「さ……寒い。」
清々しい朝の光ではなく、肌寒さでわたしは目を覚ました。
ぼーっとしたまま目を横にやると、わたしの毛布を剥ぎ取って、ぐーすか寝こけるダメダメ使い魔の姿が目に入る。
ぼーっとしたまま目を横にやると、わたしの毛布を剥ぎ取って、ぐーすか寝こけるダメダメ使い魔の姿が目に入る。
「起きなさ……!!」
そこまで言って、わたしはこのダメ使い魔こと、ダネットを起こすのをためらい、昨日のことを思い出す。
「あー……まあ、今日ぐらいは勘弁してあげるか。で、でもこれはご主人様としての使い魔への計らいっていうだけだから、勘違いしちゃ駄目なのよ?」
別に誰に聞かれる訳でもないのに、言い訳をしてしまう。
うーむ。昨日のアレはご主人様としてかなりアレだったんではないだろうか? 威厳というものがゼロだった。
泣くにしても、もうちょっとこう目上の者の泣き方みたいなものがあったんではなかろうか?
うーむ。昨日のアレはご主人様としてかなりアレだったんではないだろうか? 威厳というものがゼロだった。
泣くにしても、もうちょっとこう目上の者の泣き方みたいなものがあったんではなかろうか?
「んー……まあいっか。それなりに感謝もしてるし。光栄に思いなさいよね?」
昨日、わたしが泣き止むまでずっと抱きしめてくれたダネットを見て、少しだけ笑う。
「むー……」
わたしの独り言がうるさかったのか、ダネットは僅かに眉間にしわを寄せて唸った。
「あ、起こしちゃったかしら。」
だけれど、また夢の世界に旅立ったようで、幸せそうな顔をして寝息をたて始める。
全く、ご主人様から毛布を剥ぎ取ってすやすやと……。どんな夢を見てるのかしらこの使い魔は。
全く、ご主人様から毛布を剥ぎ取ってすやすやと……。どんな夢を見てるのかしらこの使い魔は。
「おまえー……」
あら寝言? しかもわたしの夢みたいね。
きっと優しいご主人様に感謝しまくってる夢ね。
きっと優しいご主人様に感謝しまくってる夢ね。
「おまえー……ホタポタを胸に入れても乳でかにはかないませんよー……」
ほほう? 中々に楽しい夢を見てるみたいねえこのダメットは。というか、この寝言には作為すら感じるわ。実は起きてるんじゃないかしらこいつ。
それよりも、っと……確かこの辺に乗馬用の鞭が……お、あった。さぁて、使い魔の調教でもしましょうか。
それよりも、っと……確かこの辺に乗馬用の鞭が……お、あった。さぁて、使い魔の調教でもしましょうか。
「ああもう……まったくおまえはバカですねえ……」
「馬鹿はあんたよ!! このダメットおおおおおお!!!!!!」
「馬鹿はあんたよ!! このダメットおおおおおお!!!!!!」
少しだけ優しくなれたはずの朝は、一転してわたしの怒声から始まった。
「お前、私の頭を何だと思ってるんですか? 楽器みたいにポンポンと。」
「楽器なら綺麗な音が出るだけマシよマシ。ほら、さっさと起きる!!」
「楽器なら綺麗な音が出るだけマシよマシ。ほら、さっさと起きる!!」
昨日までのことが悪夢だったかのように、平和な空気が部屋を満たす。
このままの日常が続けばいいなとちょっとだけ思う。ちょ、ちょっとよ? ほんのちょっぴりよ?
このままの日常が続けばいいなとちょっとだけ思う。ちょ、ちょっとよ? ほんのちょっぴりよ?
