
今のルイズにはそう解釈できるだけの余裕がない。
馬鹿にされたとしか思えずに、またフルフルと握り締めた手を震わせる。

「では、授業を始めますよ。魔法には四大系統が・・・」

授業の内容はリュウにはイマイチ解らなかったが、火や水、風、土というように系統別になっているらしいことは理解できた。
そして、どうやら使い魔というのはそのメイジの系統に付随したものが呼びだされるらしい。
例えば、キュルケなら火のサラマンダーといったように。

では、自分を呼び出したルイズは何の系統なのだろう。
ケンなら間違いなく”火”の系統だろうし、雷は風の系統らしいので、アマゾンで出会ったブランカならきっと”風”だ。
しかし、自分には特にそういったものはない。
無理矢理当てはめるとしたら恐らく”殺意の波動”になるなのだろうが、これは聞いた四大系統というものとは明らかに別種のものだ。
授業が終わったらルイズに聞いてみよう。
あれこれ考えている間にも授業は進む。

「・・・では誰か、この小石を何かの金属に錬金してみてください。
そうですね・・・ミス・ヴァリエール。貴女にやってもらいましょう」

ルイズが当てられた瞬間、教室内がざわついた。
「い・・・いや・・・それはちょっと・・・」
「ミス・シュヴルーズ!それはやめた方が・・・」
方々から声が上がる。

事情を知らないシュヴルーズはそれがイジメのようなものだろうと解釈した。
「皆さん、魔法学院は学び舎です。皆が等しく魔法を研鑽するべき場所なのですよ。
そのような発言は認められません。ミス・ヴァリエール、大丈夫ですね?」

「はいっ!」
元気良く答え、教室の前まで進み出る。
リュウは言った。『実力でみせつけてやればいい』と。
今までは失敗してきたが、今回は成功するかもしれない。
だって、サモン・サーバント<召喚>もコンストラクト・サーバント<契約>も成功したではないか。
きっと今回も成功する・・・

自分に言い聞かせ、錬金の呪文を唱えながら杖を振り上げる。
と同時にシュヴルーズとリュウ以外の全員が机の下に避難した。

「ゴメンね~。成功を祈ってはいるけど、やっぱり怪我したくないし」
キュルケもそう呟くと、他の生徒同様そそくさと机の下に避難した。



ルイズが呪文を完成させ、杖を振り下ろす。
と同時に起こる大爆発。

リュウの目の前に高速で机や椅子の破片、割れた花瓶などが飛んできた。
それらの全てをことごとくかわす。

爆心地にいたシュヴルーズは教室の壁に叩きつけられて失神している。
奇跡的に大怪我はしていないようだ。
一方、同じく爆心地にいたルイズはボロボロになりながらも、たいした怪我もなく口からケホッと煙を吐いている。
「ちょっと失敗したようね・・・」

「どこがちょっと失敗なんだよ!!!」
周りから一斉にツッコミが入った。








ルイズは黙々と自分が破壊した教室を片付けていた。

意識を取り戻したシュヴルーズは「失敗を責めるつもりはありませんが、とりあえず教室は片付けてください」
と言い残して医務室に担ぎ込まれた。
こんな状態で授業などできようはずもなく、皆は少し早いが昼食をとるためにアルヴィーズの食堂に移動したが、
大半の生徒は教室を出て行くときにルイズを睨み付けていった。

教室に残っているのは後片付けをしているルイズとリュウのみ。
リュウが大きな机や椅子を並べていき、ルイズはそれを綺麗に拭いていく。

長い沈黙の時が流れる。

リュウは何も言ってこない。ただ、黙って教室の後片付けを手伝ってくれている。
リュウはわたしが魔法を使えないと知って呆れてしまっただろうか。
わたしは、リュウにも愛想をつかされて、またひとりぼっちになるのだろうか。

リュウになんと言えばいいのか分からずに黙っていると、リュウの方が口を開いた。

「一度でだめなら、何度でも試す それを繰り返せばいい」
静かに優しく、しかし力強く言うリュウ。

それを聞いて、ルイズはポツリポツリと話始めた。
「わたしね、魔法が使えないの。だから『ゼロのルイズ』。魔法がゼロのルイズなのよ」
黙って話を聞くリュウ。

「小さい頃から、一度も成功したことがないわ。いいえ、一度だけ成功したことがあるわね。あなたを召喚したときよ。
でも、その1回きり・・・」

「勉強は・・・たぶんみんなよりはしてると思うわ。魔法を使えるようになりたいから、それこそ昼も夜もなくね。
おかげで実技以外はこれでも優秀なのよ。」
ルイズの目から大粒の涙が零れ落ちる。

「でもね、どうしても魔法が使えないの。
どんなに簡単な魔法でも使おうとすると、さっきみたいに爆発するのよ。もう何百回、何千回爆発したかも分からないわ」
床に落ちた涙が滲んでいく。

「せっかく貴方はそんなに強いのに・・・ご主人様のわたしがゼロなんじゃね
      • ゴメンね・・・リュウ・・・わたしなんかに呼び出されちゃって・・・」
堪えられず、嗚咽を漏らし始めるルイズ。

ついに言ってしまった。自分がゼロであることを。
これでリュウは自分の元から去っていくだろう。
これほど強力な使い魔の主人がこれではそれも仕方ない・・・

それまで黙って聞いていたリュウが、口を開いた。
ルイズは今から死刑宣告を告げらるような気持ちでリュウの言葉を待つ。

「俺は闘うことしかできない。だから上手く言うことはできないが・・・
本当の敗北というものは勝負に負けることじゃあない。
前に進むことを止めてしまったとき。自分を誤魔化し、諦め、裏切ってしまったときが敗北なんだと、俺は思う」

静かに続けるリュウ。
「それに、1回きりでも成功したのなら、次の1回を目指せばいい。それだけのことだ」

不思議そうな目でリュウを見つめるルイズ。

「目指すものがある・・・それが大切なことだ 」
そこでリュウは言葉を区切った。

「リュウはわたしを軽蔑したりしないの?わたしの元から去らないの?わたし、魔法が使えないのよ?」
覚悟していた別離宣言という名の死刑宣告が出てこないので、思わずたずねる。

「ルイズが前に進むのを止めたとき、俺は君の元を去る。
だが、俺は君の使い魔なんだろう?だったら、ひっぱたいてでも前に進ませるさ」
笑顔で答えるリュウ。

「・・・使い魔がご主人様をひっぱたくなんて・・・許さないんだから」
まだ涙は溢れていたが、ようやくルイズの顔にも笑みが戻った。

それからまた教室の片付けを再開する。

「リュウは本当に強いのね」
「打ち破れぬ壁はない・・・鍛えつづけた歳月が教えてくれただけだ」





授業は散々だったが、この片付けの時間は悪くなかった。
そう思うルイズだった。









新着情報

取得中です。