「うー……まだ眠いです。お前、ちょっと顔を洗いたいから水を用意してください。」
「そういうのは使い魔の仕事でしょうが!! 顔を洗いたいならわたしの分まで部屋に持ってきなさい!!」
「たかが顔を洗う為の水を部屋に持ってこさせるなんて、贅沢ですねお前は。親の顔が見たいっていうものです。」
「あんた喧嘩売ってるでしょ? 支払いは金貨でいいかしら?」
「随分と逞しくなりましたねお前。」
「おかげ様でね。はあ……全く……」
「そういうのは使い魔の仕事でしょうが!! 顔を洗いたいならわたしの分まで部屋に持ってきなさい!!」
「たかが顔を洗う為の水を部屋に持ってこさせるなんて、贅沢ですねお前は。親の顔が見たいっていうものです。」
「あんた喧嘩売ってるでしょ? 支払いは金貨でいいかしら?」
「随分と逞しくなりましたねお前。」
「おかげ様でね。はあ……全く……」
全く、この使い魔ときたら、普段はダメダメなのに、こういう時は変に気を使う。
そもそもダネットは、こうやって人をおちょくるタイプではない。どっちかというとおちょくられるタイプだ。
あの笑顔を見るに、多分、少しでも明るくして気分を変えようとしてるのだろう。ただ、問題は
そもそもダネットは、こうやって人をおちょくるタイプではない。どっちかというとおちょくられるタイプだ。
あの笑顔を見るに、多分、少しでも明るくして気分を変えようとしてるのだろう。ただ、問題は
「バレッバレなのよね。全くもう。」
「え? 何かいいましたかお前?」
「何でもないわよ。ほら、早くしないと朝食が食べれないどころか、授業に遅れるわ。」
「え? 何かいいましたかお前?」
「何でもないわよ。ほら、早くしないと朝食が食べれないどころか、授業に遅れるわ。」
部屋の外からは、他の生徒の声が聞こえ、窓からも何人かの生徒の声が聞こえる。
早い生徒は、もう食堂に行ってることだろう。わたしも急がないと。
早い生徒は、もう食堂に行ってることだろう。わたしも急がないと。
「あれ? でもお前、今日はジュギョーお休みじゃないんですか?」
「あ……そうだったわ」
「あ……そうだったわ」
思い出した。
昨日、泣きながら部屋に戻るとき、騒ぎを聞きつけたミスタ・コルベールに、大事を取って今日は休みなさいと言われたんだった。
昨日、泣きながら部屋に戻るとき、騒ぎを聞きつけたミスタ・コルベールに、大事を取って今日は休みなさいと言われたんだった。
「でも、別に平気なんだけどね。」
そう言いながら、わたしは腕をくるくる回してみる。
「はー……お前って丈夫なんですねえ。それとも、こっちの療術師が凄いんですか?」
「何よそのリョージュツシって?」
「怪我を治してくれたりする術師のことです。知らないんですか?」
「知らないわよあんたの田舎の事情なんて。そのリョージュツシってダネットのいたとこの水のメイジの呼び方? でも、何で水のメイジが関係してくるのよ? わたしは怪我なんてしてないわよ?」
「何よそのリョージュツシって?」
「怪我を治してくれたりする術師のことです。知らないんですか?」
「知らないわよあんたの田舎の事情なんて。そのリョージュツシってダネットのいたとこの水のメイジの呼び方? でも、何で水のメイジが関係してくるのよ? わたしは怪我なんてしてないわよ?」
それを聞いたダネットは、少し考え込んだ後、笑って手を振りながら答えた。
「あ、何でもないです。お前は気にしないで下さい。ええ、お前は元気いっぱいです。さて! ご飯にしましょう!!」
「待ちなさい。」
「う……。お前? その目ちょっと怖いですよ?」
「なぁにを隠してるのダネットぉおお?」
「か、隠してなんかいません!! お前が凄い怪我をしていたなんてこと、これっぽっちもありません!! ありませんとも!!」
「なるほど。よーくわかったわ。それで? わたしが怪我をしてた理由は何なの?」
「け、怪我なんてしてません!! お前は元気いっぱいです!!」
「ダネット? わたしは真剣に聞いてるの。」
「……言えません。言いたくないです。」
「待ちなさい。」
「う……。お前? その目ちょっと怖いですよ?」
「なぁにを隠してるのダネットぉおお?」
「か、隠してなんかいません!! お前が凄い怪我をしていたなんてこと、これっぽっちもありません!! ありませんとも!!」
「なるほど。よーくわかったわ。それで? わたしが怪我をしてた理由は何なの?」
「け、怪我なんてしてません!! お前は元気いっぱいです!!」
「ダネット? わたしは真剣に聞いてるの。」
「……言えません。言いたくないです。」
それっきり、ダネットは頬を膨らませて口をつぐんでしまった。こうなると、原因は自分で考えるしかない。
「わたしが怪我をして、その理由をダネットは言いたくない……となると、理由はあの『黒い剣』かしら?」
「……私は黒い剣なんて知りません。知ったこっちゃないです。」
「……私は黒い剣なんて知りません。知ったこっちゃないです。」
ダネットはそう答えながらも、表情を険しくした。
全く……素直というか、つくづく嘘が付けない使い魔だ。
全く……素直というか、つくづく嘘が付けない使い魔だ。
「ダネット、もしかしてあんた、あの剣に関係してることを秘密にして、わたしを傷つけないようにとか考えてない?」
「…………。」
「…………。」
無言。つまり肯定。
ほんと世話の焼ける使い魔というか何と言うか……。
ほんと世話の焼ける使い魔というか何と言うか……。
「あのねダネット。言っとくけど、わたしは誇り高きヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ?」
「そのルイなんとかがどうしたって言うんですか。」
「そのルイなんとかがどうしたって言うんですか。」
わたしは、そっぽを向きながら、膨れっ面で返すダネットの顔を両手で掴んでこちらへ向けた。
「な、何をするんですか!! 離しなさい!!」
「黙りなさい。あのねダネット? この名前はわたしが貴族であるという証。そして、貴族というのは」
「木が頭からもしゃーっと」
「違うわよ! いいから聞きなさい!! あのね、貴族っていうのは背を向けないの。それがどんなことであっても。例え、自分が傷つくようなことでもね。」
「黙りなさい。あのねダネット? この名前はわたしが貴族であるという証。そして、貴族というのは」
「木が頭からもしゃーっと」
「違うわよ! いいから聞きなさい!! あのね、貴族っていうのは背を向けないの。それがどんなことであっても。例え、自分が傷つくようなことでもね。」
しかし、ダネットは納得がいかないようで、まだ顔をしかめている。
仕方ない。恥ずかしいけど言ってやろう。
仕方ない。恥ずかしいけど言ってやろう。
「それにね。もし、もしもよ? その……わたしが傷ついちゃった時はその……」
「その何ですか?」
「その何ですか?」
ああもう!! ちょっとは察しなさいよ馬鹿!! アホ使い魔!! ダメット!!
でも、それがダネットか。はぁ……。
でも、それがダネットか。はぁ……。
「わたしが傷ついたり危ないときは、あんたが守るんでしょ!? 違う!? あんた言ったわよね? 『お前の使い魔』だって。だったらご主人様を守りなさい!! わかった!?」
わたしは一気に言った後、赤くなった顔を見られないようにダネットから顔を背けた。
横目でダネットをちらっと見ると、わたしの言ったことに呆気に取られたようで、口をぽかんと開けている。実にアホっぽい。
横目でダネットをちらっと見ると、わたしの言ったことに呆気に取られたようで、口をぽかんと開けている。実にアホっぽい。
「そっか……そうですよね。」
「そうよ。わかったんならさっさと話しなさい。」
「そうよ。わかったんならさっさと話しなさい。」
ようやく話す気になったのか、ダネットは姿勢と表情を正すと、真剣な口調で話し始めた。
「まず怪我のことですが、お前はあの剣を使って石の化け物を倒したっていうことは覚えてますか?」
「石の化け物ってゴーレムのことね。うん、覚えてるわ。」
「石の化け物ってゴーレムのことね。うん、覚えてるわ。」
ダネットはわたしの返事に頷くと、言葉を続けた。
「私はその時、気絶していて見ていなかったんですが、乳でかやタバサに聞きましたし、お前も覚えてるなら間違いないでしょう。じゃあ、続けて聞きます。お前は、石の塊を斬りつけましたが、それで手は平気だったと思いますか?」
なるほど、そういう事か。
「無事じゃすまないでしょうね。」
「ええそうです。お前の手の骨にはヒビが入っていて、他にも足の骨やら肩や腰まで凄い状態だったそうです。」
「う……想像したらなんか痛くなってきた。」
「おまけに、手足の筋肉とかはもう凄まじかったそうです。ぐっちゃぐちゃのハンバーグって感じだったそうです。」
「ストップ。大怪我をしてたことはわかったわ。じゃあついでに聞くわね。あの剣は一体なんなの? あれを使ったせいでわたしはああなって、凄い力でゴーレムを倒した。そして……あんた達を傷つけようとした。」
「ええそうです。お前の手の骨にはヒビが入っていて、他にも足の骨やら肩や腰まで凄い状態だったそうです。」
「う……想像したらなんか痛くなってきた。」
「おまけに、手足の筋肉とかはもう凄まじかったそうです。ぐっちゃぐちゃのハンバーグって感じだったそうです。」
「ストップ。大怪我をしてたことはわかったわ。じゃあついでに聞くわね。あの剣は一体なんなの? あれを使ったせいでわたしはああなって、凄い力でゴーレムを倒した。そして……あんた達を傷つけようとした。」
ついでと言いつつも、実際はこれが本題だ。
あの剣を持っていた時の最後の記憶。ダネットがわたしを説得して止めたときのこと。
ダネットはあの剣のことを知っている素振りを見せた。だからこそわたしを止められた。
多分、いや絶対にダネットとあの剣には何か関係がある。
あの剣を持っていた時の最後の記憶。ダネットがわたしを説得して止めたときのこと。
ダネットはあの剣のことを知っている素振りを見せた。だからこそわたしを止められた。
多分、いや絶対にダネットとあの剣には何か関係がある。
「……わかりました、教えます。あの剣というのは」ぐぅ
「はい? なに今の音?」
「はい? なに今の音?」
何かダネットの言葉の後に凄い音がした気がする。
「い、今のは気にしないで下さい!!」ぐきゅるる~
「気にしないでって、無理言わないでよ。」
「気にしないでって、無理言わないでよ。」
慌ててお腹を押さえるダネットを見て見当が付いた。
「あんた、お腹空いてるんでしょ? 取り合えず朝食を食べに行きましょうか。」
「うう……真面目な話の時にすいません。」ぐきゅるるるる~
「気にしないの。わたしもお腹が空いてたし、ちょうどいいわよ。ほら、先に顔を洗ってから食堂に行くわよ。」
「うう……真面目な話の時にすいません。」ぐきゅるるるる~
「気にしないの。わたしもお腹が空いてたし、ちょうどいいわよ。ほら、先に顔を洗ってから食堂に行くわよ。」
未だに恥ずかしそうに顔をしかめるダネットの手を取り、顔を洗いに向かう。
顔を洗い、食堂に向かう途中、空腹の為なのか先ほどのお腹の音のせいか、今も顔をしかめるダネットをふと見る。
顔を洗い、食堂に向かう途中、空腹の為なのか先ほどのお腹の音のせいか、今も顔をしかめるダネットをふと見る。
「何ですかお前? 私の顔に何か付いてますか?」
「べっつにー」
「あ! お前笑いましたね!! 言いなさい! 私の顔に何を付けたんですか!! 言わないと首根っこへし折りますよ!!」
「ほらほら、急がないと朝食なくなっちゃうわよ?」
「ま、待ちなさい!! 教えなさい!!」
「べっつにー」
「あ! お前笑いましたね!! 言いなさい! 私の顔に何を付けたんですか!! 言わないと首根っこへし折りますよ!!」
「ほらほら、急がないと朝食なくなっちゃうわよ?」
「ま、待ちなさい!! 教えなさい!!」
朝の学院を走りながらわたしは思った。こんな日常はきっとずっと続くのだと。
「はー、あんたもダネットもよく食べるわね。タバサも良く食べるけど、負けてないんじゃない?」
「三日も寝てたんだから、お腹空いてるのよ。仕方ないじゃない。」
「太る。」
「タバサ、何か言った?」
「言ってない。」
「ふぉーむむふぁふふぁふふぉ!!」
「ダネット! 口に食べ物を詰めながら喋らないで!! ああもう! こぼれちゃってるじゃない!!」
「三日も寝てたんだから、お腹空いてるのよ。仕方ないじゃない。」
「太る。」
「タバサ、何か言った?」
「言ってない。」
「ふぉーむむふぁふふぁふふぉ!!」
「ダネット! 口に食べ物を詰めながら喋らないで!! ああもう! こぼれちゃってるじゃない!!」
わたしとダネットは、食堂で会ったキュルケとタバサと一緒に、賑やかな朝食を取っていた。
本来、席は決まっているのだが、キュルケが変に気を使って一緒の席で食事をしようということになったのだ。
本来、席は決まっているのだが、キュルケが変に気を使って一緒の席で食事をしようということになったのだ。
「なんか逆に疲れるような気がするのは気のせいかしら。」
「ふぉふ?」
「だから食べ物を口に入れたまま喋るな!!」
「ふぉふ?」
「だから食べ物を口に入れたまま喋るな!!」
朝にしては騒がしく食事を終え、授業の時間が近づいてきた。
わたしは休みだが、キュルケとタバサは通常通り授業がある為、席を立って移動しようとしのだが、そこでふとキュルケが立ち止まり、わたしの方を見て言った。
わたしは休みだが、キュルケとタバサは通常通り授業がある為、席を立って移動しようとしのだが、そこでふとキュルケが立ち止まり、わたしの方を見て言った。
「ルイズ、あんた達がさっき部屋で話してた事だけど。」
「あ、あんた聞いてたの!?」
「聞こえたのよ。朝からあんなに騒いでたら誰だって気になるじゃない。」
「あ、あんた聞いてたの!?」
「聞こえたのよ。朝からあんなに騒いでたら誰だって気になるじゃない。」
わたしは鞭を手にダネットを追い掛け回したことを思い出し、頭を抱えた。
「それでね、今日の授業が終わった後に、あたしとタバサもダネットの話を聞いていいかしら?」
「何でよ? あんた達には関係な」
「ある。」
「何でよ? あんた達には関係な」
「ある。」
わたしの言葉を遮り、タバサが言った。
「タバサの言う通りよ。あんたもダネットもあたしもタバサも、アレのせいで危険な目に会った。無関係じゃないわ。なら、今後のことも考えると、あたし達にも知る権利ってのはあるんじゃない?」
言われて見るとそんな気もしてくる。更に、原因はわたしなので強くも言えない。
「ダネット、どうする?」
わたしに拒否権は無いと悟り、ダネットに決定権を渡す。
話をするダネットが拒否するなら、流石に二人も諦めるかもしれない。
話をするダネットが拒否するなら、流石に二人も諦めるかもしれない。
「……関わったら危険かもしれないですよ?」
「危険は承知。」
「危険は承知。」
ダネットの問いにタバサが短く答える。
その答えを聞いたダネットは、珍しく考え込んだ後に言った。
その答えを聞いたダネットは、珍しく考え込んだ後に言った。
「わかりました。乳でかとタバサにも教えます。」
ダネットの返事を聞き、満足したのかキュルケは笑うと、タバサと二人で食堂を後にし、残るはわたしとダネットの二人だけになった時、わたしはダネットに聞いてみた。
「よく話す気になったわね。」
「…………。」
「…………。」
わたしの問いに、ダネットは無言で悔しそうに唇を噛む。
多分、二人を巻き込んでしまうことが悔しかったんだと思う。なのに二人に話そうと決めた。つまり、それほどあの剣が危険だということ。そして、ダネットだけでは、ああなったわたしをまた止められるとは限らないこと。
しかし、そこでわたしは一つ疑問が浮かんだ。
多分、二人を巻き込んでしまうことが悔しかったんだと思う。なのに二人に話そうと決めた。つまり、それほどあの剣が危険だということ。そして、ダネットだけでは、ああなったわたしをまた止められるとは限らないこと。
しかし、そこでわたしは一つ疑問が浮かんだ。
「あれ? でもあの剣を使わなかったら、もう大丈夫なんじゃないの?」
しかし、ダネットはわたしの言葉を聞いてうつむき、呟く様に言った。
「……後で話します。」
その後、ダネットとわたしは無言で食堂を後にし、ダネットは昼食の時も部屋から出る事無く考え事をしていた。
わたしがシエスタに言って部屋に持ってこさせた食事も、いつもの半分も食べずに残した。
それから時間は流れ、授業の終わりの合図が鳴る。
そんな時、部屋のドアがコンコンとノックされ、わたしはキュルケ達が急いで来たのかと思い、ダネットにドアを開けさせた。
ダネットがドアを開け、来訪者の姿を見ると、体をピクンと震わせて一点を見つめる。
わたしがシエスタに言って部屋に持ってこさせた食事も、いつもの半分も食べずに残した。
それから時間は流れ、授業の終わりの合図が鳴る。
そんな時、部屋のドアがコンコンとノックされ、わたしはキュルケ達が急いで来たのかと思い、ダネットにドアを開けさせた。
ダネットがドアを開け、来訪者の姿を見ると、体をピクンと震わせて一点を見つめる。
「ミスタ・コルベールに……学院長?」
来訪者は顔を強張らせたミスタ・コルベールと、難しい顔をした学院長であるオールド・オスマンの二人。
わたしは二人の姿を確かめた後、動かないダネットに疑問を持ち、今も動かない視線の先を見た。
わたしは二人の姿を確かめた後、動かないダネットに疑問を持ち、今も動かない視線の先を見た。
「学院長……それは……。」
視線の先にあったのは、学院長が手にしている、『破壊の剣』の名を持つ錆びの浮いた長剣だった。